安倍論文(1)南シナ海は北京の湖である
http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/agp-20130129-11759/1.htm
2013年1月29日(火)9時57分配信 アサ芸プラス
「経済再生」を掲げる安倍政権で、もっぱら注目を浴びているのは「アベノミクス」なるもの。ところがその一方で、なぜかほとんどメディアでは報道されない「重大方針」を発信していたのだった。テーマは、日本の領土侵略行為を繰り返す巨大隣国の撃退。周到かつ過激なその秘策の全貌を明らかにする。
〈2007年夏、日本の総理としてインド国会で演説した私は「2つの海の交わり」について話し、集まった国会議員の拍手喝采と賛同を得た。あれから5年を経て、私の発言は正しかったということをいっそう強く確信するに至った〉
これは昨年12月27日付で、チェコに本部を置く国際言論NPO団体「プロジェクト・シンジケート」のウェブ上に掲載された「アジアの民主主義的安全保障ダイヤモンド」と題する英語の論文。「私」とは、安倍晋三総理(58)のことである。
「プロジェクト・シンジケート」は、日本を含む世界150カ国以上の新聞社、通信社と提携、配信する媒体であり、世界的投資家ジョージ・ソロス氏、米マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏ら世界の要人が寄稿者として名を連ねる格調高い機関。ところが、あまりに過激で挑発的な内容のせいなのか、一国の総理が世界に向けて訴えた内容を、なぜか日本のメディアはほとんど取り上げていない。
まず、冒頭の「インド国会での発言」を振り返ろう。
〈日本はこのほど貴国と「戦略的グローバル・パートナーシップ」を結び、関係を太く、強くしていくことで意思を一つにいたしました。日本とインドが結び付くことによって、「拡大アジア」は米国や豪州を巻き込み、太平洋全域にまで及ぶ広大なネットワークへと成長するでしょう〉
日印両国の結託が「2つの海」、すなわち太平洋とインド洋の交わりとなる、との主張。実は、これこそが、中国の脅威を封じ込めるための方策なのである。安倍論文を読み進もう。
〈太平洋における平和、安定、航行の自由は、インド洋における平和と安定、航行の自由と切り離すことはできない。アジアにおける最古の海洋民主主義国家たる日本は、両地域の共通財産を保護するうえで、より大きな役割を担うべきである。にもかかわらず、南シナ海はますます『北京の湖』と化しているように見える。(中略)南シナ海は、中国海軍が核弾頭ミサイルを搭載した潜水艦の基地とするに十分な深さがあり、隣国を恐れさせる新型空母もまもなく登場するだろう〉
南シナ海に強引に進出している中国は、西沙諸島ではベトナムと、南沙諸島ではフィリピンと、領海紛争を起こしている。政治部デスクが解説する。
「安倍論文にあるように、南沙諸島で中国はそろそろ空母を常駐させるつもりです。尖閣と同じように軍艦を行き来させ、航空機をスクランブル発進させるなどして制圧していくのです」
安倍論文はそんな中国を牽制し、「北京の湖」という皮肉タップリの表現を用いて批判しているのだ。
安倍論文(2)東南アジア歴訪で包囲網形成
http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/agp-20130130-11763/1.htm
2013年1月30日(水)9時57分配信 アサ芸プラス
安倍論文はここで一気に語気を荒らげる。
〈それこそ、中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で日々行っている演習に日本が屈してはならない理由である。(中略)こうした船の存在を日常的に示すことで、中国は尖閣諸島周辺の領有権を既成事実化しようとしているのだ〉
これはすなわち、度重なる中国船の尖閣海域出没や航空機の領空侵犯などの中国が仕掛けるケンカに対しては、真っ向から立ち向かうという「宣戦布告」である。前出・政治部デスクが言う。
「日本は東アジアの中で、制海権をきちんと確保したい。南沙諸島を中国に取られることは、マラッカ海峡を通過する際の大きな支障となります。ひいては、尖閣のある南西諸島の領海権もハッキリと確立したい。そのためには、中国の台頭は許しがたいのです」
1月3日、麻生太郎副総理兼財務・金融担当相(72)はミャンマーを訪問。続いて9日から14日にかけては、岸田文雄外相(55)がフィリピン、シンガポール、ブルネイ、オーストラリアを連続訪問した。さらに畳みかけるようにして、安倍総理も16日、ベトナム、タイ、インドネシア3カ国訪問へと出発している。前出・デスクが続けて説明する。
「政権発足後、東南アジアのASEAN10カ国のうち8カ国に3人の閣僚が即時、出向いた。まだ国会での施政方針演説も経ないうちにこうした積極外交を展開するのは異例のことです。この3閣僚の東南アジア外遊は、他ならぬ中国包囲網形成の合意を得ることであり、実際にその話し合いを行った。安倍総理は『インドにも行きたい』と言っており、包囲網をインドにまで広げるつもりで、それが論文の『太平洋とインド洋における平和、安定、航行の自由』につながる。安倍総理は麻生、岸田両氏に『中国を封じ込める。中国の海洋進出の出口を封鎖せよ!』との大号令を発して送り出すなど、本気です」
事実、安倍総理は出発に際して、メールマガジンで「今回の訪問では、東南アジアの国々との戦略的なパートナーシップを深めてきたいと思っています」と宣言していたのだ。
幸いにしてフィリピン、ベトナムは中国との間で海上の領有権を巡って衝突しているうえ、ベトナムは79年に中国と戦争をしていることもあり、歴史的に反中感情が強い。インドも国境、領土問題を抱えるなど、反中国で手を結ぶのは容易だった。
安倍論文は東南アジア諸国を押さえたうえで、さらに踏み込んだ作戦に言及。
〈東シナ海と南シナ海で進行中の紛争は、国家的な戦略的視野を広げるべき日本の最優先外交となる。(中略)私はオーストラリア、インド、日本、そしてアメリカのハワイをもってして、インド洋から西太平洋にかけての海洋権益を保護するダイヤモンドを形成する、という戦略を描いている〉