遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

座・れら『私 ~ミープ・ヒースの物語~』(TGR2019)

2019-12-04 15:16:45 | 演劇を見てきた・TGR2019

2019/12/2

・アンネ・フランクの一家を支援したことで知られる、ミープ・ヒースが最後まで信念を貫こうとする話。

・戯曲が北海道戯曲賞の最終選考に残っているのは知っていたものの、『アンネの日記』の関連作品はすでに沢山あるので、最初は半信半疑。

・序盤は晩年の彼女が当時を回想する形式。

・少なくとも自分の知っている範囲で大きなアレンジはなく後半に繋がる種を巻きつつ史実の確認。

・竹江維子さんと小沼なつきさんがミープを演じる。

・誰かを救うことが別の誰かを見捨てることに繋がる。その正義感ゆえに彼女は疲弊していく。

・彼女は正義の人だけど、後年の自分たちはその結果を知っている。彼女はアンネの一家を守れない。

・それでも、彼女の人生は続く。お話の凄みを感じたのはそこから。

・平和にするのも難しいし平和を維持するのも難しい。

・彼女は正義を貫こうとしても、親友の危険思想を止めることすらできない。

・やっと終戦になったのに、早くも「戦前」とシンクロしている。そういう意味で、彼女の戦いは敗北続き。

・彼女の戦いは100歳で亡くなるまで続く。

・そして、同じ戦いは、同じ信念を持つ人たちによって、現在も世界中で続いている。もちろん日本でも。

・ただ、ミープさんがそうであったように、世の中から差別や戦争をなくすことはできない。いつもどこかで平和が破られている。

・できるのはあきらめないことを続けるだけ。

・本作がすごいのは、浅はかな「こうすればいい」ではなく、「私はいったい何と戦っているんだ」と何度も何度も「私」とやりとりしながら、その逡巡をそのまま舞台に上げているところ。わかりやすい解決策なんてない。

・だからアンネは沈黙している。

・映画の『主戦場』に近いテーマ。平和を維持する戦いは、いま平和な場所すべてが主戦場になる。

・本作を見てのんきに「ミープさんは偉いね」と言うだけなら、あのレイシスト夫婦でもやっていると気付いてゾッとする。弱さは言い訳にならない。

・物言わぬアンネは、自分たちのすぐ隣にもいる。

・それはともかく、ツイッターを見ていたら、打ち上げで、ゆるんだ感じのアンネ(役の鈴山あおいさん)の画像がアップされててなごむ。なんか、よかった。

(2019/11/30 18:00の回)

※パンフ行方不明のため、座・れら公式HPからの転載です。申し訳ありません…。

■出演

竹江維子
小沼なつき
工藤康司
西村知津子(劇団にれ)
町田誠也(劇団words of hearts)
信山E紘希
鈴山あおい(Studio MAZUL)
つくね
杉浦朋子
みきと
松永ヒサ子
齊藤雅彰(超級市場)
青坂章子(ゆうの会)

■脚本・演出:戸塚直人

■スタッフ
装置:高田久男(セットアップ)
照明:鈴木静悟
音響:西野輝明
衣装:佐々木青
制作:佐藤紫穂(ex.fiction)、竹内麻希子(CAPSULE)
小道具:中島朋子
ちらし:佐藤みきと
演出助手:神しのぶ
舞台監督:寺沢英幸
手話通訳:舞夢サポーターズ

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総合芸術ユニットえん『半神』(TGR2019)

2019-12-04 15:02:52 | 演劇を見てきた・TGR2019

2019/12/3

・体のくっついた双子のシュラとマリアが世界のハテと向き合う話。と、書いてみたものの、どうまとめたらいいのやら。

・近年の日本演劇史で燦然と耀く大ネタ中の大ネタ。今年のTGR作品中だと『十一ぴきのねこ』と双璧。

・自分は、夢の遊眠社時代の演目をVHSで見た。

・劇団回帰線に所属していたころ、三人芝居に脚色した作品にかかわったけど、それも20年くらい前の話。

・そのとき脚色演出をされていた西脇秀之さんが、今回の音響を担当している。不思議な感覚。

・ほんとに久々に本作に触れるので、内容についてかなり記憶がぼんやりしている。期待と不安。

・会場に入ると、すでに役者達が舞台上に集合していて遊んでいたりウォーミングアップしていたり思い思いに過ごしている。

・演出の仕切りで始まる。途中でストップがかかってやり直してみたり、パッと見、リハーサルを見学しているみたいな感じ。

・変わってると思ってあとで検索してみると、野田秀樹演出の2014年の再演が似た感じだったみたい。どういう意図なんだろう。

・シュラは中野葉月さん、マリアは田中雪葉さん。二人が所属しているあづき398と言えば、前に見た北海道短編エンゲキ際2019。面白かったので印象に残っている。

・ほんとは、知性が高く醜いシュラと、知性が低く美しいマリアの対比なんだけど、どう見てもふたりともかわいらしい。

・舞台中央に六角形の回り舞台があってスムーズにまわる。舞台に使うに足る安定度合いで作るの大変そう。

・独特の掛詞を重ねて強引に世界を広げていくところと、演者たちが技術や経験でその強引さをねじふせていくところが見どころ。

・ところどころ集中力が続かず、意識が飛んでしまう。

・野田秀樹作品は、たしかに話は強いんだけど、言葉が詩的でリズムがよすぎるので、そうなりがち。

・作り手の力量にあわせてどこまでも広がっていく戯曲に挑む大変さは今も昔も同じ。

・色々思い出してしまって、とりあえず穴を掘って入りたくなってしまった。

(2019/11/30 14:00の回)

■キャスト

シュラ:中野葉月(あづき398)
マリア:田中雪葉
先生:大槻紘照
老数学者:平野たかし(劇団風蝕異人街)

スフィンクス:斉藤秀規
ハーピー:金野翔太(演技研究所tesoro)
ユニコーン:イノッチ
マーメイド:金路陽子
ガブリエル:島津茜
ゲーリューオーン:高田竜弘

父:高山和也
母:野口理恵
右子:森安ひさえ(第九企画)
左子福原野乃

HAR'u:HAR'u(レンコンズ・蛍火桜月)
岩渕:岩渕拓也
塩田:塩田蒼唯
下村:下村恒悦
岸:岸夏香
金戸:金戸一基


■スタッフ

原作・脚本:萩尾望都
脚本:野田秀樹
脚色:総合芸術ユニットえん
演出:かねとかずき
助演出:大槻紘照
照明:清水洋和((株)ほりぞんとあーと)
音響:西脇秀之(劇団回帰線)
衣装:成田愛花(あづき398)中野葉月(あづき398)田中雪葉(あづき398)
制作:五嶋アキ 久慈優花

企画・製作:総合芸術ユニットえん

※当日パンフ参照(なにぶん手入力なもので誤りがあればご指摘ください)

 

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RED KING CRAB『ありあけ』(TGR2019)

2019-12-04 14:52:13 | 演劇を見てきた・TGR2019

2019/12/3

・精神的支柱の工場長を失ったおもちゃの製作所が、新しい工場長を迎えて廃業の危機を乗り越えようとする話。

・ちょっと昔、終戦後の札幌の話。

・具体的な時期の説明があったか覚えていないけど、終戦直後ではなく、だいぶ落ち着いてきたころのよう。

・人情系の先代に対して、ゴリゴリ合理主義者の新工場長。しかも女性。保守的な既存メンバーとの対立。

・朝の連続テレビ小説のような設定。

・かなり丁寧に取材をして作られたという話だけど、どこまで実在の話かは確認する時間がなくてよくわからず。

・もちろん、本来は実在の話かどうかが大事ではなく、実在感があるかどうかが問題。

・そういう意味で成果は間違いなくあって、しっかりした設定に支えられて、きちんと人間ドラマが出来上がっていた。

・目先の派手なオモシロに飛びつかず、いいドラマを作ろうという姿勢にますますの活躍を期待したくなる。

・とは言え、本当にプルバック式(wikiで知った言い方)の動力を発明した人がいたのかとか、後のチョロQにどうやって繋がるのかとか、やっぱり気になってしまう。

・派生企画や台本を買ったりすると、そのへんの深いところもわかったんだと思うと、プレステージツアー行っておけばよかった。

・単純に資料集めとかどうしているのか気になるし、題材選びの話も聞いてみたかった。

・こわもてヒゲおじさんが不器用に優しい。リストラされそうな彼に寄り添って、何も思いつかなくて物理的に寄り添うだけという。

・見終わった後、チラシから「ともだち」の話なんだと知って「トモダチ、トモダチ…?」と自我が芽生え始めたロボットのようにくりかえしてしまう。

・どんぐりさんと他の人たちとの関係性が友だち的ということでいいのかな。

・横のつながりは、あんまり友だち的ではない。映画の『横道世之介』の感じに似ているかも。

・どんぐりさん亡くなったのかな、匂わす表現はたくさんあるけど、その情報伏せる意味もよくわからんし…と悩む。(あとで亡くなったと聞いた)

・この時期の札幌は色々面白いのでもうすこしだけ地域色出して道外公演とかしたらたぶん楽しいと思う。

(2019/11/30 11:00の回)

■出演

木山正大(RED KING CRAB)
井藤淳矢(RED KING CRAB)
飯綱いるか(RED KING CRAB)
湊谷優(スリープリズム)
山崎亜莉紗
高田敬助
阿部大介

■スタッフ

主催:RED KING CRAB
脚本/演出:竹原圭一(RED KING CRAB)
照明プラン:鈴木静悟
照明操作:松本紀子
音響:山口愛由美
作曲/演奏:山崎耕佑(劇団fireworks)
舞台美術製作:岩崎陸來
小道具:井藤淳矢
小道具補佐:みふる
舞台監督:山田雄基(演劇家族スイートホーム)
衣装:RED KING CRAB
衣装協力:竹内里奈(劇団しろちゃん)
宣伝美術:飯綱いるか(RED KING CRAB)河合華穂

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