「目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って調べろ」
と言うと何やらあやしい事が浮かんでしまいますが、植物生態学者の宮脇氏の師ラインホルト・チュクセン教授が若き日の宮脇氏に言った言葉です。正確には、「まず現場に出て、自分の身体を測定器にし、自然でやっている実験結果を目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って調べろ」です。
ちょっと前ですが、「知るを楽しむ」という番組で、宮脇昭氏を知りました。TVでみると異様な迫力で、何やら怖いほどのオーラを纏っていました。先日本屋で氏のこのノンフィクション(アマゾン評価)を見かけたので買ってきました。森についてはまったく無知だったので(明治神宮の森をたまにお散歩するくらいなので)、初めて知る事ばかり★★★★。
当たり前の話ですがどんなに机上で勉強しても、「一見は百聞にしかず」、「一触は百見にしかず」で、人は現場で悩んで悩んで向上していくのですが、チュクセン教授の言葉通り、徹底した現場主義を唱える氏の態度と行動は凄まじいです。宮脇氏は、1928年生まれですからもう80歳近い計算になりますが今でも現役ばりばりです。
氏は現在の日本の森はほとんどが、ニセモノの森だと言います。スギ、ヒノキ、カラマツ、マツ類の針葉樹林や薪炭林としての雑木林が多く、その土地本来の森が見当たらないそうです。例えば、浜離宮恩賜庭園では、常緑広葉樹(照葉樹)タブノキ、スダジイなどその土地本来の植生(潜在自然植生)に近い種の組み合わせを維持おり、地震や火災にも強く、環境保全等に役立つと言っています。そして、こういった本物の森作りこそ我々の緊急の債務であると。
森にニセモノ、本物があるとは考えもしませんでした。 無論ニセモノも世の中必要でしょうが、バーチャル化がますます進む世の中ですが、たまには「見て、触って、本物を実感」してみるのもいい気がします。偉そうな事言っていないで、まずは現場に行けと言われるのがオチですが。しかし私が「目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って調べろ」などと言ったら絶対セクハラで訴えられそうです。
関連:
著書「日本植生誌」、「植物と人間」、「鎮守の森」等多数
財団法人国際生態学センター:財団法人 地球環境戦略研究機関 国際生態学センターInstitute for Global Environmental Strategies Japanese Center for International Studies in Ecology (略称:IGES-JISE ) 宮沢氏が現センター長