旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

文化の寿命

2007年05月14日 | 旅行一般
タイを旅していた時にいつも不思議に思っていた事が一つありました。たいていの場合、現地の習慣はどうやら朝食はお粥か麺類で、朝食時にはその2つの屋台が多く見うけられるわけですが、私個人としてはどちらかと言うと麺類、それもキシ麺に似たクエティオを好んでおりました。うどん風のものは"クエティオナァム"と呼びます。

屋台で出されたクエティオナァムに机の上に配置されている4種類の薬味をふりかけて食べるわけですが、この時、食器として箸とレンゲが付いてきます。麺類を食べなれた日本人の私としてはレンゲでスープを啜りつつ箸で麺を口に運びます。ところが周囲を見回すと地元の人たちは右手に箸、左手にレンゲを持って、両手で麺を口に運ぶのです。

そういえば、タイで出される食器は麺類の屋台以外ではフォークとスプーン。箸が出てくるのは麺類屋台の特徴でもあります。それにしても、わざわざ箸が出てくるのに、この不思議な使いかたはどうなのかと思っていたわけです。ある時などは"その使い方はどこで教わったの?"と尋ねられた事もあって、もしかすると日本のような箸の使い方は非常に行儀の悪い事なのかと心配になったりもしました。

そんなある日、やはり屋台で食事をしていると、また"その箸の使い方はどうやって覚えたの?"という話になりました。"学校で習うのか?"と。私はこの機会を利用して私の謎を解決する事にして、尋ねてみたのです。"もしかすると、こういう使い方はダメなのでしょうか。"

そこで得た答えは"おじいさん、おばあさんの世代まではそうやって使っていたみたいだよ"という事。これが本当の話なのかどうかはわかりませんが、過去にはタイでも箸を使う習慣があったのだけれども、麺類以外では使わないからだんだん捨たれていったというのは事実でありましょう。

本当におじいさん、おばあさんの世代までは箸を我々と同じように使っていたとしたら、たったの2世代で箸をレンゲと組み合わせて使うという文化に移行したという事で、この事には少し驚かされました。なぜならタイ全土、ほとんどで麺類の食べ方がレンゲ&箸であったからです。文化が捨たれるという事はいかに簡単であるかという事です。

それ以来、しばらくの間、日本で誰かと食事をしている時、いつもその人の箸の持ち方が気になって仕方がありませんでした。


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