イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

天翔る光、翠楼の華(2) 阿鼻叫喚の地獄絵図こそ愛の証

2007年12月17日 19時50分54秒 | 小説
    ここも鮮やかに熟れて、私を誘っておいでだ

 翔麒のおかげで自分の意志で行動する血の通った人間に珠泉は生まれ変わりました。まるで、ギリシャ神話のピュグマリオンが自分の創った彫像の女性に恋い焦がれて叶わぬ想いに苦悩していた時、愛欲と美の女神アフロディーテによって人間にして貰い、妻にしたというガラテアのようにです。但し、神ではなくて人間の翔麒の愛によって命を吹き込まれ、珠泉は本当の意味で自分の意志を持ち…そして、貫く力を与えられたのです。

 しかし、珠泉が自分の意志を確かに持ったという手応えがないので、あの珠泉を飾り人形にして外に出さぬためなら翔麒を謀殺することも厭わぬ華王朝のバカどもを蹴散らし、遷座…つまり、愛しい翔麒の許へ還る勝利を掴み取った珠泉なんて説得力は皆無です。永遠の愛の証の耳飾りを片方ずつ二人でしていれば心は繋がっているから、とか言ってもそれでは還って来ないとしか思えません!翔麒が華王朝を倒そうとするほどに絶望のどん底に突き落としては、どのような理由であれ無意味であり還ってきたから良かったというわけではありません。

 還れば還ったで偉そうに説教していて呆れました。翔麒の許に還ってきた珠泉は最低限の周囲の寛容と許しを得るための努力することが自分たちが幸せになるには必要であり華王朝を責め滅ぼして自分を取り戻しても自分たちを引き裂こうとする策略が襲い掛かるだけだと言いましたが、愛し合うことや幸せになることに誰の許しもいらない!華王朝を滅ぼさなくなって“皇帝宣下”の直後に遷座もないし拝謁も許されないと翔麒を蔑ろにしたし、麟国攻撃という形で既に二人を引き裂こうという愚かな企みは起こっていたのが珠泉にはわからなかったの?民を、国を捨て、帝国を蔑ろにして何が悪い!!やはり、珠泉はおバカです。

 華王朝の帝都・臨陽(りんよう)に行ったが最後、宰相どもを説得して還って来るなんて珠泉がそのつもりでも華王朝のバカどもが臨陽から珠泉を二度と出す筈がないですから。翔麒だけではなくて私だって信じられません!翔麒が完全に愛する珠泉を自分のモノにするために華王朝を倒し、珠泉聖帝の玉座から引き摺り下ろして自分のモノにした方が良かったです!!阿鼻叫喚の地獄を地上に描いてでも愛する人を取り戻す…こちらの方が説得力があるし素晴らしいですよ。