どんぴ帳

チョモランマな内容

しし肉親父(その弐)

2009-04-29 02:48:46 | 長七郎観察日記
 我々の注文が通っているのかが不安だったが、親父はコーヒーを淹れることに全神経を集中させていた。

「えーっと、コーヒー、コーヒー…、コーヒーはいくつだったかな」
「五つよ、五つ、五人だから五つね!」
 今度はおかみさんじゃなく、熟女が代わりに答える。
「えー、コーヒーは五つ、五つと…」
 親父はコーヒーを淹れると、熟女の前に運び始める。
「えー、一つ、二つ…、これで五つ」
「おじさん?一つカップが空よ?」
「おお!忘れちまったか…」
「・・・」
 親父のあまりのナイスボケに、熟女たちも苦笑いを浮かべる。
「ほらあんた、レバー運んで!」
 気付くとおかみさんが、我々が注文した『ししのレバー焼』の調理を完了させていた。
「えっとぉ、レバーは誰だったかな…」
「・・・」
 親父は私の目の前で、皿を手にしてウロウロとしている。五分前に私と盛り上がった『しし肉談議』は一体なんだったのだろうか。
「おじさん、ここ、ここだよ」
「おお、こちらだった?」
 親父はレバーが載った白い皿を、我々の前に置く。
「ふーん、これね」
 私は一口食べてみる。
「ふんふん、なるほど」
 生レバーほどの鮮烈さは無いが、あっさりとして食べやすい。
「味付けが『焼肉のタレ』ってのがさらにな…」
 食べなれた焼肉のタレは、どんな肉でも味を均一化してしまう特徴がある。だが、別段それが嫌な訳では無い。
「なるほどね、ま、こんな感じか」
 とりあえず一皿が空になる。あとは『しし肉うどん』だが、まだ出来上がる気配は無い。

 五分後、私は親父にオーダーを催促した。
「あの、しし肉うどんは?」
「…は?」
「しし肉うどんを二つ頼みましたよね」
「しし肉うどん…?」 
 鳩が豆鉄砲を喰らうとは、親父のこういう顔のことを言うのだろうか。
「ええ…」
「食べるの?」
 親父が初めて聞いたような顔をする。
「え、ええ、そのつもりです」
「食べる?」
「ええ、二つ」
「二つ?」
「二つお願いします」
 親父は厨房のかみさんにそれを伝える。
「!?」
 おかみさんまで驚いた顔で我々を見る。
「なんでやねん…」

 果たして我々はしし肉うどんを食べられるのだろうか。
  



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2 コメント

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困った親父 (カミヤミ)
2009-05-04 01:42:44
さっきタクシーに乗ったら、多分、70近い人でして 車中の会話で「N県は風俗がないのに独身で、どーやって性欲を処理してるんだっ!ピ○サロ復活しろ!昔は、一本39(多分値段)ありがとう!だったんだよ!」と熱く語られちゃいました。なんか、デリヘル呼びたくなりました。
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出張ヘルメット (どんぴ)
2009-05-04 18:22:51
 昔、S市にはピンサロと怪しい出張しかありませんでした。
 R社を辞めた後に仕事で訪れると、レンタルルームにヘルス嬢と入るシステムが流行っていました(笑)
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