雲は白いものだと思った。
真昼の空に浮かぶそれは、月よりも白いもので、それはタンポポの綿毛のように、ほわほわしている。乗ってみたいものだ。そのほわほわに。きっと気持ちがいいのだろう。
いつもと同じように、ガードレールの横を歩きながら、私はそんなことを考えていた。
「ゆえっちぃ!」
その声はっ、
「しのぶッ。ヤメロ!」
「ええ~、じゃあ、湯江子ちゃん」
呼び方じゃない……。
「もういいよ。で、なんだ?」
「一緒に登校しよっ?」
しのぶはもうすでに私の腕に絡み付いていて、離れない。
なんだかなぁ。私は、今日も今日とて、こいつのためにため息を吐くのだ。難儀だ。非常に難儀だ。どうにかならないものだろうか?
とはいえ、同級生として、クラスメイトとして、姉妹としてしのぶには優しくしなければいけない。いや、優しくさせてもらえているんだ、私。
私には負い目があるのに。
「明日って、ほら、お母さんと一緒にお買い物でしょ。どうしようか? あたし、この前買ったチュニックがあるんだけどぉ。でもねぇ、色が春っぽくないのぉ」
そんな話を延々聞かされるうちに、学校に着いてしまった。
私立アイリシア学園。
中学校・高等学校を備えた、総生徒数5000人超のカトリック系宗教学校だ。
学園を有するこの貴意居市は、構造改革特別区域に指定されており、学術や経済の発展が著しい。ここが未来都市といわれる所以でもある。
しかし、小さな頃からこの未来都市に暮らす私達にとって、たとえば自律型アンドロイドが交番で勤務をしているような光景は当たり前であり、それがすごいとは感じたこともなかった。
「今日から、同じクラスだね」
「え、ああ、なんだって?」
「もうっ、ゆえっちってば、話し聞いてない! 今日から、あたし達、高校三年生だよ」
「ああ、そうだったな」
にんまりと笑ったしのぶの笑窪に、私は調子を合わせて微笑んだ。
つづく
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律氏です。
そろそろ1000字小説にも飽きてきたので、ここは思い切ってということで、原稿用紙100枚くらいの中編小説を、1000字で区切ってあげてこうかな、とか思います。
まぁ、僕の書き方は、冒頭を書く時はプロット白紙の状態なので、これからどうなるかなんて、神の味噌汁です。
今作の主人公は、ちょっと男勝りな女の子と、天真爛漫な女の子二人で、書いたことが無い女の子の物語です。
ちょっとワケありっぽい、湯江子ちゃんですが、彼女にいったい何があったのでしょう?
とことで、この続きは、またいずれ。
追伸
今年度は出来る限り顔を出したいかな、とか思っています。
一年生……って、今は二年生か、がどれだけ僕の顔を覚えていてくれるか、内心怖くて怖くて(おそらく誰も覚えていない)
色々大変だと思いますが、がんばりましょー