カラス

カラスと共に生き物の世界を覗き見る

チゴハヤブサの災難

2006-09-29 21:15:33 | その他

チゴハヤブサ♀

 災難に遭ってしまう鳥はカラスばかりではない。カラスの古巣を利用し繁殖をする猛禽「チゴハヤブサ」もその対象となる。チゴハヤブサはハト大の大きさで繁殖のために渡って来る鳥である。翼は長く止まっている時に尾羽から風切羽が飛び出している。これが識別ポイントにもなるだろう。鳴き声は「キィーキィーキィー」と甲高い。人によっては聞き取れない場合があるらしい。
  
 私は毎年カラスの巣立ちが終わるとチゴハヤブサを探しに行く時がある。毎年ほぼ同じ場所へやって来てカラスの古巣に営巣する。自分で造巣はしない。カラスの古巣がなければ繁殖が困難になってしまう。時には営巣中のカラスを放り出してしまう事もあると聞いている。私はその瞬間を見た事がない。

 ある日いつもならとっくに来ていてもおかしくないチゴハヤブサの飛来が遅く気になっていたのだが、ある日抱卵しているところを見つける事が出来た。喜び勇んでチゴハヤブサを研究している知り合いへ連絡をした。場所から見て人の介入もなさそうだったので一安心していた。

 しかしそれから一週間も経たないうちに「チゴの巣がなくなっていて、チゴの姿も見掛けない」と連絡がきた。「何故?どうして?抱卵していたじゃない???」と頭の中で疑問が交差する。

 巣を撤去したに違いないのである。しかし誰が撤去したのかは全く分からなかった。市民が善意で巣の撤去を行った可能性が高い。古巣があるとまたすぐにカラスが営巣してしまうのでは?と思ったのか、巣に出入りしていたチゴハヤブサをカラスと見間違えたのか?と想像ではあるが、この2つが理由として挙げられるのではないだろうか?

カラスの古巣

 このチゴハヤブサはその後ブトの古巣に再営巣したのだが、時期が遅かったのか結局放棄してしまいその姿さえ消えてしまったのである。私も残念で仕方がなかった。また来年来てくれる事を祈るしかないだろう。

 カラスの古巣に依存しているチゴハヤブサは一度気に入った巣があると壊れるまで使う事もある。カラスはほぼ毎年新しい巣を造るので古巣は増える事になる。つまり「チゴハヤブサはカラスの縄張りに依存している」事にもなる。しかしここで巣を撤去されてしまったらどうなるかはもうお分かりだと思う。

 自分で造巣しない彼らにとってカラスの巣の撤去は相当の痛手となる。もしもそこに使えそうな巣が一つしかなかった場合、彼らは路頭に迷う事になる。彼らの縄張りは数キロに亘る為、古巣を適当に見繕って使う事も出来ない。近くにトビやオオタカなどが生息していても具合が悪いだろう。安易なカラスの巣の撤去がチゴハヤブサにとって、思いがけない悲劇を生み出す結果となってしまう事を忘れないで欲しい。

コメント (8)
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