泰西古典絵画紀行

オランダ絵画・古地図・天文学史の記事,旅行記等を紹介します.
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美術館での絵画写真の撮り方

2009-08-09 18:42:01 | 美術品の保守
 美術館の中で写真を撮るには,当たり前ですがフラッシュをたいてはいけません.先だって訪れたマウリッツハイス美術館も昨年から写真撮影禁止となっていたのですが,係員に理由を尋ねたところ「いくら言ってもフラッシュ撮影してしまう人がいるので絵に良くないから」という返事でした.ニスの塗られた油彩画にどの程度フラッシュの影響があるかについては疑問もあるのですが,フラッシュ撮影禁止から写真撮影禁止になっていくのは残念でなりません.最近,アムステルダム国立美術館でもプラド美術館でも撮影禁止になってきているので,これは世界的な流れでしょう.純粋な鑑賞の邪魔・混雑の解消,版権の問題,ショップでの売上げ増強などいろいろ考えられるところもありますが.
 以前ドイツの某美術館では,あらかじめ研究目的で館内の撮影許可をお願いしておいたら,申請書を提出して腕章を用意していただき,有料ですが撮影可能となりました.ただ部屋を移るたびに警備の方に声をかけられましたが.将来どこへいってもこのような手続きが必要だと,なかなか大変ですね.

 いずれにしても,三脚などでカメラを固定できないフリーハンドの撮影で,きれいな絵画写真を撮るには,暗くてもぶれにくい工夫が必要です.
 どのようなカメラでも暗いところでは
①感度を上げる(ただし最大感度にすると画質がかなり落ちることがある)
②シャッタースピードを調整できる場合は遅すぎないように1/15秒程度に設定する(慣れると1/4~8でもぶれの目立たない写真を撮ることは可能です.オートでは絞りはそのレンズの最も明るい設定に自動的に設定されると思います)
③露出補正をして段階的に-1段程度まで露出不足気味にする(これでもシャッタースピードを調整できます.ただしあとでパソコンで画質調整ができるのが前提)
④注意されない範囲で,出来るだけ近づいたほうが露光を稼げる(周辺のピントや画質はレンズによっては低下する可能性がありますが)
⑤脇を締めて両手でカメラを身体の近くに持ってぶれないようにシャッターを押す
⑥同じ設定で3枚位連続して撮影し,その場で確認してぶれの少ないものを残す
とよいでしょう.

 コンパクトデジカメ(コンデジ)とデジタル一眼(デジイチ)の性能の差は,640x400画素程度の一般的なウェブ画像を撮るのには大差はありませんが,暗めの絵画のクローズアップを撮ろうとすると画質に大きな差が出ます.デジイチなら,よい絵画写真を撮るのに選択肢はさらに豊富です.
 
 デジカメの進歩は早いので,7年前に書いた記事も陳腐化しています.小生のカメラ遍歴からお話しすると,中学の頃初めて購入したのが,中古のミノルタ一眼レフSR1S,それから同XE(74年発売)で,撮影した写真は天文ガイドに入選しました.社会人になってから,マミヤの中型一眼レフのRZ67を購入し所有絵画の写真を撮ったりもしました.海外の美術館の撮影旅行にはペンタックスMZ5(95年発売)を購入しましたが,ルーブル中庭での落下事件でキットレンズが壊れたため,タムロンのSPAF24-135mmF3.5-5.6とぺンタ50mmF1.4を新規購入するも,ズームは暗く高感度フィルムの粒子はことのほか粗く,AFが甘いこともあって50mmの出番は僅か一回だけでした.
 同時期にはコンデジの完成度も高くなり,キャメディアC4040(01年発売)は400万画素でレンズはF1.8と群を抜いて明るく,これは随分旅のお供をしてくれました.05年には学芸員の希望で,手ぶれ防止機構のついたLUMIX FX8のピンクも使い始めました.絵の写真用にはF2.8と暗くISO400~ではノイズも気になり,500万画素とはいえ光学解像度に難があるので,サブ機としてメモ代わりに30万画素に設定してキャプションなどをいまでも撮影しています.
 より高性能の明るいレンズを求めるなら単焦点しかありませんし,これに手ぶれ防止機能を付加するにはホディ側機構が必要です.この機能は当初はコニカミノルタのαデジタルにしかなく,05年8月に比較的安価なαSweetDIGITALが登場し,翌年1月「コニミノ,カメラ事業から撤退」と報道されたものの迷った挙句に購入しましたが,残念ながらAFの精度・高感度ノイズ・手ぶれ防止能力は物足りず,07年秋に出たα700に08年4月乗り換えました.このDRオプティマイザーは素晴らしかったのですが,ツァイス設計の16-80mmでも開放で広角端の周辺部の流れが気になり,古い単焦点28mmF2も開放では同心円方向のコマ収差が目立っていました.
 デジイチで画素数1000万画素を超えるとやはりレンズ性能が重要でとくに最近設計されたニコンのレンズには周辺部を含めた解像度と収差補正の点で高性能のものが多く,また高感度ノイズの除去はキャノンが優れているし,と浮気心が芽生えていた昨年後半,ニコンD700が発売されその高感度撮影能力に大きく心が動いたのですが,フルサイズでは手ぶれ防止機構付標準ズームレンズがない...そのうち,APS-CサイズのD90がでて比較的評判もよく,三脚撮影ならば手ぶれ補正の無い超優秀フルサイズ兼用レンズの14-24f2.8G ED Nが使えるので,折からのドル安で先にレンズを買ってしまい(米国のB&H社から3割ほど安く逆輸入),年末にD90をビックカメラの最安値で購入しました.その後,手ぶれ補正のさらに強化された16-85f3.5-5.6GEDVRを購入しこれを常用,さらに風景や建築撮影用に超広角のトキナAF11-16mmf2.8AT-XProDXを使用しています.
 デジカメの寿命は5-10年でしょうが,製品のサイクルは1-2年程度なので,デジイチのボディについては早めにヤフオクを利用してほぼ半値を回収しています.

 デジイチの選択基準はメーカーの好き嫌いもあるでしょうが
①高感度ノイズの少ないこと(出来ればISO1600-3200が使えること)
 近々ソニーからExmor Rという裏面型CMOSセンサーの機種が出るので期待しています.あとはニコンのD700用センサーのついた小型機種がでるかどうか
②手ぶれ補正が強力で,できればボディ内蔵がよい
③フルサイズのほうがAPS-C規格などに比較して高画素ないし高感度化し易いが,周辺でのレンズの解像度は低下しやすいので,どちらが良いとはいえない
④レンズはズームが使いやすいが画質は一般に単焦点が勝る
⑤絞り口径比F値は2前後以下の小さいほうが明るく,焦点距離fはやや広角気味(フル35mm APS-C24mm)をカバーしていてより短いほうがブレにくく,拡大撮影に適するように最短撮影距離は短めで,解像度が高いこと(これは専門サイトのレビューをみるとよいでしょう).ただし,ディストーション(画面歪曲)は画像処理ソフトで修正可能のことが多く,CA(色ズレ)はニコンでjpgだとカメラ内でかなり補正してくれていたと思います.
 まとめると,感度が高いほど,焦点距離・F値・被写体までの距離 のすべては数値が小さいほど,ぶれにくくなります.
・ぶれやすさ ∝ 露出時間[シャッタースピード]T x 焦点距離f
・T = 適正露出時間Ta x (1+露出補正)
・Ta ∝ (1/ Fの二乗) x (1/ 被写体までの距離の二乗)

 そのほかの注意点は
⑥重い,ないし重量バランスの悪いカメラを持ち歩いていると,腕が疲れてぶれやすくなる
⑦以前悩まされた自動焦点AFの性能はキャノンやニコンなどではずいぶん良くなっているが,気になるようなら調整に出すと良い.さらに念を入れるために,合焦を含めて3回程度撮り直すようにしています.
 じつは被写界深度といって,口径比F値は小さい(暗い)ほど,ピントの合う範囲が前後に広い(ピントが合いやすい)のですが,これでピントを期待するよりももともとAFの性能の良い機種のほうが重要だということです.
⑧ホワイトバランスは,オートにしていても場合により完全ではなく,照明に応じて撮った画像と実物を見比べて色具合を確認し,必要により電灯光などに調整するがあります.後で戻すことを忘れないように.キャノンがニコンより優れているのはオートホワイトバランスであるとよく言われます.

 もし教会の中などで対象に近づけなくて小さな像しか得られなければ,焦点距離が長めのレンズを使用するか,高画素のボディでクロップ(トリミングして切り出すデジタルズームアップのようなもの)することになります.

 最後に秘密兵器をお見せしましょう.手ぶれ防止でカメラを身体に固定するため,パーツを二点装着しています.これで,このブログに乗せてあるような高品位の写真が50%程度の確率で取れるようになりました.

 ホットシューに取り付けたパーツを額に着け,赤のグリップを鎖骨の上にあてます.


2 コメント

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とても参考になりました。 (わん太夫 (^v^))
2009-08-23 11:47:48
若いころは、1/2までなら手振れしなかったのですが、

今では、1/30や、1/60を限度と考えています。

ファインダーにも工夫を凝らしたり、小物を使って固定したりとか、今思えば懐かしいです。

最近はシャッターを押すときに最も手振れしやすいので、

被写体が動かないものであれば、セルフタイマーを使用しています
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わん太夫 (^v^) さま (toshi)
2009-08-23 17:29:57
>1/2までなら手振れしなかったのですが
 流石ですね.

>被写体が動かないものであれば、セルフタイマーを使用しています
 それは気がつきませんでした.参考にさせていただきます.
 確かに連射でシャッターストロークのぶれは解消できますが,押した指が震える可能性もありますね.ミラーショックもあるでしょうし...20メガ超ピクセル機だとさらに影響も考えられます.
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