Entrance for Studies in Finance

Case Study: Toshiba

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PwCあらた監査法人は適正意見をつけなかった(4月11日)

 4月11日に発表された(当初発表予定は2度延期 2月14日 3月14日)2016年4~12月期連結決算に関し、監査法人:PwCあらた監査法人は適正意見を出さなかった(監査意見不表明)最終損益は5325億円の赤字(前年同期4794億円の赤字)。自己資本は2256億円で債務超過である(来年も債務超過だと自動的に上場廃止へ)。東芝側は水面下で監査法人の変更も模索。しかし準大手は手を上げなかった模様だ。

  その後 2017年3月期決算についても、米原子力事業の損失計上時期などについてPwCあらた監査法人との対立が明らかになった(焦点になっているのは会計処理をめぐる経営者による従業員への圧力。これについて東芝側は既に行った調査で十分としている。60万件のメールをチェック、数十人の関係者にインタビューしたという。しかしなぜそれで十分と綱川智社長が言い張るのか根拠は不明だ。監査法人は突如6000億余りの損失が発生したことを疑問視している。なぜ監査法人の主張に歩み寄れないのか。つまりなぜ監査に必要な調査に協力できないのか?東芝の綱川氏の主張は全く理解できない)。なお本決算について、準大手の監査法人への変更を検討したものの引受先を見つけられなかった。

 今後も6月末提出期限の有価証券報告書をめぐり、東芝と監査法人との間の対立を予測する意見は多い。WDとの関係と同様にここでも、東芝は監査法人との関係を悪化させて、自分の首を自分で絞めている。

東芝と新PwCPwCあらた監査法人は「限定付き適正」で合意して有価証券報告書を関東財務局に提出(8月10日)

 その後 東芝は3月期の有価証券報告書の監査意見について(6月末から8月10日に延期して)、監査法人と調整を続け、有報の監査意見は上場廃止ルールに抵触する「不適正」「不表明」を避けて、「限定付き適正」となった。しかし監査法人は損失を認識したのは東芝の主張(17年3月期)より前との見方(2015年末の米原発建設会社買収直後)は変更せず、過去の決算数値の訂正をしなかったことなどを理由に内部統制について「不適正」とした。前任の新日本が東芝の言いなりなったことへの反省から、監査法人は厳正な態度を貫いた(東芝の主張は認識したという証拠はないというもの。しかし買収時の価値算定が甘かったからこそ損失が表面化したといえる。原発工事をめぐるコスト分担や、納期遅れをめぐる訴訟といった問題が、価値算定で軽視されたとされる)。この上場廃止問題に対する東証の態度は、上場廃止に対して慎重なもの。この慎重さは分からないではないが、上場廃止の判断の透明性を著しく低下させている。東証に求められるのは、上場廃止について、上場銘柄を平等に扱うという公平さではないか。

米ウエスタンデジタルWDによる売却差し止め申し立て (4月14日国際仲裁裁判所 5月14日カリフォルニア州上級裁判所)

 東芝は4月1日に東芝メモリを設立。その売却にのりだす。しかしこれには合弁契約違反という協業側の米ウエスタンデジタルWD側の売却差し止め申し立てがなされている(もともと1999年に東芝と米サンデイスクとが結んだ合弁契約により四日市工場が運営されている。2016年5月WDがサンデイスクを買収したことで、協業は東芝とWDとの枠組みに変わった)。合弁契約におけるchange of contorolの問題だが、「相手の同意なく売却できない」とある部分の解釈で、WDの同意なくなぜ東芝は売却できるのかは不思議だ。合弁会社の持ち分保有者である東芝やWDを第三者が買収する際には相手の同意は不要という特例条項がある。それが該当するというのが東芝側の主張だ。(なおこのWD側の主張は、2017年3月半ばでは表面化していない。あくまで新半導体会社を売却する相手として報道されていた。両者の対立は4月頃から報道されるようになった)

 WDは米国時間で5月14日(日本時間5月15日) 国際仲裁裁判所に、東芝メモリ分社などを契約違反として、仲裁申立書を提出したと発表した。このWDとの関係を早急に改善しなければ、東芝メモリ売却頓挫は明らか。東芝側がするべきことが、WDとの関係改善しかないことは明確だ。ところが東芝はその判断を未だ(6月上旬現在)していない。

 ただしWD側が当初主張したように、WDによる東芝メモリの子会社化(過半出資)という主張は独禁法上の審査が長期化する問題がある(技術情報流出について経済産業省が難色)。そこでWD側の出資比率を下げること、資金の出し方を転換社債あるいは社債のような形に変えることが考えられる。また東芝側が債務超過(2017年3月末で5400億円超の債務超過 2期連続の債務超過回避が課題 5月15日監査法人:PwCあらた監査法人の承認のない業績概要発表)を回避し上場廃止を避けるために必要とする2兆円以上の買収金額を、WD単体では用意しにくいという問題もある(背景には2016年5月にWDがサンデイスクを170億ドルで買収 このときWDは四日市工場の資産評価を詳細に行ったと考えられる)。そこでWDとしてはほかの出資予定者と組む必要がある。

 いろいろな入札の中身の話が伝えられているが、このWDとの関係(合弁契約上の問題)を整理することなく、入札手続を継続することは問題をこじらせるだけではないだろうか。

 東芝はWDによる四日市工場への情報アクセス(メモリーを共同で設計するシステム)、WD社員の立ち入りなどを制限すると警告したとされる(5月3日付け書簡 入札に関する妨害行為を停止しなければ)。この警告は協業を解消するのでなければ、協業相手に対して極めて異例かつ非礼でけんか腰にみえる。そもそもはWD側の了解を得ずに売却をすすめたのは東芝。東芝に非があり、東芝に誠意がないことは明らかではないだろうか。

 東芝は対抗措置として、主力工場の合弁会社株を6月3日付けで東芝メモリ側から東芝本体に買い戻したとされる。これによりWDの主張は無効化するという。確かに合弁会社株を東芝メモリに移した問題は東芝本体に戻せば、解消するかもしれない。しかし争いの大本は、東芝メモリの分社、売却にある。そして東芝メモリは合弁会社への支配権がないことになる。そのような東芝メモリの取得は、買う側に合理性はあるのだろうか。つまりこのような小手先の手法を始めると、問題がこじれるだけではないか。必要なことはWDとの関係の早期の修復であり、東芝の経営者にそれがなぜ見えないかが不思議である。 WDとの協業によって維持されている四日市工場の競争力が、将来的に確保できない可能性が次第に高まっている。

 WD側は5月14日(日本時間5月15日)に国際機関(ICCの国際仲裁裁判所)に仲裁を申したてる一方(この仲裁は3ケ月程度かかるとされるので8月中旬に裁定が出る見通し)、6月14日(日本時間6月15日)に、米カリフォルニア州上級裁判所に売却差し止めの申し立て手続きを開始したとされる(四日市工場の合弁契約は米カリフォルニア州法による。7月14日に法廷審問が予定された。)。しかし同裁判所は7月28日2回目の審問を開いたものの、東芝に対してメモリー事業の買い手が代金を払い込む売却完了の2週間前に、東芝がWDに通告することを命じた。差し止めに関して直接の判断を下さなかった。この結果、東芝は実質的に売却交渉を続けられることになり、焦点は国際商業会議(ICC)の国際裁判所に移った。仲裁裁判所の審理は1年半から2年にかかる。東芝がその判断を待たずに代金払い込みの締切りを設定すれば、買い手は仲裁裁判所の最終判断を待たずに2兆円を超える代金を払い込めねばならない。東芝はWDとの和解なく再建することは事実上不可能である。買い手にすれば、売却差し止めの判断が出るリスクがあるなか、東芝の言い分に従う理由はない。

 債務超過解消には18年3月末までに売却完了で2兆円以上の現金が必要。しかし仲裁裁判所から差し止めの仮処分がでないままで売却までたどりつけても各国の独占禁止法の審査に9ケ月程度かかるので、事実上すでに時間切れになっている。WDとの全面和解を拒む東芝に生き残る道は、理屈では第三者割当増資しか存続の道はなくなっているのではないか(その場合 東芝株は暴落へ)。

 東芝向け融資枠はWDの反対で使えない

 東芝向け融資は東芝メモリの売却が2兆円規模で実施できない限り、債務超過に陥る。三井住友、みずほ、三井住友信託の3行は、東芝の債権を要注意先としている。必要な資金融資1兆円(2017年4月)。担保は半導体メモリー事業を分社した「東芝メモリ」の株式。既存の融資枠6800億円に加えて、あらたに3000億円が(新規融資枠として)必要という計算になる。

 問題はWDは東芝メモリ株の担保差し入れにも反対しており、解釈によっては、融資枠を使えない。そこで別に数千億の融資枠を東芝は要請しているとされる。まず一つは東芝が自分の存続のために無茶苦茶な要求を出していること。ここでもWDとの関係改善が急務であり、それが東芝に残された道であることは、はっきりしている。

 メインではないものの融資額で三井住友を上回る三菱UFJFGは、3月決算で東芝向け債権を要注意先の中の要管理債権に区分したことが、その後判明する。これは、不良債権に区分したことになる(三菱はメイン3行より引当金率を高くした)。これは経営悪化しても同じ条件で借り換えていること自体が、金利減免・返済猶予を行っているに等しいと判断したもの。この状態に新規融資に応じる判断をすることは、銀行の融資としては極めて問題が多い判断であろう(なお銀行団が融資を継続しなかればその段階で破綻へ)。

8月中旬 WDとようやく交渉のテーブルにつくが 果たして何が議論されたのか?

 外から見る限り WDが国際仲介裁判所に売却差し止め訴訟を提起した5月の段階で、WDと折り合いをつけない限り 売却が完了しなくなったことは明らか。それなのに東芝はまず日米韓連合にこだわって時間をいたずらに空費する。それだけでなくWDとの関係をいたずらに悪化させる情報遮断措置に進む。東芝がようやくWDと優先交渉する判断に至るのは8月中旬になってから。この時間の空費は何を意味するのだろうか?全く理解できない。結局その間に株価が下がり、デイストレスト戦略のヘッジファンドが東芝の大株主になった。はっきり言えることは、東芝の経営陣はこうしたファンドの大儲けの機会を提供したということだ。 

 その後8月24日の経営会議で東芝葉一度WD陣営と優先的に交渉することを決定。しかし話を詰め切れなったかったとして9月13日の取締役会で日米韓連合と協議を加速させる覚書を交わしたと発表した。同日WDはこれを極めて遺憾とする声明をだした。この東芝の右往左往は何を意味するのだろうか。

 結局東芝は日米韓連合に売却する方針を動かさずわずか1週間後の9月20日の取締役会で日米韓連合への売却方針を決議。平行して協議を進めていたWDと鴻海との交渉を打ち切った。これに対し」WDは9月21日共同投資する四日市工場での東芝の単独投資を合弁契約に違反するとして国際商業会議所ICCに新たに差し止めを申し立てている。私にはWDとの交渉はWDとも優先交渉をしたポーズに見える

日米韓連合はそもそも問題

 東芝がこだわる日米韓連合についてはSKハイニックスの参加方式で、最初から対立が伝えられる。SKハイニックス側は最終的に株式の取得を希望し、当面は融資とセットで転換社債を求めている。だとすればこのハイニックスの参加方式は不可であるのに、東芝は、この連合にこだわり、WDとの関係修復を怠り時間を空費した。この点でWDも過半出資にこだわったという報道がある。しかしそもそも買収する側が支配権の取得にこだわるのは当然。

 理屈としては独禁法審査回避の問題(早期買収上必要というのが表向きの理由)と、基幹技術の海外流出問題(経済産業省の主張)がある。しかし買収する側が支配権を要求するのは、理屈としては当然ありうることだ。そこは全く交渉事項のレベルだろう。海外勢は東芝が必要とする2兆円以上を出すのは、支配権取得を条件に交渉することになる。

東証は2部降格をまず決定(6月23日)

 東証・関東財務局は6月23日。有価証券報告書の6月末の提出期限を8月10日に変更するとともに、8月1日付けで2部降格を決めた。東証はこの問題企業をいつまで上場させるのか? 

東証は東芝について特設注意銘柄の指定を解除した(10月11日)

 事態がまだ改善されないなか、2017年10月11日東証は東芝の特設注意銘柄指定(2015年9月)を解除した。根拠は内部管理体制や企業統治が改善されたというもの。しかし東芝メモリーの売却をめぐっては、WDが差し止めを求めて裁判で争っている問題は全く解決していない。各国とくに中国での独禁法による審査長期化も懸念されていおり、18年3月末の債務超過回避期限に間に合わない恐れも指摘されている。

 また東芝は、10月24日に開催された臨時株主総会で、17年3月期決算の承認、東芝メモリの日米韓連合への売却の承認などに関する議案の承認を得た。この臨時株主総会でも出された問題は、仮に東芝メモリが本当に期限までに売却まで進んだとしても(東芝メモリは新会社として再生できるとして)、売却後の東芝に将来はもはやないのではないかということだ。また新会社については、日本側の出資比率にこだわった結果、投融資先が拡大し(東芝 HOYA 日本の銀行団 産業革新機構 日本政策投資銀行 ベインキャピタル SKハイニックス アップル デル シーゲートテクノロジー キングストンテクノロジー)、迅速な意思決定がとれない化け物のような企業となった可能性は高い。この会社の将来もこのままでは暗いのではないか?

有価証券報告書 6月末提出期限に間に合わず 8月からは2部に降格

 6月27日に予定通り株主総会が開催された。しかし東芝はここで行うべき決算報告をできなかった。有価証券報告書を期限の6月30日までに提出できなかった(新たな締め切りは8月10日)。東証は6月23日に8月1日付けで2部に指定替えするとした。WDとの和解がないまま、米投資ファンドのベインキャピタル主導の日米韓連合との売買契約締結を目指すとの綱川社長ら経営陣の意志表明(6月23日記者会見)は無責任極まるやりかたといえる(WDと訴訟で生ずるリスクを売買契約相手方に負担させるもの)。この連合に韓国のSKハイニックスが加わっていることにWDは警戒を強めている(WDとしてはSKハイニックスが入るのであれば四日市工場の共同運営はもはやできない)。同業のSKハイニックスの参加は独占禁止法の問題に波及するほか、技術流出を防止するために売却を支援するとしてきた産業革新機構のこれまでの説明を覆す(韓国への技術流出)という点でも問題がある。

情報遮断の実施(6月28日)と米裁判所による解除命令(7月12日)判決は7月28日。

 6月28日、東芝はWD側の「妨害行為」の停止を求めて、東京地裁に不正競争行為として提訴する一方、WD社員による東芝側システムへのアクセスを遮断する措置を取った。また四日市工場の新製造棟に東芝単独でも投資も行うとした。これらはそもそも、東芝が問題を起こしたことを忘れたけんか腰の行為で、理解に苦しむ。このうち遮断措置に対して、7月12日米カリフォルニア上級裁判所は、遮断を一部解除する命令を東芝に下した。情報遮断措置は四日市工場の設計業務の現場を混乱させただけでないか?

 東芝のWDとの信頼関係をかなぐり過ぎたやり方は、度を超えており行きすぎている。7月14日の初審問が注目された。注目された14日の審問では、裁判所は双方の弁護士の意見を聞き、判断は28日に持ち越された。まず裁判所がこの問題について管轄権があるという判断を示したことに意味がある。つぎに28日まで、東芝は売却に進めなくなった。28日判事は売却の可否の判断は示さず、売却が完了する2週間前にWDに通告するように東芝に命じた。幸いにも、東芝は売却交渉の継続が可能になった。

 問題の発端:WHの破産法11条申請と債務超過

 破産させることで東芝の損失を確定したいということから3月29日 WH(米WHと欧州WH事業を統括する英国持ち株会社の2社)が米連邦破産裁判所に米連邦破産法11条の適用を申請した(負債総額98億ドル 裁判所管理となり東芝の連結から外れる 反面WHの債務保証6500億円 WHへの貸付金未回収に備えての引当金1700億円がうまれる 支援先は韓国電力公社グループとされる・・・WHの知的財産 核燃料製造 廃炉などのサービスに関心)。法的整理により巨額損失が発生の反面 損失額は確定した。

 なお米政府は83億ドルの債務保証している。親会社としてWHの債務を保証している。7934億円(うちゲンパツ関連は7100億円強) 米政府が電力会社に与えている債務保証額83億ドル 2016年9月末 自己資本は9000億円

 この結果 3月末で東芝は6200億程度の債務超過に(3月末 元の債務超過見通し1500+6500+1756-連結決算からの除外で2000 海外資産の評価損減少で1500・・・・1500+6500+1756=9756 9756-3500=6256)。この債務超過を4月からの新年度内に解消することが必要。方策されたのがメモリー事業売却で1兆円ほどの売却益を生み出すこと。純資産5000億程度のメモリー事業を1兆5000億程度で売却できるかが問題に。売却先は米投資ファンドのスルバーレイクパートナーズ、そして米半導体大手のブロードコムが名乗り。ほか併せて10社が29日入札に参加.

 半導体事業(NAND型フラッシュ もともと東芝が開発 世界シェア2位 1位はサムソン電子)の売却予定額 1兆5000億円~2兆円 3月2日から29日 出資企業の締切りは29日 2割程度から過半数売却の方針 2016年は医療機器子会社売却で5900億円稼ぐ

   メモリー売却で2018年3月(新年度内)に債務超過解消 上場廃止にならないことを最優先。今後は8月1日に2部に降格(18年3月末で債務超過を回避できなければ上場廃止へ)。ところが半導体事業の協業の相手であるWDから、売却を認めないとの異論が出されていたことが明らかになっているのはすでに述べた通り。 

 売却ができたとしても 成長のけん引役としてきた メモリーと海外の原子力事業の双方を失うことになる。エレベータ―(昇降機)や照明、空調、・・・ほかには原子力以外の火力などエネルギー、メモリー以外の半導体、ITシステム 鉄道?など社会インフラが残るというけれど。

 まず原子力の問題。現在の経営者にも米WHの損失を十分に見通せなかった責任があり(2月14日、3月14日 2度4-12月期の決算発表を延期 損失確定で4月11日に発表できるか) 過去の経営者には2006年に4900億円でWHを買収。原子力事業を同社の中核事業と位置付けた責任ある。

 4月1日付け分社 新会社 2月10日設立済み 東芝メモリ 米ウェスタンレジタル(世界3位) 米マイクロテクノロジー(同4位) が出資予定 韓国SKハイニックス 台湾のホンハイ精密工業なども意欲 3月30日 東芝 臨時株主総会で半導体メモリー事業の分社を決議

 3500億円(大手行三井住友銀行 みずほ銀行 三井住友信託銀行が2800億円 地銀80行などが700億円)の協調融資の行方 2月15日2月末までの延長求める 財務制限条項コベナンツ違反との指摘があるが3月末までは継続方針。東芝は16年9月末で自己資本3600億円強あったが、2016年12月後半 原発事業で損失可能性(16年12月27日)で一挙に状況が変わり、最終的には17年3月WHの破産で債務超過に陥った。 

原子力事業に傾斜した責任は誰にあるのか
 東芝は原子力と半導体を2本柱としてきた。その原子力事業で最大7125億円の損失が出ることが明らかになった(労務費で37億ドル 資材価格など調達コストで18億ドル各上昇など)。海外の新設工事からは撤退。国内の廃炉・保守は維持。2017年3月期最終損益で3900億円の赤字見通し(2017年2月14日)。2016年9月末の自己資本が3600億円。利益を加えて5000億円規模であれば、債務超過とならないが、7000億円となると、金融機関の支援(損失問題の表面化で格下げは、コベナンツに抵触するが、コベナンツを行使せず融資を継続することを銀行団に依頼したとされる。2016年9月末で融資残高は8000億円弱、さらに融資枠が約7000億ある)がなければ債務超過というかなり厳しい事態となっている。CB&Iから買収したCB&Iストーンアンドウェブスター(S&W)が手掛ける原発建設に伴うもの。なぜこうなったか。直接的にはジョージア州ボーグル原発建設に伴うもの。東芝はWHを通じてこの建設リスクをわざわざ引き受けた(WHが2015年12月に買収した)。背景にあるのは原子力発電のリスクは高まったことを受けて、エンジニアリング会社の出資撤回の動きだ。東芝、WHについても、ボーグル発電所についても単独でリスクを背負い込んだ。ボーグル以外の米国や中国浙江省の案件でも、損失発生のリスクが指摘されている。東芝がするべきことは、原子力事業そのものを見直すことではないか。世界中で原子力発電を受注するという東芝の発想そのものが、発生するリスクの大きさを考えるとばかげていている。今回の損失は2基の原子炉建設遅延によるもの。東芝は世界で2030年までに世界で40基受注する計画とのこと。そこから発生するリスクは想像を絶する。なぜリスクの高い原子力発電にここまで入れ込み続けたのだろうか?

 外から見ていてわからないのは、東日本大震災を経て原発のリスクが誰の目にも明らかになったあとも、原発を重視する姿勢を変えられなかったことだ。なぜ原子力発電が終わったという認識を東芝の経営者はもてなかったのだろうか。発電所を作ればつくるほど、東芝は最大の想定外リスクを増やしてゆくことになぜ無頓着だったのか。今回米国で生じた損失は、東芝が自ら引き受け招いたもの。こうした誤った判断が下された背景には、社内で原子力事業を推進する電力事業系の立場の人たちが要職を占め、発言権を維持し異論を封じたことがある。 東芝の経営陣は2016年に交代したばかりだが、損失の表面化で、米原子力事業を進めてきた責任者である志賀重範会長が退任する見込み。社長の綱川智氏は留任する意向のようだ(日経17/01/28)。東芝の半導体と原子力を二本柱にする経営は、西田厚聡社長時代に確立した。西田氏の剛腕が、会計不祥事が生み出されるようになった出発点にある。また損失の噂のあった、米原子力事業の責任者である志賀氏を副社長から会長に昇格させた人事(2016年6月)は、東芝の原子力偏重を象徴する

 今東芝は二本足打法を見直そうともがいている(2017年2月)。しかし東芝はWHの出資比率の引き下げを図るが、損失の山であるWHにカネを出す投資家がいるだろうか。半導体メモリーは3月末をめどに分社化。外部資本受け入れとのこと。しかし経営権も取れないのに誰が金を出すだろうか。当初の2割出資案は、株式の過半売却も視野に入れてと変更された。これは半導体を譲り渡すということ。東芝の経営は完全に行き詰まったている。そしてその発端は、2006年のWH買収という決断にあった。その決断をしたのは、西田氏であり、その判断を支えたのは、佐々木氏や志賀氏である。佐々木氏と志賀氏には、原子力事業出身であるが技術者であるがゆえに、原子力事業への過信があったのではないかと私は考える。

 ただこうした東芝の経営の是正に、社外取締役が無能だったことに批判がある。問題発覚時の社外取締役は実に4人。この4人がそろって、東芝の経営に無能だった理由として、学者や官僚が多く会社経営に無知であったことが指摘されている。またおそらくであるが、東芝のように技術系の人たちが幹部に並び、技術に関する経営上の価値判断も求められる席で、おそらく各部門の長の発言に対して、有効な牽制をすることはできなかったのではないか。その意味で社外取締役に人を得ていなかったという判断は妥当である。東芝の経営に関しては、たとえばであるが経営学者ではなく、原子力方面の研究者の方や半導体事業の経営者の方が有効な発言ができたのではないか。しかしそのとき、その人物の「独立性」の判断は確かにむつかしくなるだろう。学者や官僚、東芝の事業と無関係な経営者を並べるのは、形式的な独立性要件にはかなっている。しかし結果として、無能な社外取締役を作ることになったのではないか。

 西村泰三1935-   社長1996-2000 会長2000-2005 相談役2005-2016  相談役として経営に長年介入を続けたことに批判あり

 西田厚聡1943- 早稲田政経卒後 東大法政治院卒 パソコン事業等 社長2005-2009  会長2009-2014 2006年WHを4900億円で77%取得

 佐々木則夫1949- 早稲田理工学部機械学科卒 入社以来 役員になるまで原子力事業  2006WH買収を主導 社長2009-2013 副会長2013-2015 東日本大震災後 原子力部門縮小の判断をせず

   田中久雄1950- 神戸商科大学卒 資材部門 社長2013-2015(会計不祥事引き起こす)

   室町正志1950-   早大理工電気通信卒 半導体部門(セミコンダクター)系 会長2014-  社長2015-2016  特別顧問2016-

 志賀重範1953-   東北大工学部原子核工学卒 原子力事業 WH損失を見逃したとの批判あり 会長2016-(米原子力事業損失表面化で引責辞任へ)

 綱川智1955-  東大教養卒 東芝メデイカル社長 社長2016- 西村泰三に近いことに批判あり

2015年の東芝事件前の主な会計不祥事

2004年 西武鉄道 株式の保有状況を偽って指摘 上場廃止
     カネボウ 債務超過を資産超過と偽る 上場廃止
2006年 ライブドア 自社株売却益を売上高に不正計上 上場廃止
2007年 IHI 工事費用を過少評価し赤字を黒字と公表 特注銘柄指定 課徴金15億9457億円
2011年 オリンパス 財テク損失を簿外で不正処理 特注銘柄指定 課徴金1986万円 罰金7億円 元社長らは逮捕
会計不祥事発覚後の東芝のリストラの流れ 2015-2016年
2015年4月3日 会計処理に関し調査委員会設置発表
2015年8月31日 保有トプコン株(測量機器大手)のすべてを売却と発表(5-600億円 3割出資)
2015年9月15日 東証 特注(特別注意)市場銘柄に指定
2015年10月28日 画像用半導体CMOSセンサーの生産設備をソニー(CMOSセンサーで世界首位)売却 約200億円で 正式発表
2015年12月7日 証券取引等監視委員会 金融庁に勧告 行政処分として73億円の課徴金を科すこと 2008年以降 幅広い分野で損失送りなど 利益修正額が総額2248億円 過去5年間の虚偽記載 新日本監査法人にも検査 
2016年3月18日 2017年3月期の黒字計画公表
2016年3月 東芝メデイカルシステムズ(CT MRTなど医療用画像診断装置で国内首位28% 世界で4位12%)をキャノンに売却へ(ソニー 三井物産 富士フィルム コニカミノルタも食指) 売却額7000億円規模 東芝の虎の子 選択と集中 リストラ原資 半導体などへの投資に 今後は家電やノートパソコンの立て直し 構造改革へ 3月17日6655億円で売却合意 東芝は今後 電子デバイス(半導体 スマホに使う
NAND型フラッシュメモリーなど)、原子力火力発電など発電機器などエネルギー・昇降機、業務用空調など社会インフラの3事業にシフト。他方 白物家電(産業革新機構主導でシャープと統合する案もあった)は中国家電大手美的集団(Mideaブランド 白物では世界2位)に売却 2割弱の出資を維持して東芝ブランドも残す。次の成長領域として医療機器分野は自己資本比率3%弱(2.6% 2015年3月末は17.1%)の危機的状況脱却のため売却とした。資本市場からの資金調達には特注銘柄でなくなる必要あり 役職員給与の減額幅拡大や2017年3月新卒採用中止も決めた。
2016年4月 2015年12月以来進められていた 東芝(1985年にノートパソコンを世界で初めて商品化) 富士通(2016年2月分社) VAIO(2014年ソニーから独立 出資者は日本産業パートナーズJIP)3社のパソコン事業統合構想がまとまらなかった。(なおその後 2016年10月レノボが富士通のパソコン事業を傘下に収めることを決めた レノボは2011年にNECのパソコン事業を統合 2016年7月にレノボ主導に 現在国内シェアトップ トップ企業 経営に余裕:技術者の活躍余地・・ユニークな商品がうまれる 悪化すると数字に縛られ安い部材に目が行きがち 現在の世界パソコン市場は レノボ デル デルの3強ガシェアの過半を占める 2014年 国内ではレノボ26.3% 富士通18.8% 東芝12.2% デル10.9% HP10.7% アップル5.2% など 2015年国内19万台のシェア:IDCジャパン レノボ26% 富士通17% 東芝12% HP11% デル10% アップル7% エイスース3% パナソニック3% VAIO2% セイコーエプソン1% つまり3社統合で国内首位メーカーは作れたがそうならなかった。他方 パソコンについてはシェア2%のVAIOや同3%のパナソニックが検討している。利幅の低い標準的な機種は避けて、機種を絞り高性能を売りにして生き残りを図る。)
2016年4月-5月 2016年3月期決算で原発の損失計上へ(2006年移行6000億近くを投じてWHを買収 出資比率87% 暖簾3500億円の多くが収益力低下で減損の必要がある…3000億円程度 WHの価値引き下げへ 原発事業の収益性低下は深刻)等合わせ損失は4000億円強 このほか内外で1万4000人強削減などリストラ費用3400億円強 反面 東芝メデイカルシステムズ売却などが収益に貢献 2016年3月期最終損益は4832億円の赤字(その後4600億円に修正 さらに4700億円とさらに修正) 5月12日 5月23日 5月26日 自己資本比率は5.5%で目標30%に向け 資本政策を検討中
2016年4月 社長に綱川副社長(医療機器 白物家電売却実務担当した)が昇格する見通し 半導体 原子力などエネルギー 昇降機など社会インフラの3事業で経営立て直しへ
2016年6月末 自己資本比率7% 自己資本3360億円 健全の目安は30%で 30%への早期回復目指す このため2016年9月21日に2016年4-9月期 連結純利益700億円見込むものの中間配当の2年連続見送り発表
2016年9月15日 内部管理体制確認書を東証などに提出 日本取引所自主規制法人が特注市場銘柄解除を検討へ(提出された報告書は3000ページを超える 精査のため判断の越年の可能性9月23日明らかに) 指定解除後 資本増強策検討へ 過去と決別できるか BS(バランスシート)の将来像を示して会計操作の余地を減らす 責任者追及刑事訴追など
2016年9月28日 4-9月期の業績好調 主力のフラッシュメモリー好調 ハードデイスクも伸びる 700億円の黒字(2015年は904億円の赤字) 為替の円安も支援要因
2016年10月18日 大学新卒採用 2018年4月から再開を発表(2017年4月は採用中止)

2017年10月25日加筆修正更新

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