梅田百貨店戦争初の脱落…三越伊勢丹売り場縮小
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20140122-OYO1T00239.htm?from=newslist
2014年1月22日
読売新聞
JR西日本と三越伊勢丹ホールディングス(HD)は21日、販売不振が続いていたJR大阪駅ビル内の百貨店「JR大阪三越伊勢丹」の売り場面積を約4割に縮小し、2015年春に再オープンすると発表した。多数の専門店を誘致し、同じ駅ビルでJR西の子会社が手がける専門店街「ルクア」との一体運営に切り替える。
計画では、百貨店の売り場面積(約3万3000平方メートル)の約6割の売り場を撤去し、若者向けの衣料店など新たに誘致する専門店に置き換える。百貨店の売り場と専門店が同じフロアで入り交じる形になり、ルクア(約2万平方メートル)と一体化させる。
60億円をかけて今年夏に改装を始める。工事中は食品売り場やレストラン街を除いて休業する。百貨店部分は、衣料品や雑貨などの売り場を残す一方、呉服や美術品は縮小する方向だ。現在の売上高はルクアとの合算で年660億円だが、改装後は800億円を目指す。
大阪では、大阪駅周辺に加えて心斎橋や天王寺にある大型百貨店との競争も激しく、「大阪百貨店戦争」と呼ばれている。特に、JR大阪駅周辺の梅田地区では、大阪三越伊勢丹に加えて阪急百貨店梅田本店など計四つの百貨店が競い、東京・新宿を上回る激戦区となっている。大阪三越伊勢丹は、百貨店として生き残ることを事実上、断念する。全国で唯一、「三越伊勢丹」のブランドを冠した店舗名を変えることも検討する。
人気ブランドそろえられず
大阪三越伊勢丹は11年5月、大阪駅周辺に「最後発」として出店した。売り場面積が競合店よりも狭く、人気ブランドをそろえられない弱みを抱え、「アベノミクス効果による高額品ブームに乗りきれなかった」(アパレル大手幹部)。また、ライバル店関係者は「高級路線は阪急と重なり、『食品は阪神』のような特徴をうまく打ち出せなかった」と指摘する。当初は年550億円の売り上げ目標を掲げたが、13年3月期は303億円にとどまった。
昨年春にJR大阪駅北側に大型複合施設「グランフロント大阪」が開業したことでさらに顧客獲得競争が激しくなり、百貨店形態のままでの立て直しは困難と判断した。
大阪市内で記者会見した三越伊勢丹HDの杉江俊彦常務は「(周辺の)百貨店と同じようにやってもうまくいかない。百貨店と専門店を一緒にした形態を模索する試金石にしたい」と述べた。
最後発のハンデ覆せず
JR大阪駅ビル内の百貨店「JR大阪三越伊勢丹」が、2011年5月の開業から3年足らずで事実上、百貨店形態での存続断念に追い込まれた。大阪三越伊勢丹の脱落は、「大阪百貨店戦争」の行方に影響しそうだ。
大阪三越伊勢丹の12年度の売上高は303億円。競合する阪急百貨店梅田本店(1446億円)と阪神百貨店梅田本店(892億円)、大丸梅田店(628億円)に大差を付けられていた。販売不振が響き、運営会社は約100億円の債務超過に陥っている。
「伊勢丹ブランド」が浸透していない大阪で、消費者を引きつける魅力を発信できずに苦戦した。兵庫県宝塚市の女性会社員(31)は「買い物する場所がたくさんあり、なかなか大阪三越伊勢丹には足が向かない。好きなブランドも入っていない」と語る。
また、三越伊勢丹ホールディングス幹部は「他店の顧客を奪いきれなかった」と漏らす。最後発という弱みもあって、「カードの割引もあるから、ずっと阪急で買っている」(61歳の主婦)というような、長年の顧客層を切り崩すのが難しかった。
現在の顧客層は50、60歳代が中心だが、ファッション性の高い衣料ブランドの導入で、積極的に30、40歳代の取り込みを図る。
だが、店舗運営を抜本的に見直すことで、従来の顧客の足が遠のく恐れがある。若い世代ほど流行ファッションの移り変わりが早いうえ、単価も低い。
今はアベノミクス効果で、高額品が売れ、一息ついている百貨店業界も、若者が「百貨店離れ」するなど、先行きに不安を抱えている。
梅田地区の競争もこれで終わったわけではない。同じグループの阪急百貨店に顧客を奪われている阪神百貨店も厳しい。阪急の増床・全面開業後は売上高が前年同月を下回っている。さらに、14年3月には大阪・阿倍野に「あべのハルカス近鉄本店」が、日本一の10万平方メートルの売り場面積で全面開業し、顧客争奪がさらに激しくなる。
流通業界に詳しい野村証券の正田雅史アナリストは「大阪三越伊勢丹が、百貨店業界と比べて比較的業績が好調な専門店を導入するのは当然の流れだ。ただ、他の商業施設も含めた店舗過剰は深刻で、今後も百貨店の業態転換や閉店など、淘汰とうたが予想される」と分析している。
新宿上回る百貨店過密地域
JR大阪駅周辺には、現在、阪急百貨店梅田本店やJR大阪三越伊勢丹など4百貨店がひしめく。合計の売り場面積は20万平方メートル以上ある。同様に、伊勢丹新宿本店、高島屋新宿店など4店が立ち並び、日本有数の商業集積地として知られる東京・新宿を上回る過剰ぶりといわれる。
伊勢丹新宿本店は、2013年3月期の売上高が2368億円と、日本一の売上高を誇っている。国内外の一流ブランドをそろえ、流行に敏感な女性だけでなく、「メンズ館」などの売り場を工夫し、若い男性の人気も集めている。
ただ、新宿では伊勢丹、高島屋のほかに、三越と京王、小田急両百貨店の5店がしのぎを削った。その結果、2005年に老舗の三越新宿店が専門店ビルに衣替えした末、12年に閉店に追い込まれた。
関東の名門、大阪で惨敗…大阪から三越伊勢丹ブランド消える可能性も
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/snk20140121552.html
2014年1月21日(火)17:17
産経新聞
JR西日本と三越伊勢丹ホールディングスは21日、不振が続くJR大阪三越伊勢丹の売り場面積を約4割に大幅縮小し、隣接の専門店街「ルクア」と一体運営することを柱とする再建策を発表した。また、再建に伴い、店舗名も変更する方針を明らかにした。新店舗の名称は未定としているが「三越伊勢丹」のブランド名が消える可能性もある。
空いたスペースに人気の専門店を入れて建て直しを図る。平成27年春に改装オープンし、28年3月期の売上高はルクアと合わせ約800億円を目指す。
大阪市内で記者会見した両社の幹部は、縮小、撤退する分野として呉服、美術、リビング関連を上げた。収益性が高い衣料品、雑貨部門は残す方向という。