No. 1262 エプスタイン事件
投稿日: 2019年8月26日
今日は日本のメディアがあまり報じることがない、米国の事件について取り上げたい。
7月初め、米国の実業家ジェフリー・エプスタインが、未成年女性への性的虐待で逮捕された。エプスタイン被告はニューヨーク市内の邸宅、パームビーチの別荘や個人所有の島、自家用ジェットも保有する大富豪であり、交友関係はクリントン元大統領、英国アンドルー王子、イスラエルのバラク元首相と、世界の政財界に及ぶ。
エプスタイン被告が性犯罪で起訴されたのは今回が初めてではない。2009年にも、所有する別荘で未成年女性らに性的なマッサージをさせたとして起訴され、実刑判決となった。しかし収監はされたものの、日中は外出が許され、刑務所には寝に帰るだけという甘いものだった。この軽い判決を下した検事が、トランプ政権のアコスタ労働長官だったことから、長官は辞任に追い込まれている。
ウォール街のビジネスマンだったエプスタインがどのように巨額の富を築いたのか。政財界の著名人を相手に別荘で未成年者の売春をあっせんした、それを録画して脅迫した、諜報機関と関係があったなど、さまざまな臆測がなされている。逮捕された途端、親交のあった著名人は、被告のプライベートジェットで何度も別荘を訪れたクリントン元大統領を含め、エプスタインとの関係を否定したり距離を置こうとしたりしている。裁判で関係が暴露されれば大変なことになるからだろう。
しかしその心配はない。7月25日、エプスタイン被告は監房で自殺でも図ったのか、意識不明の重体だと報じられた。当局はエプスタインが自殺しないように監視をつけたが、8月10日、エプスタインは再び、自ら命を絶ったという。
エプスタイン事件は、売春にとどまらない。エプスタインはイスラエルの元首相と親しかっただけでなく、恋人だったギスレイヌ・マクスウェルの父親は、メディア王でモサド(イスラエルの諜報機関)と関係のあったロバート・マクスウェルだ。名前が上がる人々は米国の「ディープステート」と呼ばれる諜報機関、軍隊、軍産複合体などが結びついたグループであり、少し前ならば「陰謀論」として一蹴されるような事件である。これがトランプ政権になって表面化した。
ディープステートの支配下にあるメディアは、トランプ大統領もエプスタイン被告の「顧客」であったかのように印象付けようとしているが、人気作家ジェームス・パターソンが2017年にエプスタインについて書いた「Filthy Rich(汚い富豪)」によれば、トランプ大統領は15年前、エプスタインが女性に不適切なことをしたとしてパームビーチのクラブに出入り禁止にしたとされる。
ディープステートは、証拠もないのに相変わらずトランプ大統領がロシア政府と共謀して米国に不利益を与えたとバッシングを続けている。エプスタイン事件が表面化されたことをみると、米国の権力構造がディープステートの手から離れつつあることを示唆しているようだが、「死人に口なし」だ。エプスタインの抹消は、事件をこれで終息させたい人によってなされたと考えるほうが自然だろう。