Entrance for Studies in Finance

under water loan; negative equity loan; strategic defaults

Brisbane under water ブリスベーンの水害 そして 水没ローン

Hiroshi Fukumitsu


オーストラリアのクイーンズランド州で2010年12月に起きた洪水が、2011年1月に入り州都ブリスベーンにまで拡大した。ブリスベーンは人口200万人。オーストラリアではシドニー、メルボルンに次ぐ大都市である。石炭の積み出し港があるが、石炭鉱山の水没・操業停止、鉄道の破壊(物流網寸断)などもあり、積み出しが止まったまま。石炭価格上昇が見込まれる。小麦、さとうきび、綿花など農作物への影響も心配されている。

"Raging waters" The Economist, January 15, 2011, p.27
Coal seen rising on Australia's floods, The Globe and Mail, January 4, 2011
Wheat rises to five month high as Australia flood , US cold threatens, Bloomberg, January 4, 2011
Draining flooded Australia mines could take weeks, January 6, 2011
Brisbane under water, The Wall Street Journal, January 13, 2011
Brisbane flood clean-up starts, January 14, 2011

Floods on Brazil ブラジルでも洪水
なおまったく同時期に地球の裏側のブラジルで大規模な洪水が起きており500人以上が亡くなっている。
Brazil floods more than 500 dead, BBC News, January 14, 2010 日本でも見られる局地的な豪雨が世界的にも多発しているように見える。

underwater loan 水没ローンとnegative equity
なお家が水没するように、債務に水没した状態(ローン残高>持家価格)をunderwater loanという。このunder waterの状態はnegative equityとも呼ばれる。equityとは不動産価値とその不動産を担保に貸し付けている金額(残額)との差額のことである。この差額を担保にとって貸し付けるのが、home equity loan(HEL)である。HELはhome loan equity line of creditすなわちHELOCとして融資枠として与えられることが多い。

recourse or non-recourse ノンリコースローン(非遡求型貸付)について
それでunderwater loanになったその時の借り手の対応はrecourseかnon recourseかで違ってくる。以下の説明strategic default, recourse or non-recourseではこれは州によって違うという(すべての州がnon recourseではない)。この説明によるとnon-recourseであっても若干の現金の追加徴収を貸し手に認めている州もあり、またnon-recourseは不動産の一次取得にのみ限定している州もある。すべてがnon-recourseだとか、non-recouseだから追加徴収は一切ないという安易な理解ではいけない。

注目される戦略的デフォルト(戦略的債務不履行strategic defaults)
このようなノンリコースの州を中心に意図的に早期に不履行を決め込む戦略的債務不履行(戦略的デフォルトstrategic defaults)の拡大が2009年から2010年にかけて、アメリカでは社会問題になった。私はこの戦略的債務不履行(戦略的デフォルト)の研究を進めている。
ノンリコース融資について
行き詰まる米住宅ローン証券化 一時、米国では貸付はすべてnon recourseだと言わんばかりの議論がはやった。しかし実際はそれは州によって違うということになる。またnon recourseだと貸し手が不利になることがあるためであろうか、non recourseは不動産の一次取得のための貸付に限定したり、貸し手に若干の追加徴収を認めたりといったパターンがあるようだ。

「行き詰まる米住宅ローン証券化」では、ローンに関する情報に瑕疵があった場合について、投資家側から住宅ローン担保債券(MBS)の買い戻し要求、ローンを買取・保証した住宅金融公社からローン債権買い戻し要求、そしてローンを組んだ債務者からは差し押さえ手続き停止要求が出て、住宅ローン証券化が行き詰まっていることを述べた。この証券化の行き詰まりは、まず一次的には、米金融機関の収益を圧迫することになろう。米国の住宅ローン証券化は、学ぶべきモデルと考えられた時期があったが、すでにそれを単純に理想視することはとてもできなくなっている。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in January 16, 2011
corrected and reposted in April 21, 2011



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