
その言葉が、私のレコードを開く鍵だった・・・
私には、ベトナム戦争の情景が、オーバーラップして見えた。
もっと時代をさかのぼった、どこかアジアの奥地。
母親達のグループは、多くの追っ手に追われていた。
なんとしてでも、みんなで逃げおおせなければならない。
母親の小さな息子はよく泣いた。
誰が子供を泣かせたいだろう?
誰が、我が子をこんな過酷な場所に置きたいだろう?
泣けば見つかり、全員が殺される。
この子も殺される。
誰もが憔悴しきり、誰もが少しずつおかしかった。
我が子に向けられる視線は、隠れた刃だった。
母親は決めた。
母親が決めて動けばいいことだ。
命の終わる瞬間の、我が子の腕の温もりを、私は思い出していた。
母親の心が、そのまま私に流れ込んできた。
なにがなんでも逃げ切ってもらわなければならない・・・
母親は、どこかで誰かを恨んでいたのかもしれない。
そのために時間を稼ごう・・・
そんなこと、自分が死ぬための口実でしかないのに。
一度ずれた思考は、さらなるずれた思考と心を呼んだ。
母親は、敵に自分を追わせ、そして自分の望みを果たした。
その時の心も、私の中に流れ込んできた。
「ごめんね!ごめんね!私がお前を殺したんだ!!」
私は啓介さんを思い切り抱きしめて、言葉が口をつくに任せて謝罪し続けていた。
啓介さんが号泣し続けているのが聞こえる。。。
そして私を母親を「愛している。許している。お母さんのしたことは必要なことだったのだ」と、言い続けていた。
どうやって席に着いたのか覚えていないが、私は席に着き、啓介さんは気丈にチューニングを続けていた。
私もリーダーの端くれなので、私の過去生の母親のしでかしたことが、許されていることも、必然だったことも理解している。
ついでに、過去生が今の私を支配すべきでないことも。
そう言うには、あまりにも感情を引っ張り込みすぎている。
