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同人戦記φ(・_・ 桜美林大学漫画ゲーム研究会

パソコンノベルゲーム、マンガを創作する同人サークル

月に兎を探して【律氏】

2010年12月11日 | 短編小説
 駅前広場の時計の時針が、月を透かして23時を見る。
 年が明けるまで、もう1時間もない。
「ちくしょう。最後まで面倒かけやがって」
 息が切れてきた。足もほとんど動かない。
 あいつの行きそうなところは大体探した。
 探していない場所といえば、あそこだけ。
「いてくれよ」
 雑踏に捨てられた空き缶と一緒に、雪が寄せられている。
 歯を食いしばり足に鞭打つと、俺はそれを蹴散らし、走り。
 そして、辿り着く。
 小さな神社。
 名前も縁も知らない。
 わかっているのは、ここがあいつと会った最初の場所で、別れの場所ということだけだ。
 “雪が積もっていませんね”
 彼女の言葉が鼓動に重なり、浮かんでは消えていく。
「白兎」
「……慎也さん」
 まるで、かくれんぼだ。
 鬼に見つかってしまったように悔しげな表情を浮かべた白兎は、月を見上げる。
「皮肉ですね。来年は兎年だというのに、私は空へ戻らなければいけない」
 赤い瞳を、濡れた睫を俺に向ける。
「あなたと……別れなければいけない」
「もう一緒にはいれないのか」
「ええ」
 わかっていた。
 だが、口が勝手に動いた。
 白兎はあっけなく言う。それとは裏腹、口元が震えていた。
 俺は雪の残照のような儚かさを見つめた。
 いつまで見つめ合っていたか。このまま、世界が止まればいいのに。唱えれば願いの叶う魔法の呪文があれば、なんでも代えるだろう。
「あ……」
 頬に垂れる涙の雫が光る。
「白」
 村雲に隠れた月は、腕で拭う姿の彼女を消してしまうようで。
 思わず抱き寄せた。
 腕の中で震える体はひどく切なくて。自然と涙が溢れてきた。
「わたし、忘れません」
「俺もだ」
 明くる年まで、あと数分。 
 白兎と別れるまで、あと数分。
「信也さん。最後にお願い聞いてくれますか」
 こくりと頷く。

 二人の影が重なる。
 彼女の背伸びが彼の唇に届く時、月光が照らし出す。
 世界は年を跨ぎ、人の運命は廻り続ける。   



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 来年は兎年ですね。
 ということで、兎をモチーフに。
 ヒロインを雪兎にしようかと思ったのですが、そうするとカードキャプターさくらのあのキャラのイメージがインサートしそうで。

 もうすぐクリスマスですね。
 ま、関係ないですけどね。
 

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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律氏氏へ (アサヒ)
2010-12-13 23:55:00
クリスうんらたってモザイクかかってて読めないんだけど…(汗
来年は兎年ということでブログのTOPイラストに月面兎兵器ミーナのキャラクターでも描こうかな?需要あるかな?
返信する
挿絵 (憂菜)
2010-12-18 20:24:20
ちょっと描きたくなった(*´ω`)

…時間ないけど。
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