2019実施(55期3年次)
2020無し(56期3年次)
2021無し(57期3年次)
2022実施(58期3年次)
ーーということで、3年ぶりの合宿実施となりました。校内でも日々、新型コロナウイルス感染症PCR検査陽性の情報が飛び交う中で、それでも今年はかなりの部活動が合宿を行うことに決めました。
学校はガイドラインとして、宿泊先の「どれくらいの広さの居室に何人を宿泊させるか」について定めており、このガイドラインに基づきつつもお馴染みの北志賀ホリデーインさんに宿泊するためには、全学年を連れて行くことを断念せざるを得ませんでした。
「部活のこれから」を考えたら、当然のことながら1&2年を連れていくのが良いのですが、それでは3年生が一度も合宿を体験せずに卒業することになってしまいます。それもなんだかかわいそうということで、1年生は置いていくことになりました。(その一方で一時的に音楽部員になった6名が参加したのですが、その話は内緒です。)
日数についても、これまでの4泊5日から1日減らすことにしました。こちらは諸々顧問の都合もあったのですが。コロナ禍以前の合宿のスケジュールは完全に型が出来上がっており、これを崩すのは勇気がいることでした。ただ、合宿未体験の部員に以前のスタイルを押し付けるのも良くないと思い、「合宿で何やる?ということをゼロベースで考えよう」というミーティングの機会を事前に設けました(こんなミーティングをオンラインでやっているのも、コロナ禍と働き方改革の余波です)。
以下、何をしたのか?どんな様子だったのか?をトピック別にご紹介です。
(1)シャッフルバンド
こちらはコロナ以前にもやっていたもの。メンバーをシャッフルして1曲作り、ライブで発表まで合宿の中で行う、というもの。コロナ以前は「4時間半」「発表まで一晩挟む」というものでしたが、今回は時間としては5時間超あった上に、その日のうちの発表となりました。1晩たつと忘れてしまうので、この「1日完結」は良いやり方でした。コロナ以前はどのバンドもフルコーラス作っていましたが、今回は1コーラス完結のバンドがほとんどで、こういうところは今後時間をかけて取り戻していきたいものだと思いました。
(2)アドリブセッション
こちらは(1)とは違って即興演奏の方。コロナ禍とあって、合宿に全員が参加できるとは限らず、また最近バンドが無くなってしまった人などもおり「固定バンドの練習時間ばかりにならないように」というのが一つのテーマでした。
提案があった時には、「そんなに簡単にできるものではないでしょう?」という懸念を顧問が伝えたのですが、提案した部員が「誰でも参加できるものにする」と宣言したので、実施することにしました。セッションのテーマとして選ばれたのはハービー・ハンコックの”Chameleon”ーー2コードで回していけるので、一番敷居が低いのではないか?というのが提案者の狙いでした。事前に、それぞれのパートの要点を示した、動画リンク付きの資料が配布されるあたり、中杉生だなあと思います。(とはいえ、やっぱり全員が参加はしそうもない企画になりかけたので、軌道修正を指示しましたが。)
提案者の見通しが甘いのは折り込み済みでしたので、合宿の初日に少しだけ「予習」タイムを設け、提案部員が各パートのスタジオを奔走し、準備の仕方や考え方をレクチャーしていました。
本番は合宿2日目。提案者がセッションマスターを務め、「次は**と交代するよ!」「ここからBメロ!」「次、**のソロです!1・2・3・4!」「ではキメいきまーす!1・2・3・4!」ーーそんな上手な仕切りの甲斐あって、全員がその場で作られていく音楽を楽しむことができました。
楽器のできない顧問もなんとかして参加したいと思い、iPadを持ち込み。→オーディオインターフェース→ミキサーと繋ぎ、iKaossilatorを起動。
https://mp-app.net/korg-ikaossilator-app/
キーとスケールさえ設定してしまえば、適当にタブレットをなぞるだけでアドリブ演奏ができるのだ、という説明をしたあとは部員も自由に演奏。特に前半は見ているしかなかったボーカル陣が積極的に楽しんでいました。(さらにその後はボーカル陣も「歌」で参加。ここでも提案者=セッションマスターが「歌での参加の仕方」を自ら示したことが良いきっかけとなりました。「来年はボーカルも最初から参加したい」という感想もありました。)
(3)リモートバンドクリニック
コーチもOBOGも参加しない合宿ということで、最大の課題は「どうやってバンドとして(あるいは個人として)技術的向上を図るか、ということでした。そういうわけで、2日目の午後にはコーチとリモートで繋ぎ(かつその様子は東京にいる1年生にもみられるように中継し)、早めに「残り1日で克服すべき課題」を提示してもらうことにしました。
それにしても、音楽とZoomの相性の悪さたるや。基本的にZoomはリモート会議が円滑に行われるようにするツール。BGMやマイクの近くにない声以外の音はきれいにカットしてくれます。そういうわけで、Zoomは使い物にならず。結局、音楽部のアカウントYouTubeアカウントを用いて、YouTube Liveで中継することにしました。
ただ、こちらからの音をコーチに届けるのは良いものの、今度コーチの講評をリアルタイムでバンドメンバーに伝えるのにまた一苦労。コーチの声だけZoomなどでこちらにもらったとしても、それを大きな音量にしてバンド側に伝わるようにするとそれがYouTubeで中継されてコーチの声がひたすらループすることに…。結局子コーチからの講評はテキストでもらい、それを会場側で顧問がマイクで読み上げる形になりました。それにしてもYouTube Liveは5秒以上の遅延があり、キャッチボールは円滑ではありません。ここらへん、Syncroomなどを使うともっとスムーズになるのでしょうか。「大音量の双方向」の難しさを感じました。
(4)パート練習
コーチ&卒業生のいない合宿のもう一つの難は、このパート練習の時間でした。特にキーボードは合宿参加者が1名のみ。完全に時間を持て余しました。
また、各パートリーダーに「合宿中にこれくらいパート練習の時間がある」と伝えたは良いものの、そこまで準備ができるわけもなく。(例年合宿の中でパート練習があまり上手く機能しないのは経験していたので、ここらへんは想定内だったのですが、顧問も手一杯で、どうにもなりませんでした。
「合宿先の環境をどう生かすか」を考えるにしても、参加経験者が一人もいない状況では考えようもありません。唯一「合宿ならでは」の活動としては、コテージの広めのスタジオを利用して、ドラムセットを3台設置してfill inを順に回していくーーという試みくらいでしょうか。(これは私が顧問になりたてのころ、当時の部員が合宿でやっていたことです。)
来年もコーチや卒業生に頼れない状況があるのだとしたら、考える必要がありそうです。
(5)エアバンド
こちらも、コロナ禍以前の合宿で恒例のプログラムです。ライブホールの大きなスピーカーで流行りの曲を爆音で流し、それに合わせてただだた「エア」パフォーマンスする、というもの。「エアギター」的なものを、ステージで各パートみんなやろう、という感じです。
一見茶番のようにも思える練習なのですが、これがどうして意義もあるしけっこう楽しいのです。なんなら他校さんに教えたくない練習法かも(笑)。やってみて分かるのは、「演奏しているからパフォーマンスできない」のではなく、「演奏しなくてもパフォーマンスできない」ということです。ステージでの発表は、ただのパフォーマンスではなく、客席とのコミュニケーション。そんなコミュニケーションの仕方を、演奏抜きで体感してもらう貴重な時間となりました。
ちなみに、合宿に行く前の「合宿何するミーティング」では、「このプログラムは学校でもできるし、1年生も参加した方が良いから、合宿ではなく学校でやろう」という話でした。しかし、久々にやってみて思うのは、「これ、合宿という非日常空間じゃないとなかなかやれないな」ということです。ステージに上がる人だけではなく、客席にいる人も、なんか非日常にふわふわしていたりハイテンションだったり、そんな感じだから面白いーーそんなことを実感しました。やっぱり1年生を合宿に連れて行きたかった!
(6)固定バンドによるバンド練習
当然のことながら、全体のタイムテーブルのうち、多くの時間は「いつものバンドでのバンド練習」に割かれることになります。とはいえ例年以上に、「バンドメンバー全員が揃わないバンド」や「そもそもバンドがない状態の人」が多く、さらには1名は体調不良で途中帰京し(コロナではありません)ますます「バンド練習の時間を持て余す人」が生まれました。(そのため顧問も「楽器iPad」で弾き語り伴奏&コーラスをしました。顧問としてはこの合宿中に「楽器iPad(iPhone)の可能性」を提案できたと思っているのですが、さて、このアイディアを採用してくれる高校生はいるのでしょうか。)
コロナ禍以降、なかなか活動時間が取れず「じっくりクリック練習」「みんなで集まってアレンジの検討」あたりのことが不十分な状況です。「固定バンドで何時間もスタジオに入っていられる」ということが、こうした場所に来て合宿をする最大の恩恵であり、参加部員一同そのことを実感したようです。コロナ禍以降「集まらないと何もできない部活にならないように」ということを顧問として心がけてきましたが、やっぱり集まれば捗ることには間違いありません。
(7)新幹部の発表
これは、合宿に行かなければできないことでも何でもありませんが、合宿中に部長以下新幹部の発表と引き継ぎ?が行われました。
(8)学年ミーティング
コロナ禍以前の合宿では、バンドごとのミーティングや学年ごとのミーティングにかなりの時間を割きましたが、今回は新幹部発表直後の2年生のミーティングだけにとどまりました。本来であれば、これとは別に1年生は1年生で集まって自分達の取り組みを振り返る機会があると、部活全体のモチベーションがぐっと上がるのですが、それは今後の課題です。
また、バンド単位での夏の取り組みの振り返りもできると本当は良かったのですが、今年のスケジュールではそういう時間を設けることはできませんでした。これがうまく機能すると、秋に向けてチームワークも改善し、モチベーションもぐっと高まるのですが。
(9)テーマソング作成
ライブホールのきれいな照明を利用して、3年生が緑苑祭テーマソングMV用の撮影をしていました。合宿までにデモ音源が出来上がっていると、こんな合宿の活かし方もありますね。また、本音源完成に向けて一部レコーディングも進めていました。
(10)ライブ演奏
もちろん、ライブもしました。コロナ禍以前のスケジュールであれば、最終日前日にライブ、その晩にバンドごとの反省会を行なっていたのですが、今回は帰る日の午前中に実施。それぞれのバンドの持ち曲もそんなに多くなく、OBOGの演奏もないため、こんなスケジュールが可能でした。ただ、やはりバンド単位で自分達の活動を振り返る時間はどこかで欲しいなと感じました。
(番外編)食事の様子
2022年1月に現3年生が研修旅行に行ったときにとったスタイルを踏襲し、全員が1方向を向いて黙食ーーという形をとりました。「マスクを外している時&食事中にギャーギャー騒がない」というのが令和の若者のライフスタイルになりつつありますから、特に大きな問題もありませんでした。
当部合宿唯一のレクリエーション的な時間と言って良い(笑)「最終日のバーベキュー」ですが、こちらは見送りました。3年ぶりに来てみたら、木を伐ってエリアが拡大されていた上に、バーベキュー用のウッドデッキが増設され、オシャレなタープが貼られていました。こんな素敵な場所でバーキューをしないなんて、本当にもったいないのですが、来年こそは。(反省会をやった時に「来年はバーベキューをしようね」という話をしたら2年生から「え!良いんですか!?」というリアクション。顧問の「花火とか娯楽的な時間なぞ不要!」「食事は憩いの時間ではない、作業だ!黙って食え!」というテンションに加えて、「やりたいこともある程度我慢が必要」という空気で育った世代、「来年はバーベキューができる」というだけでやんやの喝采でした。)
それにしても、北志賀ホリデーインの皆さんが美味しい食事を用意してくださったというのに、それを「作業」呼ばわりしたのは、本当に失礼な話です。来年は、楽しい食事の場にできると良いのですが。(現地でも直接お伝えしたのですが、3年ぶりに来てみたら食事がいっそう美味しくなっていて感動しました。)
(終わりに)合宿を終えて
合宿を終えて1週間以上を経ても、合宿参加者から陽性者は確認されませんでした。実施にあたって最も懸念された、「合宿の場がクラスターになる」という事態は回避できたようです。
・居室は原則1室2名まで
・同室となるペアは極力同じバンドの人=同じスタジオに入る人
・向かい合っての食事はしない
・黙食は当然のこと
・バーベキューはしない
・スタジオやライブもマスク着用
・急な中止や個人のキャンセル料負担について保護者の同意を得る
・急な体調の変化の場合の生徒引き取りについて保護者の同意を得る
・コロナ保険への加入
など、考えうる対策はできるだけとったつもりではありますが、都立校は事前事後のPCR検査が必須だったことを合宿中に知り、そこにまでは考えが至っていなかったと感じました。(もちろん、上記以外に学校が定めた実施にあたってのガイドラインは遵守しています。)
来年の今頃は、この新型コロナウイルスの扱いも少し変わってきているかもしれません。ただ、「ウィズコロナ」の状況は変わらないでしょうし、以前からあるヘルパンギーナ、手足口病、溶連菌感染症といった検査しなければ「夏風邪」と称されるようなものは、今後も合宿が感染源にならないように努めるべきです。
また、合宿の実施・引率は、教員にとっては負担の重い業務であり、好きでやっている顧問と違って、一緒に帯同してくださる先生にとってはなおのことです。その意味では、これまで以上に「学校でもできること/合宿でないとできないこと」を選り分けて、意味のある合宿にしていかなければなりません。