Le contrebassiste

コントラバス奏者ちんの日常。
趣味の音楽、フランス語、興味関心などを書き散らしています。

コントラバス教育(その1)

2005年06月14日 00時44分38秒 | Weblog
この間1000人のチェロコンサートに行って思ったこと。
「チェロって小さい頃からやっている人も結構いるもんだなぁ」

それに比べてこのコントラバスという楽器。
「10歳からやっています」なんて言おうものなら、殆どの場合(私の経験上)「10歳からですか。すごいですね」と言われる。
本人は何がすごいのかわからない(あえて言えば、10歳という年齢でこの楽器を選んだマニアックさがすごいといわれているような気がする)。

さて、今回それをふと思い出したのは、いつも愛読している雑誌「サラサーテ」にこんな記述があったからです。


コントラバスはヴァイオリンと違って小さいころからやっているという子はほとんどいないので、音程・音感が身に付いていない場合が多いようです。
(出所:「サラサーテ」'05夏号 P53加藤先生のコメントより)


コントラバスは今でこそ魅力を感じる楽器なのですが、確かに小さい頃からやっているという話は聞かない。
ヴァイオリンやチェロにはスズキメソードがあるが、コントラバスにはそういうものが見当たらない。
私の師匠は17歳でコントラバスを始めるまではトロンボーン・チューバ奏者でした。
管楽器からの転向も多く見かけてきましたが、最初からコントラバス一本という人はあまり無い様子(私のようにピアノすら経ずにコントラバス一本で始めた人は殆ど稀でしょう)


・・・なぜ人はコントラバスを小さな頃からやらないのだろうか?
いくつか理由を考えてみました。ここから解決法も考えてみたいと思います。

(理由その1:大きいから)
楽器が大きいのがイタい。
私が楽器を始めたときは身長が足りなくて、調弦の時に背伸びをしていました。
140センチくらいしかない小学生が演奏するには困難です。

(理由その1':運搬が面倒くさい)
楽器が大きいので、運搬が面倒くさい。
大人になれば車を所有し、それなりに楽になりますが、小学生には苦痛。
自分より大きな楽器を運ぶのはかなり理不尽さを感じます。

私が小学生の時は悲惨でした。
音楽室が3階にあり、校庭をはさんで向かい側に体育館があって(しかも2階)、そこで練習をしていました。
音楽室に楽器が置いてあるので、それを持って階段を降り、校庭を突っ切って体育館へ。
校庭でドッジボールなんかやってようものなら、校庭を大回りしないといけません。
帰りはその逆。むしろこっちがつらい。
音楽室に着く頃には息が完全に上がっています。
しかも練習の多いオケだったので、毎日のようにこんなことをしていました(もちろん夏休みも毎日です)

今でこそ10数年のキャリアで何とか持ち運びしていますが、最初数年間はこの理由だけでも十分辞めたい理由になりえました。


(理由その2:面白くない)
小学生にメロディが無いのも面白いんだよ、と理解させるのが難しい。
オケは低音がないと形にならないんだよ、という話をするのはもっと難しい。
「ワルツではオケを支配して混乱させることも出来るんだよオケで重要な役割を担ってるんだよ」といっても意味がわからない。
ワルツの頭打ちがいいんだよね、と言っているマニアックな小学生に出会ったことがありません。

セカンドヴァイオリンやヴィオラ、チェロのように、美しいメロディが来る機会があればいいけど、コントラバスでメロディを弾く機会はあまりない。
理由1とあいまって、わざわざそんなイタいものを自分から選ぶことは無いようです。
しかもソロ演奏が出来るくらいになるのに時間がかかるので、そこにいくまでに挫折する。


(理由その3:楽譜が読めない)
ピアノをやっているならとにかく、音楽に親しみのない小学生にいきなりヘ音記号の譜面を読ませても、そりゃ無理だというものでしょう。
ト音記号ですらいっぱいいっぱいなわけですから。


(理由その4:有名じゃない)
なぜかヴァイオリンのお化けとして有名なコントラバス。
一般小学生における弦楽器での知名度はヴィオラと並んで低い(って言ったらヴィオラの人に怒られるかもしれませんが、あくまで「一般」小学生と言ってますので念のため)。
まぁ駅で「あの楽器、ギターだよね」と言われちゃうほどの認知度ですから・・・。
そして次の理由につながる。


(理由その5:楽器やりたい度ランキングでは下位争い)
結構今まで聞いた中で多い理由としては、「しょうがなく」「空きが無くて」「男の子だから」「先生に言われて(これ、私の理由)」。
おいおい、積極的な理由がないですよ。。。

別にけんかを売っているわけではないのですが、私がオケに入った当時、コントラバスはファゴットと並んでやりたい度ランキングの下位争いをしていたように思います。
トランペットやフルート、ヴァイオリンといったオケでも花形の楽器には人気が集まります。
しかし、コントラバスは・・・。
私は最初からオケでしたが、これは吹奏楽でも当てはまると思います。


他にも、小さい頃からやるには色々な障害があるのですが、これらの理由からか、なかなか小さい頃からやってやろうじゃん、という話にならないようです。

そうなると、大きくなった時にオケで低音として支えていく時に、「俺らは小さい頃からずっと楽器をやっていて音感とかあるのに、お前は・・・」みたいに指をさされてしまいます。何かくやしい。
というわけで、どうやったらこの楽器が小学生に魅力的にうつるようになるか、次の記事で検討したいと思います。
※あくまで目的はコントラバス人口の増加です。