地図のない街

日々金欠に

夜中に小説をめくっていたら、なんとなく

2011年05月25日 00時03分16秒 | 読みました
今更の話ですが、
なぜ北村薫さんは『鷺と雪』まで、
直木賞を受賞できなかったのでしょうか?

こういっちゃなんですが、
ベッキーさんシリーズよりも面白いのがあります。
特に、私のお気に入りを読み返すと、なぜだろうと思えてきます。

私のお気に入りは、
『時と人』シリーズ中の白眉、『リセット』

そして、シリーズものではないですが、
(一応、緩やかに世界がつながってる作品がある)、
『ひとがた流し』

どちらも、胸を締め付けられるような話です。
けれど、なんとあたたかな物語なんでしょう。

人と人との心の交わりが切々と読み手に伝わり、
最後は思わず涙してしまいます。

物語の持つやさしさ、
これは著者である北村薫さんご本人の優しさの表れではないかとも思えます。

厳しく時には無情なまでに残酷な生きるということを、
手を差し伸べてくれる人がいる限り、
決して捨てたものじゃないのだと、思えてきます。


北村薫さんは稀な作家だと思います。
1.物語構成がうまい
2.キャラが立っている
3.文章力が抜群

上記どれか2つを持っている作家は多くいます。
しかし、3つとなると現在活躍中の作家ではそうそういないと思います。

3.が弱いけれど、3つ兼ね備えてる作家を、
あえて言えば伊坂幸太郎さんでしょうか。

話は戻りますが、なぜ『鷺と雪』まで直木賞が取れなかったか。
直木賞は幾分、功労賞の意味合いが強いです。
そのため直木賞受賞作が一番の傑作とは限りません。

選考委員の中で北村作品が上がるたびに、
「今回も面白かったけれど、この人は次がないかもしれないから、
次のある北村薫さんはまた次回に」
なんてことが、あったんじゃないかと思います。

それだけ、実力派として認知されてたあかしだったのでしょう。
けれど、受賞作のほうが読まれて、あとは過去の作品と、
ひとくくりにされてしまったら、残念です。

ところで、作家にとってデビュー作は記念すべきものであり(当たり前か…)、
そして、どんなに良い作品を書いてもなぜか、デビュー作を越えられないと、よく聞きます。
稀な作家としての3つの才能を兼ね備えてる北村薫さんはどうでしょう?

私の感想は保留にしておきます。