【土・日曜日に書く】
彼は常に「夢」を語ってきた。
石川県能美市にある「松井秀喜ベースボールミュージアム」の正面には、彼がまだ右でバットを構えていた少年時代のブロンズ像がある。
台座に彫り込まれた文言は、「僕には夢がある」。
当時の夢は、甲子園だった。
夢はそれから、プロ野球に、巨人の4番に、メジャーリーグに、ヤンキースでの世界一にと膨らみ、すべてかなえてきた。
その到達点が、2009年ワールドシリーズのMVPだったのだろう。
引退会見で「おそらく一生変わることなく、僕の心にあり続ける」と語ったあの試合が、ヤンキースでの最後の試合になった。
試合後の第一声は、「夢みたいですね」だった。
次の夢を設定する前に、あのときついに、彼は夢に追いついてしまったのではないか。
例えば「夢」という言葉を、彼はこう使ってきた。
第1回のワールドベースボールクラシック(WBC)で王貞治監督からの招請を固辞した際は「ヤンキースで世界一になるという米国行きを決断したときの大きな夢が、おろそかになるのを恐れる自分がいました」。
◆「夢への遠回り」
いじめによる自殺が社会問題化した際には、こうメッセージを発したこともある。
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