
去年までは海の日が、たしか20日だったので、毎年、20日をからめて八ヶ岳南麓へ出かけていた。梅雨が明けるかどうか微妙なころで、キャンプ場で梅雨明けを迎えたこともある。
今年の7月の連休は、15日(土)を入れると17日(月)までの3日間。さすがに梅雨明けの確率は絶望的なまでに低いけど、関東甲信越は空梅雨気味だったので、それをあてにして松本市を見下ろすお気に入りのキャンプ場へ出かけたら、みごとに梅雨の末期の大降りにあった。
まあ、これも想定内、覚悟の上……。
キャンプで雨に遭うのはそれほどイヤじゃないけど、設営と撤収が雨の中はちとつらい。人によっては半分くらいは雨のなかでの設営や撤収と聞いたことがあるけど、ぼくは長年キャンプをやってきて、雨のなかでの設営あるいは撤収は、幸い数えるほどしか経験がない。
今回は、女房が風邪で体調が不十分なうえに、実はぼくも最悪のコンディションだった。
キャンプ出発の2日前、朝、犬の散歩にでかけて犬のリード(引き綱)に足をとられて転び、左半身をしたたかにアスファルトの路面にたたきつけられていた。腕に負った擦過傷はかさぶたになっているが、右腕が肩から上には上がらない。もしかすると、肋骨が折れてはいないだろうが、ヒビくらい入っているのかもしれないけど……。
クルマの運転中も右腕はハンドルに添える程度で七割方は左腕に任せていた。だから、設営のときから主な作業はほぼ左腕だけでやることになる。ふだんから器用な人間じゃないから利き腕が使えないのはかなりつらい。使わないといってもまったく使わないわけではなくて、使えそうな作業だと使ってしまう。
そのせいかどうかはわからないが、設営の最中から、みぞおちのあたりに痛みが出てきて、ますます上半身がぎこちない。そんなや、こんなで設営は若干もたついたものの、幸いなんとかだれにも悟られることなく完了した。
こういうのってけっこう快感である。
だけど、どうしても左手ではできなかったのがロープワーク。やっぱり手が記憶しているから、左でやろうとすると赤子同然。まったく役に立たない。
ぼくはテントやタープの引き綱にランナー(自在)を使っていない。引きとけ結び(英名:スリップノット)を応用してすませている。ランナーを使うより確実に固定できるし、調整も容易だからだ。これを左手でやるのに悪戦苦闘してしまった。
しかたなく、ロープワークが必要になる設営は、今回、すべてキャンセルした。
かくして、不自由ながら左手で作業するのは、思いもよらないほど貴重な体験となった。
雨にたたられたというハンディもあって、とにかく無駄な動きはしたくないとの切なる思いから段取りを決めてかかったのがよかった。
設営もさることながら、大雨の中の撤収の早かったことといったら……。
おお、オレもやるときゃ、やるじゃん――と、自分で自画自賛したくなるほどだった。
ただ、左半身の痛みは帰ってきてから増幅し、きょうあたりからようやく好転しはじめた。なにはともあれ、人間万事塞翁が馬、なにが吉となり、なにが凶となるかはわからない。