■「サバティカル」
皆さん、「サバティカル」という言葉をご存知かな?
この業界(大学業界)の人間――教員――なら、誰でも知っているが、
業界外の者には知られていない。教員に日々苦しめられている学生や
その保護者も知らないであろう。
サバティカルとは、教員がすべての義務から解放されて、「お休み」
する特権のこと。
ほとんどの大学非常勤講師は、この制度のことは知っているものの、
具体的にどんな制度であるかは知らない。彼らはオヨビデナイ、から
である。すなわち、彼らにはこの権利は与えられていないから、大学
のサバティカル規程を手渡されることもないのである。
サバティカルは、専任教員のみの特権である。サバティカル期間中は、
給与(本俸、賞与等の諸手当)を丸々保障されて、授業等の義務から
解放されるのである。通常、1年間である。
サバティカルの期間は、もちろん自分の研究に使用してもいいし、
遊びまくってもいい。例えば、外国旅行に行くもよし、そこで長期滞在
してもよし。映画・観劇・コンサート三昧(ざんまい)もよし、ゲーム
をやりまくってもよし。はたまた、どこぞの専任教員のように、名古屋
くんだりのピンサロに出かけ、どうせ「ばれまい」とばかりに、
「よかった」等とツイートするもよし。
要するに、時間をどう使おうが勝手なのである。
真面目な専任教員は、この「サバティカル」を利用して、自分の著作
を執筆し、あるいは研究をまとめ、あるいは資料の収集・分析に励み、
あるいは思索にふけるのである。
■中央学院大学の「在外研究員制度」
中央学院大学は、昭和53年(1978年)に「在外研究員規程」を、
平成8年(1996年)に「国内研究員規程」を制定し、以来、多数の教員が
この制度を利用している。
前者は「外国において学術の調査、研究に従事する者」(第1条)に
ついての、後者は「国内において学術の調査、研究に従事する者」
(第1条)についての定めである。
前者の適用を受ける「在外研究員」は、帰国後6カ月以内に報告を
まとめ、学長に提出する義務を負っているが(15条)。しかしこの「報告」
とは、研究成果の報告のことではない。単なる事務的なものであり、
紙っぺら数枚でよし。
要するに、在外研究した成果を論文または著作として出版する等の義務
を全く負っていないのである。
この規程の第1条に「外国において学術の調査、研究に従事する」こと
を目的とすることが書かれているが、この目的は、全く真実味がない。
そらぞらしいのである。
後者の「国内研究員」は、サバティカル終了後1年以内に研究成果を、
論文または著書により公表しなければならないが(規程11条)、この義務
は必ずしも守られていない。というのも、違反の場合の罰則の定めがない
からである。成果の質的問題については、とりあえずとやかく言わないで
おこう。
要するに、「在外研究員」制度にしろ、「国内研究員」制度にしろ、
「研究目的」の制度であるかのように設計されてはいるが、その期間を
どのように使おうが自由であり、この制度を利用する専任教員を、給与を
全額保障して労働から解放する制度なのである。
その点で、使用目的をはじめから問わない「サバティカル」制度と
ほとんど変わりがないのである。
■400万円を別途支給
給与を全額保障されて仕事を丸々1年間しなくていい制度にも驚くが、
「在外研究員」制度にはもっと驚かされる。いたれりつくせり、なのである。
なんと給与とは別に、1年間で最大400万円が支給されるのである。
内訳はこうだ。外国滞在1日に付き1万円の支給。1年いれば、365万円
が支給される。その他、往復の航空運賃、研究費が支給される。ただし
上限400万円だから、この範囲内に収まる額しか支給されない。
■2年も可能
この「在外研究員」制度、1年だけかと思いきや、学長の許可さえ得れば、
もう1年延長することが可能である。
この延長分の1年間も、もちろん給与が全額支給される。しかし、あの
400万円は支給されない。
■李憲模(イ・ホンモ)教授の2年
この制度を利用した専任教員は多数いる。
「在外研究員」と「国内研究員」制度は、それぞれ年間2名ずつ、すなわち
1年に4名が利用可能である。
これまでに、延長して2年間も外国に滞在した教員が複数いる。
最近では、法学部の李憲模教授である。
この教授、法学部の専任教員人事におけるあの雇用対策法10条違反
事件を引き起こした張本人の一人である。この事件は、本ブログで証拠を
挙げて詳細に論じたので、再度読み返してほしい。
厚生労働省千葉労働局から、行政指導を受けるはめになったあの事件、
実は彼が2年の「在外研究」から帰国してすぐに起こした事件なのである。
彼は「在外研究」できることがほぼ決まった頃、当組合委員長の
小林に、うれしそうに、本当は2年行きたい。子ども達を連れて行くが、
英語がしっかりできるようになるには1年では無理だから。1年したら
延長申請をしてみる、旨を語っていた。
行先はアメリカだ。そして、言葉通り、2年滞在した。
親が子供の教育を重視するのは分かる。しかし、ちゃっかり自分の
子どもの英語教育のためにも「在外研究員」制度を利用するとはね!
いやはや!
この大学、なめられている!
本物の研究者が、総額3000万円近い金銭を保障されて、2年間
も研究に打ち込むことができるなら、研究書の1冊ぐらいは書ける。
ところがこの御仁(ごじん)、渡米から約5年後の昨年2017年に、
中央学院大学法学部の紀要である『法学論叢(ろんそう)』に、論文を
1本掲載した。なんとそのタイトルが、「韓国における第20回総選挙の
分析」である。
アメリカ滞在とこの論文はどういう関係があるのか、さっぱり
わからん。韓国の総選挙の分析にアメリカの長期滞在は全く必要ない。
いや彼は、アメリカ滞在の成果の発表を、密かに準備しているのかも
しれない。今後、彼がアメリカの地方自治研究についての大著を発表し、
日本の学界をうならせることを期待しよう!
■サバティカル制度の新設
中央学院大学は2016年に、既存の「在外研究員」制度と「国内研究員」
制度に加えて、新たに「サバティカル」制度を設けた。呆れると
いうか・・・。
新制度は、「研究」とは全く無縁の制度で、ご褒美である。
だから、どう使おうが全く自由な制度である。毎年2名の枠が設けられて
いる。
給与は全額保障されるが、あの外国滞在の場合の400万円のうまみは
ない。
要件が幾つかある。その一つが、申請時の直前5年間に3本以上の論文
の執筆があることだ。この要件をクリアして申請する者が、果たしてどの
程度出てくるか。なにしろこの大学の専任教員は、自分の大学の紀要に
3年に1本の論文の掲載を義務付けられているが、罰則がないことを
いいことに、大半の教員はこの義務を履行していない。
こんなていたらくだから、李教授にもなめられるんだよ!
■職員もサバティカルを要求すべし
研究とは無縁な「サバティカル」制度が専任教員にできたのだから、
中央学院大学の職員組合(組合事務室はあるが、開店休業中らしい)は、
今後、職員のサバティカル制度の創設を要求すべきだ。
これは、正当な要求だ!
勤続10年で1年間の「ご褒美」だ!
これについては、後日また述べよう!
■非常勤講師との待遇格差
読者はすでにお気づきであろう。専任教員と非常勤講師と巨大な格差は、
支給される賃金の格差にとどまらないのである。
非常勤講師には、研究費が支給されない、研究室もない。厚生年金や
私学共済等の社会保険にも入れてくれない(100名程の専業非常勤講師
で加入を認められたのは4~5名)。だからほとんど無年金・低年金
(国民年金に自分で加入し、仮に40年掛金を払っても、年金額は
月額6万5000円)だ。
このサバティカル制度は、まさに専任教員には、大学はいたれりつくせり
であることを、象徴的に示している。