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遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

南京赤絵漁師高士図四方中皿(5枚)

2022年10月28日 | 古陶磁ー中国

今回も南京赤絵の皿です。

縁の虫食いを除いては、5枚とも無疵です。

14.0㎝x14.0㎝、高台 9.4㎝x9.4㎝、高 2.8㎝。中国、明末ー清初。

先回の品よりもぶ厚く、日本からの注文品の古染付に似ています。

漁師が、川べりに佇む男に魚を見せています。

このような図柄は、定番の漁礁問答を思わせますが、漁師の相手が木樵ではないので、何か別の逸話の一場面でしょう。

先回の南京赤絵と同じく、表面の擦れ、小傷は全くありません。上絵付した部分も完全にきれいな状態です。

四方皿は、縁が水平に削られているので、端が非常に薄くなっています。ですから、釉薬の剥がれが多くあるかと思ったのですが、他の南京赤絵や古染付皿と同じような具合です。

縁の裏側には鉄釉が塗られ、いわゆる口紅になっています。口紅は、装飾と同時に、補強の意味もあると言われています。しかし、表側と同じように虫食いができています。

一般に、虫食いは、胎土と釉薬の収縮率の違いから、釉薬が剥げ落ちてできると言われてきました。長年の間に、釉薬がボロボロと剥がれていくイメージです。実際にそう説明している場合もあります。

しかし、前のブログの品や今回の品をはじめ、明末の中国陶磁器の虫食いをつぶさに観察すると、剥がれた部分に火が入っているようなのです。中には、釉薬が捲れ上がった状態で、端が鋭くなったものもあります。また、鉄釉を塗った効果はあまりないようです。従来の説明のように、収縮率の違いが大きいのなら、表面に細かなジカンが入ってもよさそうですが、全く見られません。

したがって、虫食いは、経年変化によるものではなく、陶磁器の焼成中に起こっているのではないでしょうか。原因はよくわかりませんが、ゴミなど不純物の混入もその一つでしょう。これは、日本で、古染付や南京赤絵のコピーを作る時に用いられる方法でもあります。偽物製作者は、案外、的を得ていたのかもしれませんね(^^;

 

今回の皿、5枚は、大きな箱に入っていました。箱には、「南京中皿四十人揃え」と書かれています。

こんな皿を、40枚も揃えるとは、元の所有者は、いったいどんな人物?(^.^)

 


南京赤絵蓮池鴛鴦紋中皿(5枚)

2022年10月26日 | 古陶磁ー中国

Dr.Kさんの先日のブログで、南京赤絵ではないかとされる花瓶が紹介されていました。

南京赤絵!そういえば、故玩館にもしまいっ放しの物があったはず・・・例によってゴソゴソさがし回り、見つけ出したのが今回の品です。

 

南京赤絵の中皿です。

5枚揃い、内一枚の縁に金継ぎ補修があります。

径 15.2㎝、高台径 8.1㎝、高 3.2㎝。中国明末ー清初。

日本の皿よりも、一段、薄い造りです。良く焼き締まっていて、爪で弾くと、カン高い金属音がします。

また、皿の底は、放射状に削られています。

 

品物の縁には、明末の中国陶磁器の特徴である虫食い(釉薬剝がれ)が、全部の皿で見られます。

南京赤絵の魅力は、何といっても奔放な絵付けです。

蓮池に鴛鴦、これは中国陶磁器では人気の図柄です。

たいていは、二匹の鴛鴦が前後して、仲睦まじく泳いでいるのですが、この品の場合は・・・

呼び合っているような・・・・親子かな?

蓮の花も、どこかマンガチックで、見ていると頬が緩みます(^.^)

今回の品物、縁の虫食いを除けば、疵が全くありません。表面の細かい擦り傷も皆無です。

上絵付けの赤釉は、非常に脆いので、古陶磁の赤釉部分には、微細な傷や擦れがあるのが自然だ、と先のブログで書きました。

 

しかし、今回の品は、顕微拡大しても、非常に綺麗な状態に見えます。小傷が無いのは、赤釉の成分が日本の赤絵とは違う?それとも、焼成法の差?

南京赤絵は、そのくだけた佇まいが茶人などに評価され、珍重されました。この品も、日本に渡ってから、よほど大切にされてきたのでしょう

せっかくですから、故玩館のガラスケースに移して、陽の目を見させてあげるのが良いかと(^.^)


謎の緑釉小壺

2022年10月16日 | 古陶磁ー中国

20年程前に入手した、緑釉の小壺です。

胴径 5.7㎝、口径 1.7㎝、底径 2.9㎝、高 7.3㎝。産地、時代不詳。

発掘品、もしくは明器でしょう。かなり古い品です。

highdyさんのブログで、PCの技をたくさん教えていただいているのですが、なかなか活用できません。今回、簡単なアニメーション(Giam)に挑戦してみました。

われながらよくできた、と満足(^.^)。highdyさん、ありがとうございました。これからも、初心者でもわかるPC技をよろしくお願いいたします(^.^)

さて、肝心の品物です。

上から見ると、

口が内側に凹んでいるように見えますが、錯覚です(^^; 

実際は、くびれた形です。単なる装飾?それとも、紐を掛けるようになっているのでしょうか。

注ぎ口の反対側には、把手がついていたようですが、破損しています。

所々に緑釉の銀化が見られます。

日本?中国?東南アジア? いつ頃の物でしょうか。

産地、時代共に不明です。

何で、こんな物を持っているのか?

実は、私は緑釉に特別の思い入れがあるのです。

20年程前、連日、ネットオークションに熱を上げていました。PCに向かい、夜遅くまで入札三昧。毎日のように、何がしかの品をゲットしていました。ある時、オークションにアップされている品物のうち、少し気になる品があって、入札を予定していました。ところが、たまたま野暮用が重なり、気がつけば、オークションは終了していました。それでも気になって、手持ちの図録や資料などを繰っているうちに、ある大型美術本に目がくぎづけになりました。何と、裏表紙のカラー写真、欠けなど疵の様子も含めて、オークションの品そのものではありませんか。奈良の緑釉の小壷!!!奈良の緑釉なんて、陶片を得ることさえ不可能です。

こういう時の気持ちを言葉で表すのは難しいですね(^^; 

これまで、数千点、オークションで品物を落札してきました。長年のオークション人生のうちで、一番、悔いが残る出来事でした。

以来、緑釉トラウマになってしまったのです(^^;

そして、入手したのが今回の品です。

ですから、素性が明らかでないうちが花。

掌の上で転がしながら、「ひょっとして、おまえは・・・・」などと、妄想を重ねている遅生でした(^.^)


胴継ぎ陶磁器2点

2022年08月14日 | 古陶磁ー中国

先のブログで『樹下高士琴弾図玉壺春瓶』を紹介しました。この品は、伊万里焼か中国物か判断がつかなかった物です。最終的に、中国明末の品ということで決着しました。決め手は、器を作る時に、上下二つのパーツを接合する胴継ぎの技法が使ってあったことです。

そこで、他にも胴継ぎの器がないか探したところ、2点見つかったので報告します。

以前紹介した旅持ち茶籠に入っていた茶道具の一つです。

径 5.4㎝、口径 2.1㎝、底径 3.7㎝、高 5.6㎝。17-19世紀。

中国南部民窯かその影響を受けた東南アジアの品でしょう。

胴のまん中(写真では下から三分の一の位置に見える)の凸帯が見られます。これは胴継ぎの痕に違いない・・・・・

で、内部を覗くと、

筋状の接合痕がはっきりと見えます。

こんな小さな壷まで、上下二つのパーツを合わせて造るなんて驚きです。

もう一つは、青磁尊式花瓶です。

高30.0㎝、外径17.2㎝、底径12.5㎝。中国明時代?

中央の帯部に、片切彫りで細かな模様(花びら?)が刻んであります。この帯の上側凸帯が怪しい(^^;

内部を覗いてみると、

接着部が帯状にはっきりと見えます。

今回、内部を穴のあくほど覗いて気がつきました。この花瓶には青磁釉が内側にもたっぷりとかかっています。しかし、中央より下は、青磁色がほとんどなく、白っぽい状態です。これは、花瓶の内側下部にまで酸素がまわらず、還元が進みすぎて、青磁色を示す酸化第一鉄からさらに金属鉄へと変化したためと思われます。青磁を焼成する時は、やみくもに酸素を絶って熱するのではなく、最後に空気を入れて一焚きするそうです。微妙な酸化ー還元調整が必要なのですね。

こんなに大きさが違う品ですが、両方とも同じ胴継ぎの技法が使われていることにあらためて驚きました(^.^) 


伊万里?中国?『樹下高士琴弾図玉壺春瓶』

2022年08月10日 | 古陶磁ー中国

よくわからない物シリーズ、第2弾、今回の品は、古伊万里として購入した物です。

ですが、中国の品のようでもあり、判断がつきません。

胴径 16.9㎝、口径 7.3㎝、底径 10.8㎝、高 38.2㎝。産地、時代不明。

梅、松の大樹がそびえ、岩の上には竹も生えています。松竹梅の歳寒三友図です。元々は、中国で文人が好んだ画題、日本でもお目出度い図柄とされてきました。

深山幽谷の中で、二人の人物が琴を弾いています。

俗世間から離れ、悠々と琴を楽しむ文人画の世界です。

このような画題は、中国はもとより、日本でも好まれましたから、一概に中国産とも言えません。

高台は少し歪んでいます。胎土は純白、非常に肌理が細かいです。その限りでは、平戸焼かなとも思われます。

もしやと思い、内側を覗きこんでみました(狭すぎて、写真がとれません)。

すると、下から三分の一位のところに、継ぎ目が見えるではありませんか。

段継ぎの袋物なので、この瓶は中国の品である可能性が高いと考えられます。時代は不明です。