CTNRXの日日是好日

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

CTNRX的文學試行錯誤 ♯013ーA

2023-07-22 21:00:00 | 出来事/備忘録

 『家畜人ヤプー』という作品を御存知だろうか。

 私が初めて手に取ったのは、劇画の方だった。

 あの頃、好きな漫画家のひとりだった、石ノ森章太郎氏の名前が載っていたので、つい、手に取ってみた。
 内容が見れなかったので、ネームヴァリュー買ってしまった。

 帰路に着き、早速開封。

 第一印象としては、
   「おどろおどろしい」という印象。

(劇画 家畜人ヤプー 復刻版)

 石ノ森章太郎作品も「こう言う種の作品、描くんだ?」と思ったりした。

 途中で読むのをやめた。

 『家畜人ヤプー』
(かちくじんヤプー)とは、

 1956年から『奇譚クラブ』に連載され、その後断続的に多誌に発表された沼正三の長編SF・SM小説。

 なお、本作品はマゾヒズムや汚物愛好、人体改造を含むグロテスクな描写を含む。

 《連載から出版》

 『奇譚クラブ』連載時から当時の文学者・知識人の間で話題となっていた。
 そのきっかけは三島由紀夫がこの作品に興味を示し、多くの人々に紹介したことによる。
 三島のみならず澁澤龍彦、寺山修司らの評価もあり、文学界では知名度の高い作品となった。
 『奇譚クラブ』誌上での連載を終えて、誌上の都合で掲載できなかった部分などの作者による加筆の後、都市出版社により単行本が出版され、
 この際、右翼団体が出版妨害を行い、1名逮捕・2名指名手配という事件にまで発展した。
 『奇譚クラブ』1956年12月号〜1958年4月号までの連載では打ち切りという事情もあり物語は完結せず、都市出版社版、角川文庫版、スコラ版、太田出版版、幻冬舎アウトロー文庫版と補正加筆が行われながら版が重ねられ、完結に至る。
 このような事情から版により内容に食い違いが存在する。

 《ストーリー概要》

 婚約中のカップルである日本人青年留学生麟一郎とドイツ人女性クララは、ドイツの山中で未来帝国EHS人ポーリーンが乗ったタイムマシンの墜落事故に巻き込まれたことから、未来帝国EHS(The Empire of Hundred Suns イース = 百太陽帝国、またの名を大英宇宙帝国)へといざなわれる。
 白人女性で元貴族の生まれであるクララは、EHSの貴族たちに同胞として迎えられる。
 恋人である麟一郎を救うためにEHSへの渡航を承諾した彼女だったが、セッチンを使い、ソーマを飲み、小伶人達による音楽や矮人決闘を愉しむうち、当初は否定していたヤプーの存在、またヤプーと日本人が同一の存在であることを認めざるを得なくなっていく。
 ジャンセン家の別荘に到着するころには、既に彼女は麟一郎をヤプーとして拒み、その恋心をウィリアムへと移していた。 一方、「クララが捕獲したヤプー」とみなされた麟一郎は、家畜が受けるべき処置として身体改造を受け、クララには現代地球への帰還を拒まれて絶望し、無理心中を図るが失敗する。
 こうして恋人としての二人の仲は完全に破綻したが、クララは「立場がどんなに違っても二人は離れない」と誓った言葉を忘れてはおらず、麟一郎はクララを救いの女神として心の支えにするようになる。
 クララはポーリーンやアンナ・テラスに導かれ、EHSの貴婦人としてふさわしい教育を受け、ヤプーの扱い方やその主人としての心構えを学ぶ。そして麟一郎はヤプーとして、またクララの従畜として徹底的に洗脳され、やがて自らその立場を受け入れるに至る。
 地球を発ってからその間、わずか3日であった。

 ▼未来帝国EHS

 未来帝国EHS(The Empire of Hundred Suns イース = 百太陽帝国、またの名を大英宇宙帝国)は、白色人種(特にアングロ・サクソン系のイギリス人)の「人間」を頂点とし、白人に隷属する黒色人種の半人間「黒奴」と、旧日本人の家畜「ヤプー」(日本人以外の黄色人種は核兵器と細菌兵器によりほぼ絶滅している)の3色によって構成される、厳然たる差別の帝国である。
 ヤプーに対しては、EHSの支配機構は抵抗するものを屈服させるのではなく、あらかじめ白人を神として崇拝させ「奉仕する喜び」を教えこみ、喜びのうちに服従させるしくみである。黒奴に対しては、巧妙な支配機構により大規模な抵抗運動は行えないようになっており、小規模の散発的抵抗がまれにあるだけである。
 ささいな過失などでも死刑に処されるなど酷使されるため、黒奴の寿命は30年ほどで、白人の200年より短い。
 EHSは「女権革命」以降、女が男を支配し、男女の役割が逆転した女権主義の帝国である。
 EHSの帝位は女系の女子により引き継がれ、平民でも結婚すると男性が女性の家に入り、その姓を名乗る。
 男性は私有財産を持つことすら禁止され、政治や軍事は女性のすることで、男性は化粧に何時間も費やし、学問や芸術に携わる。SEXにおいても、騎乗位が正常位とされるほど女性上位が徹底している。
 そして、家畜である日本人「ヤプー」たちは家畜であるがゆえに、品種改良のための近親交配や、肉体改造などを受けており、「ヤプー」は知性ある動物・家畜として飼育され、肉便器「セッチン」など様々な用途の道具(生体家具)や畜人馬などの家畜、その他数限りない方法により、食用から愛玩動物に至るまで便利に用いられている。
 白人女性の出産も、受精卵の移植によって子宮畜(ヤプム)が代行する。
 さらに、日本民族が元々EHS貴族であるアンナ・テラスにより、タイムマシンの利用によって日本列島に放たれた「ヤプー」の末裔であること、日本神話の家畜人ヤプーの世界における物語を暴露し、これに基づく日本の各種古典の解釈が行われる。

 ■主な登場人物 Ⅰ

 《主人公格》

 ▼瀬部麟一郎(せべ りんいちろう)  

 柔道五段の達人であり、学業でも優秀な成績を収める法学専攻の学生。父親が国語教師であるため和漢の古典にも詳しい。ドイツ留学中に、クララに絡んでいた与太者を得意の柔道技で退治したことがきっかけで、彼女と恋仲になった。
 未来世界からの円盤(タイムマシン)が墜落した時、たまたま水浴中であった彼は、UFO(ポーリーンの乗るタイムマシン)の墜落事故を目の当たりにしたクララが上げた悲鳴を聞きつけ、彼女を案じて裸で飛び出したため、そのまま事態にあたることになった。
 しかしそれが災いして、人に似た裸の存在=ヤプー、と刷り込まれていたポーリーンの猟犬ニューマ(ネアンデルタールハウンドというヤプー)にヤプーと誤認され、その毒の牙により全身麻痺状態に陥ってしまう。
 その治療の名目でクララとともにEHSに向かうが、EHSの貴族社会に受け入れられていくクララに対し、彼はヤプーとして扱われ、皮膚強化や去勢(完全去勢)などの改造・調教を受け、クララの家畜として仕立て上げられていく。
 ついにはクララの犬となる心境に達し、クララの便器となる覚悟を持つに至る。
 地球での3年間に相当するEHSでの3日間を経て、凄まじい苦痛と苦悩、葛藤の末に、自らクララに「無条件降伏」する。
 元の体に戻り、記憶を消して地球へ帰還するよりも、ヤプーとして彼女に仕えることを望む境地に到達した。
 語りきれない未来の出来事として、後のEHS内乱での星間戦争における柔道の技を活かした大活躍や、意識転移装置の使用により様々な形でコトウィック夫妻に弄ばれることなどが明かされている。

 ▼クララ・フォン・コトヴィッツ

 麟一郎の恋人で、ドイツの元伯爵家の令嬢。
 その美貌と才気で「大学の女王」と呼ばれる存在。
 麟一郎の麻痺を治療するため、彼に付き添ってEHSに渡航する。
 両親を第二次世界大戦の混乱で失い、姉レナーテとも生き別れとなって天涯孤独の身である。
 麟一郎とは婚約中だが、結婚までは互いに身を慎もうと誓い合い、肉体関係は持っていなかった。
 ポーリーンの入れ知恵で、”タイムマシンの故障により20世紀ドイツに漂着し、記憶喪失となったEHS貴族の遭難者”を装う。
 そのためポーリーンの親族たちから、気の毒な境遇にある同胞として最上級の扱いを受けることとなる。
 日本人がヤプーとされ、徹底して「生きた器物」として扱われるEHSの生活文化に触れる中で、ヤプーの存在を認めざるを得なくなる。
 またソーマの影響も手伝って、次第に白人にしか同朋意識を感じなくなり、麟一郎の男らしさに惹かれていた心も次第に変化していった。
 やがて第三次世界大戦後の歴史を知り、ついには麟一郎をヤプーと認め、「リン」と呼び犬のように連れまわすことに何の疑いも持たなくなる。
 イース世界に入ってほどなくウィリアムと恋仲となり、婚約。姓名を英語(EHSの公用語)風に「クララ・コトウィック」と改め、ジャンセン家とアンナ・テラスのバックアップを受けてEHS社交界にデビューする。
 語りきれない未来の出来事として、女王に謁見して帰化を許され、EHS貴族コトウィック伯爵となること、後にEHSの内戦をうまく立ち回り、枢密院顧問・帝国宰相となることが明かされている。
 彼女の尿は王室に献上されて、黒奴酒の銘酒「コトブキ」となる。
 また、余談として、彼女が女王から与えられた特別休暇として古代日本を訪問し、その折の逸話が「竹取物語」となる(つまり彼女こそがかぐや姫である)ことが記されている。

 《ジャンセン侯爵家》

 ▼ポーリーン・ジャンセン

 EHSから現代(作品世界では1960年代のドイツ)にやってきた美女。
 ミス・ユニバースに選ばれた履歴を持つ、魅惑的な美貌と肢体の持ち主。
 大貴族ジャンセン侯爵家の嗣女で、EHSの首都星カルーを含むシリウス圏の検事長という要職にある。
 クララに命を救われたため、その返礼として完成したばかりの別荘へ招待した。
 その直後に墜落した場所が20世紀のドイツであること、クララがEHS人ではないことに気がついて驚愕するが、礼儀として彼女に未来人である自分の正体を明かし、EHSの存在を語った。
 自身の航時法違反の隠滅、またクララの麟一郎への思いを見かねて治療しようと、麟一郎の麻痺治療を名目に麟一郎とクララをEHSに導く。
 EHS世界でのクララの保護役であり、彼女を食客として遇し、様々な援助を行う。 後に貴族院最高法院の裁判長に就任して「第二のエンマ・ダイオン」と呼ばれるようになる事が作中で語られている。

 ▼ドリス・ジャンセン

 ポーリーンの種違いの妹。
 スポーツ万能で、現代で言うボーイッシュな雰囲気の美少女。
 同じ年頃であるクララと意気投合する。
 実父は平民の男妾であり、婚外子ということで姉ポーリーンのように政治等での活躍を望めない分、スポーツに情熱を注いでいる。
 アベルデーンのポロ・クラブ主将で、後に星間オリンピックで金メダルを獲得する。
 さらに準男爵の爵位を得て、貴族院に議席を持つことになる。麟一郎の戦闘力に着目し、クララとの取引で去勢処理後の精巣を入手、彼の妹を現代日本から誘拐して交配による繁殖を行う計画を立てる。

 ▼セシル・ドレイパア

 ポーリーンの兄で、現在は妻メアリ・ドレイパアの忠実な主夫。
 女にしても見たいようなと形容される美男。家畜文化史の専門家。
 クララに対してはシャペロン気取りで、ヤプーに対する知識やイースの風習など、何かと長口舌を振るいがち。
 麟一郎が去勢されるはめになった元凶である。
 ヤプーの生態や文化について、読者が理解するための解説者的役割を持つキャラクター。

 ▼ウィリアム・ドレイパア

 セシルの妻の弟で、個性的な美男子。
 クララに恋心を抱く。
 男なのにレースに参加するような、EHS世界では異端の「おてんば」青年。   
 ソーマ好きで毎日5回は飲む。
 いち早くクララの正体に気付き、20世紀人である彼女の淑やかさに惹かれて愛情を告白する。
 EHSでの物語におけるクララの案内役となり、黒奴やヤプーに対する扱い方を手ほどきしていく。
 後にクララと結婚、ウィリアム・コトウィックとなる。
 麟一郎はウィリアムがプキー用の衣装に着替えたとき、彼が建御雷神なのだと感じ取っている。

 ▼アデライン・ジャンセン

 ポーリーンらの母で侯爵、帝国副宰相の要職にあり、EHS政界の文治開明派(ホイッグ)のリーダーである。
 美貌で知られる上流婦人であり、若い頃には星間オリンピックで金メダルを獲得している。

 ▼ロバート・ジャンセン

 ポーリーンの夫[12]。EHS男性らしい慎ましい性格の持ち主で、セミプロの絵描きである。
 ポーリーンが地球に外出中なので、貞操帯を付けられている。

 ▼メアリ・ドレイパア

 セシルの妻で、帝国中央軍騎兵科少佐。
 中央軍司令官であるジャーゲン公爵の参謀を務めている。
 政界の二大派閥のリーダーである義母のジャンセン侯爵と、上司のジャーゲン公爵の間で難しい立場にある。

 《EHS貴族》

 ▼アンナ・テラス(オヒルマン公爵)

 前地球都督で、EHS一の美女。天照大神の正体という設定(西王母やイシュタルでもある)。
 人間の寿命が200歳となっているEHSにおいて、作中で”老貴婦人”と表現される年齢だが、30代の若さと美しさを保っている。
 地球上に浮遊している天空島タカマラハンに住む。スーザンという妹がいるが、古代日本で行方不明になっている。ポーリーンの母、アデライン・ジャンセン侯爵の友人。
 邪蛮から子宮畜を供給する「フジヤマ飼育所」は彼女の管理下にあり、ポーリーン一行は次女出産に際し、より質の良い子宮畜を得ようと、彼女の下を訪れた。
 ポーリーンらジャンセン姉妹のことは子供の頃から知っている。 和魂と荒魂を併せ持つ、カリスマ性に溢れた人物。光り輝く美貌の持ち主。
 ポーリーンに同行したクララに対し、すぐに「EHSに入りたての旧時代人で、供のヤプー(麟一郎)とも普通の関係ではない」と見抜いてショックを与えるなど、聡明で眼力に優れる。
 さらに、クララが持つ20世紀的な心理を克服するべきだとして、クララに司馬遷の去勢したペニスから作成した「珍棒」(チンボー・仮男根)を贈り、それを装着して麟一郎の肛門を犯すようアドバイスした。
 また、クララとウィリアムの婚約発表に際してはその証言者となり、宴会の余興で勝ち取った賞金を、二人への祝い金として贈るなど、保護者的に振る舞う。 ヤプー宗教の根幹となる思想「慈畜主義」を提唱し、ヤプー宗教の正教である「白神信仰」の創始者であり、ヤプーに対して人間に「奉仕することの喜び」を教え、労働の苦痛が奉仕の喜びになる思想を流布した。
 ヤプーに奉仕対象部位のみを信仰させる「みほとけ信仰」の創始者である、現地球都督ジャーゲン卿と対立することになる。

 ▼スーザン

 アンナ・テラスの妹。
 彼女の思い出を綴った、姉アンナの著作により、EHSでは「スザノ」の名で知られている。
 かつて姉とヤプーの管理方法について意見が対立し、勝負を挑むが敗北、古代日本へ傷心旅行に出る。
 古代日本世界の探検を続けるなかで、現地ヤプー族にあがめられ、日本諸島を侵略してヤプー族を困らせていたオロチョン族の八武将を討伐。
 さらに満州方面にあるオロチョン族の本拠に攻め入り、酋長のモロク・モンを討ち取る。その際にモロク・モンのペニスで鞭を作成して、姉に献上するよう仕えていたヤプーに託した。
 しかし、その直後に連絡が取れなくなり、以降、行方不明のままとなっている。

 ジャーゲン卿(セオドラ・ジャーニンガム公爵)

 現地球都督であり、帝国中央軍司令官の大将、威風堂々とした雌々しい(旧世界における「雄々しい」の意味)女性で、カイゼル髭をチャームポイントとしている。
 道教における仙女の上元夫人でもある。EHS政界の軍治保守派(トーリー)のリーダーとして、立場的にジャンセン侯爵とはライバル関係にある。また、ヤプー宗教の「みほとけ信仰」の創始者として、宗教的にはアンナ・テラスのライバルでもある。
 後にこの人物がクララのEHS入国の秘密を嗅ぎ付けたことから、EHSの内乱が勃発することが明かされている。

 ▼チャールズ・マック

 ジャンセン家の隣人であるアグネス・マック公爵の一人息子。
 少女のように見える美少年。まだ若いが美術に造詣が深く、その道ではポーリーンの夫ロバートの兄弟子にあたる。
 ポーリーンに乞われ、彼女がロバート作の生体彫刻に加えた飾りつけに対して、厳しい添削指導を行う。
 麟一郎が受けることとなる尿洗礼の儀式について「ヤプーごときのために人間の小便を使うのは勿体ないのではないか?」と鋭い疑問を投げかける。

 ▼プリンス・オットー

 乙姫として知られている皇子(女装をしていたため「姫」と間違われた)プリンス・オットーには同性愛の性癖があり、しかも女装をして旧時代の女性のように、男性に荒々しく犯されたいという願望を持っていた。
 自身の領星の水中に竜宮城を建設し、亀形ボートで平民男性を拉致しては同性愛の相手をさせていた。
 そのように拉致された平民の一人がウラジミール(浦島太郎)であった。
 オットーはウラジミールとの手切れの際、彼に若返り用の「時間煙草(タイム・タバコ)」を渡したのだが、ウラジミールは使用法を間違えて老人になってしまった。
 恨みに思ったウラジミールはこの件を暴露して、帝国を揺るがす一大スキャンダルとなった。
 プリンス・オットーは激怒した母王により王室から追放された。

     〔ウィキペディアより引用〕



ダカーポ ♯003

2023-07-21 21:00:00 | Keyword/話題

 ■観念

 観念(かんねん、英: idea、希: ιδέα)は、プラトンに由来する語「イデア」の近世哲学以降の用法に対する訳語で、何かあるものに関するひとまとまりの意識内容のこと。元来は仏教用語。

 「イデア」は、何かあるものに関するひとまとまりの意識内容を指し、デカルトによって近世哲学的な意味で再導入された。

 《定義》

 論者によって厳密にいえば定義は異なる。
 プラトンのイデアは、客体的で形相的な元型のことであるが、デカルトによって、認識が意識する主観の内的な問題として捉えなおされたため、イデアは、主観の意識内容となり、以降、この意味での用法のものを観念と訳している。
 日本では訳語に観念が当てられる。日本語の観念は、元来は仏教用語であり、「イデア」以外の意味を持つ。

 《歴史》

 この客観的な外在としてのイデアから、主観的な内在としての観念への移行は、ちょうど、「Object」がそれまでの意識対象・意識内容として主観の内的な何かを意味していたものから、外的な主観の対立物である客観・対象へと移行し、「Subject」が外的な基体・実体(ヒュポケイメノン)から、主観的で内的な主体へと移行した変化に対応している。

 ロックでは観念と物そのものが区別される。ロックにとって物そのものは観念の対応物でなく観念を引き起こす原因である。
 ヒュームでは観念と知覚印象が区別される。観念は論者によっては感覚的イメージだけを意味することもあり、また概念的で感覚的ではない観念を含むこともある。
 バークリーでは観念だけが実在であるとされ、外的な物質の存在は否定される。
 仏教では、観念は仏や浄土などを智慧によって対象を正しく見極め、精神を集中して思い考えること。『観仏三昧経』等で勧められている。
 観想ともいう。転じて、一般には想いをこらして深く考える事に依って正しい結論に思い至ること。

 関連項目 ー 概念 ー

 概念(がいねん)

 命題の要素となる項(ドイツ語: Konzept・コンツェプト)が表すもの、あるいは意味づけられたものであり、言い換えれば、それが言語で表現された場合に名辞(ドイツ語: Konzept)となるもの。
 人が認知した事象に対して、抽象化・ 普遍化し、思考の基礎となる基本的な形態となるように、思考作用によって意味づけられたもの。
 哲学では概念を「notion」(フランス語)、Begriff(ドイツ語)というが、日常的に concept(フランス語)、Konzept (ドイツ語)という。
 日本語訳は西周によって造られた。

 《名辞》

 言葉が文の要素であるように、概念は命題の要素である。
 概念が言葉で表現されたものを名辞(めいじ)という。
 ひとつの命題として

  AはBである

 とした場合に、「A」を主辞、「B」を賓辞という。
 特に抽象名辞(抽象概念)は、言語や数字や記号で現実世界を表す。
 または現実にないものをあるものとして存在させるために表現する手段である。

 《作品の概念・コンセプト》

 人の手による絵画・書画・曲・文芸等の作品は、作者がその作品に込めた意図・意匠・目的・思い等の概念を有し、これを表現しており、「作品のコンセプト」等と言われている。
 また、受け手の感じ方によって新たな概念が付加される場合があり、作品に接する時代性や社会的価値観などの変化に伴って変わる。
 芸術における概念(抽象概念)は、心で感じ取ったものを2次元(絵画)、3次元(立体彫刻など)で表現したものといえる。
 音楽も同様で、心で感じ取ったものを楽器の音、人間の声を構成して表現している。写真はそのときの作者(撮影者)の心情と場面をその瞬間の調和で作り上げる即興的芸術ともいわれる。
 とはいえこの用法は、いわば比喩的表現であって、本来の普通の意味で用いられている「概念」、つまり抽象的認識作用のことを意味するのではないであろう。
 もしも絵画や音楽によって表現され、我々に何らかの印象もたらす芸術作品が端的に概念に変換されうるものであれば、わざわざ楽器や絵を用いずとも、概念によって表現すれば、制作も他者への情報伝達も極めて容易であるから。
 たとえば花の絵があるとして、その絵は単なる「花」という概念よりも多くの情報を持ち、我々はそれによって単なる概念以上に何らかの心的影響を受けている。そうであるならば「作品とは概念を表現するものである」という説明は実際に起きていることと矛盾している。
 さらに、もしも概念によって芸術的技能に寄与することがあるとすれば、わざわざ楽器や絵画の実際的練習を積まずとも、教則本などによって概念による抽象的認識を得ればそれで事足りるはずであるが、実際はそうではない。
 ゆえに、概念を「言葉を用いた抽象的認識」と定義するならば、この項に書かれているような意味で「概念」という語を用いるのは適切ではない。

 関連項目 ー イデア ー

 「イデア」という言葉は「見る」という意味の動詞「idein」に由来していて、もともとは「見られるもの」のこと、つまりものの「姿」や「形」を意味している。

 《プラトンの哲学》

 ▼ギリシア語の語彙体系について

 若干説明しておくと、ギリシア語では、見るideo系統の用語としては、ideinとeidoがあった。
 eido の過去形 eidon に由来する「eidos エイドス」という言葉は「形」とか「図形」という意味でごく普通に用いられる言葉であった。
 「イデア」も「見え姿」や「形」を意味するごく普通の日常語で、プラトン自身は「イデア」と「エイドス」を専門用語として区別して使用していたわけではなく、同義の語として使用していた。
 プラトンは、イデアという言葉で、われわれの肉眼に見える形ではなく、言ってみれば「心の目」「魂の目」によって洞察される純粋な形、つまり「ものごとの真の姿」や「ものごとの原型」に言及する。
 プラトンのいうイデアは幾何学的な図形の完全な姿がモデルともとれる。
 プラトンにおけるイデアの理解は一定しているわけではなく、書かれた時期によって変遷が見られるという。
 一般にプラトンのイデア論というと中期のそれを指していることが多い。

 ▼中期

 「徳とは何か?」という問いがある。これについて「不知なる対象の探求は不可能だ」と説く立場(探求のパラドックス説)もあるが、これに対してプラトンは「学習は想起(アナムネーシス)である」との想起説によって、このパラドックス説を斥ける。
 想起説は、魂は不死だとする説と、輪廻転生の説と連関がある。

 プラトンは次のように説明する。

 我々の魂は、かつて天上の世界にいてイデアだけを見て暮らしていたのだが、その汚れのために地上の世界に追放され、肉体(ソーマ)という牢獄(セーマ)に押し込められてしまった。

 そして、この地上へ降りる途中で、忘却(レテ)の河を渡ったため、以前は見ていたイデアをほとんど忘れてしまった。だが、この世界でイデアの模像である個物を見ると、その忘れてしまっていたイデアをおぼろげながらに思い出す。

 このように我々が眼を外界ではなく魂の内面へと向けなおし、かつて見ていたイデアを想起するとき、我々はものごとをその原型に即して、真に認識することになる。

 つまり、つまり、真の認識とは「想起」(アナムネーシス)にほかならない、と言うのである。
 想起説が導入されることでプラトンの哲学は、劇的な展開をとげ、強固な二元論の立場となった。
 そしてphilosophia(=愛知)とは「死の練習」なのであり、真の philosopher(愛知者)は、できるかぎりその魂を身体から分離開放し、魂が純粋に魂自体においてあるように努力する者だとした。
 この愛知者の魂の知の対象が「イデア」である。
 イデアは、それぞれの存在が「何であるか」ということに比較して、「まさにそれであるところのそのもの」を意味する。

 ▼近世

 イデアという語は、英語 idea, ドイツ語 Idee であるが、近世においては、プラトンとは違った近世哲学独自の解釈を与えられることになり、「アイディア」「イデー」と聞いて現代人がまず思い浮かべる用法が現れた。

 関連項目 ー イデア論 ー

 イデア論(イデアろん)
(英: theory of Forms, theory of Ideas, )
(独: Ideenlehre)

 プラトンが説いたイデア(希: ιδέα、英: idea)に関する学説のこと。
 本当にこの世に実在するのはイデアであって、我々が肉体的に感覚する対象や世界とはあくまでイデアの《似像》にすぎない、とする。

 《概要》

 「イデア」という語は、古代ギリシャ語の動詞「idein」(見る)に由来する。
 プラトンの哲学では、《idea》(イデア)と《eidos》(エイドス)は同義である。
 eidosというのもやはりideinに由来する言葉である。
 ideaやeidosが哲学用語・専門用語として意味が固定したのは、弟子のアリストテレスが用いて以降であり、プラトン自身がそれらを専門用語として用いていたわけではなかったという。
 プラトンの説には変遷が見られる。

 《初期》

 プラトンの初期の哲学は、ソクラテスが実践したphilosophy(愛智)を描くものであるが、その根本の動機というのは《良く生きる》ことであるということ、また愛智の目的(徳の「何であるか」の探求と学習)を明らかにしつつ、また「無知の知」を自覚させ、人間のpsyche(プシュケー、命、魂)を愛智の道の出発点に立たせようとする。
 ソクラテスが倫理的な徳目について、それが《何であるか》を問い求めたわけであるが、それに示唆を得て、ソクラテスの問いに答えるような《まさに~であるもの》あるいは《~そのもの》の存在(=イデア)を想定し、このイデアのみが知のめざすべき時空を超えた・非物体的な・永遠の実在・真実在であり、このイデア抜きにしては確実な知というのはありえない、とした。

 《中期》

 中期の哲学は、『メノン』で取り上げられ『パイドン』で展開される《想起》(アナムネーシス)という考え方の導入によって始まる。
 これは、学習というのは実は《想起》である、という説明である。つまり我々のプシュケー(魂)というのは不滅であって輪廻転生を繰り返しており、もともとは霊界にいてそこでイデアを見ていたのであって、こちらの世界へと来る時にそれを忘れてしまったが、こちらの世界で肉体を使い不完全な像を見ることによりイデアを思い出しているのだ、それが学習ということだ、という考え方である。 (この《想起》という考え方によって、プラトンは「徳とは《何であるか》という問いに答えられないし、不知な対象は探求は不可能だ」とする「探求のパラドックス」は間違っているとする。) そしてプラトンはphilosophy(愛知)というのは、まさに《死の練習》なのであって、真の愛知者というのは、できるかぎり自分のプシュケーをその身体から分離解放し、プシュケーが純粋にそれ自体においてあるように努める者だ、とする。   
 そして愛知者のプシュケーが知る対象として提示されるのが《イデア》である。
 プシュケーの徳に関して、《美そのもの》(美のイデア)《正そのもの》(正のイデア)《善そのもの》(=善のイデア)などが提示されることで、愛知の道の全体像が提示される。
 (《善そのもの》は、「知と真実の原因」とされ、太陽にも喩えられている)。
 愛知者のプシュケーが、問答法によって《善そのもの》へ向かい、それを観ずることによって、自らのうちに《知と真実》をうむこと、そして《善そのもの》を頂点としたイデアを模範とすることで、自己自身である自分のプシュケーをそのイデアの似姿として形づくること、
 それがプラトンの思い描いたことである。

 《後期》

 中期の終わり頃に位置する『パルメニデス』ではイデアの措定の困難を取り上げ、「第三人間論」などのイデア論批判を行う。
 それとともに想起説などが取り下げられ、後期ではイデアやエイドスは、中期のそれとは異なったものになり、分割と総合の手続きにより新たに定義される問答法で扱われる《形相》あるいは《類》として理解されるようになる。

 《後世の人々》

 プラトンの弟子のアリストテレスは、《形相》や《類》の分割や交わりが引き起こす「1対多問題」や、定義の「一性」問題について考察しつつ、自己の哲学を確立していった[6]。 およそ500年後のプロティノスは、万物は一者(善のイデア)から流出したとした(→ネオプラトニズム)。 イデアが実在すると考える考えは後にidealism(観念論)と呼ばれるようになった。そして「実在論」(realism) の系譜に属する、とされるようになった。

 関連項目 ー 実在論 ー

 実在論(じつざいろん、Realism)

 名辞・言葉に対応するものが、それ自体として実在しているという立場。
 対応するものが概念や観念の場合は観念実在論になり、物質や外界や客観の場合は、素朴実在論や科学的実在論になる。
 実在論の起源は古代ギリシアのプラトンが論じたイデア論にまで遡ることができる。イデアの理論によれば、感覚することができる世界は実在するものでなくイデアの射影であると考えられた。
 個々の感覚を理性によって把握することによってのみ実在するイデアを認識することができると論じている。
 アリストテレスもまた普遍的な概念として実在を考えており、感覚によって捉えられる個物を「第一実体」、そしてそれが普遍化されたものを「第二実体」と呼んで区別した。
 中世のスコラ学においてはプラトンやアリストテレスの伝統を受け継ぎながら霊魂という観念的な存在の実在を基礎付けるための議論が起こった。
 それが普遍論争であり、その論争で実在論はトマス・アクィナスなどによって一方の立場と位置づけられた。
 この意味のときは実念論とも訳し、唯名論の立場に対立する見解となった。
 近代哲学においてはベルナルト・ボルツァーノは概念そのものの観念的な対象が実在することを主張し、科学的実在論の立場からはゴットロープ・フレーゲは科学的に構築された理論、論理記号を制約する独立した普遍的な対象が実在することを主張した。

     〔ウィキペディアより引用〕



一攫千金 ー ひとつの考察 ー (下)

2023-07-20 21:00:00 | 日記

 《不正競争行為からの保護》

 ▼商品表示
 (著名標識・周知表示)(著名表示冒用行為の禁止・周知表示混同惹起行為の禁止)

 他人の周知な商品等表示を使用して、自己の商品・営業を他人の商品・営業と混同させる行為、著名な商品等表示と同一もしくは類似の標識、需要者の間に広く認識されている商品等表示。

 ▼商品形態(商品形態模倣行為の禁止)

 販売されてから3年以内(不正競争防止法19条1項5号イ)の商品形態。

 ▼インターネット上のドメイン名
(不正にドメインを使用する行為の禁止)

 インターネットにおける識別情報(周知商標の保護規則に関する共同勧告「WIPO勧告」)。

 ▼営業秘密(営業秘密の保持・不正入手の禁止)

 秘密として管理されている有用な技術・営業上の情報(民法・刑法の不法行為)。

 ▼原産地表示・地理的表示(原産地等誤認惹起行為の禁止)

 ある商品の地理的原産地を特定する表示(TRIPS協定第22条)。

 ▼限定提供データ
 (不正取得、不正使用等の禁止)

 業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、および管理されている技術上または営業上の情報。
 平成30年不正競争防止法改正で追加。

 《その他の権利》

 ▼回路配置利用権
肖像権(人格権)- 肖像が持ちうる、人格権にかかわる権利(憲法第13条、民法第710条)。
 半導体回路配置を保護する(半導体回路配置保護法、集積回路についての知的所有権に関する条約:IPIC条約)。

 ▼育成者権
 
 種苗の品種を保護する(種苗法、UPOV条約)。

 ▼商号権

 商人が名称を商号として利用する表示(商法第14条、パリ条約)。

 ▼肖像権(人格権)

 肖像が持ちうる、人格権にかかわる権利(憲法第13条、民法第710条)。

 ▼パブリシティ権(財産権)

 肖像が持ちうる、財産権にかかわる権利(東京高裁平成3年9月26日判決(判例時報1400号3頁)「おニャン子クラブ事件」)。
 実務上は、知的財産基本法に列挙されていないパブリシティ権なども知的財産権の一種として扱われている。

 ▼タイプフェース

 日本では、原則として保護されず、著作物として保護されるには、独創性と美的特性を備え、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となりうる美的特性を備えていることが必要である旨が判示されている。
 一方で、フォントデータについては、プログラムの著作物として保護されるとの主張があり、実際に立件された例がある。
 なお、タイプフェイスを保護する条約として、タイプフェイスの保護及びその国際寄託に関するウィーン協定が作成されているが、締約国数の不足により発効していない。

 《知的財産権の始まり》

 ・古くは紀元前18世紀ごろから12世紀ごろにかけて、ヒッタイトが、当時貴重であった鉄の製法(ノウハウ)を周辺民族に秘密にすることで優位を確保し、勢力を拡大した。
 このことをノウハウ管理の重要性を理解した知財戦略のはしりと見る見解がある。

 ・近代的な知的財産権の制度としては、ルネサンス期イタリアのヴェネツィア共和国で誕生した特許制度が世界で最初の知的財産権制度であったと言われている。
 ガリレオがヴェネツィア公に懇願をし、その結果としてヴェネツィア共和国で、世界で最初の特許制度が公布されたと言われている。

 ▼知的財産政策(ヤングレポート)

 1980年代の世界貿易は、先進国、アジア地域の高い経済成長につれて順調に推移した。日本は特に1980年代前半の円安期に輸出を伸ばし、1986年には世界シェアが10.5%になり、米国と並ぶまでになった。
 しかし、日本による米国への集中豪雨的な輸出のため、米国の輸出は伸び悩み、世界輸出市場に占める米国のシェアは11%台で低迷。
 1980年代を通して見ると、米国では輸入が急増し、1984年には貿易赤字が1,000億ドルを超え、米国の産業競争力は著しく低下した。
 そこで、共和党政権のロナルド・レーガン大統領は、1983年6月、ヒューレット・パッカード社のジョン・ヤング社長を委員長に迎え、学界、業界の代表者からなる「産業競争力についての大統領委員会」を設立した。
 ヤング委員長は、米国の競争力の低下を一年半にわたり広範に検討し、その結果を『地球規模の競争-新たな現実』と題する報告書として1985年1月25日に大統領に提出した。
 これが「ヤングレポート」として国際的に知られている報告書である。 報告の骨子は、「米国の技術力は依然として世界の最高水準にある」としたうえで、それが製品貿易に反映されないのは、「各国の知的財産の保護が不十分なためである」と分析し、その回復のために、プロパテント政策を推進することを提言した。
 この提言と同様な政策は、その後の大統領通商政策アクションプラン(1985年9月)や、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)の知的財産政策(1986年4月)などにも見いだすことができる。

 ▼2018年より始まった米中貿易戦争

 2010年代、中国では国内に進出する国外企業に対し、合弁先が最先端技術の知的財産権供与を強要するケースが目立ち始め、地方政府も同調するように許認可権を通じて圧力をかける例が報じられるようになった。
 2017年、アメリカは中国の知的財産権の扱いに対して通商法スーパー301条に基づく調査を始めるとともに、通商代表部ライトハイザー代表が中国を国際的な貿易体制の脅威でと主張するなど摩擦が生じるようになった。
 中国側も反論を行ったが、アメリカを納得させるまでに至らず、2018年、知的財産権はアメリカが中国からの幅広い輸入品に関税をかける米中貿易戦争のきっかけの一つとなっている。

 関連項目 ー 商標 ー

 商標(しょうひょう)
 (英: trademark)

 商品や役務の提供者(事業者)が、提供元(出所)を他者と区別するために使用する標識をいう。
 法域にもよるが、商品についてはトレードマーク、役務についてはサービスマークなどと呼ばれることもある。

 《概要》

 商品や役務を提供される需要者が、商品や役務の提供者を認知するための文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音などの標識で、14世紀の法学者バルト―ルスが紋章法(英語版)と併せて発案した概念である。
 商品や役務の提供者が、商品の販売時に商品や包装、役務の提供に使用される物や電磁的な映像面などに商標を付すと、需要者は商標により出所を認識して選択できる。
 商品や役務の提供を一定以上の質で継続すると、商標は広範の需要者から認知が高まるとともに信用度が向上して財産的価値が生じ、特許権や著作権などと同様に知的財産権として条約や法律で保護される。
 優れた商標は産業の発展と需要者の利益に資する。

 《制度》

 出願時の審査、アメリカなどの先使用主義、日本やヨーロッパなどの先願主義、など各国や地域で異なる。
 商標の保護を求める国に直接出願するか、マドリッド協定議定書による国際出願をしない限り、保護の対象は国内に限定され、国際出願をした場合も、原則として保護を求める国で審査を受ける必要がある。

 《種類》

 商品の商標はトレードマーク、役務の商標はサービスマークなどと称される。視覚により伝達される文字、図形、記号など平面的なものや、商品や看板などの特徴的な立体形状のほかに、音響、匂い、味、手触りなど需要者が特徴を覚知すれば機能を発揮する。

 《機能》

 商品やサービスに付される目印を保護し、それらの出所を明示し、品質を保証し、広告機能を持たせることで、商標を使用する者の業務上の信用を保護して産業の発展を図ると同時に、需要者の利益を保護する。

 《商標であることの表示》

 法域によっては、商標であることを示すために商標マークや登録商標マークの表示が求められることがある。 アメリカにおいてはこれらのマークの使用が法定されている。
 特に登録商標マーク(®)は、中国が2002年8月3日に中華人民共和国商標法実施条例37条2項で公布するなど広く世界で用いられている。
 日本の商標制度においては、商標法施行規則17条で「登録商標」の文字と登録番号で登録商標を表示すると定めるのみであり、登録商標マークについて定めはない。
 有形の商品に表示を行う際は本体や包装に商標を付すことが多い。無形の役務について表示を行う場合は、役務を提供する店舗や車両などの設備に表示する、ウェブサイトなどの画面に出力する、役務の提供に伴って販売または貸与する有形の商品に商標を付すなどの方法が取られることが多い。

 ★ゆっくり茶番劇商標登録問題
(ゆっくりちゃばんげきしょうひょうとうろくもんだい)

 動画共有サービスのYouTubeやニコニコ動画において動画のジャンルを表す単語として使用されていた「ゆっくり茶番劇」について、2022年にYouTuberである柚葉/Yuzuhaが商標登録を行い、この単語を使用する動画投稿者などから利用料の徴収等を試み、Twitterを中心としたプラットフォーム上で大きな反発を招いた騒動のことである。
 騒動の結果、同年6月8日付で、商標登録は放棄された。

 ▼背景

  「ゆっくり茶番劇」

 通称「ゆっくりボイス」と呼ばれる音声合成エンジン「AquesTalk」を使用して映像に抑揚のない棒読みの音声を追加した、配信動画のジャンル・カテゴリーの一種である。
 同人ゲーム『東方Project』のそれぞれ主人公である「博麗霊夢」と「霧雨魔理沙」やその他キャラクターをモチーフにした「ゆっくり」を映像中に配置することもある。
 このような動画の数々は2008年にはジャンルとして定着しており、騒動のあった時点でニコニコ動画では約80万本以上の動画が配信されていた。

 ▼騒動の経緯・時系列

 ・2021年9月13日、「ゆっくり茶番劇」の商標がYouTuberの柚葉/Yuzuhaにより特許庁に出願される。

 ・2022年2月21日、登録査定・登録料納付が行われる。

 ・2022年2月24日、正式に商標登録される(第6518338号)。

 ・2022年3月8日、登録証が交付される。

 ・2022年5月15日、YouTubeなどで動画を公開している柚葉/YuzuhaがTwitterで「ゆっくり茶番劇」の商標権を取得したと発表。
 YouTubeにも商標使用に関する要綱を纏めた動画が投稿された。
 なお、この時点で異議申し立て期間は過ぎている。
 この発表を受け、各所から反発が広がる騒動へと発展した。

 ・2022年5月16日、騒動を受け、取得を代行した特許事務所が謝罪。
 また、商標を取得したとする柚葉/YuzuhaがTwitterにて、ライセンス使用料を不要にすると発表。
 ただし、権利は保持すると主張。

 ・2022年5月20日、Coyu.Liveが商標を取得したとする柚葉/Yuzuhaに対し、無期限会員停止処分とした。

 ・2022年5月21日、同事務所より商標を取得したとする柚葉/Yuzuhaが商標放棄手続きを5月23日から開始するとTwitterにて発表。

 ・2022年5月23日、ドワンゴが当問題について商標の無効審判や「ゆっくり」のドワンゴによる商標登録に関する会見を行う。

 ・2022年5月24日、商標を取得したとする柚葉/YuzuhaがTwitter上で2022年5月23日付で当該商標の抹消登録申請を行ったことを公表。

 ・2022年6月1日、Coyu.Liveより特許庁が商標の抹消登録申請について受理・登録したと公表。
 また、ドワンゴが「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくり劇場」を5月24日に商標出願した旨を発表。

 ・2022年6月8日、同日付で商標の権利が抹消される。

 ・2022年8月8日、商標登録無効審判が請求される。

 ・2022年10月3日、「ゆっくり茶番劇」について特許庁は無効審判で「全部無効」の審決を出した。

 ・2023年2月7日、特許庁はドワンゴから出願されていた「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくり劇場」の文字商標登録を拒絶した。

 ▼商標登録発表後

 2022年5月15日、東方Projectとは全くの無関係である第三者が「ゆっくり茶番劇(商標登録6518338)」を商標登録し使用権を行使したことから、インターネット上では批判の声が多く上がった。
 発表が異議申し立て期限を過ぎてから行われた点や、当初営利目的での利用において年間10万円(税別)の使用料を請求すると発表した点にも批判が寄せられた。
 Twitterでは関連ワードがトレンド1位となった。
 ゆっくり茶番劇の動画に使用されるキャラクター、「ゆっくり」の由来「東方Project」の原作者でもあるZUNが騒動を認知していると発表し、ニコニコ動画を運営するドワンゴの栗田穣崇が、同サイトを利用する動画投稿者への影響を調査し必要に応じて対応を取ると声明を出した。
 また、いわゆる「ゆっくりボイス」に使われているAquesTalkの権利を販売しているAquest社は、5月16日時点では声明を出していない。

 この権利について柚葉/Yuzuhaの所属事務所のCoyu.Liveは、「所属規約および所属契約への違反が認められた」として柚葉を警告処分としたことを発表した。
 5月17日9時54分、柚葉に対し「使用料無償化」「煽るようなツイートの削除」「今後のツイート内容の見直し」「謝罪」を要請したと公式Twitterにて発表した。5月18日午後、2021年9月13日の時点で柚葉はCoyu.Liveに所属していなかったとして、同事務所は商標登録には全くの無関係と発覚した。
 しかし、所属ライバーが問題を起こしたとして今後も対応を続けていくと発表した。
 この批判を受けて5月17日、使用料は不要と方向転換したが、権利は当社のものと柚葉は主張した。
 また日本テレビやTBSテレビなどの地上波放送局でも報道されている。
 5月20日、株式会社ドワンゴは「文字商標『ゆっくり茶番劇』に関するドワンゴの見解と対応について」とした公式発表を公開した。
 見解では、「【ゆっくり茶番劇】+動画タイトル」や「【ゆっくり劇場】+動画タイトル」のような動画をニコニコ動画に投稿することは当該商標登録にかかる商標権を侵害することはなく、問題はないと考えていると示した上で「そもそも『ゆっくり茶番劇』は動画のジャンルやカテゴリー、動画の内容を広く示す表示として広く一般に使用されている文字列であるという認識であり、特定の企業や個人が独占すべき文字列ではない」とした。
 東方Project原作者ZUNは、法律事務所と相談したところ東方Projectの二次創作としてゆっくり茶番劇を使用するのであれば、商標権の効力は及ばないと公表し、今後の対応はドワンゴで行うと発表した。
 5月24日、商標を取得したとする柚葉/YuzuhaがTwitter上で2022年5月23日付で当該商標の抹消登録申請を行ったことを公表。
 5月27日、ドワンゴはゆっくり茶番劇商標登録を理由に、投稿者が自ら削除した動画を窓口に問い合わせた場合は復旧すると発表した。
 なお対象期間は3ヶ月以内であり、それを超えると復旧が困難になるとしている。
 6月1日、柚葉が自身のTwitterアカウントを削除したと見られると ITmediaが報じた。
 6月2日、ドワンゴの栗田穣崇専務取締役は「ゆっくり茶番劇」が登録されるべきでなかったことを確認するために、無効審判を請求することをTwitterにて公表した。

      〔ウィキペディアより引用〕





一攫千金 ー ひとつの考察 ー (中)

2023-07-19 21:00:00 | 日記

 ■実体審査

 実体審査では、特許出願された内容が、新規性、進歩性などの特許要件を満たすか、が審査されます。
 特許要件は、出願時において満たしているかが判断されることになります。
 このときの審査の判断基準については、特許庁が公表している「審査基準 」で解説されています。
 審査において、拒絶の理由がある、つまり新規性がないなどと判断されると、特許庁から出願人へその旨の「拒絶理由通知」が出されます(特許法50条)。
 これを受けて、出願人は「意見書」を提出して、新規性があることを説明する、「手続補正書」を提出して、出願書類を一部修正する、といった対応をすることになります(特許法50条、17条の2)。

 ■特許査定

 実体審査の結果、拒絶の理由がない(特許要件を満たす)と判断された場合、又は拒絶理由通知を受けての意見書や手続補正書で拒絶の理由が解消された場合は、特許査定が出されます(特許法51条)。
 特許要件を満たさないなど、拒絶の理由があると判断された場合は、拒絶査定が出されます(特許法49条)。

 ■特許権の設定の登録(特許権発生)

 出願人は、特許査定の謄本が特許出願人に送達された日から30日以内に、1年目~3年目までの特許料を納付する必要があります(特許法108条)。
 特許料が納付されないと、特許出願の却下がされてしまいます(特許法18条)。
 特許料が納付されると、特許原簿に「特許権の設定の登録」がされ、この登録によって特許権が発生します(特許法66条)。

 ■特許出願ではなく実用新案登録出願をするメリット

 特許出願の審査には長期間を要するため、発明について簡易的に権利を確保したい場合は、実用新案登録出願を行うことも検討しましょう。
 実用新案権とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」について登録を受けた場合に認められる権利です(実用新案法2条1項、2項)。
 特許権が高度な発明に限って認められるのに対して、実用新案権は特許発明に至らない程度の発明についても認められます。
 特許権者と実用新案権者は、いずれも登録された発明(創作)を実施する権利を専有します(特許法68条、実用新案法16条)。
 ただし特許権とは異なり、侵害者に対して実用新案権を行使するためには、事前に「実用新案技術評価書」を提示して警告することが必要です(実用新案法29条の2)。
 特許出願では、特許要件についての実体審査が行われるのに対して、実用新案出願では実体審査が行われません。
 形式審査のみで登録が行われるため、短期間で権利を取得できる点が実用新案出願の大きな特徴です。
 具体的には、特許権は出願から権利取得までの期間が1年を超えるケースが多いのに対して、実用新案権は出願から権利取得まで2~4か月と短期間で権利を取得できます。
 このように、実用新案権は特許権に比べて、要件や手続き期間の観点から、権利取得のハードルが低いメリットがあります。
 簡易的な発明等について権利を取得したい場合、早期に権利を取得したい場合などには、特許出願ではなく実用新案登録出願を行うことも有力な選択肢となるでしょう。

 さて、そもそも特許とは、なんでしょう。

 特許(とっきょ)
   (英: Patent)

 法令の定める手続により、国が発明者またはその承継人に対し、特許権を付与する行政行為である。
 日本では他の意味でも特許という言葉が使われるので、この意味を明示するためにカタカナ語として「パテント」と呼ぶ場合もある。

 《概要》

 最も一般的な公開代償説によれば、特許は、有用な発明をなした発明者またはその承継人に対し、その発明の公開の代償として、一定期間、その発明を独占的に使用しうる権利(特許権)を国が付与するものである。
 そこで各国の特許法では法定の特許存続期間を設け、その期間をすぎると発明の実施が自由開放される仕組みとなっている。
 特許権は、無体物(物(有体物)ではない、形のないもの)である発明に排他的支配権を設定するものであり、知的財産権のひとつとされる。
 日本の特許法においては、特許制度は、特許権によって発明の保護と利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とするとされている(特許法第1条)。

 《特許制度の歴史》

 英語で特許を意味する"patent"の語源は、ラテン語の"patentes"(公開する)であるといわれている。
 中世ヨーロッパにおいては、絶対君主制の下で王が報償や恩恵として特許状を与え、商工業を独占する特権や、発明を排他的に実施する特権を付与することがあった。
 しかし、これは恣意的なもので、制度として確立したものではなかった。
 イタリアのヴェネツィア共和国では、現在知られる限り最初の特許は、1421年に、ブルネレスキに与えられ、1474年には世界最古の成文特許法である発明者条例が公布された。このことから、近代特許制度はヴェネツィアで誕生したとされている。
 1623年にイギリス議会で制定された専売条例(英語版)は、それまでエリザベス1世とジェームズ王が塩税やデンプン税のため恣意的に認めてきた特許を原則禁止にした。 
 例外的として発明と新規事業のみは、一定期間(最長14年間)に限って独占権を認めるとともに、権利侵害に対する救済として損害賠償請求を規定した。
 この条例の制定により特許制度の基本的な考え方が確立した。
 専売条例は後にジェームズ・ワットの蒸気機関(1769年)や、リチャード・アークライトの水車紡績機(1771年)などの画期的な発明がなされる環境を整え、英国に産業革命をもたらした。
 1883年には、工業所有権の保護に関するパリ条約(パリ条約)が締結され、内国民待遇の原則、優先権制度、各国工業所有権独立の原則など、特許に関する国際的な基本原則が定められた。

 ▼日本

 日本の特許制度は、明治維新後の1871年(明治4年)に最初の特許法である専売略規則(明治4年太政官布告第175号)の公布によって始まったが、この制度は利用されずに当局も充分な運用ができなかったため、翌年には施行が中止された。
 その後、1885年(明治18年)4月18日に本格的な特許法である専売特許条例(明治18年太政官布告第7号)が公布・施行された。
 これは、フランス特許法をモデルにした。
 1888年(明治21年)には、発明者に特許請求権を付与し一定の審査官によって出願を審査する審査主義を確立した特許条例(明治21年勅令第84号)、意匠条例、商標条例が公布され、1899年(明治32年)には旧特許法(明治32年法律第36号)を制定してパリ条約に加入した。
 1922年(大正11年)に施行された大正10年法では先願主義が採用され、現在の特許法の基礎が作られた。
 現行特許法(昭和34年法律第121号)は、1959年(昭和34年)に全面改正された昭和34年法を累次、部分改正したものである。

 《特許制度の意義》

 発明に対して特許制度により独占的権利を与える根拠としては、いくつかの説が提唱されている。
 それらを大別すると、基本権(自然権)説と産業政策説の2つに分けられる。現在では、産業政策説に属する公開代償説が最も広く受け入れられている。

 ▼基本権(自然権)説

 発明に対する権利は、人間に与えられた基本的な権利(自然権)であるとする説。
 1791年のフランス特許法等で採用された考え方である。財産権説と受益権説に細分される。

 ▼財産権説

 発明に対する権利は財産権であるとする説。
 基本的財産権説とも呼ばれる。
 この説によれば、特許法は、権利を創設するのではなく、規制するものであるということになる。
 この説では、各国で独立して特許が与えられること(属地性)、複数の者が独自に同じ発明を完成しても最初に出願(または発明)した者しか権利を取得できないこと、出願をしなければ権利を取得できないことを説明することができない。

 ▼受益権説

 発明が社会に貢献した程度に比例して、その報酬を受ける権利があるとする説。
 基本的受益権説とも呼ばれる。この説では、上記の財産権説の矛盾に加えて、発明の社会への貢献度とその報酬とが必ずしも比例しないことを説明することができない。

 ▼産業政策説

 発明に対する権利は、国の産業政策として発明の権利保護を図るために与えられるとする説。
 公開代償説、発明奨励説、過当競争防止説(競業秩序説)に細分される。

 ▼公開代償説

 仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明が他人に模倣されてしまうために、発明者は発明を秘密にし、その結果、発明が社会的に活用されないことになる。
 このため、新規で有用な発明を世の中に提供した代償として、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説で、現在最も広く支持されている説である。
 秘密公開説、代償説とも呼ばれる。
 この説に基づき、発明の権利を得るには原則的に発明の公開が求められているが、TRIPS協定では秘密特許(通称)など知的財産権に対する優先事項が極一部に限り認められている。

 ▼発明奨励説

 仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明者は自ら発明したにもかかわらず他者に対して優位な立場に立つことができず、発明を行ったり、それを事業に結びつける意欲を失い、その結果、発明が社会的に活用されないことになる。
 そこで、発明を奨励するために、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説である。刺激説とも呼ばれる。

 ▼過当競争防止説

 仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明が他人に模倣されてしまうために、発明者や企業は、他人の発明を模倣することや、自分の発明を模倣されないようにすることへ注力し、過当競争状態が生じ、発明自体に対する意欲や投資のインセンティブが働かない。
 そこで、過当な競争を防止するために、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説である。競業秩序説とも呼ばれる。

 《批判》

 ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジョセフ・スティグリッツは、適切に設計されていない知的財産権は諸刃の剣であり、技術革新を生み出すための研究投資に動機付けを与える一方で、知識の拡散を阻害する要因も働くと述べる。
 これは、企業が集団的知性から得られるものを最大化することを促進する一方、その貢献を最小化することも促進するためであり、その場合には技術発展は阻害されてしまう。
 同じくノーベル経済学賞を受賞した経済学者エリック・マスキンは、ソフトウェア産業のような技術革新が間断なく起こる産業においては、特許の基準を厳格にするよりも、特許制度を廃止した方がよいかもしれないと論じる。
 ソフトウェア産業では、先に起きた小さな技術発展をもとにして次の小さな進歩が起きるというように、ドミノ倒し式に技術発展する構造となっている。
 多くの独占者が行うように、特許権者は高額なライセンス料を課す。
 これによって各々の小さな進歩が妨げられ、全体としてイノベーションが阻害されてしまう。
 米国では、特許政策によって制御のきかない独占が数十年間も製薬会社に許されていた。
 このため、米国民は他の先進国の2倍の価格で処方薬剤を購入している。
 一方、米国以外の先進国では、特許による独占の一方で、薬価統制や薬価交渉等の政策により、製薬会社が独占を悪用することに一定の制限を課している。

 関連項目 ー 知的財産権 ー

 知的財産権
(ちてきざいさんけん)
(英: intellectual property rights)

 著作物(著作権)や発明、商標などといった無体物について、その創出者に対して与えられる、民法上の所有権に類似した独占権である。
  一般的に、知的財産は無体物であり、有体物のようにある者が利用すれば別の人が利用することができなくなるわけではないため、それを他人が無断で利用しても、知的財産を想像した者が自己の利用を妨げられることはない。
 しかし、他人が無制限に知的財産を利用できると、創造者はその知的財産から利益を得ることが困難となる。
 知的財産の創造には費用・時間がかかるため、無断利用を許すと、知的財産の創造意欲を後退させ、その創造活動が活発に行われないようになるといった結果を招く。
 このような理由から、知的財産を他人が無断で無制限に利用できないように法的に保護する必要がある。
 その性質から、「知的創作物(産業上の創作・文化的な創作・生物資源における創作)」と「営業上の標識(商標・商号等の識別情報・イメージ等を含む商品形態)」および「それ以外の営業上・技術上のノウハウなど、有用な情報」の3種類に大別される(知的財産基本法2条1項)。

 《定義》

 「知的財産」および「知的財産権(知的所有権)」は、各種の条約や法令においてさまざまに定義されている。


 このこの協定の適用上、「知的所有権」とは、第二部の第一節から第七節までの規定の対象となるすべての種類の知的所有権をいう。

 — 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1c)第1条2

 「知的所有権」とは、文芸、美術および学術の著作物、実演家の実演、レコードおよび放送、人間の活動のすべての分野における発明、科学的発見、意匠、商標、サービス・マークおよび商号その他の商業上の表示、不正競争に対する保護に関する権利ならびに産業、学術、文芸または美術の分野における知的活動から生ずる他のすべての権利をいう。

 — 1967年7月14日にスウェーデンのストックホルムで署名された世界知的所有権機関を設立する条約 第2条(ⅷ)ー

 第2条
  この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見または解明がされた自然の法則または現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品または役務を表示するものおよび営業秘密その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報をいう。

  2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利または法律上保護される利益に係る権利をいう。
 日本国知的財産基本法(平成14年法律第122号)

 具体的に各国の国内法や国際法で定められる知的財産権には、以下のようなものがある。

 《産業財産権》

 ▼特許権

 特許権者に発明を実施する権利を与え、発明を保護する(特許法、パリ条約、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:TRIPS協定)。

 ▼実用新案権 物品の形状等に係る考案を保護する(実用新案法)。

 ▼意匠権 工業デザインを保護する(意匠法、パリ条約、TRIPS協定)。

 商標権 トレードマーク・サービスマーク - 商標に化体した業務上の信用力(ブランド)を保護する(商標法、パリ条約、TRIPS協定)。

 この4つは代表的なものとして『知財四権』とも称される。

 《著作権》

 ▼著作権 思想・感情の創作的表現を保護する(著作権法、ベルヌ条約、TRIPS協定)。
 支分権として、複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、翻案権がある。

 ▼著作隣接権 - 実演、レコード、放送・有線放送を保護する(著作権法、実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約:ローマ条約、TRIPS協定)。

 ・実演 
 著作物を演ずる実演家の権利である(録音権および録画権、放送権および有線放送権、送信可能化権、譲渡権および貸与権ならびに商業用レコードの二次使用料および貸与権)。 レコード 物に音を固定したもの(レコード)の製作者の権利である(複製権、送信可能化権、譲渡権および貸与権等に規定する権利ならびに商業用レコードの二次使用料および貸与権に基づく報酬を受ける権利)。
有線放送 - 有線電気通信の放送事業者の権利である(複製権、放送権および再有線放送権、有線テレビジョン放送の伝達権)。
 ・放送 無線通信の放送事業者の権利である(複製権、再放送権および有線放送権、テレビジョン放送の伝達権)。

 ・有線放送 有線電気通信の放送事業者の権利である(複製権、放送権および再有線放送権、有線テレビジョン放送の伝達権)。

 なお、著作者人格権(著作者の公表権、氏名表示権、同一性保持権)は人格権の一種であるため、財産権ではないが、便宜的に著作権などとともに扱われることが多い。

   〔ウィキペディアより引用〕



一攫千金 ー ひとつの考察 ー (上)

2023-07-18 21:00:00 | 日記

 『一攫千金』という言葉があります。
イメージ的には、“ギャンブル”とか“宝クジ”等と、思いがちですが何かしら「夢物語」みたいで、マイナスイメージな印象が強いようです。

 “発明”も然り、異次元みたく、別世界で自分には手の届かない処にある。

 ところが、普通の主婦が発明(アイデア)し、その報酬が莫大な金額だったら、気になりますよね?

 例えば、ある主婦の代表的な発明家。  
 電気洗濯機の“糸屑を取る”この発明は、特許料が3億円になりましたという事例もありますし、

 また別の主婦が発明(アイデア)した1枚で“フリーサイズの落し蓋”が大小サイズの鍋に使えるために、煮物の必需品。
 企業は72億円の売上げ、特許料は6千万円になる事例もあります。

 ただ、特許料を貰うには、特許権の取得が必要です。ただ闇雲に企業さんに発明(アイデア)を売り込むんじゃなくて。

 じゃ、特許とは、何か?

 特許とは、発明を公開する代わりに、その発明の使用など(特許法では「実施」といいます)を独占することができる制度です。

 特許庁へ特許出願を行い、特許庁での審査の結果特許として認められて登録されると、その発明は特許となります(特許法66条)。
 そして、出願した人は、「特許権」を取得することになり、「特許権者」となります。
 特許権者は、特許の使用などを独占することができ、他の人が特許を無断で使用していた場合は、その使用の差止めを請求したり、損害賠償を請求することができます(特許法100条、民法709条)。

 特許として登録されるための要件

 特許庁では、特許として登録されるための要件を満たしているのか、審査が行われています。
 特許として登録されるためには、以下の要件を満たす必要があります。

 ✅特許法で定義する「発明」である必要(「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」特許法2条)

 ✅新規性、進歩性、公序良俗に反しない、などの特許要件を満たす必要(特許法29条、32条)

 個人的に特許出願(申請)は、可能ですが、特許法の知識や実務が必要不可欠で、特許事務所を頼るのが無難だと言えるでしょう。
 そこで、特許事務所選びから始められた方がスマートなやり方だと思われます。

   _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 『特許出願(申請)〜特許としての登録までの流れ』

 1、先行技術調査

 2、特許出願(出願書類の作成・提出)

 3、方式審査

 4、出願審査請求(出願審査請求書を作成・提出)

 5、実体審査

 6、特許査定

 7、特許権の設定の登録=特許権発生

   _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/



 ■特許出願の費用はいくらかかるのか?
   ☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓

 (1)特許印紙代 1つの出願につき
          1万4,000円

特許出願を弁理士に依頼する場合の費用は30万円~50万円程度。

 (2)出願審査請求料 13万8,000円+請求項の数×4,000円

 出願から3年以内に行う。
  出願審査請求を弁理士に依頼する場合の費用は2万円程度。

 (3)特許登録料 (4,300円+請求項の数×300円)×3
 ※第1年から第3年(3年分)の特許料相当額を一括納付

 特許登録の手続きを弁理士に依頼する場合の費用は15万円程度。

  〜~~~~~~~~~~~~~

 (4)特許年金
 (a)第4年から第6年まで
  毎年10,300円+請求項の数×800円
 (b)第7年から第9年まで
 毎年24,800円+請求項の数×1,900円
 (c)第10年から第25年まで
   毎年59,400円+請求項の数×4,600円

 ◎初期費用てしては弁理士に依頼する場合、特許事務所よりますが、約80〜100万円するらしいです。

   ☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓☓

 その他、意見書の提出や手続補正書の作成を弁理士に依頼する場合には、別途依頼費用が発生します(各10万円程度)。

 ■特許出願する前にー。

 先行技術調査

 自分が出願しようとしている発明と似たような発明(技術)がすでに特許として出願・登録されていないか確認することをいいます。
 似たような発明がすでに特許として出願・登録されていたら、新規性がない、または進歩性がないとして特許として登録されない可能性があります。

 先行技術調査を行う際は、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)が提供する、「J-PlatPat」というウェブサイトで、特許公報を検索・閲覧することによって、現在どんな特許が出願・登録されているかを調査することができます。
 その他、欧州特許庁(EPO)が      
       提供する「Espacenet」、世界知的所有権機関(WIPO)が提供する「PATENTSCOPE」、Googleが提供する「Google Patents」などを利用して検索することが考えられます。
 特許庁のウェブサイトに、「J-PlatPat」を利用した特許公報の検索方法が説明されています。
 ちなみに、特許公報とは、特許出願した発明や、設定登録された特許の内容が記載された公報です。
 特許公報には、「公開特許公報」と「特許公報」があります。

  ✅「公開特許公報」 特許出願の1年6か月後に、出願した発明が記載された「公開特許公報」が発行されます。

  ✅「特許公報」 特許庁の審査の結果、特許査定が出て、特許として設定登録されると、「特許公報」が発行されます。 発明のうち、特許権となる範囲などが記載されています。

 ◎書面で出願する方法

 1 出願書類を作成

 2 郵便局や特許庁で特許印紙14,000円(出願手数料)を購入して貼り付け *収入印紙ではなく、特許印紙なので注意。

 3 特許庁に提出 ・直接提出 特許庁1階の出願受付窓口へ提出する。
  受付時間は平日の9時~17時
 ・郵送で提出 「〒100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 特許庁長官 宛」に郵送する。
 *宛名面の余白に「特許願 在中」と記載して、書留・簡易書留郵便・特定記録郵便で提出する。

  4 電子手数料を納付 出願日から数週間後に送付される払込用紙を用いて、電子化手数料として1,200円+(700円×書面のページ数)を納付する。

 ◎インターネットで出願する方法

  インターネットを利用して、電子証明書と専用のソフトウェア(インターネット出願ソフト)を用いて、オンラインで特許出願を行う。

 *具体的な方法については、特許庁の「電子出願ソフトサポートサイト」で確認できます。


 参照元 :特許庁ウェブサイト「初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~」

 ■方式審査

 特許出願をすると、特許庁で、出願が法令で定める形式的な要件を満たしているかの審査(方式審査)を行います。

 方式審査の運用基準については、特許庁の「方式審査便覧」「出願等の手続の方式審査に関するQ&A」で詳しく説明されています。
 方式審査で、特許出願について形式面に不備があると判断されると、「補正指令」などが出されます。
 これに対して、出願をした者は、補正指令において要件を満たしていないと指摘された箇所について、「手続補正書」などで補正を行う必要があります。
 補正指令に対して、適切な補正を行わないと出願手続が却下されます(特許法18条)

 ■出願審査請求(出願審査請求書を作成・提出)

 方式審査後、実体審査の手続きに入るためには、出願人は、出願日から3年以内に出願審査請求を行う必要があります(特許法48条の3)。
 特許庁へ、出願審査請求書を提出することになります(特許法48条の4)。
 出願審査請求をする際も、手数料を支払う必要があります。

 出願審査請求手数料
 138,000円+(4,000×請求項の数) *2019年4月1日以降の出願


〔情報元 :契約ウォッチhttps://keiyaku-watch.jp/media/kisochishiki/tokkyo-apply/〕