遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

マオリのテコテコ

2020年03月20日 | コロナに負けるな

コロナウイルスに負けないぞシリーズも、はや9回目。ここ何回かは、外国の力を借りてのコロナ撃退でした。ネタが尽きて来たので、今回も、苦しい時の外国頼みでいきます(^^;)

ニュージーランド(Aotearoa,アオテアロア)の先住民、マオリ(Maori)の木彫、テコテコ(Teko teko)です。マオリ語はなじみが薄いですが、ローマ字読みでOKですから、発音はいたって簡単です。

テコテコは、建物の屋根の上などに立って前庭を見渡し、訪問する人をチェックします。良い訪問者であれば、その人を守るのです。もちろん、コロナはシャットアウト(^.^)

          高さ 38㎝、30.5㎝、25.5㎝

テコテコ(または、テコ)は、木彫の人像(人に似た像)です。

これは、Iwi(イゥイ、部族)の祖先を表しているといわれています。

マオリ社会はイゥイ社会です。いくつかのイゥイがあり、皆、どれかに属していることになっています。しかし、マオリは最もうまく西洋に順化した先住民だと言われているように、ほとんどが都市部にすみ、独自のスタイルはすたれ、白人(Pakeha、パケは)と同じ生活をしています。白人との混血がすすみ、マオリとしての意識も低下しています。現在、ニュージーランド各地で、マオリの伝統文化にふれる事ができますが、すべて観光用のものです。

しかし、20世紀後半、衰退する一途のマオリ文化を再興しようとする動き(マオリ ルネッサンス)が、ニュージーランド全土で興ってきました。

木彫もその一つです。マオリの建物は、かつて、見事な彫刻で装飾されていました。その技術は消えかかっていたのですが、1967年、有名な観光地、ロトルアにマオリ美術工芸学校が設立され、マオリ彫刻を担う若者を育成するようになりました。

今では、街のショップで、たくさんのマオリ彫刻が売られています。奇っ怪な顔に貝の目、そして表面は綺麗に仕上げてあるが普通です。

 

3つのテコテコを、大きい順に紹介します。

左端の一番大きな品です。典型的なテコテコです。製作地不明。

 

裏側も手抜きがありません。

 

横から見ても様になります。

 

人智を超えた力を秘めているような・・・

 

鑿の運びはするどいです。日本の木彫作家のように、鑿跡をしっかり残してあるのも、マオリ彫刻では珍しい。

やはり、作家の品でした。しかも、今となってはかなりの初期作。作品に力があります。

 

真ん中のテコテコです。

顔に入れ墨が入ったマオリの男性像です。

 

らしい模様が入っていますが、彫りがあまい。

 

後ろもおざなり。表面はつるつるに磨かれています。

後頭部に張り紙が・・・Hand Curved in Rotorua, New Zealand. Timber: Matai

ロトルアで作られた典型的なお土産品ですね。マタイ(Matai)は黒松の一種、カウリ(Kauri)とともに、ニュージーランドの木工品の代表的素材です。

 

最後の品です。

小さいですが、これまでの2つとは雰囲気が違います。

 

裏側も全く同じ彫り。

 

表裏がないのですね。台は、後からつけたもの。

 

素朴な彫りです。表面仕上げも無し。素人が彫ったものか?

 

一部、虫食いや朽ちがみられます。

 

頭から伸びているネジは何でしょうか?

小テーブルの脚?それとも、ネジでいくつかをつないでポウポウ(Poupou、柱)としたのか?

いずれにしても、実際に使われていた品だと思われます。

80-100年前の物です。博物館へ入るほどの品ではなかったので、たまたま私のもとへやって来たのでしょう。

先の二つのテコテコは玄関先に、この品は机の上に置いて、コロナ退散を託すことにしましょう。

 

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚きの逆唐草、インドの盾Dahl

2020年03月17日 | コロナに負けるな

コロナウイルスに負けるなシリーズ、第8弾です。

 

Dahl(ダル)とよばれるインドの盾です。18-19世紀の品です。

                 径 38㎝、高 6㎝

ニュージーランドの骨董屋で購入しました。

ニュージーランドは国が若いので、自国の古い品はありません。先住民マオリに関しては歴史的な物もありますが、入手は不可能です。

ただ、イギリス圏であった関係でヨーロッパから、また、現在は、人種の坩堝といわれるくらいの多民族国家ですから、世界各地から、多くの品が集まっています。

この品もその一つでしょう。

実は、以前、これと同じ品を、オークランド博物館の展示品の中に見つけていたのです。

博物館前の店に、ずらっと名品のコピーが並んでいる・・・故宮博物院ではよくある類の話ですね。

でも、これはコピー品ではありません(^^;)

 

材質は、黄銅。

インド・中東風の装飾がびっしりと施されています。

 

気が遠くなるような細工です。

点々はすべて鏨でつけた小孔です。

 

模様には、渡金、渡銀が施されています。

 

 

 

 

 

裏側をみると、実用品であることがわかります。

 

頑丈な鉄輪に、太い紐が2本。これで、がっちりと盾を持ちます。奥には四角い皮があててあって、拳を保護するようになっています。

紐はほつれ、皮も破れています。実際に使われていたのでしょうか。

 

さて、今回の品、ここからが本題です。

主模様の間には、唐草と思われる細長い枝葉模様がびっしりと描かれ、隙間は黒く塗られています。

よく見ると、唐草の葉と葉の間がくぼんでいる所が何カ所かあります。

埋めてあった素材が傷んで剥がれ落ちたのです。

ということは、黒い部分の地金は彫り込まれており、金色の唐草は凸形に浮き彫りにされて残った部分なのです。彫られた凹部には漆を塗りこんで、平にしたのでしょう。

これは、ちょうど、酒田の人さんの古伊万里コレクションで紹介されている、伊万里焼の逆タコ唐草模様に相当します。通常のタコ唐草のように、直接、唐草模様を描くのではなく、周囲を呉須で塗って、残った白い部分を唐草模様にするのです。

呉須で隙間を塗って白い部分を唐草模様として残す古伊万里染付皿の逆タコ唐草と異なり、この品の場合は、金属を彫り下げ、残った凸部で唐草模様を表すのですから、本当に気が遠くなるほどの手間がかかります。

 

その一部を拡大してみました。

黒い部分は間を埋める漆。2本の金線は唐草の一部。

金線の間の白くなっている部分が彫り下げられた所です。埋めた漆が剥がれて、彫りすすんだ跡が見えています。

 

異国の職人が心血をそそいで作り上げた盾。

これを手にすれば、コロナウイルスも簡単に跳ねかえすことができること間違いなし(^_^)

 

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サポテカ神像に土俗面

2020年03月15日 | コロナに負けるな

コロナウイルスに負けるなシリーズ、第7弾です。

 

目に見えない敵を撃退するには、霊的力に頼るしかないのかも知れません。

そこで、探し出したのがこれです。

      幅 29cm x 奥行 27m x 高 39㎝

家人からは、気味が悪いと除け者にされ、10年以上、粗大ゴミすれすれの境遇にあったのですが、今回、やっと日の目をみました(^^;)

 

後ろ側には、入れ物?

材質は陶器、いわゆるテラコッタです。それなりに、しっかりと作ってあります。

が、如何せん、得体のしれない代物です。

 

手がかりになりそうな紙片が・・・・読めません(^^;)

そこで、色いろ調べてみました。

どうやらこの品は、中南米の古代文明遺跡で発掘されるタイプの神像であることがわかりました。王や有力者の墳墓の副葬品です。邪悪なものから墓を守るために置かれたのでしょう。

こういう物はマヤやアステカが有名で、この品もそうかと思ったのですが、細かな部分の造りは、メキシコ南部オアハカ地方にあったサポテカ文明(BC1400ーAC1000)の神像によく似ています。日本ではなじみの薄いサポテカ文明の品ではないでしょうか。

もちろん、レプリカです。

 

顔が、3段になっています。

一番下の顔。

勇壮な戦士でしょうか。

 

2段目の顔。

滑稽な獅子?

 

3段目の顔。

猿?、それともET?(^.^)

愛嬌もあり、けっこう面白いのですが、その分、コロナウイルスには役不足か?

 

そこで、強力な助っ人の登場です。

           長 16 cm x 幅 11cm

 

江戸時代の木彫土俗面です。この能面系古面と正月の飾りを使ってみました。

 

おぉ、キッチュなド迫力。

これで、準粗大ゴミから玄関の守護神へと出世すること間違いなし。

コロナウイルスのおかげで、粗大ゴミが生き返りました(^_^)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

さるぼぼ瓶細工

2020年03月13日 | コロナに負けるな

コロナウイルスに負けるなシリーズ、第6弾です。

今回は、瓶細工のさるぼぼ、2個です。

かなりの時代物のように見えます。両方とも、戦前の品でしょう。はっきりとした製作時期はわかりませんが、明治まで遡るかも知れません。

 

まず、右側の品です。

ガラス瓶一杯に、ぬいぐるみのさるぼぼが入っています。

 

太い帯を締めています。

 

抱いているのは、桃でしょう。

 

手足は縫い合わせてあります。

瓶細工の定番は、手毬です。手毬瓶細工の作り方は、ネットにもアップされています。まず、球状の型の上で手毬を作ります。型を抜いて、ペシャンコにした手毬(口があいている)を瓶の中に入れます。あいている口から詰め物を入れて丸くふくらませ、最期に口をふさぐ、というものです。しかし、その方法では、この桃抱きさるぼぼを瓶の中で作るのは無理なように思えるのですが・・・・・うーん、作り方、わかりません(^^;)

 

さるぼぼは、岐阜県飛騨地方で、昔からつくられてきた郷土人形です。飛騨の言葉で「ぼぼ」は赤ちゃんのことですから、「さるぼぼ」は、猿の赤ん坊を意味します。

さるぼぼを手作りし、赤ん坊の健やかな成長や家庭円満を願ったといわれています。

また、良縁や安産にも、さるぼぼに思いを込めたといわれています。

さらに、「さる」は「去る」に通じるので、「病が去る」「災いが去る」とかけて無病息災の願いを、さるぼぼに込めるようになりました。

 

ならば、コロナウイルス撃退も、さるぼぼにお願いすることにしましょう。

おおー、口の紐結びは、叶結びです。

これで、コロナ撃退の願いが叶いそうです(^.^)

 

今、飛騨高山へ行けば、土産物屋の店先には、沢山のさるぼぼがズラーっと並んでいます。

いろいろな品がありますが、パターンはほぼ同じです。

赤い、4本の手足とのっぺらぼうの顔。顔は大きいです。腹巻もつけています。

 

瓶の中のさるぼぼは、手足、胴に比べれば、ずいぶん顔が小さい。しかも白色。さらに、さるぼぼが身に着けているのは、腹巻ではなく、太い白帯です。

昔のさるぼぼは、現在のものとはかなり違っていたようです。

 

 

もう一つの、さるぼぼ瓶細工です。

さるぼぼは、手毬で遊んでいるのでしょうか。

 

ありあわせの毛糸を巻いたと思われる、手作り感あふれる手毬です。瓶細工の手毬が、豪華な色々を精緻に巻いた御殿手毬であるのと対照的に、素朴な品です。

 

さるぼぼは、2つ入っています。小さな白い顔と白い帯。先の瓶細工と同じ人が作ったのでしょう。

 

ところで、口元を縛っていた布はボロボロです。

手で触るだけで、粉々になります。

 

写真を撮っただけなのに、こんなにも布の破片が。

 

拡大して見ると(200倍)・・・

細長い繊維が切れて、バラバラになっています。黄色の部分は、退色がすすんでいます。てんてんと並んだ黒点は、染料の分解物だと思われます

 

瓶の中の二つのさるぼぼと手毬には、それほど劣化はみられません。

先のさるぼぼ瓶細工でも、これほどではありませんが、やはり、口元の布は傷んでいます。

ガラス瓶の内と外では、こんなにも違いがあります。どうしてでしょうか。

さるぼぼや口元の布は、絹でできていると思います。絹は、年月が経つにつれて強度が弱くなり、最期にはボロボロになります。

その速さは、布が置かれた環境によります。劣化をもたらす要因は、大きく3つ、紫外線、大気、虫です。

この布の様子から、虫害は考えにくく、紫外線と大気が布の劣化をもたらしたと思われます。

ガラス瓶の内側にいたので、さるぼぼは、紫外線や大気の影響を受け難く、元の姿が保たれたのです。

コロナウイルスも、なるべく家の中に留まっていれば、リスクはかなり低くなるはずです。その時には、さるぼぼを、手元に置いておくとさらに良い(^.^)

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

戦前のロールペーパー

2020年03月10日 | コロナに負けるな

コロナウイルスに負けるなシリーズ、第5弾です。

ちょうど一か月前、ブロ友と、「下手をすると、マスクだけでなく、トイレットペーパーやティッシュペーパーもなくなるかも」「まさか、オイルショックじゃあるまいし」と冗談めいたコメントを交わしました。

それが、あれよあれよという間に、現実となってしまいました。

コロナウイルスにのって、さもしい根性が、政治家から人々へと感染したのでしょうか。

 

そこで、マスクの時と同じように、苦しい時の故玩館頼み。巷にないのならと、ガラクタの山をかき分けてみました。

見つけたのが、これです。

蓋が失われたボロボロの箱に美しい女性が、何やら手にとっています。

「各御家庭之必需品」 「新案特許 塵紙切取器」

「登録商標 巻之花紙本舗」

 

中に何か入っています。

 

          縦18.5x横18x高18 ㎝

戦前の品ですが、詳しい時代はわかりません。

御座敷用です。

確かに、「塵紙切取器」です。特許もとっているようです。

 

金具を押すと・・・・・おぉー、ジャバラになっています。

 

中には、巻紙が入っていて、くるくる回ります。

 

この穴に指を入れて・・・

 

押してやると、紙が出てきます。

 

ずずっと引っ張って・・・

 

ギザギザの金具で、切り取ります。

 

中に入っていたロールペーパー、ちょうどトイレットペーパーくらいの大きさです。

250の数字は何?

どうやら、塵紙切取器ではなく、ロールペーパーを売りたかったようです。キャッチコピーがボロボロで読めませんが、行間からは、この画期的な製品を売ろうとの熱意が伝わってきます。

でも、250個くらいしか売れなかったのかも知れません(^^;)

静岡市の川村紙店が巻之紙本舗で、この器具を併せて製作したと考えられます。

内部には、ロールペーパーの心棒を受ける金具が左右にあります。

さらにその奥には、バネがついたクランプのような棒があります。これは、ペーパーを引っ張ったとき、ザッーっと出すぎてしまわないよう、抵抗をかけるための装置です。

うーん、芸が細かい。さすが特許だけのことはありますね。

 

宣伝用か上客へのサービスとして、お茶問屋さんが配った品でしょう。

 

接合部が、木組みになっているのもうれしい。

 

この塵紙切取器、トイレットペーパー型ティッシュペーパーというような製品です。

当時としては、洒落た品です。

どんな人が、どんな時に、これを使っていたのでしょうか。

この切取器で、ゆっくりと紙を切り、切った紙をゆっくりと使えば、巷の紙不足はたちまち解消(^_^)

 

 

 

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする