Entrance for Studies in Finance

資源安 その原因と影響について

 

 2016年 サウジの姿勢転換により始まった減産は、ようやくアメリカのシェール生産の抑制、相場の安定をもたらすようになり、2017年11月末 OPEC総会(OPECそしてロシアなど非加盟国)は協調減産の再延長で合意した(2018年3月末を9ケ月延長 2018年12月末まで)。ただ減産による原油価格上昇はまたシェールの増産をもたらす矛盾がある。 中国インドなど新興国の需要の増加が相場を押し上げるとの楽観的な見方、景気拡大で原油需要が上振れするとされる。このほか過剰在庫の解消が進んでいるとの観測(米国の寒波で在庫減少)、地政学リスクの懸念(イランの政治情勢)も、押し上げに働く。原油価格の上昇により在庫の評価益が出る石油元売り会社、油田の権益を保有する企業の資源事業、などの利益が押し上げられている(非鉄金属も上昇 いわゆる石油・商社・非鉄など資源株やプラント株が上昇)。

 しかし長期的にはEVへのシフト、自動運転の普及やシェア経済の進展が石油需要の頭を抑えるとの議論がある。実は先進国の石油需要は2005年頃すでにピークに達し減少過程にはいっている。新興国の需要もいずれピークアウトするとされる。専門家の間では2020-2030年の間にこのピーくアウトが訪れるとされている。他面、トラックのEV化はむつかしく 航空機はなおジェット燃料が必要。

シェールの増産続き減産効果相殺(2017年2-3月現在)

  2016年11月末にOPEC総会で減産合意が成立。2017年1月に入り加盟国は減産の履行に努めているが(減産はイラクなどが減産割り当ての一部しか履行しないためサウジなど湾岸協力会議に負担・・・サウジが減産割り当て超えて減産することで達成されている側面・・・原油価格下落による設備投資減少の側面もある)、シェールオイルの増産が続いているため(背景にはシェールオイル生産コストが技術革新により大幅にダウンしている問題がある そのため原油価格があがるとあるいは今回の減産合意があるとシェールが増産され、上値が抑えられる トランプ政権の下で国内原油パウプラインの建設が進むとも また 加盟しているもののリビア ナイジェリア イランは増産 合意に参加していない 米国 カナダ ブラジルは増産)、この減産の効果が削減されている(2017年2月現在)原油相場はバレル45ドルから55ドル前後のまで急上昇した(2016年11月末から12月上旬 北海ブレンド原油)あと一服している。NYのWTI先物は50ドルを割るようになっている(2017年3月上旬)。産油国では原油価格の低迷を受けて、より付加価値の高い石油製品にシフトするうごきがある。

  トランプ政権のもとで米国は原油輸出に積極的(2015年12月に解禁。2017年10月ー12月の米原油輸出量は日量150万バレルベースで前年同期の3倍の水準)。この動きはOPEC主導の減産による価格安定効果を削ぐ側面がある。

中長期的には新興国需要のサイクルがある。先進国需要は減少してゆくとされる(省エネ 脱炭素化 高齢化)。たとえばEVの増加は石油消費の削減につながる。(インド 中国など)新興国の成長回復(新興国では依然としてガソリン車 軽油車の普及が進む)は資源化価格回復にもつながる。それは資源に依存する新興国の景気回復にもつながる。反面 資源価格の下落は資源に依存する新興国(ブラジル ロシア 南アフリカなど)の成長を抑える。

極めて似た状況にあるのが天然ガス。シェールガスにより天然ガスの生産が増えた。他方で価格の安い石炭との競合がある。需要が追い付かないため、供給がだぶつき気味とされる。中国の景気減速(中国やインドでも環境負荷が石炭より小さいガス火力が好まれる傾向がある)、米国が2016年から輸出国に転じつつあることもあり(オーストラリア産は転売禁止がついていて、転売がきかないが米国産は転売できる 日本にとって米国産はアジア産に比べ、パナマ運河を通すなど輸送費が高いデメリットあり)、LNGへの投資が停滞しているとされる(2016年はかなり縮小)。

原油価格再び急落 40ドル割れ(2016年8月末)

生産量を落とさないことでシェア維持を図っているとされるサウジ。しかし欧州ではロシア、イラクにおされている。インドではイラン、イラク。中国ではロシアに。つまり地理的に輸送コストがひくいとこと。またロシア産原油は中東産に比べて軽質でガソリンや軽油を生成しやすいとのこと。

原油価格ン変動はヘッジファンドの影響とも(2008年原油高+ドル安 201415年原油急落+ドル高) シェールオイルの採算分岐点が下がり べ米国の原油生産がなあk中減らなかった 2009-2013年 2014年以降 OPECはシェア優先に転じ 原油価格も下がり続けた。2016年7月 3ケ月ぶりに40ドル割れ(世界的余剰感) 原油価格は16年1月(30ドル割れ)ら6月上旬(49㌦)まで上昇後再び下がり始める(8月末 40ドル割れ)

ピークオイル論(枯渇→高価格)は破たんしている。大きなサイクル 自動車の燃料としての需要 新興国での増加 先進国での技術開発による減少

これまでの商品相場peakは2008年9月のリーマンショック直前である。2000年代前半と比較して約3倍の水準まで急騰した。そしてリーマンショックで暴落し2009年初め底値をみている。
その後、ドル安、欧州債務不安、新興国需要などを背景に再び2011年初めにむけて急騰した。この急騰は、長期的な傾向とも見られたが、実際は新興国需要の変調により「資源安」とよばれる状況が生じている。素材安については中国景気減速の影響が指摘されている。銅、鋼材、ニッケル、亜鉛などもともと中国需要比率が高いところが大きな影響を受けている。中国では2008年以降 設備増強で生産能力が高まったあと。インフラ投資が一巡して設備過剰(鉄鋼、アルミ、圧延コイルなど)が深刻化している面もある。中国で株式市場に比べて規制の弱い商品市場に投機資金が集まり、売りを仕掛けている面もある(銅、アルミなど)。

2015年 資源安 産出国から消費国(貿易収支改善)に所得移転。商社:資源ビジネスで損失。資源メジャーも業績悪化。

7月20日 NY原油先物 一時50ドル割れ 3ケ月半ぶりの安値 金も続落 19日夜時間外で5年5ケ月ぶりの安値
7月24日 CRB指数が6年4ケ月ぶりの安値、
8月13日 NY市場で原油先物市場が大幅に反落(2011-2014前半まで100-110ドルで安定が2014年後半に急落) WTI が一時1バレル41ドル台 6年5ケ月ぶりの安値 シェールガスオイルの高生産(2000年代末から 2015年6月ころから減産にはいるとも)+OPECの減産見送り(2014年11月・・・サウジが減産せず シェア維持 生産能力と価格競争力強いサウジ 高コスト石油の退出を促す戦略)+中国景気の減速  銅の価格は6年ぶりの安値圏 金も5年5ケ月ぶりの安値水準 

米国で原油輸出解禁の方向が決まった(2015年12月15日 米議会与野党が輸出禁止措置撤廃法案提出で合意した。禁止措置は1975年第一次石油危機のあと エネルギ―不足対策としてとられrたもので 規制緩和は40年ぶり)→世界に米原油があふれるおそれ(シェールの減産が予想されたようにおきない 優良鉱区への投資が拡大 50ドルでも利益でるとのこと 損益分岐点は下がり一部では40ドルでも利益出るように変化 ヘッジ売り)。日量200万バレル。中東産よりコスト高い。平均コストハ1バレル40-80ドル。中東は10ドル切る場合も。直近原油価格は30ドル台まで低下(2015年11月 一時40ドル割り込む 2015年12月7日NYで37ドル台 8日には36ドル台 7年ぶりの安値 2014年半ばは100ドル前後から急落)。イラン 米欧との核疑惑による経済制裁で原油輸出制限されていたイランが復帰する可能性。日量100万バレル。

2016年1月に入ると原油価格は1月12日米国WTIが一時30ドル割れ 12年ぶりの安値 その後20ドル台)。国内 石油元売りには再編圧力。出光興産+昭和シェル石油 首位のJXHD(2016・3予最終赤字2000億円 前期も2772億円赤字 2期連続の大幅赤字)と東燃ゼネラル石油(3位)。→5月13日46ドル前後は6ケ月ぶりの高値 底入れか? サウジは依然としてシェア重視 5月26日には一時50ドル回復 背景:シェールの減産 中国の景気刺激策50ドルになれば米国シェールの多くも採算とれる(技術開発と優良鉱区の開発進む)

産油国財政の悪化。サウジも2015年にGDP比22%の財政赤字に陥り、5年内で準備資産喪失とも。ロシア、メキシコ、マレーシアなど産油国は軒並み通貨が下げ。産油国通貨に売り圧力。

今後核協議の合意により2016年にもシーア派のイランの石油が復帰すると(イランとサウジが争う構え)。このほかカナダ、ロシア、イラン、ブラジルが増産基調。

 シェールガス(生産コスト40-50ドル シェールオイル:硫黄が少ない軽質油 米国内製油所は重質油処理施設が多く在庫がたまりやすい)に対抗してサウジが減産に踏み切らなかった(スイングプロデューサー 供給調整者の役割を果たさなかった 逆にこれを演じると市場シェアを失うリスクがある 減産しても減産効果は限定的で市場シェアを失うだけ)。高コストの油田の操業停止―供給過剰の抑制をねらった。しかしサウジの意図に反して、掘削技術の改善もありシェールの増産基調が変わらなかった(稼働するリグ数は2014年後半から2015年半ばで半減。中小の不採算油田は稼働停止に追い込まれたが、技術革新により生産は減らず増産基調は変わらなかった 急速なコスト削減が生じているとのこと 超深海油田やオイルサンドより低コスト)。
 OPEC加盟国はシェアを優先して高水準の生産を継続。増産に歯止めかからない。商品安:米利上げをにらんで投資資金の引き上げも背景。

世界の石油需要2019年に日量9700万バレルが上限(日本のガソリン消費のピークは2004年 人口減少と省資源化で需要減は避けられない)? 先進国でエネルギー効率改善進む。電気自動車、代替燃料の普及。

なお石油の生成には有機物が長い年月をかけて変化したとする有機起源説と、無機物から作られたとする無機起源説があり、前者の考えでは有限。他方、後者の考えでは地球の深部にできて無限に存在することになる。他方、前者の考え方は石油が枯渇するピークオイル説につながるとのこと。ピークオイル説は産油国の思惑がかさなっているとの指摘がある。採掘技術の変化により非在来型の石油が現在は急増。ピークオイル論、無機起源説への関心も低下しているとのこと(日経2016/06/12)。

 鉄鉱石の国際相場は1トン40ドル台(2015年3月末)まで下落したが、これは2011年につけた最高値の3分の1以下である。原料安は、資源生産にかかわるメーカーの採算悪化、資源を使用するメーカーの採算改善を招いている。背景には相場が下がってもなんらかの理由で生産コストがさがり、供給が減少しないということがある。たとえば、ドル高が進行して資源生産国の通貨が安くなると、ドルベースの生産コストは減少する。供給が減らなければ、相場は下がり続けることになる。鉱山の生産・輸送では機材の大型化・自動化が進み人件費抑制が進んでいる。こうした状況では生産量を増やすことで、生産コストを下げることも大手は可能である。つまり相場が下落しても、シェアを維持拡大して、採算を維持することができる。そこで、資源安が続くことになる。


鉄の生産では、オーストラリアやブラジルで大手が生産量を増やして生産コストを下げる戦略をとり、それが価格の下げにつながっているとされる。2015年時点で世界全体の鉄鋼の生産能力(23億トン)のうち7億トン超(3割まあまり)が過剰(過剰の6割 4億3000万トンが中国 生産量は2015年までの10年で4億トンから8億トンに倍増 海外に安値で販売 4000万トンが1億トン超まで 生産能力削減の一方で設備新設 4大メーカーは2015/7-9軒並み赤字 宝山 馬鞍山 河北 全体で1億トン増える  韓国のポスコも大赤字 タイでは鉄鋼大手SSIが破たん インドのタタも苦境 日本の粗鋼生産量は1億トン強)。インドなど新興国は高関税で対抗。鉄鉱石価格などが2016年に入り反発。

アメリカでは新車の販売が刺激されている。

こうした資源安は、日本については国内物価の安定につながっている。2015年2月27日発表の1月のCPI(消費者物価指数)、消費増税分と生鮮食料品除いたその数値は前年同月比0.2%上昇であった。㋄1日発表の3月のCPI 生鮮食料品除いたものは前年同月比2.2%上昇だが、2014年4月の消費増税の影響を除いたものは0.2%上昇であった。さらに4月のCPI消費者物価上昇率 生鮮食料品除いたものは前年同月比0.3%増まで下がり、消費増税の影響除くと横ばいになった。原油安の物価押し下げ圧力が働いているとされるが、政府が期待する物価上昇はこの時点では起きていない。他方で今後の物価上昇を予測するものが増えていた。4月2日発表された、3月の生活意識に関するアンケート調査によれば1年後の物価見通しは、家計の平均は4.8%上昇 企業の平均は1.4%の上昇である。

しかしその後の変調は中国経済の減速がよりはっきりしてきたことが大きいように見える。資源価格が一段と下落する。中国では2014年後半からの株価の急騰が2015年6月下旬をpeakに変調、暴落する。一説には株価が下がると、投資家は商品相場にも手を出しているので、商品を売り商品相場が下がったともされる。しかし商品相場下落はこの中国の株価下落に先立って先行して生じ、株価下落で強められた。日本では㋆7日 物価上昇連動国債利回りからはじいた市場の予想物価上昇率 今後10年間の平均で0.99% 前日から0.07ポイント下がり 1%を割り込んだ 中国では自動車保有台数の増加(2013年で1億台超)からガソリン需要はなお旺盛。しかしガソリンとともに生産される軽油が景気減速によりあまりこれを輸出に回している。事情は日本の石油会社も同じで軽油の余剰感が内外で高まり、軽油価格が6月から10月にかけ急落したとのこと。5月のLNGの平均輸入価格は2009年12月以来5年半ぶりに100万BTUあたり10ドルを下回る(8.9ドル 過去peakは2012年㋆の18.2ドル)。金も5年半ぶりの安値。中国の公共投資の遅れ、住宅市況低迷を反映して中国株より先に商品が崩れたとのこと。 原油安からシェールガス減産の見込み(6月以降)。6月 レアメタルが11年ぶり(モリブデン ルテニウム) 6年ぶり(インジウム) 5年ぶり(タングステン)などのや安値

原油安・資源安は原発事故に伴うエネルギー輸入の増加、円安による貿易赤字の縮小に役立ち国内物価を抑えている 消費者企業ともにに恩恵大きい 原油は2014年6月から15年1月までで6割下がる。その後㋄にかけて上昇後 再び下落した 相場には投機マネーが入り変動幅大きくなっている。この状況に2014年夏以降 エネルギー価格の値下がりによってエネルギーを含んだ物価は、物価の基調を示さなくなった・・・と日銀は主張しているらしい。2016年度前半ごろまでに2%物価上昇率達成が黒田日銀の公約。円安による輸入物価上昇。株高による企業業績押し上げ、株高による資産効果、賃上げによる消費拡大…が物価の押し上げに寄与する。そのためには原油相場のゆるやかな上昇を期待。・・・・ところがギリシャ問題の再燃や、中国の景気悪化の進行で、この筋書きが崩れそうだ。原油安(日量200-250万バレルの余剰)はここまでは景気の押し上げに役立っていた。しかし物価目標達成にはマイナスとなっている。もう一つの懸念は中国株の暴落に示される、中国経済の減速の影響。

期近が期先に比べ安い。コンタンゴ(順さや)。高いときはバックワーデーション(逆さや)。需給がゆるむとコンタンゴ。引き締まると逆さや(バックーワーデーション)、になりやすい。

コンタンゴcontango 先物で期先を売り 期近では買い この値段の違いは保管コストcost of carry, 金利などで説明されます

内需縮小(人口減 エコカーの普及)と原油安。石油元売り業界は一挙に集約へ。1)出光興産(2位)と昭和シェル石油(5位)が合併で基本合意。7兆6276億円。2)JXH(1位)と東燃ゼネ(3位)が経営統合で合意(2015年12月 メドは2017年4月)。売上高で14兆3345億円 トヨタ27兆3334億円に次ぐ売上高(2014年度実績)。背景:製油所・給油所など設備過剰の解消。生産・物流の合理化で収益力改善。

2017/12/30(2017/3/10)

 

 

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Area Studies」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事