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■前代未聞――日本で唯一の存在:「卒論100人ゼミ」
商学部の卒論指導を行う4年生用ゼミは「演習Ⅲ」という名称である。
これに100人(正確には84人)の履修者を受け入れていたことを示すのが、
これから掲載する資料である。
断っておくが、商学部で、合計84人の学生が卒論作成ゼミに参加している
という話ではない。
たった1人の専任教員が、その担当する卒論ゼミに、84人もの履修者を受け
入れていたという話である。このうちの何人が実際に4単位を取得したのかは
分からないが、ショッキングな事実であることに変わりはない。
しかも、これが10数年のあいだ続いていたというのだから!
(なお、この2014年度に設置された「演習Ⅲ」の数は、24であり、履修者の
総数は231名である。「イナバゼミ」は、3分の1強の履修者を集める、
最も人気のあるゼミである)。
以下に、資料を掲げる。
集中【授業】 演習Ⅲ ●●×× 通年 商学部 教授 84【名】
■ギネス記録か!
いろいろと調べてみたが、日本の大学にこのようなゼミは存在していない。
「県下第一」どころか、「日本一」というところであろう。
専任教員の急病急死により、その担当していた履修生を他の専任教員が
引き受けて、一時的にゼミが膨れ上がることはあろう。
しかし、10数年もこのような卒論ゼミを放置してきたこの大学、おそらく
「世界一」なのではないかと思う(もちろん証拠は挙げようがない。なぜなら、
こんな状態は恥であり、当然隠すからである)。
ギネスに登録申請したらどうかと思う。対抗馬はまず出てこないだろう。
いや、こういう記録は、ギネスは扱わないらしい。恥さえ忍べば、こんな
記録は簡単に破ることができるからである。
■HPでの「演習Ⅲ」の説明
中央学院大学はHPで「演習Ⅲ」を次のように説明している。
「4年次は、指導教員のアドバイスのもと、自分の研究テーマについて
卒業論文などにまとめます。」
この記述によると、「演習Ⅲ」には、履修者はそれぞれ「自分の研究テーマ」
をもって参加することになっている。このこと自体は、いたって普通である。
その次の文には、サラッとこう書いてある。
「卒業論文などにまとめます」
この「など」という言葉が気になる。もしや「卒業論文」ではなく、
「レポート」の類でもいいのか、との疑問がわくのである。
そこで、HPにある商学部教員のシラバスをのぞいてみた。ほとんどの教員は、
「卒業論文」の作成を履修者に課すことを明らかにしている。
しかし、やはり卒業論文ではなく、レポートを課す教員が数名いた。この点に
ついては別の機会に述べよう。
さて、我々の「イナバ教授」のシラバスをのぞくと、「卒業論文」の作成を
課していることがわかる。
シラバスに明記しているのだから、卒業論文の作成が単位認定の要件という
ことであろう。このことを、まず確認しておこう。
■1人で84人の卒論指導!?
もう何十年も前から、社会科学・人文科学系の学部の多くは、卒業論文を
卒業要件にしてはいない。卒論を書かなくても卒業できる。
しかし、選択科目としてのゼミはあり、4年生用のゼミは、卒業論文が単位取
得の条件となることが多い。
この卒論用のゼミは、毎週は行われない。卒論指導の頻度は、担当教員に
よって異なる。例えば月1回の相談日を設定したり、随時相談にのったりと、
様々である。
後期が始まると、学生は本格的にとりかかり、担当教員の指導を受けながら
執筆し、1月には提出しなければならない。
卒論の作成を指導しなければならない学生が20名もいたら、教員は11月
から12月にかけては多忙になる。疲労困憊(こんぱい)する。学生の
書いたものにチェックを入れ、論旨を明快にし、「てにをは」や誤字の訂正を
行わなければならないからである。
もっとも、卒論が公表されないような大学では、担当教員は「手抜き」を
することができるし、実際にしている。
学生の卒論といえども、著作権の問題があり、本人の同意なしに卒業論文を
ネットで公表するような大学・学部はないが、冊子にして図書館に収蔵し、
いつでも見られるようにしている大学は存在する。卒論を書かせる際に、これを
条件にしているようである。
狭い範囲ではあるが、卒論が公表される大学では、専任教員は、卒論指導に
緊張を強いられる。というのも、学生の卒論の出来栄えを見れば、担当の専任
教員の仕事ぶりが分かってしまうからである。
だからこういう大学の専任教員は、4年生用のゼミ履修者を極力少なくする
ために、履修者「選抜」を行い、数名程度に抑えている。この教員による「選抜」
は、どの大学でも許されているようだ。
■中央学院大学の卒論は、教員間でも見ることができない
中央学院大学商学部は、卒論に関して言えば、専任教員には総じて「天国」の
ようなところである。
なぜなら、商学部の「演習Ⅲ」の履修生の手による卒業論文は、教員間でも
見ることができないため、専任教員の卒論指導については、他の専任教員から
容喙(ようかい=口を出されること)されることも、批判されることもないから
である。
もちろん、卒論指導を立派に行い、学生と自分用に冊子にしている教員がいる
ことも、我々は知っている。まじめな教員だ!、
(なお、法学部の「フィールドスタディーズコース」では、卒論の執筆が卒業
要件にされているが、他の専任教員でさえ見ることができない。もちろん、非常勤
講師などオヨビデナイ)。
■1人で84人の卒論指導は無理
さて、再び「イナバ教授」の84人の卒論に戻ろう。
本当に、この84人は「卒業論文」を書いたのか?
本当に、「イナバ教授」は84人分の卒論指導を行ったのか?
年間1人30分の個別の卒論指導を4回行うとすると、年間1人につき2時間
となる。84人では168時間である。
1日3時間をそのための時間としても、56日を要する。
提出締め切り前の文章の手直し、文献目録の書き方の訂正の指導のための
84人分の時間は、どうやって取ったのか? 本当に、指導したのか? 疑問は
つきない。
要するに、どうみても不可能なのである。これは、専任教員10人分の仕事で
ある。
「イナバ教授」はスーパーマンなのか!
<続く>
■前代未聞――日本で唯一の存在:「卒論100人ゼミ」
商学部の卒論指導を行う4年生用ゼミは「演習Ⅲ」という名称である。
これに100人(正確には84人)の履修者を受け入れていたことを示すのが、
これから掲載する資料である。
断っておくが、商学部で、合計84人の学生が卒論作成ゼミに参加している
という話ではない。
たった1人の専任教員が、その担当する卒論ゼミに、84人もの履修者を受け
入れていたという話である。このうちの何人が実際に4単位を取得したのかは
分からないが、ショッキングな事実であることに変わりはない。
しかも、これが10数年のあいだ続いていたというのだから!
(なお、この2014年度に設置された「演習Ⅲ」の数は、24であり、履修者の
総数は231名である。「イナバゼミ」は、3分の1強の履修者を集める、
最も人気のあるゼミである)。
以下に、資料を掲げる。
集中【授業】 演習Ⅲ ●●×× 通年 商学部 教授 84【名】
■ギネス記録か!
いろいろと調べてみたが、日本の大学にこのようなゼミは存在していない。
「県下第一」どころか、「日本一」というところであろう。
専任教員の急病急死により、その担当していた履修生を他の専任教員が
引き受けて、一時的にゼミが膨れ上がることはあろう。
しかし、10数年もこのような卒論ゼミを放置してきたこの大学、おそらく
「世界一」なのではないかと思う(もちろん証拠は挙げようがない。なぜなら、
こんな状態は恥であり、当然隠すからである)。
ギネスに登録申請したらどうかと思う。対抗馬はまず出てこないだろう。
いや、こういう記録は、ギネスは扱わないらしい。恥さえ忍べば、こんな
記録は簡単に破ることができるからである。
■HPでの「演習Ⅲ」の説明
中央学院大学はHPで「演習Ⅲ」を次のように説明している。
「4年次は、指導教員のアドバイスのもと、自分の研究テーマについて
卒業論文などにまとめます。」
この記述によると、「演習Ⅲ」には、履修者はそれぞれ「自分の研究テーマ」
をもって参加することになっている。このこと自体は、いたって普通である。
その次の文には、サラッとこう書いてある。
「卒業論文などにまとめます」
この「など」という言葉が気になる。もしや「卒業論文」ではなく、
「レポート」の類でもいいのか、との疑問がわくのである。
そこで、HPにある商学部教員のシラバスをのぞいてみた。ほとんどの教員は、
「卒業論文」の作成を履修者に課すことを明らかにしている。
しかし、やはり卒業論文ではなく、レポートを課す教員が数名いた。この点に
ついては別の機会に述べよう。
さて、我々の「イナバ教授」のシラバスをのぞくと、「卒業論文」の作成を
課していることがわかる。
シラバスに明記しているのだから、卒業論文の作成が単位認定の要件という
ことであろう。このことを、まず確認しておこう。
■1人で84人の卒論指導!?
もう何十年も前から、社会科学・人文科学系の学部の多くは、卒業論文を
卒業要件にしてはいない。卒論を書かなくても卒業できる。
しかし、選択科目としてのゼミはあり、4年生用のゼミは、卒業論文が単位取
得の条件となることが多い。
この卒論用のゼミは、毎週は行われない。卒論指導の頻度は、担当教員に
よって異なる。例えば月1回の相談日を設定したり、随時相談にのったりと、
様々である。
後期が始まると、学生は本格的にとりかかり、担当教員の指導を受けながら
執筆し、1月には提出しなければならない。
卒論の作成を指導しなければならない学生が20名もいたら、教員は11月
から12月にかけては多忙になる。疲労困憊(こんぱい)する。学生の
書いたものにチェックを入れ、論旨を明快にし、「てにをは」や誤字の訂正を
行わなければならないからである。
もっとも、卒論が公表されないような大学では、担当教員は「手抜き」を
することができるし、実際にしている。
学生の卒論といえども、著作権の問題があり、本人の同意なしに卒業論文を
ネットで公表するような大学・学部はないが、冊子にして図書館に収蔵し、
いつでも見られるようにしている大学は存在する。卒論を書かせる際に、これを
条件にしているようである。
狭い範囲ではあるが、卒論が公表される大学では、専任教員は、卒論指導に
緊張を強いられる。というのも、学生の卒論の出来栄えを見れば、担当の専任
教員の仕事ぶりが分かってしまうからである。
だからこういう大学の専任教員は、4年生用のゼミ履修者を極力少なくする
ために、履修者「選抜」を行い、数名程度に抑えている。この教員による「選抜」
は、どの大学でも許されているようだ。
■中央学院大学の卒論は、教員間でも見ることができない
中央学院大学商学部は、卒論に関して言えば、専任教員には総じて「天国」の
ようなところである。
なぜなら、商学部の「演習Ⅲ」の履修生の手による卒業論文は、教員間でも
見ることができないため、専任教員の卒論指導については、他の専任教員から
容喙(ようかい=口を出されること)されることも、批判されることもないから
である。
もちろん、卒論指導を立派に行い、学生と自分用に冊子にしている教員がいる
ことも、我々は知っている。まじめな教員だ!、
(なお、法学部の「フィールドスタディーズコース」では、卒論の執筆が卒業
要件にされているが、他の専任教員でさえ見ることができない。もちろん、非常勤
講師などオヨビデナイ)。
■1人で84人の卒論指導は無理
さて、再び「イナバ教授」の84人の卒論に戻ろう。
本当に、この84人は「卒業論文」を書いたのか?
本当に、「イナバ教授」は84人分の卒論指導を行ったのか?
年間1人30分の個別の卒論指導を4回行うとすると、年間1人につき2時間
となる。84人では168時間である。
1日3時間をそのための時間としても、56日を要する。
提出締め切り前の文章の手直し、文献目録の書き方の訂正の指導のための
84人分の時間は、どうやって取ったのか? 本当に、指導したのか? 疑問は
つきない。
要するに、どうみても不可能なのである。これは、専任教員10人分の仕事で
ある。
「イナバ教授」はスーパーマンなのか!
<続く>