米大使も逃げ出す北京のすさまじき「PM2・5」…“遷都論”も浮上 http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20140109509.html 2014年1月9日(木)09:16
産経新聞
微小粒子状物質「PM2・5」などによる大気汚染が長期化している中国の北京などから観光客やビジネスマンが逃げ出し始めている。住民の健康だけでなく、経済への悪影響も現実化している。在中国の各国大使館や企業では、職員の中国離れを食い止める動きも出ている。しかし、米国の人気歌手がぜんそく発作でコンサートを中止するなど、大気汚染の猛威を収まる気配はない。インターネット上では、遷都論も浮上している。(木村成宏)
■空気の悪さに耐えられなかった?
「大使の辞任理由を答えてほしい。大気汚染や家庭の問題だなどという噂が出ている。大使が数年で辞任すると、米中関係を維持するのは難しいのではないか」
米国からの報道によると、米国のゲーリー・ロック駐中国大使の辞任意向が明らかになった2013年11月20日、米国務省の会見で中国人記者が辞任理由を明らかにするよう、サキ報道官に詰め寄った。
ロック氏は2年前に中国系アメリカ人として初の駐中国大使に就任。在任中は盲目の人権活動家、陳光誠氏の米国出国に尽力、チベット自治州の視察なども行った。
また、中国政府が何度も中止を求めていた、米国大使館によるPM2・5の独自測定の数値の公表を続けるなどしていたことから、「空気の悪さに耐えられなかった」などとの噂が飛び交っていた。
辞任の理由について、ロック氏は後日、「北京の空気の質は憂慮しているが、それが帰る理由ではない」と、噂を否定した。しかし、逆に、中国メディアが躍起になるほど、北京の大気汚染が深刻化していることを裏付ける形となった。
■重さ15キロの空気清浄機付マスク…
中国の英字紙「チャイナ・デーリー」は2013年11月、「灰色の北京から脱出」とのタイトルで、大気汚染が深刻化している北京から、多くの外国人ビジネスマンや中国人のホワイトカラー層が逃げ出していると、紹介している。
また、現地からの報道によると、30歳代前半の若い世代を中心に、北京に嫌気がさし、給料が下がるのも覚悟で、広東省など南部への転勤を希望するケースが増加しているという。
一方、中国国家観光局によると、1~9月に中国を訪れた外国人観光客は前年同期比で5%減少。別の報道では、今年上半期の北京の訪問客は前年同期比で約15%減少、上海や福建省アモイなどの沿岸地域でも減少傾向があるとしている。
上海市では、マスクとつながった、重さ15キロもあるという空気清浄機を背負いながら、上海市の市場で買い物をする中国人女性が「空気清浄機おばさん」として各メディアで取り上げられるなど、北京以外の都市でも大気汚染が深刻化している。
米メディアなどによると、米国の駐中国大使館は約5千台の空気清浄機を職員の住居用に購入。フランスやフィンランド、オランダなどの各国大使館も同様に空気清浄機を導入するなど対策をとっている。
欧米などの企業では、中国から離れたがるスタッフに、予定外のボーナスを与えたり、一時帰国のための特別休暇を設けたりするなど、引き留めに躍起になっているという。在中国の欧州連合(EU)商工会議所の調査では、約4割の会員企業が「人材の引き留めに苦労している」と回答している。
■北京の遷都論が急浮上
北京周辺では秋から、有害物質を含んだ霧が頻繁に発生、視界悪化による交通事故なども多発している。石炭を使った暖房などで、冬場はさらに大気汚染の悪化が予想されている。
香港紙などによると、米国の女性ジャズ歌手、パティ・オースティンさんが10月、ライブ公演を予定していた北京に到着後、ぜんそくの発作を起こし、公演が中止となった。
ネット上には「北京の空気にいぶされた」「空気が悪すぎて彼女に害を与えてしまった」との書き込みが行われるなど、北京の大気汚染は解決の糸口がみえず嘆くしかまい状況だ。
北京市衛生当局によると、北京市の10万人当たりの肺がん患者は2002年が39・56人だったのに対して、11年には63・09人にまで増加しているという。
こうした末期的な環境汚染が続くなかで、ネット上では、北京が首都である必要性を問う遷都論まで飛び出している。
中国に限らず、日本でも遷都は大規模な争乱などに伴って行われるが、次ぎに中国で遷都が行われるときは、中国共産党に代わる新たな王朝が誕生しているかもしれない。
インドもPM2.5深刻 空港視界ゼロ、空の便に乱れ http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20140110102.html 2014年1月10日(金)08:16
産経新聞
【ニューデリー=岩田智雄】インドの首都ニューデリーで、毎冬発生する微小粒子状物質「PM2・5」などによるスモッグのため、空の便が大幅に乱れている。今月6日未明から朝にかけて、デリー空港は視界がほぼゼロとなり、多くの便に欠航や遅れが出たほか、近郊の空港に目的地変更した旅客機がスモッグの中、着陸時に翼の一部を折るなど深刻な影響が出た。
この日のスモッグは過去4年間で最悪の状態。タイムズ・オブ・インディア紙によると、デリー空港では5日から6日にかけて137便が欠航、52便が着陸できず近隣空港に目的地を変更した。百数十人乗り国内線エア・インディア機は、ジャイプール空港に目的地変更したが、そこでも視界不良となった。残り燃料がわずかしかなく着陸を強行したところ、滑走路を外れてタイヤがパンク、翼の一部が折れた。乗客に深刻なけがをした人はいなかったという。
米エール大が2012年に発表した研究結果によれば、健康に影響を及ぼす大気汚染はインドが中国より深刻な世界最悪の状況だった。インド政府の発表では、デリー首都圏におけるPM10(PM2・5より粒子の大きい物質)の年平均濃度は年々悪化しており、10年時点で1立方メートル当たり約260マイクログラムと、世界保健機関(WHO)の環境基準の13倍となっている。PM2・5も年平均が89マイクログラムとWHOの基準の約9倍だった。日本の指針では1日平均が70マイクログラムを超えると不要不急の外出を減らすべきだとされている。
WHOの専門機関は昨年10月、呼吸器系や循環器系への影響が懸念されるこうした粒子状物質を発がん性がある大気汚染物質の一つに分類した。デリーなどでは気温が下がる冬の夜間から未明に地表の上昇気流がなくなり、滞留した大気汚染物質や霧でスモッグが発生する。