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同人戦記φ(・_・ 桜美林大学漫画ゲーム研究会

パソコンノベルゲーム、マンガを創作する同人サークル

クリスマスが近いので、短編小説 【律氏】

2010年12月21日 | 短編小説
『猫とクリスマス』


 猫の尻尾の中にはクリスマスが詰まっているのだよ。
 西宮の言葉には真実味があるようで、その実なにも意味がないことがわかる。イルミネーションの駅前を歩く猫を見つめて言うのだ。
 彼女の前には僕とコーヒー。湯気が左右に揺れて、僕の縦じわの刻まれた眉間を隠す。
「クリスマスってなんだよ」
「君は12月25日も知らないのかね」
 やだやだやだね、と言う。
 僕もやだやだ。ふるふる首を振ると、振り返された。
「君はクリスマスがあんな赤服の白髭に詰まっているとでも思ったのかね。あれはただのビール腹だよ。探ったって腹黒しか出てこない」
「サンタクロースをそこまで罵倒すること無いだろ。猫はクリスマスと関係無いしな」
「それこそ、冒涜だよ。猫への冒涜だ。猫はあんなに愛嬌を振りまいて、今日のクリスマスを盛り上げようとしているのに」
「なぜ猫?」
「ん。猫が好きだから」
「お前の好き好きじゃねえか」
 特に尻尾の方がね。
 と。
「とにかくクリスマスは猫に限る。私は猫が好きだ」
「そりゃ、よかったね」
「ところで君は猫が好きかい?」
「どちらかといえば、犬派だな」
「猫の方が好きだろ」
「決め付けんな」
 ここが猫カフェってことを忘れるんじゃない。
 と。
「なににせよ、クリスマスは好きなものと過ごすのが一番さ」
 西宮は言って、足に擦り寄ってきた斑の猫の尻尾を掴む。
 ニャーと牙をむく猫のことなんてお構いなく、頬を寄せていく。
「なぁ、それだと俺もその枠内に入るんだが、いいのか?」
「なんか言ったか?」
「なんでもねえ」
 ため息は季節がら白く濁っている。外に出ればもっとだろう。 
 その中に今の自分の想いを見つけようとして、透かして西宮の笑顔が見えた。
 あまりに無邪気だったのでほとほとからかう気にもなれない。
 今日は、好きなものと過ごすのが一番か。言ってくれる。
 猫の尻尾はぐりゃりと曲がり、西宮をまた笑顔にする。見惚れてしまう。
「もしかしたら、猫の尻尾には本当にクリスマスが入ってるのかもな」
「もしかしたらじゃなくて、絶対なのさ」
 自信を表すように胸を張った西宮の手の中で、諦めたようにぐったりとする猫がもうどうにでもしてくれと言うようにニャーと啼いた。


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 ああ、寒い。
 今年は夏、あんなに暑かったのに。今年の漢字『暑』だよ!
 なんだか東京都の条例も通ってしまうみたいで嫌なニュースばっかの年の瀬。
 みなさんはどうお過ごしですか?

 なんだかんだ、もう幾つ寝るとお正月です。
 風邪を引かないように気をつけてください。では。