2013年2月期の最終損益は3億6400万円の赤字(最終赤字は3年ぶり)。売上が1645億円前期比1%減。営業利益は61%減の18億7700万円。
外食の一角にある吉野家は不況下に適した低価格路線。業態の拡大によって単品メニューの限界を克服する努力を続けているが、競合もあり利益率が高まらない。競合する「すき家」(ゼンショーHD)、松屋(松屋フーズ)と客層に特段の差がないのに価格が高いと思われたことが決定的。このほかコンビニの弁当 惣菜とも価格帯で競合が激化しているとのこと(こうしたコンビニと飲食店業界の競争は、コーヒーのチェーン店との間でも生じている)。
主力はどうしても牛丼。その主原料の牛肉は新興国の需要増を受け需給がひっ迫。米価格が高止まりで原材料価格が上昇(2013年2月期の原価率は36% たとえば2011年3-11月期の原価率は34%)。ここにきて規制緩和で輸入牛肉の月齢が20ケ月以下から30ケ月以下(より脂身が多いとのこと)に緩和。これは米国産牛肉に頼る吉野家には朗報。仕入価格が下がる想定で、2013年4月18日から牛丼並盛を競合店並みの380円から280円に引き下げたところ客数 売上とも伸びたとのこと。
また2011-2012年の経験では新商品投入には一定の効果があるものの限界があるようだ。
ただ牛肉の輸入では円高メリットが指摘されていたことからすると 最近の円安は逆風 その意味では急速な円安が進む中での 価格帯引き下げの採算には疑問が残る。
原材料高等による採算悪化はしかし競合店も同じ。またゼンショー 松屋では値下げが顧客増に必ずしも結びつかなくなっているとも。
吉野屋HDとしては、グループ企業にステーキの「どん」、うどんチェーンの「はなまる」などもある。
海外戦略が鍵なのかもしれない。吉野家は中国で合弁で店舗展開(2012年9月末現在3つの合弁会社で305店舗を運営 2012年10月には新たにタイの有力財閥チャロン・ポカパンと組んで中国内陸部などの出店する計画を発表している。このほかインドネシア 香港などにも展開している)。牛丼のもう一つの旗頭であるゼンショーは、吉野家に少しおくれているものの、中国 インドネシア ブラジル タイに出店
旧吉野家は1958年の創業。しかし1980年に事実上倒産。その後1983年セゾングループ傘下で再建に入る。1988年ダンキンドーナツを経営ししていたデイーアンドシーを傘下に加えるが、1998年ダンキンドーナツを分離している。その間の1990年にジャスダックに再上場し上場企業として復活。2000年には東証一部上場を果たしている。その間、1997年には持ち帰り寿司の京樽を傘下にくわえ、2004年には讃岐うどんの「はなまるうどん」と資本提携。
2007年10月に持ち株会社に転換。2007年12月にはフォルクスなどステーキ店を展開する「どん」を買収して傘下に加えている。
2003年にBSE(牛海綿状脳症)問題で米国産牛肉の輸入が止まったとき、牛丼という単品メニュー戦略はもっとも大きな影響を受けたが、2008年3月にはようやく24時間販売体制に復帰した。2008年4月、危険部位が吉野家の輸入牛肉のなかに混入していたこと(未使用 倉庫内)が分かったが吉野家はむしろチェック機能が機能して未使用段階で発見されたとの立場をとって営業を継続している。
吉野家は中国、北米などへの海外展開を重視している。この背景は日本市場の飽和。そこでまずは中国への展開を急いだ(2008年3月)、2012年6月には380店規模にまで成長させた。しかし中国では出店規制が強い上に、賃料や人件費の高騰で投資効率がおもったほど上がっていないとのこと。背景にはFC方式が中心だったことがある。出店を加速しやすかった反面、収益性が低いとされる。中国での出店がなお中心だが(13年度海外出店140店中87が海外)、中国で形成した直営店運営ノウハウを生かして今後はインドネシア、タイなどで東南アジアで直営店中心に増やして出店、内需取り込みを急ぐ方針(2012年から2013年。13年度末に海外店舗は717店)。
吉野家ほどではないが、ゼンショーも海外店舗の加速を始めたが(13年度末で約150店)、ゼンショーは当初から直営店方式とのこと。なお松屋フーズは海外にほとんど展開していない。一般に外食産業では規模が効率に反映しやすい。店舗作業を工場に集中すること(セントラルキッチン方式)で効率化を進めることが可能。そのため中途半端な出店ではなく、出店拡大による低価格化が不可欠になっている。
吉野家holdings homepage
ファストリテイリング しまむら ZARA
original in Oct.2008
re-write in May 2013
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