気の進まなかったクリスマスの贈り物
ウォレン・パーク(アメリカ合衆国,テキサス州)
その男性はわたしたちに会いたくはないでしょうが,それでも贈り物を届けることにしました。
アメリカ合衆国ノースカロライナ州で伝道していたとき,わ
たしたちはある男性を訪問しました。最初は人当たりがよさそうに思われたものの,やがてモルモン書は偽りだと言い出しました。彼はほかにも教会について否定的な意見を述べました。わたしたちのレッスンは良いものではありませんでした。閉会の祈りをして,わたしたちは立ち去りました。
しばらくの間,わたしはこの男性に対して宣教師らしからぬ感情を抱いていましたが,やがて彼のことを忘れてしまいました。少なくともクリスマスが来るまでは。
クリスマスに,一部の教会員から,味付きのポップコーンが入った大きなバケットを二つもらいました。わたしたちは最初の一つを開けて食べ始めましたが,そのとき,以前に訪問したあの男性のことが頭に浮かびました。
二つ目のバケットに目をやったわたしたちは,あの男性が一人暮らしであることを思い出しました。もしかしたら彼もポップコーンが好きかもしれないと思いましたが,彼が非常に否定的な態度だったことも覚えていました。いずれにしても,恐らく家族に会いに行っていて留守でしょうし,たとえ家にいたとしても,わたしたちには会いたくないでしょう。
それに,これはわたしたちのポップコーンなのです。
それでも,最初に心に浮かんだあの印象は消えてくれません。
わたしたちは言い訳を脇に追いやり,二つ目のポップコーンのバケットを渡しに行くことにしました。
その日曜日,教会の後で,わたしたちは彼の家の前に車を止め,ドアをノックしました。やっぱりやめようかと思い始めたとき,ドアが開きました。
「メリークリスマス!」とわたしたちは言いました。男性は
満面の笑みを浮かべ,わたしたちを家に入れてくれました。
「兄弟,あなたに贈り物があります」とわたしたちは言い,
ポップコーンが入った大きなバケットを渡しました。彼はいっそう大きな笑顔を見せ,ソファに座るようわたしたちに言いました。話しながら,わたしはこれほど幸せそうな人を見たことはほとんどないと思いました。
男性の家族は近くにはおらず, クリスマスは独りで過ごすつ
もりだったようです。小さなクリスマスツリーの下に見えているプレゼントは,飾り付け用にラッピングされた空の箱でした。
「だれかがわたしのことを気にかけてくれるとは思いもつかなかった」と彼は言いました。
「今年,プレゼントがもら
えるとは思わなかったよ。」
家を出るとき,わたしは心からあふれてしまいそうなほどの大きな喜びを感じました。わたしはこの男性に好感を抱いてさえいなかったというのに,今では彼に対する純粋な愛を感じていました。
クリスマスの主役は,あなたでもわたしでもありません。そ
れは最も大いなる贈り物であられるイエス・キリストであり,主の愛を人々に分かち合うことです。人を愛し助けるとき,わたしたちは喜びを感じます。なぜなら天の御父が,御子に従うというわたしたちの選びを喜
んでおられるからです。
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(リ ア ホ ナ2022年12月号からご紹介しました。)
ダニエル
「ししの穴のダニエル」ヘンリー・オズラ・タナー画
第6章
6:1ダリヨスは全国を治めるために、その国に百二十人の総督を立てることをよしとし、
6:2また彼らの上に三人の総監を立てた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督たちをして、この三人の前に、その職務に関する報告をさせて、王に損失の及ぶことのないようにするためであった。
6:3ダニエルは彼のうちにあるすぐれた霊のゆえに、他のすべての総監および総督たちにまさっていたので、王は彼を立てて全国を治めさせようとした。
6:4そこで総監および総督らは、国事についてダニエルを訴えるべき口実を得ようとしたが、訴えるべきなんの口実も、なんのとがをも見いだすことができなかった。それは彼が忠信な人であって、その身になんのあやまちも、とがも見いだされなかったからである。
6:5そこでその人々は言った、「われわれはダニエルの神の律法に関して、彼を訴える口実を得るのでなければ、ついに彼を訴えることはできまい」と。
6:6こうして総監と総督らは、王のもとに集まってきて、王に言った、「ダリヨス王よ、どうかとこしえに生きながらえられますように。
6:7国の総監、長官および総督、参議および知事らは、相はかって、王が一つのおきてを立て、一つの禁令を定められるよう求めることになりました。王よ、それはこうです。すなわち今から三十日の間は、ただあなたにのみ願い事をさせ、もしあなたをおいて、神または人にこれをなす者があれば、すべてその者を、ししの穴に投げ入れるというのです。
6:8それで王よ、その禁令を定め、その文書に署名して、メデアとペルシャの変ることのない法律のごとく、これを変えることのできないようにしてください」。
6:9そこでダリヨス王は、その禁令の文書に署名した。
6:10ダニエルは、その文書の署名されたことを知って家に帰り、二階のへやの、エルサレムに向かって窓の開かれた所で、以前からおこなっていたように、一日に三度ずつ、ひざをかがめて神の前に祈り、かつ感謝した。
6:11そこでその人々は集まってきて、ダニエルがその神の前に祈り、かつ求めていることを見たので、
6:12彼らは王の前にきて、王の禁令について奏上して言った、「王よ、あなたは禁令に署名して、今から三十日の間は、ただあなたにのみ願い事をさせ、もしあなたをおいて、神または人に、これをなす者があれば、すべてその者を、ししの穴に投げ入れると、定められたではありませんか」。王は答えて言った、「その事は確かであって、メデアとペルシャの法律のごとく、変えることのできないものだ」。
6:13彼らは王の前に答えて言った、「王よ、ユダから引いてきた捕囚のひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名された禁令をも顧みず、一日に三度ずつ、祈をささげています」。
6:14王はこの言葉を聞いて大いに憂え、ダニエルを救おうと心を用い、日の入るまで、彼を救い出すことに努めた。
6:15時にその人々は、また王のもとに集まってきて、王に言った、「王よ、メデアとペルシャの法律によれば、王の立てた禁令、または、おきては変えることのできないものであることを、ご承知ください」。
6:16そこで王は命令を下したので、ダニエルは引き出されて、ししの穴に投げ入れられた。王はダニエルに言った、「どうか、あなたの常に仕える神が、あなたを救われるように」。
6:17そして一つの石を持ってきて、穴の口をふさいだので、王は自分の印と、大臣らの印をもって、これに封印した。これはダニエルの処置を変えることのないようにするためであった。
「ししの穴のダニエル」ヘンリー・オズラ・タナー画
6:18こうして王はその宮殿に帰ったが、その夜は食をとらず、また、そばめたちを召し寄せず、全く眠ることもしなかった。
6:19こうして王は朝まだき起きて、ししの穴へ急いで行ったが、
6:20ダニエルのいる穴に近づいたとき、悲しげな声をあげて呼ばわり、ダニエルに言った、「生ける神のしもべダニエルよ、あなたが常に仕えている神はあなたを救って、ししの害を免れさせることができたか」。
6:21ダニエルは王に言った、「王よ、どうか、とこしえに生きながらえられますように。
6:22わたしの神はその使をおくって、ししの口を閉ざされたので、ししはわたしを害しませんでした。これはわたしに罪のないことが、神の前に認められたからです。王よ、わたしはあなたの前にも、何も悪い事をしなかったのです」。
6:23そこで王は大いに喜び、ダニエルを穴の中から出せと命じたので、ダニエルは穴の中から出されたが、その身になんの害をも受けていなかった。これは彼が自分の神を頼みとしていたからである。
6:24王はまた命令を下して、ダニエルをあしざまに訴えた人々を引いてこさせ、彼らをその妻子と共に、ししの穴に投げ入れさせた。彼らが穴の底に達しないうちに、ししは彼らにとびかかって、その骨までもかみ砕いた。
6:25そこでダリヨス王は全世界に住む諸民、諸族、諸国語の者に詔を書きおくって言った、「どうか、あなたがたに平安が増すように。
6:26わたしは命令を出す。わが国のすべての州の人は、皆ダニエルの神を、おののき恐れなければならない。
彼は生ける神であって、
とこしえに変ることなく、
その国は滅びず、その主権は終りまで続く。
とこしえに変ることなく、
その国は滅びず、その主権は終りまで続く。
6:27彼は救を施し、助けをなし、
天においても、地においても、
しるしと奇跡とをおこない、
ダニエルを救って、
ししの力をのがれさせたかたである」。
天においても、地においても、
しるしと奇跡とをおこない、
ダニエルを救って、
ししの力をのがれさせたかたである」。
6:28こうして、このダニエルはダリヨスの世と、ペルシャ人クロスの世において栄えた。
(画像は、末日聖徒イエス・キリスト教会機関誌リアホナ2022年12月号からご紹介しました。)