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中央学院大学 法学部 専任教員の皆様へ

2013-05-27 00:48:03 | ファンレター

一筆申し上げます。 

 

 若葉の鮮やかな季節、皆様におかれましてはますます御健勝のこととお慶び申し上げます。

ここ暫く、心ならずも何かとお騒がせしてしまい、誠に申し訳ありません。

失礼の段、どうかご海容(かいよう)下さりませ。

 

 さて、いささか唐突ですが、

ドイツ語に „Ohnemichel“ (オーネ・ミヒェル)という言い回しがあるのをご存知でしょうか。

これは〈~なしで〉を意味する4格支配前置詞 „ohne“(英語でいうと „without“)と、

〈私〉„ich“ の対格 „mich“(同様に „me“ )を合成した造語で、

ドイツ人によく見受けられる名前〈ミヒェル〉„Michel“ のもじりにもなっています。

最近は „Ohnemichelei“(オーネ・ミヒェライ)というヴァリエーションも用いられているとのこと。

 

 „Ohnemichel“ を直訳するなら、〈『私なしで』と言う人〉、となりましょう。

ですがこの語が生まれた社会的コンテクストを汲むならば、

〈『俺抜きでやってくれ』『ワタシには関係ない』という態度を(積極的又は消極的に)示す者〉を指す、

と解した方がよいかもしれません。戦後ドイツが再軍備に着手した頃、いわゆる良心的兵役忌避者は、

„Ohne mich!“ をスローガンに掲げつつ、新たなミリタリズムに加担しない意志を表明しました。

他方、体制に与する人たちは彼らをミーイズムの権化(ごんげ)ととらえ、„Ohnemichel“ と

侮蔑的に呼んだのです。

 

 近年では、ヨリ一般的な用法が定着している由。政治参加は言うに及ばず、会社での仕事や

地域における奉仕活動、学校行事や近隣づきあいに際して、

「俺抜きでやってくれ」「ワタシに関係ないわ」と、一切かかわりを持とうとしない人々が居ます。

このように共同体への参画意識に欠ける層を批判する常套句(じょうとうく)として、

専ら „Ohnemichel“ という言い回しが使われているようです。

語用の変遷とは面白いものですね。

 

 „Ohnemichel“ は、己の〈抽象的自由〉に拘(こだわ)るあまり、他者の恣意(しい)すら一種の自由と

看做(みな)し、是認してしまいます。すると人倫(じんりん)は損われ、共同体は危機に瀕(ひん)する

次第となります。もっとも共同体の側でも、そうした事態を予め防ぐべく、様々な教育を通じて

彼らを善導します。それでも更生しない場合、„Ohnemichel“ にもはや居場所はありません。

彼らは疎外(そがい)されます。共同体に対し無関心を決め込む „Ohnemichel“ は、まさしく

その無関心ゆえに、共同体における〈実体的自由〉・人間(ジンカン、と読む:Zwischenmenschの意)

たる自由を享受する主体とはなりえないのです。

 

 ところで皆様のご同輩に、こうした „Ohnemichel“ はいらっしゃいませんか。

 

「経営側から『カリキュラムを改編せよ』とのお達しがあった。だから適当に科目を廃止統合した。

今になって見直せと。ウンザリだ。学部がどうなろうと後は知らんよ。もう俺抜きでやってくれ。

ワタシには関係ない」。

 

「教授会で誰かが『新カリキュラム、いったん白紙に戻して、考え直したら』と発議している。

でも、学部の将来なぞ、どうでもいいや」。

 

「先々の昇格を考えると、教授連に逆らうのは得策ではないし、ワタシの担当している科目には

関係ないわ。それに口はワザワイのもと、っていうじゃない。黙っていようっと」。

 

「何より重要なのは俺たちのコースだ。人事や科目構成を欲しいまま・好き勝手に決められるんなら、

それでいいんだよ。他コース、いわんや学部全体の教育理念なんて、どうでもいいね。

いや、俺たちのコースにとって利益になるように、都合良く変えちまおう」。

 

「スポーツなんたらコースの履修モデルは、やはり法学部として問題だなあ。

とはいえ改善を要求したりすると、俺が属するコースにも横ヤリが入れられるかもしれない。

やはり沈黙は金、キジも鳴かずば撃たれまい、だ」。

 

「外国人非常勤講師を雇い止めした、とは知らなかったわ。それに語学の必修単位を半減させて、

学生の就職は大丈夫かしらねえ。けれど語学の件は、語学部会に任せるしかないわね。

うっかり余計な口でも挟もうものなら…」。

 

「実のところ、俺の本業は学外アルバイトなんだよ。法学部教員という職は、言わば〈名刺代わり〉に

過ぎないんだ。だからさあ、教授会や委員会なんかで煩わせないでくれよ」。

 

 こうしたネガティヴな „Ohnemichel“ は、果たしてアカデミカーに相応しい姿でしょうか。

教授会メンバーとしての当事者意識を欠き、私益のみを優先、学部の将来像に全く関心を持たず、

励むのは自己保身かゴマスリばかり。このような „Ohnemichel“ が、仮に専任教員の大半を占めて

いるとすれば、学部、ひいては大学はどうなってしまうでしょう。

 

 よどんだ水は、じきに腐ります。„Ohnemichel“ の跋扈(ばっこ)を許せば、学部・大学という

知の共同体は沈滞し、退廃し、内側から崩壊するに違いありません。

〈教授の自由〉とは、〈身の周りのことがら以外については無関心でも構わない自由〉の謂(い)いでは

ありません。かてて加えて、〈教授会の自治〉とは、〈教授会の構成員が互いに干渉せずナアナアで

やっていける自治〉を保障するものでもありません。

 

 でも私は中央学院大学法学部に、なお期待をかけています。

 

と言いますのも、法学部専任教員の多くは決して生来の „Ohnemichel“ でなく、これまではただ

一歩踏み出すきっかけがなかっただけのこと、みな各自の活動を通じて学部や大学を良くしていこうと

考えているはず、と信じているからです。

 

 専任教員の皆様の中には、非常勤である私がこうした手紙を差し上げること自体、

不遜(ふそん)である、と思われる向きもあるやもしれません。けれども非常勤とはいえ、

自分が勤務する学部や大学が立派なところであってほしい、という気持ちに変わりないのです。

流れ者の渡世人でさえ、草鞋(わらじ)を脱いだ先には一宿一飯の恩義を感じます。

出入りがあれば、いつでも先頭に立つ所存です。幸い股旅物(またたびもの)とは異なり、

他の大学との抗争や果し合いはありません。

 

 ですが、客分とはいえ、已(や)むに已まれずダンビラを振り回さなければならない場合もあります。

例えば世話になった老親分、これが病気がちで先も長くない、じゃあ一人娘に跡目(あとめ)を

継がせよう、なら子飼いの代貸(だいがし)と一緒にさせようか、との心積もりでいた。

ところがこの代貸ときたら、手前のコトしかアタマにない唐変木(とうへんぼく)、

渡世の義理も丸でわかっちゃいない。こいつが継いだら若衆はのんべんだらりん、

世話になった一家は早晩つぶれちまう。そんな事情が呑み込めた以上、客人の身分を顧みず

「親分、お待ちなせえ」と、口はばったいことも言わにゃあならないでしょう。

分かってくれればそれで良し、さもなきゃ代貸を斬って禍根(かこん)を断つ、と。

 

 非常勤である私が批判し猛省を促しているのは、もとより法学部専任教員の皆様すべてでは

ありません。許せないのは、偏(ひとえ)に〈法学部一家〉を潰しかねない不届き極まる代貸、

あるいはそれに追随(ついずい)しかねない若衆、つまりは „Ohnemichel“ とその予備軍だけ、

なのです。

 

 法学部にとっての „Ohnemichel“ とは、

 

・  自分のコトで手一杯、法学部が直面している問題に少しも関心を払わない者

 

・ 法学部が抱える問題を認識しながらも、自ら改善しようと立ち上がらない者

 

です。またこの亜種として、以下の類も不逞(ふてい)の輩(やから)として俎上(そじょう)に

載せられましょう。

 

・  この期(ご)に及んでもなお、法学部を従来通りのヌルマ湯にとどめようと画策する〈デモシカ教員〉

 

・ 縁故や馴れ合いで専任・非常勤人事を決定し、ために法学部を停滞させる〈獅子身中の虫〉

 

・  昇格を気にしてご注進やゴマスリに励み、大学人として矜持(きょうじ)を喪(うしな)った

  〈茶坊主〉や〈御殿女中〉

 

・ 「学部を良くするため」と〈公益〉優先を謳(うた)いながら、それを口実に〈私益〉を図ろうとする

  〈オタメゴカシの御仁〉

 

・ 学内外で特定の地位を得たいあまり、耳朶(じだ)に快い言辞ばかり周囲に吹聴するが、その実

  なにも行動に移さない、または「行動したけれども上手くいかなかった」との言い訳に終始する

  だけの、〈有言不実行の政治屋〉

 

以上のカテゴリーに当てはまる徒輩(とはい)に対しては、今後ともあらゆる手段を通じ、

厳しく指弾させて頂きます。

 

  でもご休心下さい。私は信じています。

 

法学部専任教員の大半が、真っ当な研究者であり、教育者であることを。

 

法学部の改革を嚆矢(こうし)として、大学に対する世間の評価を高めるべく、

皆様がこぞって力量を発揮して下さることを願って止みません。

 

 思いにまかせ、よしなしごとを書き連ねてしまいました。お許し下さい。

夜も更けてまいりました。またお便り申し上げます。ごきげんよう。

 

かしこ

 

二伸

 先だって大学経営に携わる法人側と接する機会がございました。

案外お話の分かる方々と分かり、拍子(ひょうし)抜けするとともに心強くも感じた次第です。

カリキュラム〈改悪〉がもたらした弊害や教学における不備、さらには有為な人材の不足等、

法学部が抱える諸問題については彼らも一様に深く憂慮しており、

速やかに改善されることを切に望んでいる様子がうかがわれました。

 

ご承知おき下さいませ。