岸田文雄にとっては「災いは忘れたころにやってくる」という気分かもしれない。
「裏金事件」では一部議員の処分だけだけで幕を引いたにもかかわらず、やはり「臭いものには蓋」をしても無駄なようである。
「堀井学衆院議員の香典疑惑は「自民党裏金事件の第2幕」幕開けか 東京地検特捜部は「宝の山」をどう掘り起こす」
自民党の堀井学衆院議員側が違法に有権者に香典を渡したとして、東京地検特捜部が事務所などを家宅捜索した。注目されるのは、自民党安倍派の裏金事件の捜査で情報が把握されたとみられること。香典の原資が焦点となり、あらためて派閥からの還流金の使途が注目されている。一部議員の処分で幕を引いた岸田政権を再び揺るがす「裏金事件」。まだ終わってはいないのか。 ◆特捜部は裏金事件を調べる過程で把握 「原資は裏金ではないか。収支報告書に記載しない裏金なら、違法な使い方をしてもばれないと普通は考えるだろう」 自民党派閥の裏金事件で議員の刑事告発を続ける上脇博之・神戸学院大教授(憲法学)は指摘する。 堀井氏は所属していた安倍派から5年間で計2196万円の還流を受けたが、収支報告書に記載していなかったとして、党の役職停止処分(1年)を受けた。上脇氏は5月、政治資金規正法違反容疑で東京地検に告発していた。 その堀井氏に今回発覚したのが、選挙区内で秘書らを通じて違法に香典を配っていた公選法違反の容疑だ。東京地検特捜部が裏金事件を調べる過程で把握したとされ、18日、東京都内の事務所や北海道登別市の自宅などを家宅捜索した。 ◆秘書らを通じた違法な寄付は初当選直後から 公選法は本人が葬儀に参列する場合を除き、選挙区内で香典を渡すことを禁じている。秘書らを通じた違法な寄付は、2012年の衆院選初当選直後から始まったとみられる。北海道では慣習として香典に対して領収書を出す。「北海道では常識」(道内在住の男性)という。 上脇氏は「ある意味で、裏金の典型的な使い方。不記載のあった議員は、大なり小なり同じような使い方をしているのでは。今回は氷山の一角だ」と述べる。 堀井氏の地元である北海道の札幌市民オンブズマン代表の島田度弁護士は「連日大きく取り上げられている」と説明。「報道で見る限り、香典の提供は継続的にやっていたようなので、どこから足がついてもおかしくない状態だったのでは」と話す。 堀井氏は6月下旬、札幌市で記者会見し、裏金事件を巡り「政治不信を招いたことをおわびする」と陳謝。次期衆院選に立候補しない考えを表明していた。家宅捜索を受けた今月18日に自民党を離党したが、公の場に姿を見せていない。 ◆林官房長官「政府としてお答えすることは差し控える」 19日、「こちら特報部」は前日に家宅捜索を受けた衆院第2議員会館(東京都千代田区)の堀井氏の事務所を訪ねた。本人の姿はなく、取材に応じた担当者は「検察の捜査に全面的に協力する」とコメント。裏金が香典の原資かとの指摘には「選挙区内の有権者への対応は地元事務所の担当なので、事件のことは東京では分からない」と述べた。 国民民主党の玉木雄一郎代表が「裏金と密接に結び付いた行為で、裏金問題第2幕と言っていい」と述べるなど、野党は批判を強めている。林芳正官房長官は18日の会見で「政府としてお答えすることは差し控える。一般論として、選挙や政治活動については、一人一人の政治家が適正に対応すべきもの」とした。 ◆不記載や誤記載85人、でも派閥幹部ら16人は不起訴 自民党の裏金は、上脇氏の告発で、2023年11月に特捜部が派閥の担当者らを任意で事情聴取したことが明るみに出て問題化した。 12月には安倍派と二階派を家宅捜索し、今年1月に安倍、二階、岸田派の会計責任者や議員ら計10人を立件。2018年以降の派閥の収支報告書不記載額は安倍派が13億5000万円、二階派が3億8000万円、岸田派は3000万円。大野泰正参院議員が5100万円、池田佳隆衆院議員が4800万円、谷川弥一前衆院議員が4300万円の不記載が判明した。だが、告発されていた派閥幹部ら16人は今月8日、不起訴となった。 自民党が今年2月、国会議員らにアンケートなどをした結果、不記載や誤記載があったのは85人と公表。2018〜22年の不記載額は二階俊博元幹事長の3526万円が最多で、堀井氏の2196万円は5番目に多かった。自民党は39人を離党勧告や党員資格停止などの処分に。一方で裏金の使途は質問項目になく、党の報告書では会合費や人件費、事務費など15項目が示されるにとどまり、具体的には明らかにされなかった。 ◆「違法性がある香典や秘書の人件費こそ裏金で」 「裏金の使い道として考えられるのは収支報告書に計上できない、もしくは、計上しにくい支出だ」と話すのは野党国会議員の現職秘書。「多いのは飲食など会合費のはずだが、違法性がある香典や秘書の人件費はまさに裏金でなければ支出できない」と説明する。 政治評論家の有馬晴海氏は「堀井氏が裏金を香典に充てていたとしたら悪質だ。カネで自身の選挙を有利にしようとしたことになり、公平性がゆがめられることになる」と指摘する。 1980年代に自民党の国会議員秘書を務めた経験がある有馬氏は「当時から自民党の有力議員は地元の葬式に香典は出していたが、自ら顔を出すことで支持を広げていた。中には1日に十数件回る議員もいた」と明かす。 ◆今回は裏金の使途解明という社会的な要求もある 過去には、議員が寄付行為で刑事罰を受けたことも。自民党の小野寺五典元防衛相は線香セット(計五十数万円相当)を配ったとして2000年に公選法違反で罰金40万円、公民権停止3年の略式命令を受けた。2021年には菅原一秀元経済産業相が、祝儀や香典、故人の枕元に飾る枕花や祝花約80万円相当を提供したとして、罰金40万円、公民権停止3年の略式命令を受けた。 堀井氏の捜査について、国会議員秘書の経験がある元特捜部検事の坂根義範弁護士は「秘書が香典を持参しても議員の名刺のみを置いていくケースもあり、慎重に裏付けを進めるだろう。違法に受けた裏金が香典の原資となっているのかどうかもポイントになる」と説明する。「通常であればこれまで同様に略式手続きとなるのがセオリー。だが裏金の使途を解明するという社会的な要求もあり、正式起訴して公判で明らかにするべき事案だろう」 ◆かつてないほどの資料を押収、カネの流れを調べているはず 裏金事件で特捜部は、年末年始に全国から大規模な応援を受けて捜査を行ったとされる。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「特捜部は、かつてないほど自民党議員に関する資料を押収した。いわば『宝の山』で、各議員のカネの流れを調べているはずだ。今回の疑惑もその中で出てきたのだろう」と話す。 今月、検察側は畝本直美検事総長と斎藤隆博東京高検検事長の新体制がスタートしたばかり。若狭氏は今後の展開をこう予想する。「現状では選挙区内の有権者に対する寄付行為であり、罰金刑にしかならない。裏金事件の捜査で検察は国民の期待に十分に応えられなかった。これだけ大々的に強制捜査を行ったということは、この疑惑を入り口に次の展望があるのでは」 ◆デスクメモ 6月の通常国会閉会時の会見で、首相は「法改正で、実効性のある具体的な制度を示せた」と自賛した。「再発防止」「透明性拡大」と前向きな言葉で局面転換を強調。だが新たな疑念が出たら、それもかすむ。大前提として「実態解明」が足りなかった。今からでも、やり直しては。 |
さて、「ほぼトランプ」が掲げた公約に「ウクライナ戦争の終結」という文言ががあったと記憶している。
もちろん平和的な解決はあり得ない状況で、最近は1週間前にこんな記事があった。
「ポイ捨てられたゼレンスキー。インド首相とプーチンの「ハグ」で猛加速するグローバルサウスの「ウクライナ切り捨て」
そして、元国連紛争調停官の島田久仁彦がこんなショッキングな記事を披露していた。
「プーチン『核兵器』を実戦投入か?停戦の意思なき独裁者が“一線を超える”最悪シナリオ」
■プーチンが進める核攻撃の準備。さらなる窮地に陥った賞味期限切れのゼレンスキー 「ゼレンスキー大統領はもう終わった。混乱を極める今の国際情勢を修復する方向に向けるには、ポスト・ゼレンスキーのウクライナの在り方を考えないといけない」 そのような見解が、今週行われた協議において繰り返されました。 「彼は劇場型の世界においてはうけがいいだろうが、現状のように戦況が膠着状態に陥り、長引く戦争をいかに戦いきるかという観点からは適任とは言えない。特に劣勢と言われる状況から巻き返すための術や知恵を持ち合わせておらず、かつてほどのカリスマ性も期待できない。事態を動かすにあたり考えうる方法があるとすれば、ゼレンスキー大統領が辞任することを条件に、停戦協議をスタートさせるという駆け引きぐらいだろうか」 調停グループの中でもウクライナ寄り(何分、彼はウクライナ出身なので)の専門家でさえ、このような見解を示していました。 「ただ彼が下野した場合、考えうる後任は、選挙で“民主的に”選ばれるという前提なら、ザルジーニ氏(現駐英大使で、前統合参謀本部議長)が最有力だが、彼はゼレンスキー大統領とは比べ物にならないほどの反ロシア・反プーチンだから、元軍人として攻勢を強めることを主張したり、または戦い続けることを主張したりするかもしれない。ただ大統領になったら、もしかしたら自身のロシア観は一旦横において、一刻も早く戦争を終わらせるプロセスに入るかもしれない。期待は高い。大事なことは、やはりゼレンスキー大統領の辞任だろう。それがないと何も始まらない」とも言っていました。 なるほどと思うのですが、大前提となっている“ゼレンスキー大統領の辞任”はなかなか起こりそうにありません。少なくとも今年中には。 それはゼレンスキー大統領自身も、そしてウクライナを一応は支えて反ロシアの柱に据えているアメリカ・バイデン大統領も「ウクライナはロシアに対してもう一度反攻できるし、もしかしたら今度はロシア軍をウクライナ領内から押し戻せるかもしれない」と真剣に考えているようで、「その反攻の結果が分かるまでは戦い続けないといけない」という意図が明確に働いています。 バイデン大統領にとっては、米民主党内で撤退圧力がかかっているものの、来年1月まではアメリカ合衆国大統領を務めますし、仮に別の方が民主党の大統領候補になっても“民主党政権下”での成果を強調することで、大統領選も上下院連邦議会議員選でも有利に進めたいという思惑が働くため、ゼレンスキー大統領という“駒”と欧州各国を操り、可能な限りウクライナ軍による米国製兵器の使用条件を緩和してロシアへの攻勢を強め、少しでも目に見える成果を上げさせようとすることになります。例えそれがウクライナ市民のさらなる犠牲を生むことになっても。 ■ゼレンスキーに残されている「好ましい内容」ではない選択肢 ゼレンスキー大統領については、すでにプーチン大統領と交渉することを禁ずるという大統領令で自らの選択肢を絞っているため、プーチン大統領が治める現在のロシアと停戦協議をすることは出来ないことになっていることと、自らの大統領として付託された任期が5月20日に切れていることから、大統領職に留まるための正当性を示すためには、ウクライナが戦争状態にあることが必須条件になります。 ゆえに分が悪いことも、すでに他国の関心が薄れていることも重々承知しつつ、様々な会議を行脚し、ウクライナがロシアに対して戦い続けるための支援を各国に必死に訴えかけ、いろいろな面で不利な情勢にありつつも、ただただ戦い続けることを選ぶしかない状況に直面しています。 ちなみにプーチン大統領ははじめから“ゼレンスキー大統領”を交渉相手とは見ておらず、こちらも大統領令でゼレンスキー大統領との交渉を禁じていますので、現状下ではロシア・ウクライナ間での停戦協議が行われることはないと思われますが、仮に翻意し、停戦協議を持ち掛ける場合、ゼレンスキー大統領に残された選択肢はあまり好ましい内容はありません。 残された選択肢の1つ目は【降伏して戦争を終わらせること】ですが、これはウクライナの主権と領土の喪失に繋がり、恐らくウクライナという国が無くなることを意味します。 プーチン大統領サイドは、恐らくクリミア半島の支配の確定・固定化と、一方的に編入した東南4州を獲得すれば十分な“勝利”として国内外に向けてアピールできるでしょうが、ウクライナが降伏した暁には、要求はエスカレートする可能性がかなり高まります。 ウクライナを“残す”ような方向に持って行くのであれば、有効な調停プロセスが必要になりますが、それには欧米サイドのかなり強力なサポート(政治外交的なサポートと、軍事介入オプションの明示)が必要となりますが、ロシアによる報復を恐れて大胆な介入を躊躇する各国の姿勢からして、この実現は限りなく困難だと思われます。 2つ目は【勝つことはできなくてもひたすら抵抗を継続して、少しでも有利な条件をロシアから絞り出す】という戦略でしょう。 これはぱっと見、美談として語られそうなシナリオですが、現実的にはかなりの人的犠牲を強いる戦略となりますし、徹底的に抗戦してロシア軍を疲弊させ、かつロシアから何らかの妥協を引き出すためには、今まで以上に欧米諸国が本気でウクライナを軍事的・経済的に支える覚悟が必要になります。 しかし、この条件がいかに達成困難かは、最近の欧州各国における極右勢力の台頭の背後にあるウクライナ支援疲れとインフレへの深刻な懸念が、確実に各国の政策の方向を変えてしまっていることからも分かります。 一応、ワシントンDCで開催されたNATO創設75周年の首脳会議で400億ドル規模の追加支援の提供が宣言されたものの、それが来年以降、本当に実施できるかどうかは不透明ですし、果たして“揺るぎない支援の継続”がこれで足りるのかは分かりません。 オランダやデンマークが供与するF16はやっと導入されますが、頼みのドイツのタウルスミサイルは出てくる見込みはないですし、一時は派兵の可能性も仄めかしたフランスのマクロン大統領も、それを実施するための政治的な基盤は揺らいでおり、気のせいかウクライナマターに関する発言もトーンダウンしています。 継続的で圧倒的なレベルの支援がウクライナに来ない場合、まだ余裕があるとされるロシアに抗い続けることが難しいだけでなく、ロシアから停戦における条件を引き出すことも困難になると言わざるを得ません。 そうなるとこの戦略も取りづらくなります。 ■「暗殺」の可能性も含まれる3つ目の選択肢 3つ目は【自身が(プーチン大統領の要望通り)辞任する代わりに、ウクライナの存続をプーチン大統領に確約させる】という戦略ですが、「約束なんかしても、プーチン大統領はいつも反故にするじゃないか」という“現実”は横に置いておいても、ウクライナにとってあまり好ましい結果は生まないと考えます。 この選択肢を取る場合、先述のように、ザルジーニ氏が後任になりそうな予感ですが、停戦協議をして何らかの合意案を作る際、ほぼ確実にクリミア半島はロシアのコントロール下に置く状態が固定化され(ロシア領とするかは別だが、恐らく編入されることになる)、ロシアが一方的に編入したものの、まだ全域の支配を確立できていない東南4州全域の引き渡しをロシアに要求されることになります。 当初2014年ラインまで戻し、ウクライナを取り戻すという目標を掲げていた状況に比べると大きな後退になりますが、仮にこれでロシアの侵攻が終焉し、長きにわたった戦争に“終止符が打たれる”のであれば一考の価値はあるかもしれません。 もしかしたら、ゼレンスキー大統領にとっては、仮に大統領職を失っても、ストーリーの作り方によっては“ウクライナを救った英雄”といった評価を後世に残せるかもしれません(ただ、過去のケースから見て、プーチン大統領は決して彼を許さず、真偽のほどは分からない汚職問題がリークされて評判を失墜させたり、暗殺を試みたりするような気もします…)。 そうなると、ゼレンスキー大統領にとっては、この3つのどれも選びづらい状況が見えてきます。それに加え、先述の通り、まだ反攻の機会があると信じ切っているように見えるため、自身の保身のためかどうかは別として、やはり戦い続けることを選ぶのだと考えます。 ■大きく変化した核兵器の役割と使用の可能性に関する状況 今、プーチン大統領に戦争を停止するインセンティブが存在しないことから、ロシア・ウクライナ戦争は今後も長引き、膠着状態が続くことになりそうです。 しかし、戦況が膠着状態に陥る中、ロシアサイドでは気になる状況の変化も起きています。 それは核兵器の役割と使用の可能性に関する状況です。 複数の衛星データやグラウンド・サーベイランスの情報・分析結果を総合すると、ロシアの戦術核兵器の配備が進み、すでに臨戦態勢に入っている上に、具体的な作戦実行に向けた準備も進んでいると分析されています(配置の変更も行われている模様です)。 これまでにも何度も核兵器使用の脅しはプーチン大統領やその側近、特に強硬派の筆頭メドベージェフ氏などの口から出ていましたが、最近の動きはこれまでとはレベルが違うという専門家の分析があります。 理由の一つは、先述のように、実際の使用に向けた臨戦態勢が構築されているという情報分析が多方面から寄せられていること。そして、最近目立つようになってきたロシア軍における統制の乱れが、全体的な戦闘作戦対応能力を下げており、一向に目に見える成果が得られないことと、絶え間ない欧米諸国からのロシア批判にロシア政府や軍の幹部もうんざりしており、このあたりで一度状況を大きく変えたいという声が高まっていることも、「もしかしたら限定的であるかもしれないが、ロシアは核兵器を戦術上のオプションとして使用する気なのではないか」という分析に繋がる理由になっていると思われます。 核兵器と聞けば、私たち“日本人”にとっては悪魔の兵器以外何物でもないのですが(恐らくほかの国民にとっても同じだと信じますが)、アメリカにとってもロシアにとっても、【核兵器はあらゆる軍事的オプションの一つに過ぎず、(使うような状況が生まれないことを祈るが)使ってはいけない選択肢ではない】という認識の違いがあります。 ■今後の展開を占う大きなカギとなるNATOの反応スピード 仮にロシアが一線を越えて核兵器を今回使用する場合、どのようなことが考えられるでしょうか? 2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻初期に恐れられていた“ウクライナ本土への使用”は、物理的・心理的に決定的な打撃を与えることになりますが、同時にロシア兵も犠牲にし、かつロシア国内にも放射能汚染が広がることが確実視されるため、現実的なオプションとは言えません。 仮にウクライナに対する核兵器使用が起こるとしたら、それはロシアが敗北するような状況に追い込まれて最後に自殺的に行われる選択肢と言えます。 より現実的なのは、EUおよびNATOへの警告的な意味合いを持たせるならば、ポーランド国境に近いウクライナ西部リビウあたりへの使用や、“裏切り者”バルト三国周辺への使用を決行して「これ以上、(ウクライナを足掛かりに)ロシアの勢力圏にNATOが土足で踏み込んでくるのであれば、ロシアは自衛のために(国家安全保障のために)核兵器による反撃も辞さない」というメッセージを送るという手法が考えられます。 実行にはかなりハードルが高いことは疑いないですが、絵空事とは言い切れない悲しさ・恐ろしさがあります。 この場合、NATO諸国がどのような反応を即時に示すかが、今後の展開を占ううえで大きなカギです。 もしNATO諸国が、collective(集団安全保障)かcoalition of the willing(志を同じくする国家群)としてかは分かりませんが、ロシアによる核兵器の使用を“redlineを超えたもの”として即時に反撃に出た場合は、もうその戦いはロシア・ウクライナ間の戦争ではなく、確実に世界各国を巻き込む第3次世界大戦の様相を呈すると思われます。 その場合、報復はロシア本土への核による本格的な報復なのか。それとも核兵器ではなく通常兵器による報復になるのか?または、ロシア本土に対する報復ではなく、あくまでも核戦力部隊を壊滅させる選択的な報復になるのか? どれであったとしても、NATOにとっての大きなジレンマは【ウクライナはNATOの加盟国でないために、ウクライナが攻撃された場合には第5条の集団的自衛権の行使の対象には当たらないが、もし加盟国であるポーランドやバルト三国に直接的な被害が及んでいなくても、放射能汚染という形で壊滅的な打撃を与えられた場合には、公使の対象になるか否か】という問いに対する解釈だと考えます。 そしてほぼ確実にその解釈を巡る議論と対応はかなりの時間を要し、実際にNATOとしての行動・反応ができるまでにかなりのタイムラグが発生することは、NATOの信頼性に大きな傷となります。 恐らくロシアはそれを試しに来るのだと思われますが、そのために果たして核兵器まで用いるかどうかは、私には分かりません。 しかし即時対応した場合(親ロシアのハンガリーやトルコが「さすがに核兵器はダメだろう」とロシアに背を向ける場合が考えられる)には、ロシアに恐怖が走るかもしれませんが、ずっと一貫して「ロシアが存在しない世界は存在に値しない」という主張するプーチン大統領の存在故に、First Useがロシアによってなされて核兵器の抑止論が破れ、一気に破滅に向かった打ち合いが始まるという最悪のシナリオも想定できます。まあないと思いますが。 ■核兵器の抑止論が破れるという最悪のシナリオも 逆にNATOが即応性を発揮できず、東欧・北欧の加盟国がNATOに不信感を高めたとしても、核兵器の使用によりロシアシンパが国際社会から消えることに繋がるため、プーチン大統領は自らの手で自らの首を絞め、国際社会において本格的に孤立を味わうことになります。 それでもロシア国内においてプーチン大統領の支持は変わらないと言われています。それは彼も繰り返す「いろいろとこちらから友人になろうと近づいても、結局、欧米諸国はロシアのことを理解しようとはしない。だから表向きだけの国際協調など信用できず、自分のことは自分で守る必要がある」という頭と心の奥底に沁みついた認識が国内で広がり強化されて、ロシアはまた独自の勢力圏を築く方向に進むというだけでしょう。 現時点で予測できるどのようなシナリオにおいても、プーチン大統領が停戦や降参を選択することはなく、それゆえにウクライナそしてその先に予定されている戦いにおいても、ロシアは苦難を耐えて、戦い抜くという姿勢になるものと思われます。 そこで同じようなジレンマ、そして“匂い”を感じるのが、イスラエルのネタニエフ首相の姿勢です。 |
最後に「マスコミに載らない海外記事」から紹介しておく。
「ウクライナでロシアがNATOに勝利する理由」
・・・前略・・・ 我々が自問すべき疑問は、NATOが実際ロシアとの戦争に勝てるかどうかだ。本当に勝てるのだろうか? 答えは「いいえ」だ、勝てない。 なぜか? この質問に軍事評論家ウィル・シュライバーは次のように答えている。 ******************************************* 2022年よりずっと前から私は何年も研究をしてきた。ウクライナ戦争はアメリカ/NATOが決して勝てない戦争だと私は繰り返し警告してきた。(アメリカを含む)NATOの「書類上の」強さと、実際の戦闘能力の間には大きな隔たりがある。アメリカは東ヨーロッパで25万人の戦闘員を集結、装備、配備、維持することさえできず、そうしようとすれば、地球上の全主要アメリカ基地撤退が必要になる。アメリカ/NATOはロシアとの戦争に勝てないだけでなく、その取り組みで骨抜きにされるだろう。 アメリカ/NATOによるユーゴスラビア、イラク、リビアの破壊に警戒したロシアは、過去25年間、特に過去2年間、アメリカ/NATOとの最終戦争に備えて、大規模で非常に強力な軍備増強と近代化に従事してきた。過去2年以上にわたり、ウクライナ代理軍を、ロシアはいとも簡単に三回連続、計画的に破壊した。ロシアの軍隊構築、戦闘訓練、軍事産業生産は、NATO圏全体を合わせたより遙かに優れている。あなた方のような物見遊山軍事評論家がハリウッドのファンタジーや欧米諸国の国営メディアで徹底的に洗脳されている度合いは理解できるが、戦争は架空の物語や派手なスーパーヒーローが戦って勝つのではない。戦争に勝つのは生の火力で、この基準から、ロシア、中国、イランの三国同盟は、今や傲慢さに酔った敵より優位に立っている。現時点で、正気な選択肢は一つしかない。帝国を放棄し、復活した世界の文明国と和平を結ぶことだ。さもなくば現代人類文明そのものの多くが破壊される危険に曝され、回復には何世紀もかかるだろう。ウクライナは勝てない、ウィル・シュライバー、ツイッター ******************************************* |
米国の国力が弱まり、それがNATOに影響し、「戦争に勝つのは生の火力で、この基準から、ロシア、中国、イランの三国同盟は、今や傲慢さに酔った敵より優位に立っている。」という指摘にはおおいなる説得力があるのではないだろうか、とオジサンは思う。