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クチヒゲノムラガニの生態

退職し晴耕雨読的研究生活に入った元水族館屋の雑感ブログ

鬼ヶ城の地質は流紋岩か凝灰岩か、または、火山岩か堆積岩か

2021-01-12 | 雑感


 日々の散歩を兼ねて足を伸ばし、三重側の熊野古道である松本峠を歩いてきた。目当ては七里御浜の眺望、実物は評判どおり素晴らしく、この眺めは熊野古道随一かもしれない(展望台は本来の古道から少し外れているが・・・)。
 ところで、その名称から子供だましの娯楽的な場所と思い込み、これまで避けていた松本峠に接続する鬼ヶ城も、ついでに歩いた。が、この「ついで」が散策や地形好きな人には最高のコースであった。弁解ながら人との接触は極力避け、お昼は持参したおにぎり、歩行数は約1万歩、余力を残して帰還。




 鬼ヶ城は散策コースが整備され、世界遺産にふさわしい、そこそこダイナミックな奇岩の連続。海もきれいで見晴らしも良い。また、地質が不思議で、堆積岩のようでもあり、火山岩のようでもあり、組成の違う岩層あり、段丘あり。予備知識を仕入れてきたらもっと楽しめたのにと悔やまれたので、自宅に戻り、鬼ヶ城の地質をネット検索してみた。すると、さらに愕きが控えていた。鬼ヶ城の地質を構成する岩石名が識者によってバラバラで、火成岩なのか堆積岩なのかさえも理解できない。以下その抜粋。

A:熊野酸性岩類
一帯は約1500万年前(中期中新世)の巨大カルデラ火山活動で生じた熊野酸性岩類と呼ばれる火成岩体で、流紋岩質の溶岩や火砕岩により貫入岩を形成している.火砕岩は鬼ヶ城や獅子岩,花の窟神社といった世界遺産のダイナミックな景観を形作っている。

B:鬼ヶ城は石英粗面岩の大岸壁
鬼ヶ城は石英粗面岩の大岸壁が東西1.2kmにわたって連なり、岬の崖は一段の高さが2~4mの6段からなる階段状をなし、数回にわたる急激な地盤の隆起のあとを残している。各段ごとに波蝕洞窟があり、洞窟はいずれも入り口の上端が鋭くとがり、天井部には風蝕痕があり、床面は板のように平かな棚となっている。石英粗面岩は深成岩の花崗岩に対応する成分の火山岩である。なお、以前は流理構造の見られないものを石英粗面岩と呼んでいたが、現在では流紋岩に統一されている。

C:鬼ヶ城の岩石は流紋岩質軽石凝灰岩
鬼ヶ城は淡灰色の砂質凝灰岩が波によって浸食され後、地盤の隆起によって地表に現れた奇岩です。岩石は、流紋岩質軽石凝灰岩で、もともとは灰色ぽい地の色に、白い軽石が多数含まれています。凝灰岩は、1400万年前頃の熊野酸性火成岩類の活動に伴うものとされています。

D:鬼ヶ城の岩盤は石英粗面岩
鬼ヶ城の岩盤は、今から約 1000 万年前の火山活動で噴出した少し青味をおびた石英粗面岩です。この岩石は、表面がザラザラした茶褐色の、一見すると砂岩のように見えますが、石英や黒雲母の粒が目立つ岩石です。花崗斑医岩と比べるとやや軟弱のためか、侵食作用をうけやすく、このような特異な地形を生みました。海水の作用でできた洞窟が海食洞と呼ばれるもので、その台地を海食台と呼んでいます。鬼ヶ城では海食台が約㎞にわたり続き、かつての波の浸食によってできた海食洞が、今の海面よりはかなり高いところに上がっています。

 上記のように、様々な岩石名が登場し、検索すればするほど混乱は増すばかりで、疑問は一向に解消されない。そこで、岩石には素人同然であったので、少し勉強して以下に整理してみた。

○岩石は堆積岩と火成岩に分類される。
○堆積岩は、水中もしくは地表に堆積した粒(泥、砂、礫、火山灰、生物遺骸など)が続成作用を受けてできた岩石である。その代表が砂岩、泥岩、火砕岩(凝灰岩もこれに含まれる)である。
○火成岩はマグマが冷えて固まった岩石で、さらに火山岩(マグマが急激に冷えて固まったもの)と深成岩(マグマがゆっくり冷えて固まったもの)の2つに分類される。両者の分類で重要なのは、冷え固まったスピードであり、どの場所で固まったかは関係しない。深成岩の代表は かんらん岩や花崗岩、火山岩の代表は玄武岩や流紋岩である。
 
 以上から総合的に判断すると、鬼ヶ城周辺の岩盤は約1500万年前(中期中新世)の巨大カルデラ火山活動によって大量に堆積した火山灰から作られた火砕岩で構成され、火砕岩の種類は(砂質?)凝灰岩なのであろう。ただし、鬼ヶ城を境にその北東岸一帯は火山岩である流紋岩(柱状節理)に変わるので、鬼ヶ城は火砕岩が火山岩に接して押し上げられた特異な場所なのかもしれない。
 地質を知ることは地球史を知ることにつながりたいへん興味深いが、ネット検索では容易に答えを提供してはくれない。また、識者が用いる地質用語には個人的な信念がこもっているように感じられ、深入りにはいささか躊躇させられる。


鬼ヶ城散策路の入り口付近。テーマパーク感がある


何層もの段丘と奇岩が続く海岸


千畳敷と呼ばれる最大の段丘


所々で蜂の巣状の浸蝕が認められる

砂岩質の顔面から突き出た異質の地層

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