本多劇場にて、NYLON100℃ 40th SESSION 『わが闇』 東京千秋楽、7月15日(月)13:30開演を観てきました。
※ネタばれがありますので、ご注意くださいませ。
【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【美術】中根聡子
【照明】関口裕二(balance,inc.DESIGN)
【音響】水越佳一(モックサウンド)
【映像】上田大樹 大鹿奈穂(&FICTION!)
【衣装】前田文子
【ヘアメイク】武井優子
【キャスト】
犬山イヌコ:柏木立子
峯村リエ:守口艶子
坂井真紀(客演):柏木類子
岡田義徳(客演):滝本悟
大倉孝二:大鍋あたる
長谷川朝晴(客演):皆藤竜一郎
三宅弘城:三好未完
みのすけ:守口寅夫
廣川三憲:柏木伸彦
松永玲子:柏木基子・飛石花
長田奈麻:志田潤
吉増裕士:初老の男・カメラマン
喜安浩平:田村・編集ライター
皆戸麻衣:皆藤みどり・雑誌編集者
【ストーリー】
31年前、柏木家は小さな村「御五色村」に引っ越して来る。
小説家である柏木伸彦には3人の娘がおり、長女・立子は齢10歳にして文壇デビュー。
同業者として立子に嫉妬の念を抱く伸彦。
一方で妻の基子が情緒不安定に陥るようになり、ある事柄をきっかけに自らの命を絶ってしまう。
2007年、冬。病床に臥せた伸彦のドキュメント・ムービーを製作する為、2人の男が柏木家を訪れる。
一見、さしたる悩みもなく日々を過ごしているように見える柏木家の三姉妹だったが、それぞれが人に言えない「事情」を抱えて暮らしていたのだった。
公式サイトはこちら → ナイロン100℃インフォメーション
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ナイロン100℃結成20周年記念企画第三弾です。今年3本目のナイロン100℃。
2007年の初演は未見ですが、「柏木家の三姉妹と、それをとりまく人々をシリアス・テイストとし、誰にでも起こりうる出来事を淡々と描くという新機軸ともいえる作風は大きな反響を呼び、「まぎれもない最高傑作」の評価を得た異色の家族劇。」ということで期待して、猛暑の中を行ってまいりました。
客入れは静かなBGM風。
美術は、昭和を感じさせる懐かしい羽目板張りの木造住宅。
上手の端に納戸。中央から上手に向かって、囲炉裏のある和のしつらえな部屋。その奥に二階へと続く階段。
中央から下手に向かって、ソファーやテーブルのある洋のしつらえな部屋。その奥に台所。
舞台下には、客席に向かって斜めな角度で設置されている照明が上手・下手側に各4個。ストーリーテラーでもある岡田義徳さんが、ストーリーを説明をされるときに使用されています。
プロジェクションマッピングが多用され、天井付近にはストーリーの補足。壁や障子には心象風景を表すような黒い染みや亀裂、傷んだフィルムのような多量の白い縦筋。時折、亡くなった柏木伸彦の姿。これらが映像として映しだされます。
これらの映像の使いかたが絶妙!
美術、照明、音響、映像が奏でるハーモニーが素晴らしい!
ナイロン100℃では珍しくないとはいえ、3時間超えの長尺にもかかわらず、冗長感が全くない展開。暗転も多いんですけどね。
始まった直後から、その世界観にすっ。。と入っていける不思議さがあり、『犬は鎖につなぐべからず』のときを思い出したり。
ストーリー自体は、はっきり言って重いし、暗いお話です。
ですが、ずっと軽快で温かいものが流れており、それがこの作品を重苦しくさせないのだろうと。「え?ここで、そっちにいくの?」みたいな感じで笑いにもっていくので。
三姉妹については、私自身が第一子長女ということもあり、長女の立子にどうしても感情移入して観てしまいましたね。
“家族”という、他人にはうかがい知ることのできない社会の最小単位。そこで大なり小なり誰にもあるであろう事柄と傷。
互いに傷つき、傷つけられ、誤解とすれ違いの数々。傍から見ればささいなことが、当人にとっては人生を左右されるほどの意味をもつことの怖さ。
それぞれのおかれている状況は決して楽観的なものではなく、むしろ、これからどうやって生きていけばいいのだろう。。?と思わざるをえないのです。
アルバムの写真に込められた、父 伸彦の娘たちへの想い。これは彼なりの遺言だったのですね。。
ラストシーン。ストーリーテラーの岡田義徳さんが語る言葉に、微かな光が見えたように思えました。
「それでも彼らは生きていく」
「劇団力」という言葉があるのなら、まさにそのものという感じでした。客演の方が三人いらっしゃいましたが、なんの違和感もなく劇団員の方々と馴染み、同じ世界観を構築されていらしたと思いました。初演と同じキャストさんたちでの再演とはいえ、なかなかできないのではないかと。
それにしても、本当にナイロン100℃の役者さんたちはすごい!
個人的に好きなのは、三姉妹がハモる某インスタントコーヒーのCMソング。きれいにハモっておりました♪
ケラさんが稽古開始の頃、坂井真紀さんに「歌の練習してる?!」と尋ねられたというのはこのことだったのですね~納得。
「インスタントコーヒー」=「ダバダ♪」(笑
カーテンコールは3回。
2回目にケラさんが登壇。慌てておられたのか、キャメル色の靴を履かれたままの土足状態でご本人も気にされておりました。
「忘れないうちに」とのことで、客演の方々のご紹介。
3回目にもケラさんが登壇。今度は靴を脱ぎ、イエローのソックス姿で。
「劇団が20周年ということで、万歳三唱を。大倉やれ!」と大倉孝二さんにふりましたが、見事にスルーされ、結局ご自分で万歳三唱の音頭を。
キャストさんたち全員と観客のみなさんで、「万歳!万歳!万歳!」の大合唱。大変に盛り上がりました♪
カーテンコールで万歳三唱をしたのは初めてです。貴重♪
とてもいい東京千秋楽でした^^
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フライヤーの裏。トップ画像が表です。
もう1種類のフライヤー。
当日パンフレット。キャストさんたちの今後のご予定など。
主宰 ケラリーノ・サンドロヴィッチさんから、 「わが闇」に御来場のお客様へ。
開演前に読んだら、うるっ。。と涙が出そうになったのでした。全く同じではないにしろ、自分の子供時代と重なるところがあったりして。
パンフレット 1500円也。
内容は盛りだくさん♪ 秋元康さんとの特別対談も。正直、意外な組み合わせと思ってしまいました~(笑
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こちらに、ケラさんのインタビュー記事が載っております。なかなかに感慨深いです。
Lmaga.jp 「世の中って悲惨」って前提から成るケラリーノ・サンドロヴィッチの舞台