旅のウンチク

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ケーブルカーでドイステープへ?

2016年03月15日 | 旅行一般
 タイ北部の古都、チェンマイの近くにドイ・ステープという山があります。山頂にはワット・プラタート・ドイ・ステープという寺院が建てられています。

 スーパーカブで旅するタイ北部では、到着日翌日はレンタルバイクの手配の目途を立てたり、地図を買ったり、パスポートのコピーを用意したりといった準備を行うためにチェンマイに滞在する事になるのですが、たいていの場合準備は午前中の早い時間に終わるのでそれ以降の時間を使ってチェンマイを観光する事になります。ドイ・ステープはその行き先として一番多く訪れている場所。天候が良ければ山頂からチェンマイの町が一望できておススメなのですが、それだけでなく、古都と山、そして寺院の組み合わせが京都と比叡山(私の出身高校でもあります)との関係のようでなんだか愛着があるというガイドの勝手な事情も絡んでいます。

 ソンテウをチャーターして参道の入口へ至るとそこから山頂へは長大な階段が待ち受けています。今調べてみたら306段あるそうで、ナーガ(大蛇の姿の精霊)をかたどった像が両側の手すり替わり。参詣に訪れた人たちは肩で息をしながら、登っていきます。中には途中で座り込んで休んでいる人もいます。息を切らしながら登り切った先に拝観料の支払い窓口があるあたりも比叡山と同じシステムです。306段をご破算にする心の強さがない限り、もう後戻りはできません。

 チェンマイ市内からここまで来るのに使ったソンテウには時間を区切って帰りまで待たせてあるのであまりのんびり登っているわけにもいきません。

 昔はこの階段を行くしかなかったドイステープ山頂への道も今はすぐ横にケーブルカーが走るようになっていて、足が悪い方や年配の方でも参拝できるようになっています。

 ワット・プラタート・ドイ・ステープを訪れるという目的だけを考えればケーブルカーを使えば時間も短縮できますし、息を切らして汗をかきながら階段を上る必要はないわけですが、それでもここを訪れるほとんどの人が階段を使って登っていきます。それはみな、階段を上る事とケーブルカーで山頂を訪れる事の間に大きな体験の違いがある事に気がついているからだと思います。

 山頂へ至る306段の階段を含めてワット・プラタート・ドイ・ステープは存在するのであって、そこを自分の足で登るという事を含めてがワット・プラタート・ドイ・ステープで得ることができる体験という事です。ここをショートカットしてしまうのはいかにももったいないと思うのです。

 私たちは日々の生活や仕事ではとかく効率の良さを追求することを要求されて、それに慣れています。旅の計画を立てる際もついつい効率の良さや快適さばかりを追い求めるばかりにケーブルカーでドイステープを訪れるに類する計画に走ってしまってはいないでしょうか。

 私は、旅の計画の一番難しいところがここのさじ加減だと思っています。不安を無くすために事前に情報を整理したり、”お得”な情報に踊らされたりしているうちに結局、快適で安全。それでいて空虚な計画を練り上げてしまいがちです。

 私のように旅が仕事となっていると、さらに困惑。お客様の快適さを追求すればするほど、手配の完成度を上げれば上げるほど、旅の良さを削っていってしまうジレンマがあります。

 そのあたりを思い切って軌道修正した企画として考えたのがスーパーカブで旅するタイ北部をはじめとする本当の旅企画のシリーズなのです。それだけに参加される方々は自分を適用させる意識を持っていただく必要がありますが、他ではできない体験ができると思います。


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