管内ロボットが、塗膜を剥離できるかどうかも心配だったが、もう一つの大きな心配は、この長距離でバキューム装置がきちんと負圧を発生させる事が出来るかどうかだった。
工場内で行った試験では、無事に負圧が発生したが、現実的に現場で使えるかどうかは別問題だ。しかし、220メートルという長距離にも関わらず、バキューム装置はきちんと負圧を発生させていた。
「いやぁ、キーちゃん、お宅のブロアーは凄いね。この距離できっちりと負圧を発生させて、且つ、塗膜片と汚水を回収するんだから、大したもんだよ」
佐野が感心してロボットを見ている。ハイドロキャットの吸盤からは、今の所、一片の塗膜片も、一滴の汚水も漏れていない。
「ウチのフェラ子ちゃんは、そのへんの風俗嬢には負けませんよぉ!」
「はははは、何、いつからあの機械は、『フェラ子ちゃん』って名前になったの?」
「今日からです。この強烈なバキューム能力に敬意を表して。大澤さん、今日からウチのバキューム装置は、『バキュームフェラ子ちゃん』って名前になりましたから!」
「いっ、いや、ウチは構いませんけど…」
「あ、工事の仕様書の使用機器の名称も変更しないとなぁ」
「がはははは!本当にこの男は…」
後で小磯が爆笑している。
「それよりも木田君、これ以上スピードが上がらないんだけど」
小磯が手に持っているコントローラーには、恐ろしい数字が表示されていた。
「おお?周波数13Hz(ヘルツ)って…」
私は自分の目を疑った。想像以上の遅さだ。
コントローラーに表示される周波数は、そのままモーターの回転速度とリンクしている。周波数を下げればモーター、つまり車輪の回転速度は低下し、周波数を上げれば、モーターと車輪の回転速度も上昇する。
「あ、この辺は取れにくいなぁ」
小磯はブツブツと言うと、さらに周波数を落とした。
「11、いや12Hzで行けるかなぁ…」
「小磯さん、その数字はマジですか?」
私は小磯のコントローラーを覗き込んだ。
「がははは、ほら、見なよ」
「うはは、泣けてきますね」
通常、標準的な塗装なら、ハイドロキャットは20Hz前後の周波数で塗装を剥離出来る。
「泣ける前に、こんなにゆっくりだと眠くなっちゃうらしいよ」
ハルが管の中でしゃがみ込んで、ジリジリと動くキャットをじっと見ている。
「お、この辺からは、少し上げても行けそうだぞ」
小磯が再び周波数を上げた。
「何ヘルツですか?」
「うん?13Hzだけど、14、は無理か…」
小磯は色々と試行錯誤をしているが、どうもこれ以上はスピードは上げられない様だった。
管内ロボットが一回転すると、前山が指示を出した。
「小磯さん、ジェットを止めたら、先にブレイカーでバキュームの負圧をブレイクさせて下さい」
「ハイよっ!」
小磯はジェットを止めると、ボールバルブの赤いレバーを一気に開く。
「ギュぼぉおおおおお!」
ハイドロキャットのボディ内で発生していた負圧が、ボールバルブから大量の空気を吸わせる事によって、ブレイクした。
「ここでエアシリンダーのエアーを抜いて下さい」
小磯は前山の指示に従い、エアシリンダー用のレバーを反対側に倒す。
「シュコシュコシュコシュコ」
またしても脱力する様な音を出しながら、エアシリンダーが縮まり、天井からキャットが離れる。水管橋の内部には、幅300mmの塗装を剥がされたリングが出来上がっていた。
エアシリンダーが完全に縮むと、今度は管の円周に対して垂直方向に取り付けられた車輪が接地する。
「木田君、オーバーラップは50mmでいいの?」
小磯とハルが、台車を手で動かし、キャットのポジションを決めようとしている。
「本当は25mmで行きたいんですけど、難しいですよね」
「多分、無理だね。この水管橋だって、真円じゃないだろうしね」
「じゃ、50mmで」
全長200メートルの水管橋は、幅20センチ刻みで剥離していくことになった。
工場内で行った試験では、無事に負圧が発生したが、現実的に現場で使えるかどうかは別問題だ。しかし、220メートルという長距離にも関わらず、バキューム装置はきちんと負圧を発生させていた。
「いやぁ、キーちゃん、お宅のブロアーは凄いね。この距離できっちりと負圧を発生させて、且つ、塗膜片と汚水を回収するんだから、大したもんだよ」
佐野が感心してロボットを見ている。ハイドロキャットの吸盤からは、今の所、一片の塗膜片も、一滴の汚水も漏れていない。
「ウチのフェラ子ちゃんは、そのへんの風俗嬢には負けませんよぉ!」
「はははは、何、いつからあの機械は、『フェラ子ちゃん』って名前になったの?」
「今日からです。この強烈なバキューム能力に敬意を表して。大澤さん、今日からウチのバキューム装置は、『バキュームフェラ子ちゃん』って名前になりましたから!」
「いっ、いや、ウチは構いませんけど…」
「あ、工事の仕様書の使用機器の名称も変更しないとなぁ」
「がはははは!本当にこの男は…」
後で小磯が爆笑している。
「それよりも木田君、これ以上スピードが上がらないんだけど」
小磯が手に持っているコントローラーには、恐ろしい数字が表示されていた。
「おお?周波数13Hz(ヘルツ)って…」
私は自分の目を疑った。想像以上の遅さだ。
コントローラーに表示される周波数は、そのままモーターの回転速度とリンクしている。周波数を下げればモーター、つまり車輪の回転速度は低下し、周波数を上げれば、モーターと車輪の回転速度も上昇する。
「あ、この辺は取れにくいなぁ」
小磯はブツブツと言うと、さらに周波数を落とした。
「11、いや12Hzで行けるかなぁ…」
「小磯さん、その数字はマジですか?」
私は小磯のコントローラーを覗き込んだ。
「がははは、ほら、見なよ」
「うはは、泣けてきますね」
通常、標準的な塗装なら、ハイドロキャットは20Hz前後の周波数で塗装を剥離出来る。
「泣ける前に、こんなにゆっくりだと眠くなっちゃうらしいよ」
ハルが管の中でしゃがみ込んで、ジリジリと動くキャットをじっと見ている。
「お、この辺からは、少し上げても行けそうだぞ」
小磯が再び周波数を上げた。
「何ヘルツですか?」
「うん?13Hzだけど、14、は無理か…」
小磯は色々と試行錯誤をしているが、どうもこれ以上はスピードは上げられない様だった。
管内ロボットが一回転すると、前山が指示を出した。
「小磯さん、ジェットを止めたら、先にブレイカーでバキュームの負圧をブレイクさせて下さい」
「ハイよっ!」
小磯はジェットを止めると、ボールバルブの赤いレバーを一気に開く。
「ギュぼぉおおおおお!」
ハイドロキャットのボディ内で発生していた負圧が、ボールバルブから大量の空気を吸わせる事によって、ブレイクした。
「ここでエアシリンダーのエアーを抜いて下さい」
小磯は前山の指示に従い、エアシリンダー用のレバーを反対側に倒す。
「シュコシュコシュコシュコ」
またしても脱力する様な音を出しながら、エアシリンダーが縮まり、天井からキャットが離れる。水管橋の内部には、幅300mmの塗装を剥がされたリングが出来上がっていた。
エアシリンダーが完全に縮むと、今度は管の円周に対して垂直方向に取り付けられた車輪が接地する。
「木田君、オーバーラップは50mmでいいの?」
小磯とハルが、台車を手で動かし、キャットのポジションを決めようとしている。
「本当は25mmで行きたいんですけど、難しいですよね」
「多分、無理だね。この水管橋だって、真円じゃないだろうしね」
「じゃ、50mmで」
全長200メートルの水管橋は、幅20センチ刻みで剥離していくことになった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます