親の優しいなまざし
巣立ちした雛が必ずトラブルを起こすとは限らない。普通は巣立った雛が地面に下りてしまう事自体があまりない事なのである。しかしこの公園の巣立ち雛・・・・・特にブトの場合は地面に下りてしまいトラブルに発展してしまう事が多い。
本来なら雛が地面に下りたからと言って特段騒ぎ立てる必要性もない。自然な事なのだからそのままにしておけば良いだろう。しかし公園や人の出入りが多い場所になるとたちまち大騒動になり、警察が呼ばれ通行止めになり、雛は捕獲されて捨てられるのが落ちである。
放浪
ある日の事、1羽のブトに雛が公園の外をてくてくと歩いているではないか??一体何処の雛?私は親の姿を探したのだが見当たらない。「雛の近くに行けば親がすっ飛んで来るに違いあるまい」と思っていたのだがその気配もなかった。
私は「また捨て雛なの?」と思ってしまった。昨年の「生きるという事」の迷子雛のような事になってしまうのではないかと心配になってしまった。しかし雛をこのままにしておく事も出来ないのでとりあえずは公園内に移動させた。
親
雛を移動させた途端、2羽のブトが目を吊り上げて飛んで来た。飛んで来たブトは公園内のブトだった。しかし雛の巣立ちにはまだ数日あったのである。私はとっさに「1羽だけ先に出てしまったのだろう」と思い残りの雛が何羽いるのか見てみた。するとはやり3羽いた雛が2羽しかいなかった。親の行動といい、親の声を聞いた途端に雛が叫びだした事といい、間違いなくこのブトは親子だ。めでたく親子の対面をする事が出来た。良かったね!!
居眠り雛
巣立ち前に巣から出てしまって、その後心配だったのだが雛を枝に止めてあげる事にした。私は親の洗礼を受けながら雛を無事に枝に止める事が出来た。後はこれ以上地面に下りて来る事がない事を祈るしかない。
巣造りの練習?
実はこのブト君、優等生なのである。毎年雛が地面に下りるといったトラブルもほとんどなく、上手に樹上移動をしながら成長してくれるのだ。雛が地面に下りる頃にはもう十分に飛ぶ事も出来ていて、人の姿を見ると雛自らの判断で逃げる事も出来る。通常はこれで当たり前なのだろう。しかしこの公園では「優等生」になってしまう。
先に巣立ってしまった雛はその後一度も地面に下りる事なく成長してくれた。その4日後に残りの兄弟達も巣立ちを始めた。兄弟達も上手に樹上移動をしてくれたので親も必要のない威嚇行動をしなくても済んだのである。
兄弟で相談?
興味深々!
雛の成長速度はとても速く、兄弟で遊んだり、親と一緒にクワの実を食べたりと本当に微笑ましい光景である。雛は早くも鳴く練習を始めていて、迫力に欠けた威嚇鳴きも聞く事が出来る。そうかと思えば頭をもたげて眠りに就く事もある。秋までの短い時間ではあるが、家族団らんを満喫して欲しいと思う。そして親から受け継いだ生きる術を存分に発揮してりっぱなブトとして生き抜いて欲しい。
それ、な~に?
こうしてこのブト一家は必要のないエネルギーを費やす事なく暮らしているのである。せいぜい危険人物が来た時にだけ威嚇鳴きをする程度だ。通常はこれが当たり前なのだろう。マスコミの報道により過剰反応を示している人が多くなってしまい、カラス達に与える影響は計り知れない。もっと冷静になり見る目を持って欲しいものだと感じている。