DK大衆食の旅3

路麺好きがそんな感じで巡る大衆食の旅。

マルニパン店@鐘ヶ淵

2017年04月04日 | 大衆パン
鐘ヶ淵を貫く酎ハイ街道。
かつて昭和の労働者の夜がそこにはあった。

ま、地元民は元々そんな呼び方はしないのだけれど。
今や町の主幹産業の廃止と道の拡張工事により壊滅状態。それこそ酎ハイ街道などと呼べる状況にはないのである。



但し、そんな道すがらにその当時の面影をちらほらとみるコトはできる。
例えばココ。マルニパン店。



看板やそれらしき雰囲気はない。
ただこの黒板だけがパン屋である事を示す。



中へと進むと、やっとパン屋、というか昔のお菓子屋のような雰囲気で



ショウケースの中には飾らないパンが置かれているのである。

焼きそばロール80。コロッケパン80。
おそらく自分の知る限り、最も安い惣菜パン処。



このパンを食べて働き、仕事を終えて、この道筋に数多あった大衆酒場で酒を飲む大衆の姿。削ぎ落とされた実(じつ)の世界である。

そしてそれは、ノスタルジーなどと語るほど遠い昔ではない。
たかだか21世紀の初めまではこの町で普通にみられた光景であり、このパンはその世界を今に伝える証人でもある。



具の見当たらない、しかしたっぷりと焼きそばの詰まったロールをこぼれ落ちない様に食べた。

時代のうねり、町の歴史、そして大衆の心。
ただ安いとかうまいとかだけではない、このパンの意味を感じていたのであった。