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■実体審査
実体審査では、特許出願された内容が、新規性、進歩性などの特許要件を満たすか、が審査されます。
特許要件は、出願時において満たしているかが判断されることになります。
このときの審査の判断基準については、特許庁が公表している「審査基準 」で解説されています。
審査において、拒絶の理由がある、つまり新規性がないなどと判断されると、特許庁から出願人へその旨の「拒絶理由通知」が出されます(特許法50条)。
これを受けて、出願人は「意見書」を提出して、新規性があることを説明する、「手続補正書」を提出して、出願書類を一部修正する、といった対応をすることになります(特許法50条、17条の2)。
■特許査定
実体審査の結果、拒絶の理由がない(特許要件を満たす)と判断された場合、又は拒絶理由通知を受けての意見書や手続補正書で拒絶の理由が解消された場合は、特許査定が出されます(特許法51条)。
特許要件を満たさないなど、拒絶の理由があると判断された場合は、拒絶査定が出されます(特許法49条)。
■特許権の設定の登録(特許権発生)
出願人は、特許査定の謄本が特許出願人に送達された日から30日以内に、1年目~3年目までの特許料を納付する必要があります(特許法108条)。
特許料が納付されないと、特許出願の却下がされてしまいます(特許法18条)。
特許料が納付されると、特許原簿に「特許権の設定の登録」がされ、この登録によって特許権が発生します(特許法66条)。
■特許出願ではなく実用新案登録出願をするメリット
特許出願の審査には長期間を要するため、発明について簡易的に権利を確保したい場合は、実用新案登録出願を行うことも検討しましょう。
実用新案権とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」について登録を受けた場合に認められる権利です(実用新案法2条1項、2項)。
特許権が高度な発明に限って認められるのに対して、実用新案権は特許発明に至らない程度の発明についても認められます。
特許権者と実用新案権者は、いずれも登録された発明(創作)を実施する権利を専有します(特許法68条、実用新案法16条)。
ただし特許権とは異なり、侵害者に対して実用新案権を行使するためには、事前に「実用新案技術評価書」を提示して警告することが必要です(実用新案法29条の2)。
特許出願では、特許要件についての実体審査が行われるのに対して、実用新案出願では実体審査が行われません。
形式審査のみで登録が行われるため、短期間で権利を取得できる点が実用新案出願の大きな特徴です。
具体的には、特許権は出願から権利取得までの期間が1年を超えるケースが多いのに対して、実用新案権は出願から権利取得まで2~4か月と短期間で権利を取得できます。
このように、実用新案権は特許権に比べて、要件や手続き期間の観点から、権利取得のハードルが低いメリットがあります。
簡易的な発明等について権利を取得したい場合、早期に権利を取得したい場合などには、特許出願ではなく実用新案登録出願を行うことも有力な選択肢となるでしょう。
さて、そもそも特許とは、なんでしょう。
特許(とっきょ)
(英: Patent)
法令の定める手続により、国が発明者またはその承継人に対し、特許権を付与する行政行為である。
日本では他の意味でも特許という言葉が使われるので、この意味を明示するためにカタカナ語として「パテント」と呼ぶ場合もある。
《概要》
最も一般的な公開代償説によれば、特許は、有用な発明をなした発明者またはその承継人に対し、その発明の公開の代償として、一定期間、その発明を独占的に使用しうる権利(特許権)を国が付与するものである。
そこで各国の特許法では法定の特許存続期間を設け、その期間をすぎると発明の実施が自由開放される仕組みとなっている。
特許権は、無体物(物(有体物)ではない、形のないもの)である発明に排他的支配権を設定するものであり、知的財産権のひとつとされる。
日本の特許法においては、特許制度は、特許権によって発明の保護と利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とするとされている(特許法第1条)。
《特許制度の歴史》
英語で特許を意味する"patent"の語源は、ラテン語の"patentes"(公開する)であるといわれている。
中世ヨーロッパにおいては、絶対君主制の下で王が報償や恩恵として特許状を与え、商工業を独占する特権や、発明を排他的に実施する特権を付与することがあった。
しかし、これは恣意的なもので、制度として確立したものではなかった。
イタリアのヴェネツィア共和国では、現在知られる限り最初の特許は、1421年に、ブルネレスキに与えられ、1474年には世界最古の成文特許法である発明者条例が公布された。このことから、近代特許制度はヴェネツィアで誕生したとされている。
1623年にイギリス議会で制定された専売条例(英語版)は、それまでエリザベス1世とジェームズ王が塩税やデンプン税のため恣意的に認めてきた特許を原則禁止にした。
例外的として発明と新規事業のみは、一定期間(最長14年間)に限って独占権を認めるとともに、権利侵害に対する救済として損害賠償請求を規定した。
この条例の制定により特許制度の基本的な考え方が確立した。
専売条例は後にジェームズ・ワットの蒸気機関(1769年)や、リチャード・アークライトの水車紡績機(1771年)などの画期的な発明がなされる環境を整え、英国に産業革命をもたらした。
1883年には、工業所有権の保護に関するパリ条約(パリ条約)が締結され、内国民待遇の原則、優先権制度、各国工業所有権独立の原則など、特許に関する国際的な基本原則が定められた。
▼日本
日本の特許制度は、明治維新後の1871年(明治4年)に最初の特許法である専売略規則(明治4年太政官布告第175号)の公布によって始まったが、この制度は利用されずに当局も充分な運用ができなかったため、翌年には施行が中止された。
その後、1885年(明治18年)4月18日に本格的な特許法である専売特許条例(明治18年太政官布告第7号)が公布・施行された。
これは、フランス特許法をモデルにした。
1888年(明治21年)には、発明者に特許請求権を付与し一定の審査官によって出願を審査する審査主義を確立した特許条例(明治21年勅令第84号)、意匠条例、商標条例が公布され、1899年(明治32年)には旧特許法(明治32年法律第36号)を制定してパリ条約に加入した。
1922年(大正11年)に施行された大正10年法では先願主義が採用され、現在の特許法の基礎が作られた。
現行特許法(昭和34年法律第121号)は、1959年(昭和34年)に全面改正された昭和34年法を累次、部分改正したものである。
《特許制度の意義》
発明に対して特許制度により独占的権利を与える根拠としては、いくつかの説が提唱されている。
それらを大別すると、基本権(自然権)説と産業政策説の2つに分けられる。現在では、産業政策説に属する公開代償説が最も広く受け入れられている。
▼基本権(自然権)説
発明に対する権利は、人間に与えられた基本的な権利(自然権)であるとする説。
1791年のフランス特許法等で採用された考え方である。財産権説と受益権説に細分される。
▼財産権説
発明に対する権利は財産権であるとする説。
基本的財産権説とも呼ばれる。
この説によれば、特許法は、権利を創設するのではなく、規制するものであるということになる。
この説では、各国で独立して特許が与えられること(属地性)、複数の者が独自に同じ発明を完成しても最初に出願(または発明)した者しか権利を取得できないこと、出願をしなければ権利を取得できないことを説明することができない。
▼受益権説
発明が社会に貢献した程度に比例して、その報酬を受ける権利があるとする説。
基本的受益権説とも呼ばれる。この説では、上記の財産権説の矛盾に加えて、発明の社会への貢献度とその報酬とが必ずしも比例しないことを説明することができない。
▼産業政策説
発明に対する権利は、国の産業政策として発明の権利保護を図るために与えられるとする説。
公開代償説、発明奨励説、過当競争防止説(競業秩序説)に細分される。
▼公開代償説
仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明が他人に模倣されてしまうために、発明者は発明を秘密にし、その結果、発明が社会的に活用されないことになる。
このため、新規で有用な発明を世の中に提供した代償として、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説で、現在最も広く支持されている説である。
秘密公開説、代償説とも呼ばれる。
この説に基づき、発明の権利を得るには原則的に発明の公開が求められているが、TRIPS協定では秘密特許(通称)など知的財産権に対する優先事項が極一部に限り認められている。
▼発明奨励説
仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明者は自ら発明したにもかかわらず他者に対して優位な立場に立つことができず、発明を行ったり、それを事業に結びつける意欲を失い、その結果、発明が社会的に活用されないことになる。
そこで、発明を奨励するために、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説である。刺激説とも呼ばれる。
▼過当競争防止説
仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明が他人に模倣されてしまうために、発明者や企業は、他人の発明を模倣することや、自分の発明を模倣されないようにすることへ注力し、過当競争状態が生じ、発明自体に対する意欲や投資のインセンティブが働かない。
そこで、過当な競争を防止するために、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説である。競業秩序説とも呼ばれる。
《批判》
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジョセフ・スティグリッツは、適切に設計されていない知的財産権は諸刃の剣であり、技術革新を生み出すための研究投資に動機付けを与える一方で、知識の拡散を阻害する要因も働くと述べる。
これは、企業が集団的知性から得られるものを最大化することを促進する一方、その貢献を最小化することも促進するためであり、その場合には技術発展は阻害されてしまう。
同じくノーベル経済学賞を受賞した経済学者エリック・マスキンは、ソフトウェア産業のような技術革新が間断なく起こる産業においては、特許の基準を厳格にするよりも、特許制度を廃止した方がよいかもしれないと論じる。
ソフトウェア産業では、先に起きた小さな技術発展をもとにして次の小さな進歩が起きるというように、ドミノ倒し式に技術発展する構造となっている。
多くの独占者が行うように、特許権者は高額なライセンス料を課す。
これによって各々の小さな進歩が妨げられ、全体としてイノベーションが阻害されてしまう。
米国では、特許政策によって制御のきかない独占が数十年間も製薬会社に許されていた。
このため、米国民は他の先進国の2倍の価格で処方薬剤を購入している。
一方、米国以外の先進国では、特許による独占の一方で、薬価統制や薬価交渉等の政策により、製薬会社が独占を悪用することに一定の制限を課している。
関連項目 ー 知的財産権 ー
知的財産権
(ちてきざいさんけん)
(英: intellectual property rights)
著作物(著作権)や発明、商標などといった無体物について、その創出者に対して与えられる、民法上の所有権に類似した独占権である。
一般的に、知的財産は無体物であり、有体物のようにある者が利用すれば別の人が利用することができなくなるわけではないため、それを他人が無断で利用しても、知的財産を想像した者が自己の利用を妨げられることはない。
しかし、他人が無制限に知的財産を利用できると、創造者はその知的財産から利益を得ることが困難となる。
知的財産の創造には費用・時間がかかるため、無断利用を許すと、知的財産の創造意欲を後退させ、その創造活動が活発に行われないようになるといった結果を招く。
このような理由から、知的財産を他人が無断で無制限に利用できないように法的に保護する必要がある。
その性質から、「知的創作物(産業上の創作・文化的な創作・生物資源における創作)」と「営業上の標識(商標・商号等の識別情報・イメージ等を含む商品形態)」および「それ以外の営業上・技術上のノウハウなど、有用な情報」の3種類に大別される(知的財産基本法2条1項)。
《定義》
「知的財産」および「知的財産権(知的所有権)」は、各種の条約や法令においてさまざまに定義されている。
このこの協定の適用上、「知的所有権」とは、第二部の第一節から第七節までの規定の対象となるすべての種類の知的所有権をいう。
— 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1c)第1条2
「知的所有権」とは、文芸、美術および学術の著作物、実演家の実演、レコードおよび放送、人間の活動のすべての分野における発明、科学的発見、意匠、商標、サービス・マークおよび商号その他の商業上の表示、不正競争に対する保護に関する権利ならびに産業、学術、文芸または美術の分野における知的活動から生ずる他のすべての権利をいう。
— 1967年7月14日にスウェーデンのストックホルムで署名された世界知的所有権機関を設立する条約 第2条(ⅷ)ー
第2条
この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見または解明がされた自然の法則または現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品または役務を表示するものおよび営業秘密その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報をいう。
2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利または法律上保護される利益に係る権利をいう。
日本国知的財産基本法(平成14年法律第122号)
具体的に各国の国内法や国際法で定められる知的財産権には、以下のようなものがある。
《産業財産権》
▼特許権
特許権者に発明を実施する権利を与え、発明を保護する(特許法、パリ条約、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:TRIPS協定)。
▼実用新案権 物品の形状等に係る考案を保護する(実用新案法)。
▼意匠権 工業デザインを保護する(意匠法、パリ条約、TRIPS協定)。
商標権 トレードマーク・サービスマーク - 商標に化体した業務上の信用力(ブランド)を保護する(商標法、パリ条約、TRIPS協定)。
この4つは代表的なものとして『知財四権』とも称される。
《著作権》
▼著作権 思想・感情の創作的表現を保護する(著作権法、ベルヌ条約、TRIPS協定)。
支分権として、複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、翻案権がある。
▼著作隣接権 - 実演、レコード、放送・有線放送を保護する(著作権法、実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約:ローマ条約、TRIPS協定)。
・実演
著作物を演ずる実演家の権利である(録音権および録画権、放送権および有線放送権、送信可能化権、譲渡権および貸与権ならびに商業用レコードの二次使用料および貸与権)。 レコード 物に音を固定したもの(レコード)の製作者の権利である(複製権、送信可能化権、譲渡権および貸与権等に規定する権利ならびに商業用レコードの二次使用料および貸与権に基づく報酬を受ける権利)。
有線放送 - 有線電気通信の放送事業者の権利である(複製権、放送権および再有線放送権、有線テレビジョン放送の伝達権)。
・放送 無線通信の放送事業者の権利である(複製権、再放送権および有線放送権、テレビジョン放送の伝達権)。
・有線放送 有線電気通信の放送事業者の権利である(複製権、放送権および再有線放送権、有線テレビジョン放送の伝達権)。
なお、著作者人格権(著作者の公表権、氏名表示権、同一性保持権)は人格権の一種であるため、財産権ではないが、便宜的に著作権などとともに扱われることが多い。
〔ウィキペディアより引用〕
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