goo blog サービス終了のお知らせ 

子どもの本の会

子どもたちにはありったけのお話をきかせよう。やがて、どんな運命もドッヂボールのように受け止められるように。(茨木のり子)

『はじまりの日』ボブ・ディラン(著)/ポール・ロジャース(絵)/アーサー・ビナード(訳)

2011年03月05日 | 日記
【内容紹介】

『Forever Young』は、1974年に発表されてから老若男女にうたわれてきた、子どもを思うあたたかな名曲。

これまで正式な日本語訳がなかったこの曲を、アメリカ生まれの日本語の詩人アーサー・ビナードが歌える日本語訳にしました。

ロックの歴史的名曲と絵本の新しい出会いを味わえる絵本。(出版社紹介文より)


 きみが 手をのばせば しあわせに とどきますように
 きみのゆめが いつか ほんとうに かないますように
 まわりの 人々と たすけあって いけますように
 星空へ のぼる はしごを 見つけますように

 毎日が きみの はじまりの日 
 きょうも あしたも 
 あたらしい きみの はじまりの日


表紙を開いていきなり「DIG YOURSELF」(ひとりをたのしめ)とメッセージを持ったボブのイラスト。

私は、ここで、もう、ギュッときてしまいました。

「Forever Young, Forever Young. May you stay forever Yonug」というサビの部分を、アーサー・ビナートは、

 「毎日が きみの はじまりの日 きょうも あしたも あたらしい きみの はじまりの日」

と訳しています。

「Forever Young」を、このように訳すなんて、素晴らしい。


巻末に、各イラストの説明がついています。

「この本の絵について」(ポール・ロジャース)
絵を描くにあたって、ぼくはボブ・ディランのいろんな歌をくりかえし聴いた。
たぶん、聴かなかったアルバムはないのではないかと思うくらい。
そしてディランの音楽だけでなく、彼に勇気と影響をあたえた人々のことも思い浮かべ、絵にはそういう人々を登場させた。
ここでぜんぶ説明してしまうと、読者のみなさんにとってじぶんで見つける楽しみがなくなるので、少しだけ絵の中の「どこ?」と「だれ?」を語っておきたいと思う。
ディランの歌を聴きながらページをめくっていけば、きっと新しい出会いがあるにちがいない。(本文より)



ボブ・ディランに影響を与えた人々や物・場所について、細かく描かれていて、イラストで彼の半生を紹介している自伝的な絵本になっています。

巣立ちゆく、子どもたちの背中をそっと押してあげる、そんな1冊。
プレゼントにいかがですか?

You Tubeに、この絵本の一部を動画したものがあります。
ご興味のあるかたはどうぞ~。

Bob Dylan Animated Video for New Kids Book - Forever Young


ボブ・ディランといえば…、
ガロの「学生街の喫茶店」を、思い出すのは私だけ?

君とよく、この店に、来たものさぁ
訳もなくお茶を飲み、話したよ
学生でにぎやかな、この店の
片隅で、聴いていた、ボブ・ディラン~♪



フルで歌えるぞ。










『雪のかえりみち』と『そのつもり』

2011年03月02日 | 日記
『そのつもり』(荒井良二:作)

風がソヨソヨふていている森がありました。

森のなまえは、"そのつ森"。

森にある空き地の有効利用をめぐって、動物たちの会議が延々と開かれていました。

「ぜひ穴を掘って、温泉にしましょうよ」とサル。

「いいねぇ、それ」といって、動物たちは、そのつもりになりました。

そんな感じで、皆の提案することに、いちいち、

「いいねぇ、それ」と目をつむって、それぞれが想像して、そのつもりになるだけで、何も決まりません。

何年も何年も決まりません。

そのうち、牛がやってきて…。



ほのぼのとさせられる1冊。いろいろと想像をめぐらす動物たちの様子がおかし楽しいです。







『雪のかえりみち』(藤原 一枝:著/はた こうしろう:絵)

主人公は1年生の男の子。

3時間目に雪が降ってきて、大雪になりそうだからと、早めの下校となりました。

ほとんどの親が学校に、迎えに来てくれましたが、ぼくのお母さんは仕事しているので、一人でバスに乗って帰ることに。

雪が降りしきる中、心細い状態でバス停でバスを待っていると、見かねた大人が声をかけてくれたり、バスに乗り込むと、手袋を差し出してくれるおばさんがいたり。

ようやく家に着くと、なんと、4年生のお兄ちゃんは、ちゃっかりタクシーで帰っていました(笑)

でも、弟想いのお兄ちゃん、ずぶ濡れの弟の世話をきちんとしてくれました。

やがて、お母さんも帰宅。今日の出来事をおしゃべり。

そして、雪遊び…。






月曜日はちょうど雨がミゾレ混じりの雪に変わり、タイムリーなお話でした。集まってくれた子ども達のほとんどが1年生で、バス通学している子も多いためか、等身大のお話に、じっと聞き入ってくれました。

自分一人で無事家に帰れたという小さい子の達成感と、世の中悪いひとばかりじゃないよ、大人やお兄ちゃんがちゃんと君のこと見守ってくれてるよ、という優しいメッセージが伝わってくる、温かい作品。


このお話に出てくる兄弟のお話かどうかはわかりませんが、同じ藤原一枝さんとはたこうしろうさんコンビの絵本で、

『まほうの夏』

というのがあります。こちらもおすすめ。

東京に暮らす兄弟の夏休みのおはなし。

両親が共働きのため、この兄弟の夏休みときたら、学校のプールとゲームと麦茶、ポテトチップスの毎日。

すっかり退屈していた二人に、いなかのおじさんから「遊びに来い!」とはがきが来ます。
2人は東京を脱出してお母さんのいなかへ。

いなかの子と一緒に、むしとり、川遊び。海水浴に釣り。

食事は、とれたての野菜、新鮮な魚、となりの豆腐屋さんが作った豆腐。

美味しくて、美味しくて、二人の食欲旺盛に。

最後は、真っ黒に日焼けしたいなかの子になって帰京。



『雪のかえりみち』も『まほうの夏』も、子ども達を巡る、いまどきの家庭事情というものが垣間見えて、そちらもまた、ちょっと考えさせられたりして…。