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子どもの本の会

子どもたちにはありったけのお話をきかせよう。やがて、どんな運命もドッヂボールのように受け止められるように。(茨木のり子)

読み聞かせのコツ?

2010年05月19日 | 日記
『絵本論-子どもの本評論集-』(瀬田貞二/福音館書店)です。

その中の「子どもに絵本を」という節で、瀬田さんが仰っています。



子どもたちに、どのように読んでやったらいいでしょうか。

私は、あまり不用意にその場かぎりで読んでやることに感心しません。私は前もっていろいろと読んでみることをすすめたいと思います。そして、自分の好きな本が選び出されたら、その本をとりあげて、自分が好きなまま、心の流れていくままに、読んでやるのがほんとうだと思います。

かざりなく、ゆったりと、明らかに。

いいと思ったところは、そう思ったとおりに読む。

お話を印象付けられたところは、そう印象付けられたように読む。

お話のなかから美しさが立ち現われてくるのがみえたら、そう思えたとおりに読む。

つまり、イメージをかきたてられたように、お話を想像して思い描きながら読むのです。

いい声であれば、それにこしたことはありませんが、多少ひけめを感ずるようなじぶんの声でも、あくまでも自分の声で、感じたところを自信をもって読めば、いい読み方ができるのです。

ここぞと思ったところは、少し声を低めにして、前後にほんのちょっと間をおいてみると、事柄がじつにはっきりと浮き上がるものです。

それから、読みながらよけいな解釈を加えない。あくまでも物語の進み方を進めていきます。

そして、読み終わったら、1、2、3、4、5ぐらい息継ぎの間をおいて、「おしまい」にします。

そのあとで………
感想などは絶対に子どもたちからもぎとらないように。



いかがでしょうか?参考になりますでしょうか?





以前、「えぇ~?!読み聞かせなんて全然してない~。早く字を覚えて自分で読んでくれないかしらぁ~。そしたら、こっちは楽チンなのに!」というお母さんがいらっしゃいました。また、「もう自分で読めるんだから、読み聞かせは必要ないんじゃない?」という方もいらっしゃいます。

引き続き、瀬田さんの絵本論から…、



どうして、字を読める子どもたちにも本を読んでやるかというと、いくら字が読めるようになても、まだまだ、一字一字をたどり読みしているような子どもでしたら、一挙に全体を読むそのことだけに力を尽くして、物語の楽しさに加わることが出来ないからです。

ですから、小さい子どもに本を読んでやるには、何よりも物語の面白さや楽しさを、子どもたちに何の条件もなしに、楽々と味わってもらうことに目的があります。

よく、本を読むと、字を覚えるとか、論理をよく呑み込めるようになるとか、いろいろとためになる点を挙げる方もいらっしゃいますが、子どもにとって本の功徳は、物語の不思議な世界に、我を忘れて、ワクワクさせられる、あの楽しみ以外に何があるというのでしょう。

字の読める子にまで、大人が読んでやっては、子どもが本を読む自発性を奪いはしないかと心配なさる保護者の方のは、もっと物語に親しむことを先にしたいと伝えたいものです。

一度ある物語を好きになれば、子どもたちはその本にいくども立ち返って、読み返すものなのです。まず物語の世界と子どもを結び付けてしまえば、子どもの読書は、すぐ次のやすやすたる段階となることでしょう。






誰にでも、幼いころ、繰り返し繰り返し読んだ、想い出の本、宝物のような本があると思います。

私にとっては、『もりのおいしゃさん』(村山桂子/作、あかね書房)

都会暮らしが嫌になった獣医のおっちら先生は、静かな森にひっこします。獣医の仕事を辞めて、田舎でのんびりゆっくりしようと思っていたのですが、山道でうさぎの怪我を治してあげたことから、噂を聞きつけた森の動物たちが、やいのやいのと、おっちら先生を訪ねてきます。根負けしたおっちら先生、動物たちを診てあげます。次から次とやってくる患者。おっちら先生は、また忙しくなてしまい、さらには、森に大きな道路が建設され、騒音に悩まされることに。おっちら先生は都会へ帰ろうと決心しますが…。


いちど絶版になった本ですが、復刻版が出たと同時に購入し、大事にしています。息子にも読み聞かせをしました。

「童話は2度目に読まれる」

これは、童話作家でもあり、劇作家でもある別役実さんのお言葉。

大人になってもう一度それを読んだ時に、はじめてその内容が身にしみるといいます。
そして、子どもに薦めるのですが、その子もまた、大人になって二度目の体験をして、またその子どもに薦める。

良い絵本、素晴らしい童話というのは、そうやって、受け継がれていくのでしょう。

たくさんの素敵な2度目を体験しましょう~