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マッカイ家のおばあちゃん  マーガレット・フォースター  筑摩書房  翻訳工房・りぶろ訳

2005年04月04日 | ’05年読書日記
後書きを入れて353ページという、私から見るととても分厚い本なので、最後までしっかり飽きずに読めるかな、と心配になりましたが、結果、とてもすらすらとしかも興味深く読めました。

テーマは…

『痴呆性老人の介護に苦闘する家族』

…です!!

とても重苦しいテーマですが、後書きにもありましたが、読み終わったあと(または読んでいる最中も)不思議に重苦しい気分にはならない本です。

お話しは、マッカイ家の次男の嫁さんジェニーと,その娘である17歳のハンナが、日記のような形で交互に綴られていきます。

長男のスチュアートは、ある事情から母親の介護から一切手を引いていて、お金も手も、口すらも出しません。
一番下の妹、ブリジットは独身の看護婦で、おばあちゃん(彼女から見たら母親)の地方が、かなりひどい状態でも、老人施設に入れずに、自分の隣のフラットで、みんなで介護したいと激しく主張します。

…こういう状況を知ると、うんざりしますよね、普通。
みんな勝手なこと言ってるな、と頭に来るところですが、著者の文章からは、登場人物の誰をも、非難したり否定するような一方的な感情の押し付けのようなものを感じません。

みんなそれぞれが、色んな事情や感情や、状況の中で一生懸命に考えたり行動している結果が、これなんだろうな、と納得できます。

訳がいいのも、この本が読みやすかった理由のひとつかもしれません。

物語の最後の、ハンナの言葉が、とても共感を呼ぶものだったのでご紹介…。

  私の時がきたら きっとそのままにはしないわ
  私の時がきたら きっと奇跡には頼らないわ 
  私の時がきたら もうたくさんと言って消えるわ

  おばあちゃんのような時が来たら まさに同じ種類の時がきたら
  でも もしその時がきたら わたしは自分の思うままにはならないのよね

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著者は、イギリスでは中堅作家として活躍中、これまでに16の小説と5つのノンフィクション(主に伝記)を発表。
日本では初期の作品(Georgy Girl,1965 …翌年映画化)が紹介されているだけだそうです


 


マッカイ家のおばあちゃん…原題は「Have the Men Have Enough?」1989…です。おばあちゃんの台詞からとられています。

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