宇佐見りんさんの芥川賞受賞作
『推し、燃ゆ』を読んだ。
他の人が普通にできることが自分には出来ないと
生き辛さと劣等感を感じる女子高生が
アイドルを「推す」ことに全身全霊をかける話。
【 】は引用
【保健室で病院への受診を勧められ、ふたつほど診断名がついた。薬を飲んだら気分が悪くなり、何度も予約をばっくれるうちに、病院に足を運ぶのさえ億劫になった。肉体の重さについた名前はあたしを一度は楽にしたけど、さらにそこにもたれ、ぶら下がるようになった自分を感じてもいた。推しを推すときだけあたしは重さから逃れられる。】
以下、ネタバレになってしまうことご了承ください。
主人公は高校中退してしまいます。
【父は理路整然と、解決に向かってしゃべる。明快に、冷静に、様々なことを難なくこなせる人特有のほほえみさえ浮かべて、しゃべる。父や、他の大人たちが言うことは、すべてわかり切っていることで、あたしがすでに何度も自分に問いかけたことだった。
「働かない人は生きていけないんだよ。野生動物と同じで、餌をとらなきゃ死ぬんだから」
「なら死ぬ」】
そして、『推し』の突然の芸能界引退宣言。
最後は、ちょっと希望が見える終わり方。
現代によくある、本当によくある話だなと思った。
芥川賞受賞作だけあって文章表現が素晴らしいのは言わずもがな。
次男は薬を増量した翌日
副作用のせいか、コンコンと眠り続けた。
この小説にもあるように、病名がつくのは一時的に本人を楽にするのかも知れない。
「病気なんだから仕方ないよ。今は療養することが大事だよ」
と私も次男に言い聞かせられる。
療養がいつまで続くのかは誰にも分からない。