Entrance for Studies in Finance

証券化と仕組み金融 securitization and structured finance

証券化と仕組み金融

Hiroshi Fukumitsu

 1980年代以前 disintermediation の問題として議論された。銀行を仲介しない金融の問題として。金融のうち銀行など金融仲介機関financial intermediariesを介した金融を間接金融indirect financeと呼ぶ。この金融仲介機関を外す証券化securitizationのような金融現象をdisintermediationと呼んで学界は注目したのである。
 もともとsale and lease backという方法があった。売却した資産をなお生産に利用しながら利益を高める方策である。
 しかし近年では仕組み金融structured financeの問題として議論されるようになっている。これは資産がプールされpooled、組みなおされるrepackaged(tranching)ことで証券化という新たな金融手段が可能になっていることが理解されるようになったからではないか。sale and leasebackとsecuritizationとの間の違いであるが、私は第三者の機関投資家が資金の出し手になったという資金の出し手の変化にかねて注目している。sale and leasebackの時代。実はお金の出し手は、関連会社などであった。securitizationの時代。資金の出し手は第三者に広がっている。そこで投資家にリスクをどのように負担してもらうかが、問題になった。リスク負担の再編が証券化の内容として議論されるのは、このような資金の出し手の広がりが関係している。
 従来の金融はasset based lending (secured lending)と呼ぶことができる。そこではまず借り入れた企業の返済能力 ability to repayが問題であり、次に value at which the collateral can be liquidated in bankruptcyが問題だった。これに対して証券化(仕組み金融)securitization(structured finance)では、まず cash flow created by the pool of assetsが問題であり、そのプール、組み換えが証券化の内容を構成している。
 また証券化は信用補完 credit enhancementと呼ばれる金融技術に支えられている。それは以下の3層の構造をもっている。以下の(1)(2)を内部信用補完internal enhancement。(3)は外部信用補完outside enhancementと呼ぶこともある。

1)originator-provided enhancement
excess spread
cash collateral or cash reserve
overcollateralization
2)structural credit enhancement
senior-subordinate structure
3)third-party credit enhancement
financial guarantee by the insurer
letter of credit issued by the bank

証券化では modify or redistribute the risk of the collateralという現象も起きている。
証券化はそのcash flowが既存のものか将来のものかで次の二つに区分される。
existing asset securitization
future asset securitization

証券化で登場するものには、orginatorとspecial purpose vehicle(SPV)あるいは special purpose entity(SPE) がある。そして this entity delinks the credit of the entitiy seeking funding from the creditworthiness of the securities that are created in a securitization

bond classe or tarnches (senior and junior notes)
the subordination structure

なおpass-through pay-throughの区分がある。
direct claim on the cash flow: pass-through certificate
when there are rules to allocate the collateral's cash flow: pay-through certificate

証券化はoff-balanece-sheet financingだとされることがある。それはoriginatorのバランスシートからはこの資金調達が見えなくなるからである。
説明しよう。
originatorはそのassetを売却した形になる。その売却益を使い
債務を返済するなどしてoriginatorのバランスシートが小さくなると
証券化で資金調達をした痕跡がoriginatorのバランスシートから消える。
証券化で調達した資金の返済はSPVあるいはSPEの返済
能力にかかるのである。

on-balance-sheet financing
off-balance-sheet financing

Frank J.Fabozzi and Vinod Kothari, Introduction to Securitization, Wiley:2008

また日本では間接金融と直接金融との中間に市場型間接金融market-based indirect financeと呼ぶべき金融分野が存在することも注目されるようになった。それは金融仲介機関から資金が流れている点で明らかに間接金融なのだが、間接金融の特徴である相対型金融(取引条件の決定が相対の交渉によるものであり、取引への参加は交渉当事者を想定している その両者の関係は継続的取引関係がベースになっている)ではなく、取引への参加が交渉当事者以外の従来継続的取引関係にないものにもオープン(あるいはオープンになりうるもの)であり、取引条件の決定で競争など市場メカニズムが利用されている点では市場型金融といいうる特徴をもっている。このような市場型間接金融の代表的なものにシンジケートローンがある。
なお従来型の間接金融はbank-based indirect financeと呼ばれることがある。

アメリカでは住宅ローン証券化からいわゆる証券化の技術が発展した
政府系金融機関の形成
 ファニーメイ1938(1968に民営化) ジニーメイ(1968にファニーメイから分離設立) フレデイマック(1970)の設立
適格住宅ローンの買い取り プール化 パススルー型MBSの発行:証券化の開始
 背景には1960年代後半の金利の自由化によるS&Lからの資金流出があった

政府系金融機関によるモーゲージパススルー証券の発行(毎月支払い 償還期日前償還リスク 金利の大きさ)
 ジニーメイ1970 フレデイマック1971 ファニーメイ1981
 適合ローンをエージェンシーが買い取り証券化する
 エージェンシーMBSといえる。

 エージェンシー発行でないもの 民間MBS ノンエージェンシーMBS
1983年 ファーストボストンによるCMOの登場 権利をトランシェに分ける 通常の債券と同じ支払い・償還
    階層化構造は優先劣後構造senior subordinated structureあるいはwater fallと呼ばれることもある
    当初は3層 その後複雑化
    1980年代 CMOの手法の企業融資への応用
    債券を裏付けとする CBO
ローンを裏付けとする CLO
CBOとCLOの総称 CDO
    MBSをベースにした CDO 組成 

1997-1998 CDSの登場(1995とする文献も)
    CDSを用いてCDOと同じリスク構造を合成したもの 合成CDO(シンセテックCDO)が登場した

    CDS市場とCDO市場 流動性供給の主力としてのヘッジファンド(プライムブローカーからの融資)
    レバレッジ比率が高い

    プライムブローカー(モルガンスタンレー ゴールドマンサックス JPモルガン・チェース、ドイツ銀行など)
    プライムブリーカー 決済 口座管理代行 投資家の紹介 法律事務 資金調達 レポ取引等を支援 ファンド
              ファンドの時価評価 計理 リスク分析などアドミニスター業務も   

    1990年代後半から非適合住宅ローンによる組成
    Alt A Lending 非適格住宅ローンの拡大の象徴 NINA:no income no asset但し借り手への信用と担保不動産が出発点
    No Docもやがて登場
    金融機関によるSIVの設立 民間MBS CDOに投資 これらを担保にSIVはABCPの発行
                金融機関はSIVに融資枠契約(期間1年未満として準備金不要の規制の緩さを利用)
                ABCPに流動性補完契約 償還に問題が生じたとき銀行が必要な流動性を供給する
1998年 LTCMの破たん
   
2000年代に入って
    2001年12月 エンロンの破たん
    2002年 SOX法制定
ネットバブル崩壊後の政策的低金利 
住宅ローン は証券発行が支えた
    資産担保証券発行者(すなわちSIVとかconduit)
    2004-2006はこの資産担保証券発行者がエージェンシーMBSプールに変わり主役の座を務める
    SIVなど発行のノンエージェンシーMBSの購入者 外資(ヘッジファンドなど) 銀行など
    2004-2006は外資の役割が大きかった(⇒国際化)

資料
チャールズRモリス 山岡洋一訳『なぜアメリカ経済は崩壊に向かうのか』日本経済新聞出版社, 2008
ジリアン・テット 土方奈美訳『愚者の黄金』日本経済新聞出版社, 2009.
尾崎弘之『投資銀行は本当に死んだのか』日本経済新聞出版社, 2009.
松田岳「住宅バブルをもたらした金融メカニズム」山口義行編『バブル・リレー』岩波書店所収, 2009, pp.65-80.
関村正悟「グローバルインバランスからグローバルシャドーバンキングへ」岡本真也・楊枝嗣郎編著『なぜドル本位制は終わらないのか』文眞堂, 2011, pp.126-169.
北原徹「シャドーバンキングと満期返還」『立教経済学研究』65-3, 2012, pp.99-141.

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in Mar.31, 2009. Corrected and reposted in July 16, 2010 and February 4, 2012.
 
The Top Page
PDF公開論文 

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Financial Management」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事