イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

黒龍王(20) 憎むべき敵の木偶に堕落した者は死ね!

2007年12月02日 12時29分14秒 | 小説

 羅剛と自分を引き裂いた悪党の片割れである大神殿の神官どもを心配するなんて冴紗はどうかしている。重臣どもと結託して羅剛から引き離し大神殿という牢獄に幽閉した悪党どもを憎み、許してはならないのに!それなのに、『神官は王に愛される』の「Ⅹ 婚姻」“おのれのことばかり、想い悩んで、神殿の方々の苦悩に思いいたらなかった。この状態で冴紗が行方をくらませたら、のちのちどれほど人々が苦しむか。”には呆れました。


黒龍王(19) 羅剛の恋の怒り!虹霓教の木偶に堕落した冴紗の罪

2007年12月02日 12時27分24秒 | 小説

 羅剛の許に冴紗のすべてが戻るのはいつの日か。大神殿の最長老と5名の長老どもに宗教的洗脳を施され虹霓教の木偶に堕落した冴紗が《聖虹使》の猿芝居を辞めて、真に羅剛のためだけに生きる人間に戻るのはいつなのでしょうか?

 第1巻の『神官は王に愛される』のラストで美優良王女が機転を利かせて煮え切らない冴紗に自分の身代わりに入内をと名前を貸して、最長老の後押しで漸く冴紗羅剛との婚姻を受諾させたのは名案だと思いました、その時は。しかし、最長老が《侈才邏王妃》美優良と《聖虹使》冴紗の二役をせよと命じられて羅剛と結婚するのを冴紗が受け入れたというのでは最長老が絶対に羅剛との結婚は許さぬと言ったら、冴紗羅剛の求婚に応じなかったことに気づいて、わたしは木偶に堕落した冴紗の腐り果てた本性に呆れました。

 『神官は王を狂わせる』の「Ⅱ 大神殿での冴紗」“痛みのごとき怒りが、ふつふつと湧き起こってきた。羅剛は隣室を指差し、声を荒げた。「なぜ、あのようなまねをさせておるっ!?いつからだっ?」最長老は、長い顎髭を撫でながら飄々と、「――さようでございますな。…たしか、御歳(おんとし)十五のとき、大神殿にあがられてすぐのことと記憶しておりますが」羅剛は老神官の襟元を掴み、羅剛は老神官の襟元を掴み、怒鳴っていた。「貴様らが無理強いしたのかっ!」「いやいや。冴紗さまが、ご自身でおっしゃられたのです。他の神官のように修行をすることがゆるされぬのなら、せめてなにかできることは、と。…私どももまだお早いとは存じましたが、『聖虹使』さまのお役目を、お教えいたしました」怒りで身体が震える。みずからが生きていく日常の知識より先に、過去の聖虹使とやらの書き付けを覚えさせられ、神の御子として演じているのか。はらわたが煮えくりかえりそうであった。「貴様らは、心が痛まぬのか」延々と。途切れることなく、延々と。あのように、すがりつく民たちはつづくのであろう。信仰という名目に隠した、依存と甘えを吐き出すために。水石の透かしごしにちらりと隣室の様子を見、最長老は言った。「他者の痛みをみずからの痛みとして感ずることこそ、虹霓教の教えでございますよ」耐えられなくなった。羅剛は荒々しく踵を返していた。「もうよいわ!じじいの説教など、聞く耳もたぬ!」大神殿から離れても、憤激が治まらぬ。だが、…わかってはいた。いまさらことを荒立てても、もう遅い。冴紗はもう五年近くも、あのような苦行に耐えてきたのだ。「………俺は……」遣る瀬ない想いに胸を焼かれ、呻きを発しかけたが、言葉にならぬ。いま見た光景が、瞼の裏に焼き付いて、離れぬ。 と、4年前のあの日、永均に欺かれて大神殿に冴紗を預けた直後に既に冴紗は己の意志を捨てさせられ最長老の言いなりに猿芝居をする虹霓教の木偶に堕落していた!羅剛だけを恋する冴紗は死んでいた、最長老どもに殺されてしまっていたのです。

 そんな羅剛の苦悩と哀しみを察することも出来ずに…《聖虹使》の猿芝居をするために1年の半分を羅剛から平然と遠ざかるのが当然とばかりに、「Ⅷ 帰国。…花の宮にて」冴紗は呆れたことに羅剛と侈才邏のために役立つ尊い御役目だと最長老に思い込まされた木偶ゆえに、“冴紗は、侈才邏のため、羅剛様の御(おん)ためならば、――なにもつらくはありませぬ。みごと、『聖虹使』のお役目、演じきってみせましょう”戦を起こし人心を惑わす《聖虹使》が羅剛と侈才邏のためどころか逆に仇を成すだけだと理解できずに残酷な言葉を吐いて羅剛の心を傷つけたのです。「Ⅱ 大神殿での冴紗」“――苦しみのない人生などない!他者に救いを求めるより先、おのれですべきことがあるであろうに、…あれでは、あまりにも冴紗が憐れではないか!あれはまだ、子供だぞっ?いくら虹の髪や瞳を有していても、他者の苦しみを抱えさせてよい理屈など、通らぬっ!”という怒りと共に叫んだ羅剛の言葉こそ正しいのです!虹霓教は撲滅すべき悪しき存在であるのは明白ですね。今は恋しい冴紗の心に安寧を与えるために受け入れ我慢していますが、やがて、羅剛冴紗の涙を見ることになっても大神殿を潰し最長老を首魁とする虹霓教の神官どもを皆殺しにし、虹霓教を完全粉砕するために戦を起こすことでしょう。それが冴紗を木偶から人間に戻す唯一の術なのです。


天翔る光、翠楼の華(1) 聖帝陛下は遊女なの?

2007年12月02日 12時27分00秒 | 小説
必ずこの手に玉体を。誓ったのは七年前。可憐な聖帝・珠泉に恋い焦がれた、麟国国王・翔麒は、ついに華王朝皇帝となった。想いを伝えるべく国へ連れ帰り、かき口説くうちに暴走。なすがままだが、未知の体感に狼狽える聖帝を「可愛い方だ」怯えぬように甘噛みして愛おしみ、恍悦に啼く背を舐め上げた。しかし初心な珠泉は、激しい交わりにすっかり怯えてしまう。慌てた翔麒は詫びを入れ、必死に機嫌を取り結ぼうとするも、その頃、都では珠泉奪回の作戦が…!!偉丈夫の一途な恋情。

 プランタン出版プラチナ文庫の橘かおる&栞りょう『天翔る光、翠楼の華』の主人公・光烈王翔麒(こうれつおう・しょうき)が大好きです。麟国(りんこく)の国王にして華王朝の皇帝である翔麒は、王太子時代の22歳の時、登極して間もない初々しい15歳の《聖帝》珠泉(しゅせん)に一目惚れ、覇道を唱え彼を我が手にと決意した彼は富国強兵を達成し皇位を目指して僅か7年後に“皇帝宣下”を獲得した稀代の英雄です。華王朝の帝《聖帝》は直には政(まつりごと)を行わず、諸国を従えて覇を唱えた国王を《皇帝》として選び、政権を譲渡して統治を委ねる政治形態をとっています。

 飾り人形の心なんか知ったことじゃないと華王朝の主でありながら《聖帝》珠泉の意志はことごとく無視されていました。華王朝の宰相や官人たちは《聖帝陛下》と呼び表面上は崇め奉っていても、自分たちの都合の良いように扱い、珠泉も流されるばかりで諦めることしかしなかったおバカなので本人の自業自得ではあります。誘拐万歳!凌辱万歳!!本来なら、犯罪なのでしょうが、解釈のすれ違いから一方的に了解を得て性行為に及んだと思い込んでの凌辱でも翔麒に罪はあるとは思いません。

 念願が叶い、やっと珠泉の隣に立てた喜びも束の間、華王朝のバカどもはさっさと麟国へ帰れと追い払い、拝謁を申し込んでも衛兵が矛を向けて阻み、その事実さえ珠泉には報せずに握り潰したのです。翔麒華王朝の皇帝ですよ!その皇帝陛下に衛兵ごときが矛を向けるとは無礼千万です!!珠泉の目も耳も塞ぎ宮中に軟禁して、彼に気に入られた自分が邪魔だから引き裂こうとする華王朝のバカどもにキレた翔麒が自分の想いを遂げるためもありますが、愛する珠泉を牢獄から救ったことは確かです。

 珠泉に自分で環境改善をする気概はなく諦めて流されるだけですから、彼を心から愛し、その環境に怒り、救うために行動を起こした翔麒は誉められても、非難される謂れは何一つありません。誘拐や凌辱でさです!珠泉が自分には優しいという王珈(おうか)将軍とて翔麒を暗殺しようとしたのは珠泉を案じてのことなのは認めますが、人形扱いされる境遇から珠泉を救おうとはしなかったのですから、忠臣などとはお世辞にも言えません!!土下座して翔麒に謝罪と自分に出来なかった珠泉の解放を成し遂げてくれたことに感謝して欲しいわ。

 それにしても、題名の『天翔る光、翠楼の華』“天翔る光”翔麒で、“翠楼の華”珠泉だと思います。が、“翠楼の華”の“翠楼”は辞書で引くと意味は「妓楼(遊女屋)」ですが、遊女=籠の鳥という意味で、《聖帝》と祀り上げられ崇められていても、意志は無視され宮城内に幽閉された虜囚に等しい珠泉“翠楼の華”と表現しているのかしら?