Elevenses Laboratory

爬虫類・蟲系ぺっとぶろぐ

ナメック南国人

2007-01-16 | その他ペット
 妹曰く、
「…………おとーさーん!お兄ちゃんがナメクジ飼ってるってー」

 高校時代の友人曰く、
え…それホントに買いたくて買ったの?

 Hades氏曰く、
「ごめん、俺にはソレわからないわw










 アシヒダナメクジを飼っていると言った時の、各々方のリアクションである。
先日はローチ飼育を『他人に最も理解されないペット』と述べたばかりだが、もしかするとコッチのほうが理解され難いかもわからんね。


 今日は我が家のペットの中でも異色の存在。
唯一の軟体動物であるアシヒダナメクジを紹介します。







 ご存知の方はご存知だろうが、コイツはただのナメクジではない。
一般的にそこらで見られるナメクジは「殻を退化させたカタツムリ」であるのに対し、アシヒダは「陸生のイソアワモチ」なのだ。
ルーツが大きく異なるのである。

 つまりコイツは“ナメクジ”ではなく、“アシヒダナメクジ”という別の生物なのだ…!






 とはいっても、イソアワモチもナメクジと同じ有肺類なんだよね…(;´д`)

 かつてイソアワモチは、ウミウシ等と同じ後鰓類として分類されていた。
つまり、そのまま彼らが後鰓類に入ってくれていれば、アシヒダナメクジの事を「陸に上がってきたウミウシ」と解りやすく説明できたわけである。
逆に、イソアワモチの近縁種などと言った所で、パッと理解する人は少ないだろう。
更に、“ナメクジ”というと不快な害虫のイメージが漂うが、“ウミウシ”というと美しい海の妖精のような印象さえ持てる。これは大きな違いだ。

 こういう側面から見ても、やはりこの生き物は他人に理解され難いのかもしれないなw





 彼らは元々、インドや中国南部などに生息していた生き物だ。
しかし、1900年代後半から沖縄各島に帰化しはじめ、現在では琉球諸島に広く分布している。
現地では野菜や観葉植物に被害を与える害虫として、駆除の対象になっているようだ。

 沖縄ではサクサクと駆除されている生き物が、関東では一匹数千円ほどで取引されている現実…。少し場所が離れただけでこうも扱いが違う生き物は、他にはそうそういないだろう。





 さて、南方ではあらゆる植物に引っ付いて被害を与えている本種だが、その実態は相当なグルメである。

 コイツを飼い始めた当初、私は「わざわざ野菜なんか買い与えなくても、そこらの雑草も幾つかは食ってくれるだろう」と考えていた。
しかし、結果から言うと、その考えはチョコレートより甘かったようだ。

 そこらで摘んできた葉っぱを色々とあげてみたのだが、どれも頑なに食ってくれない。
硬い葉っぱでは駄目なのかと思い、柔らかい雑草も与えてみたが、芳しい成果は得られなかった。
ならば、カタツムリのようにアジサイの葉っぱなら食うかとも思ったが、結果は一齧りもせず…。
 仕方ないので、現在はレタスやニンジンなど数種類の野菜をローテーションしながら与えている。

 そうそう、同じ野菜ばかり与え続けても餌食いは落ちてくるのだ。ここらへんもグルメと言いたくなる所以ですな。





 話は変わるが、アシヒダさんは他の有肺類と同じように雌雄同体である。
つまり、二匹いれば雄雌に囚われる事なく繁殖が可能なのだ。

 雌雄異体の生き物もいいが、雌雄同体の生き物も飼っていて悪くないものだ。
何せ、タランチュラのように雌雄のクオリティ差に一喜一憂しなくてもいいのである。なんというか…安心感があるのかな…。
 まぁ、この種は繁殖に移行する環境もそれほど厳しくないようなので、積極的に増やしてみるのも面白いかもしれない。


 ただし、私は同時に警鐘も鳴らしておきたい。

 これは私が実際に飼っていて感じる事なのだが、この種は熱帯原産の割に寒さに強い傾向にあるようだ。
もちろん寒ければ活性は低くなるが、だからといって即死するわけではない。正直言って、無加温でもかなり長い間生存できるだろう。

 非常に丈夫で、ペットとしては全くもって結構な事なのだが、私がここで危惧するのは、こいつらが沖縄以外でも帰化してしまうケースである。





 我が国において、一年を通して最も気温の高い地域は琉球諸島だろう。しかし、日本には他にも暖かい地域が幾つかある。そして、それらはアシヒダナメクジが生きていくのに十分な環境かもしれないのだ。

 私の抱くこの危惧は杞憂かもしれないし、むしろそうであって欲しいと願っている。
しかし、私はこの場をもって、アシヒダナメクジを多頭飼いしている方々に訴えたい。床材の腐葉土が古くなったとしても、安易にそこらへんの裏庭などに捨てないで欲しいのだ。
もしかしたら、その中にアシヒダの卵が混じっているかもしれない。




 ペットの脱走や外来法の規制、昨今のツボカビ問題など、現代のペットシーンでは飼育者のモラルが常に問われ続けている。
アシヒダナメクジが本土において数千円で取引されている現状など、まだいい方なのだ。


 ただし、彼らが本土においても駆除の対象になるような未来だけは、絶対に避けねばならないのである。





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