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日本大学の先を行っていた中央学院大学――財政的理由による非常勤講師切り

2018-03-12 10:00:08 | カリキュラム改革
連絡先:mkoskirr@gmail.com

■日大の大量の非常勤講師切り計画

  日本大学本部が、授業科目の2割削減計画を作成し、これに基づいて各学部
 に、非常勤講師担当科目の召し上げや外部委託を行うよう、要するに非常勤
 講師の雇止め(やといどめ=契約を更新しないこと)を行うよう、指令を
 出していたことが判明した。

  3000人の非常勤講師を雇止めする計画だ!
 
  教育的理由からではなく、入学者減少に伴う財政的理由からの計画であり、
 さらには労働契約法18条――有期契約を反復更新して5年を超えた労働者の
 無期契約への転換を認める条項――の適用を阻止するためである。

  非常勤講師担当の1コマを廃止すると、人件費は年間で約40万円の節約に
 なる。

  いや、たった40万円の節約にしかならないというべきか。それでも、経営者
 というのは、教育上の必要性を無視して、1円でも節約するために非常勤講師の
 首を切るのである。その結果、大学教育に支障が生ずることなど、彼らの眼中
 にはない。

  この指令にしたがって、日大文理学部では英語科目の削減が、また設置されて
 間もない危機管理学部では英語科目の外注等が実施されようとしている。

  危機管理学部では、16名の非常勤講師(15名が専業の非常勤講師)の
 雇止めが通告され、首都圏大学非常勤講師組合との団体交渉が行われており、
 この問題は国会でも審議されている。

■かつて中央学院大学でも

  2018年2月13日に、当組合と学校法人中央学院との団体交渉が行われた。
 
  詳細は後日報告しよう。

  その際、当組合は2012年に法学部で審議され、2013年から実施に
 移された「カリキュラム改革」を議題にした。

  この改革により、法学部に5つあるコースのうちの3コースの語学の必修
 単位が、8から4に減らされ、さらに「EU法」等の廃止も決定され、合計52
 コマが「節約」された。

  これにより、何人もの非常勤講師が雇止めをされ、あるいは担当コマ数を減ら
 された。

  その一方で、法学部の「スポーツシステムコース」では、どさくさにまぎれて
 「キッズスポーツ論」「トップスポーツ論」「ライフスポーツ論」等の法学教育
 とは全く無縁な科目が新設された。

  当組合が、このカリキュラム改革は、法人の資金運用の失敗を糊塗する「財政
 再建」のためであり、さらには新学部設置に要する資金の捻出のためであったと
 指摘すると、佐藤英明学長は、非常勤のコマを削っても、たいした節約になら
 ないから、「赤字」や「財政再建」はカリキュラム改革の動機ではない、と主張
 した。

■あんたの目は節穴か?

  日大の例を見ればわかるであろう。財政が問題になれば、非常勤講師切りが、
 一番手っ取り早いのである。たとえ少額でも、すぐにでも節約できるのはこれ
 だからである。

  佐藤学長さん、あんたの目は節穴か? 「倫理学」を授業するのもいいが、
 全国の大学で行われていることや非常勤の解雇・雇止め事件に関する情報を
 もっと集め、自分の頭で考えることが必要では!

  カリキュラム改革に関する理事長指令が、人件費削減による財政再建を
 掲げていたことを、あなたはどう説明するのかね! 

  また、この指令を受けて設置された「財政安定化協議会」主査である常務
 理事が、「コア科目以外」は大胆に削減しろと命じていることを、あなたは
 どう説明するのかね!

  佐藤学長さん、そもそもあなたは商学部長として、椎名学長の下に組織
 されたカリキュラム改革委員会のメンバーであったのでは! 何のためにカリ
 キュラムの改革が行われたのか、よーくご存知のはずでしょ! 


■非常勤講師の人件費のカットは簡単

  さて、一般に人件費は固定費と言われ、景気の変動に左右されない。

  大学の支出の半分以上は教職員にかかる人件費だ。

  ただし、非常勤講師の人件費は、大学の支出の2~3%程度で、微々たる
 ものだ。

  当ブログで何度も指摘しているが、1コマ当たりの授業で比較すると、
 専任教員には、非常勤講師の7倍もの人件費がかかる。

  終身雇用の正規の教職員の人件費を削ることは容易ではない。解雇する
 ことも、給与を削減することも、なかなかできない、法律によって彼らは
 守られているからである。

  しかし、非常勤の教職員の人件費なら、削減は比較的容易だ。彼らの
 ほとんどは1年契約であり、解雇をしなくても、契約を更新しなければいい
 からである。「解雇」ではなく、「雇止め(やといどめ)」というわけだ。

  非常勤講師の抵抗を少なくするには、「カリキュラム改革」を理由として
 契約を更新しないことが一番いい手だ。社会のニーズに大学が応えるために
 必要な改革だ、などと主張すれば、非常勤講師の組合からの「介入」も排除
 できる。「大学の自治」を隠れ蓑(みの)にできるからである。

■中央学院は債券投資で失敗

  学校法人中央学院は、実は2000年代に「資金運用規則」を次々に改訂し、
 リスクの高い債券を購入できるようにしていた。

  こうして投資信託を20数億円買い入れたが―――そのほとんどは外国の
 国公債(ソブリン債という)を内容とする投資信託――、円高に伴って、時価が
 簿価(=購入した時の価格)を下回り、大あわてであった。

  簿価割れは、カリキュラム改革の指令を出した2012年度には6億円を
 上回り、2014年度には、6億9000万円にまでふくれあがった。

  売れば損失が帳簿に現れてしまうため、売るに売れず「塩漬け状態」にして
 いた。売れば責任問題に発展するからだ。

■カリキュラム改革指令

  よほどの危機感を持っていたのであろう、法学部の定員割れを契機に、学校
 法人中央学院は理事長名で、2012年5月に、カリキュラム改革指令を出し、
 法学部教授会に、椎名市郎学長等が乗り込み、「赤字」宣伝を専任教員に吹き
 込んだ。

  いわく、定員割れで大学の財政はたいへんだ。支出の約6割は人件費だ。
 大胆なカリキュラム改革を行え。

  いわく、定員割れは、本学の教育、カリキュラムが、学生や保護者に支持
 されていない証拠だ。だから、カリキュラムの改革が必要だ。

  バカ言え。大学本体の支出に占める人件費の割合は54%程度にすぎず、
 全国の大学の平均値に近く、中央学院大学は「優良企業」だ!

  バカ言え。高校生の大半は、大学のカリキュラムを見て大学を選んでいる
 のではない!

  中央学院大学の当時の定員割れは、カリキュラムと全く無関係である。
 定員割れには様々な要因があるが、椎名前学長のスポーツ大学化政策と、
 決して無関係ではない。

  こうして「赤字」宣伝によって「洗脳」された法学部専任教員は無謀な
 カリキュラム改悪を行った。

  先に述べたように、法学部の外国語教育は破壊され(3コースでの語学
 必修単位は4単位で全国最低!)、専門の法律科目もたくさん廃止され、
 また「スポーツシステムコース」では、法律科目をたった16単位(=4科目)
 取得するだけで法学士となれるようになった(全国唯一!)。

  さらに「現代社会と法コース」では、法律科目を20単位取得するだけで
 法学士となれるようになった。

大学基準協会の指弾

  その結果、2015年には、大学基準協会から、中央学院大学は、教育が
 なっていない――専門的用語でいうと「内部質保証」が不十分である――と、
 指弾されることにあいなった。

  特に槍玉にあげられたのは、法学部の「スポ―ツシステムコース」である。
 法学を学ばずして卒業できるようになっている。法学教育の目標とこのコースの
 目標とは一致していない、との根本的問題を指摘され、改善勧告が出されている。

  すでに法律専門科目を16単位取得しただけの法学士が「生産」されている。

  その責任は、いったい誰がとるのかね!

語学教育を蔑ろにした無法学部の共同幻想:〈公務員100人構想〉

2013-05-23 20:10:14 | カリキュラム改革

 


   本学公式サイトを御覧になった方はもうご存知かもしれない。法学部はその学部教育の目玉として、


以下のごとき「公務員100人構想」を謳い上げている:「本学は、警察官・消防官・自衛官部門で


常に県内上位にランキングされる内定者を出しています。さらに、毎年公務員100名の合格を


目指し、様々なプログラムを用意しています」。


 


 その意気やよし。だが現実はどうか?なるほど大学が提供する「様々なプログラム」として、


〈インターンシップ〉〈キャリアアドバイザー制度〉〈学生支援推進プログラム〉等が設けられてはいる。


これら「様々なプログラム」は、公務員を志望する者のみならず民間企業へ就職を考えている学生に


とって、キャリア養成のうえでなによりの手助けとなろう。また生涯学習センターにも、キャリア・


アップに向けて有用な講座が設置されてはいる。しかしながら、こうしたサービスは主として就職課や


アクティブセンターの主管であり、法学部が学生の就職を支援すべく独自に取り組んでいる


とは言えない


 


 もとより法学部の中には、法制研究室での指導を通じて、公務員試験に合格させるべく熱心に学生の


面倒をみているO講師なども存在する。ただ「毎年公務員100名の合格」とぶち上げるだけの体制を


学部として万全に整えているかというと、これは全くお寒い情況と言うほかない。


法学部の特設サイトには、「資格試験や就職試験のバックアップにも力を注いでいます」との文言も


見出されるが、実際は〈羊頭狗肉〉もイイトコロなのだ。


 


 法律・行政諸科目に関する議論は別稿に譲るとして、さしあたり〈英語〉を筆頭とする


外国語諸科目法学部いかに蔑(ないがし)ろにしているかについて簡便に記したい。


昨今の公務員採用試験において、専門科目は言うに及ばず、一般教養科目「文章理解」、


特に「英語」のスコアが重視されている事実は疑い得ない。


 


 人事院総裁のコミュニケによると、国家公務員総合職採用にあたって、2015年実施採用試験を


めどにTOEFLTOEIC等が導入される運びとなった。


「現行試験にある英文読解だけではオーラル・コミュニケーション(聴解・会話)能力


判定できない」、


TOEFLTOEIC等の英語能力テストで実践的な意思疎通能力を評価したい」、という。


 


では役所の仕事に英語は必要なのか。筆者の後輩である某省課長補佐(旧国I)に事情を聞いてみた。


「そりゃ出来ないと話になりません。いいんじゃないですか、TOEFLの成績を見るのは。


もうとっくの昔から、官庁訪問の際志望者にTOEFLTOEICのスコアを聞いてますよ、当然。


本省だけでなく外局でも、喋れなきゃ、ですからね。税関とか入管なら尚更です。


まあこれからは地方(公務員)でも英語でのコミュニケーション能力は求められてくるでしょう」。


 


 ほほう、もはや英語は必須なのか。なるほど国家公務員の採用試験科目を調べてみると、


総合職だけではない、一般職(旧国Ⅱ相当)の試験にもやはり英語がある。行政職「基礎能力試験」


(全40問必須解答)のうちで「英文」が5問、「専門試験」(16科目80問中、8科目40問を選択解答)の


うち「英語(基礎)」5問・「英語(一般)」5問となっている。


とすると英語を得意科目にすれば「基礎能力試験」に加え、「専門試験」中2科目10問、


つまり専門の4分の1を英語で賄え、合格率もアップする、ということか。


 


 英語が重視されるのは地方公務員試験においても同様である。都道府県や市町村により


形式に多少の違いこそあれ、教養試験「文章理解」に英語が必ず含まれている。筆者が在住する


某県の担当部署に問い合わせたところ、


「グローバルな人材選考の一助とするため、英語の出題比率は将来更に高まると予想される」、


とのことであった。特に地方上級試験は英語の配分が大きいらしい。公務員予備校の講師曰く、


英語出来るようにしておかないとダメ。なぜかって?英文を読むのに時間が


かかっていると、他の問題を解く時間がなくなっちゃうから」。


 


 CGU法学部生にも志望者が多い警察官はどうか。警視庁採用試験を例にとってみよう。


「教養試験」(五枝択一式50題:2時間)のうち「知識分野」の「一般科目」で、


やはり「英語」が課せられている。


 


特筆すべきは、筆記試験のほか「警察官の職務執行に有用な資格経歴等」を認定する制度が設け


られている点であろう。同制度により、「実用英語技能検定(英検):2級以上、:TOEIC 470点以上、


TOEFL〈iBT〉48点以上 〈PBT〉460点以上 〈CBT〉140点以上、国際連合公用語英語検定


(国連英検):C級以上」の資格は、「第1次試験の成績の一部」として加味される


英語能力を証する資格に加点するのは、千葉県警(英検2級以上 TOEIC 470点以上)も同様で


ある。なお警察官にとって、採用時ばかりでなく、将来の昇任に際しても語学(英語)試験が課される


ことは言うまでもない。また外国人の犯罪加害者・被害者処遇事例が激増している今日、


オーラル・コミュニケーション能力の涵養が喫緊の課題となっている、という。


 


 オーラル・コミュニケーション能力が重要であることは、企業にとってはもはや自明の理かも


しれない。財閥系商社に勤務する友人の話では、英語研修へ送り出す若手社員に


TOEICで概ね800点程度の成果を求めるらしい。かなり高いハードルだが、


「それくらい出来ないと海外勤務なんて無理将来の昇進も難しい」。


 


国際ビジネスコミュニケーション協会「企業における英語活用実態調査」(2011年)によると、


我が国の大学7割以上が「就職活動において英語が必要(…)社会で英語力が求められている


から」と考えており、「就職活動生にTOEICスコア600~700点を期待」している。


大学76.7%は「学生の英語コミュニケーション能力を現状よりも向上させたい 」と回答した。


企業側からは、「84.5%が英語を使用」、英語コミュニケーション能力の必要性については


7割が「3年前に比べ「高まった 」との回答を寄せている。


比例して、企業の「77.7%が採用時TOEICスコアを参考」にし、「1/4が新入社員の採用試験で


英語テストを実施」、また7割の企業が「配属・配転の参考」にしているという。


 


 これほど左様に、英語、なかんずくオーラル・コミュニケーション能力大事


なのである。我が中央学院大学法学部は、こうした社会の須要に応じる英語力を、果たして


学生諸君につけさせようと努力しているか?


 


否、逆に法学部にとっては、英語をはじめとする外国語は


〈なくもがな〉、とされてしまったのだ。


 


 昨今の趨勢を考慮するならば、英語を含む外国語の教育に一層傾注すべきであることは


間違いない。


しかしあろうことか法学部は、


偉大なる学部長たる大村芳昭・大先生のイニシアティヴの下で


カリキュラムを〈改悪〉し


主たるコースの外国語科目履修単位を半減させてしまった!


 


即ち、司法コース・行政コース・そしてスポーツなんたらコースは、


従来8単位(これとても十分とは言えないが)満たすべきとされていた外国語の所要単位を、


なんと4単位にしてしまったのである。いやしくも大学の看板を掲げる教育機関において、


たった4単位分しか語学を学ばせないとは何事か!


加えて現代社会と法コースも12単位から8単位へと〈軽量化〉を図っており、必修語学12単位を


課しているのは、ビジネスキャリアコースのみなのである。


 


 学部長たる大村芳昭・大先生は、教育についての所見を折々披露しておられる


(文書にしているものさえある)。それを要約すれば、


 


〈大学ではイタヅラに難しいコトを教えてはイケナイ〉


学生のレベルに合った程度でヨロシイ〉


 


というものだ。大先生の見るところ、CGUの学生には英語教育もムダであり分不相応なのか。


語学履修単位半減に関しては、カリキュラム〈改悪〉に携わった語学教すら


 


「学生さんの負担を軽減させる目的で…」


 


などとノタマっているらしいから、処方すべき薬が見当たらぬ。だが法学部の某教授曰く、


「CGUの学生は、まず一般教養で(公務員試験に)受からない、足切りされてしまう。


英語が出来ない所為だよ」。彼の言が正しいとすれば、


常に県内上位にランキングされる内定者を出して」いる、という法学部の謳い文句も


アヤシくなってこよう。


 


 近時、文部科学省を通じて新学習指導要領が策定された。新要領の特徴のひとつとして


〈言語力〉の重視が挙げられている。言語力育成協力者会議の定義では、〈言語力〉とは、


他者とコミュニケーションを行うために言語を運用するのに必要な能力」を指す。事実、


新要領の目玉とも言うべき高校「コミュニケーション英語Ⅰ」では事物の紹介や対話に、


また「コミュニケーション英語Ⅱ」では報告や討論に、時間が割かれ力点が置かれているのが分かる。


要するに英語教育においては、対話能力やディスカッション能力に示される


発信型オーラル・コミュニケーション能力を育成すること、これが焦眉の急なのだ。


 


 ところが大村芳昭・大先生は、この点を全く理解していない。過日、非常勤講師組合が


団体交渉において法学部長たる大先生に問い質した際にも


 


「コミュニケーションとは、ええ、〈読む・書く・聴く・話す〉の総合的な、


云々…」


 


と、通り一遍にノタマウばかりであった。彼にとっては公務員試験の実情も、就職試験の実態も、


文部科学省の方針も、国際化の趨勢も、別の世界でのハナシなのであろう。


 


  だがこれから社会に巣立ってゆく学生にとって、〈言語力〉、なかんずく


オーラル・コミュニケーション能力が、いかに不可欠なものであるか・・・


 


ああ、大村芳昭・大先生よ、法学部長ドノよ、


語学教育女の子のブロマイド写真ほど関心を惹かぬかもしれない。


だが大学人としての良心がヒトカケラでも残っているのなら、


 


今般のカリキュラム〈改悪〉即時撤回し、


しかるべき手続を無視して雇い止めを通告した英語担当外国人講師2名を呼び戻し


法学部生にオーラル・コミュニケーション能力向上の機会を与えよ


 


それでも「語学は不要」というなら、


もはや〈余剰人員〉化した英語専任教員に引導を渡したらいかが?


 


アホー学部からムホー学部へ。打率1割3分のスポーツなんたらコース

2013-04-21 12:13:57 | カリキュラム改革

これで法学部?〈スポーツシステムコース〉の悲しむべき実態

〈亜法学部〉から〈無法学部〉へ

 

   中央学院大学法学部におけるカリキュラム〈改悪〉、及びそれに伴う法学教育の頽落・〈亜法学部〉化については、これまでも本ブログにおいて再三批判を加えてきた。既に御覧頂いている教職員・学生・OB・保護者の方々には、さぞかしご心痛のことと拝察する。事実、

 

「これほどひどいものとは思わなかった…」

「法律を勉強できないじゃないか」「もはや『法学部』とは言えぬ」

「誰がこんなこと(注:カリキュラム〈改悪〉)をしたんだ!」

「カリキュラムを元に戻すべきだ!」

 

との声も我々のもとに多数寄せられている。また、高等学校で進路指導にあたる教員の一部には中央学院受験を差し控える様アドバイスする動きも見られ、実際に志望校を変更した受験生も居ると聞く。かく多方面で負の効果しか生んでいないのが、現法学部長の主導で実施された今般のカリキュラム〈改悪〉なのである。

 

   近時新たな情報を得た我々は、この問題につき更に分析を加えた。その結果、法学部がヨリ深刻な情況に陥っている事態が判明した。

 

   以下、弊害が最も浮き彫りに現れている〈スポーツシステムコース〉の履修カリキュラムを参考に、〈改悪〉がもたらした問題を摘示したい。まさしくこの〈改悪〉こそ、法学を蔑(ないがし)ろにし、法律系諸科目を履修する義務から学生を〈解放〉し、もって〈亜法学士〉を大量に生産して法学部を〈無法学部〉にしかねない、根本的かつ最大の元凶なのである(時間がない方は最後の「総括」を読むだけでも可)。

 

①〈スポーツシステムコース〉の卒業所要単位数は、他のコースと同じく、総計127単位とされている。卒業して学士号を得るために、法学部生は等しく4年間で127単位以上履修しなければならない。

 

②法学部であるからして、法律系諸科目の履修が当然要求される、と世間の人は思うであろう。

だが〈スポーツシステムコース〉においては、そうしたチマタの先入見に囚われる必要は全くない。

 

③まず、「コース必修科目」として40単位に及ぶ科目の履修が義務づけられているが、純粋に法律系科目として設置されているのは、

1年次配当分は「憲法」・「民法I」・「刑法総論」(各4単位:以下同)

2年次配当分は「民法II

都合4科目ダケである。

 

④しかもご丁寧なことに、このコースの学生に対しては、

1年次配当分で「スポーツ健康科学概論」

2年次配当分で「スポーツ組織論」「スポーツ指導論」

3年次配当分で「スポーツ法学概論」「スポーツ・リスクマネジメント論」

4年次配当分で「スポーツ行政論」

なる怪体な科目群が用意されている。

 

⑤ここまでのまとめ:

本コースで課されている必修科目40単位のうち、

純粋に法律系の科目と言えるのは4科目(16単位)のみしかない。

他の6科目(24単位)は全てスポーツ関係科目である

なんと必修科目の実に6割が「スポーツ」なんたら、なのである!

いやしくも法学徒として、この様な偏(かたよ)った科目構成について一片の疑問も抱かずに

済むであろうか?

 

⑥次いで「コース選択必修科目Aとして様々な科目が指定されている。その中にはなるほど

「民法総則」「刑法各論」など、法律学の科目も含まれてはいる。

学生はこの科目群から4科目(20単位)を選択して履修しなければならない。

 

⑦ところがどういった配慮によるものか、この中にはまたしても

「スポーツ文化論」

「キッズスポーツ論」

「トップスポーツ論」

「ライフスポーツ論」

「スポーツ経営論」

などという、学問的裏づけもアヤシイ諸科目があつらえてある。

 

⑧ここまでのまとめ:

    本コースで課されているコース選択必修科目A20単位を満たすのに、

法律系諸科目を選択する必要は一切ない。なんとなれば、

上記「スポーツ文化論」「キッズスポーツ論」「トップスポーツ論」

「ライフスポーツ論」「スポーツ経営論」5科目を選びさえすれば、

それで5科目×4単位で20単位をまかなえるからだ!

 

  わざわざ好んで〈スポーツシステムコース〉を志望した学生が、

 どうして法律系諸科目を選ぶだろうか。

   「法律系諸科目も、選択すれば必修単位に算入されるから問題ない」、だって?

   学生の選好を勘案すれば、彼らが「スポーツなんたら論」しか履修しないのは自明であろう

 

   学生に配布されている「学生要覧」を見れば一目瞭然であるが、

本コースの学生は3年次以降になれば法律を全く勉強しなくてもイイのだ!

他大学の法学部生の場合、たいていは専門課程に入る3年次から

複数の学説を比較検討したり、判例を読み込んだり、あるいは外国法令を参照したり、

そうした作業を通じて得られた知見をもとにゼミで議論したり・・・。

なのに本学法学部〈スポーツシステムコース〉の学生は、法律の勉強をまるきり課せられていない。

従って六法全書も法律の基本書も1ページも開かなくて済むのだ!

 

   そんな法学部生に誰がした?

   無論、責(せめ)は学生に帰せられる訳ではない。

   こうした姑息な科目選択を許容するカリキュラムに〈改悪〉した、

   現法学部長・大村芳昭大先生とその追随者こそ、法学部の〈墓堀人〉なのだ!

 

「演習科目」を見てみよう。本コースで必修とされているのは

「演習科目」については2単位のみである。

そして案の定ここでも、

1年次配当で「スポーツ学演習I(2単位)

が設けられている。この「スポーツ学演習Iさえ履修しておけば、

学問の基礎や法学を専門的に勉強すべく設置されている「基礎演習」あるいは

「専門演習 I」「専門演習 II」(これらは各4単位)を選択せずとも良い。

演習科目に限って言うなら、2年次以降は法律学と完全にオサラバできるのさ!

 

  まかり間違って、万一「スポーツ学演習Iを落としても心配する必要はない。なぜかって?

2年次から4年次にわたって

「スポーツ学演習II

「スポーツ学演習III

「スポーツ学演習IV

が用意してあるからだ。しかもこれらはみな4単位である。

  法学系の「専門演習」を避ける逃げ道は万全である

 

【特筆大書】

「演習科目」の必須単位は、前述したごとく2単位である。

 その点にのみ着目すれば、

「1年次配当の『スポーツ学演習I』1科目2単位のみが必修として換算されるだけだ」

「これ以外の『スポーツ学演習II『スポーツ学演習III、また『スポーツ学演習IVを履修しても、

必修単位として充てられない」

「従って、いづれにせよ法律系諸科目を履修しなければならない」

「なるほど、一応は法学部として教育的な配慮があるのだな」

と勘違いする向きもあるかもしれない

 

だがそれは早計であり、素人の赤坂見附である。

カリキュラムを〈改悪〉した主犯・共犯・従犯は、そうした善意の解釈を折り込みつつ、

自らの姦計(かんけい)を巧みに偽装し〈無法学部〉化を推進することに成功した!

 

  つまりこういうことである。「スポーツ学演習II「スポーツ学演習IIIあるいは「スポーツ学演習IVを履修しても、なるほど必修単位には充当されない。

 

   しかし、卒業所要単位(127単位)としては問題なく充当される!

   これは何を意味するか?

 

⇒卒業するためにはスポーツ関係科目以外も選択し履修しなければならないけれども、

「スポーツ学演習II「スポーツ学演習III「スポーツ学演習IV」を選択・履修することで、

社会科学系A(後述)に配置されている法律系諸科目、また教養系諸科目(後述)分を履修する

〈負担が軽減〉される

 

⇒その結果、本コースの学生はますます法律系諸科目を履修する動機づけを喪失してしまう。なにせ、スポーツ関係諸科目及び非専門的な教養系諸科目だけで、法学部生として卒業できる

というのだから(この点は重要であるから後述も参照されたい)。

 

⇒かくて、〈健康バカ優良児〉化に拍車がかかり、〈亜法学士〉を大量に社会へ送り出す次第となる。

 

⇒当然、法学部の権威は失墜し、中央学院大学の〈アラフォー化〉・〈ボーダーフリー化〉(Fランク化)が定着するであろう。

 

 

⑩卒業するために必修として残っているのは、

「学部共通必修科目」8単位、即ち「日本語実践」と「情報処理I」(各4単位)だ。

日本人ならば「日本語実践」の単位を落とすことはなかろう。

またこれからはパソコンスキルも何かと求められるから、「情報処理I」も良しとしよう。

 

   加えて「外国語科目」も履修しなければならないが、これとても

1ヶ国語を1・2年で各々2単位、計4単位にすぎない

※今般のカリキュラム〈改悪〉がもたらした歪みのひとつとして、

外国語科目履修単位の大幅削減が挙げられる。国際化や社会のグローバル化が強く叫ばれる

時代の要請に全く逆行する愚挙であるのみならず、〈コミュニケーション・スキル向上〉を訴える

文部科学省の要領に悉く背反する暴挙である。

 

また「教養系科目」20単位履修しなければならないが、これは

「文学」「平和学」「地学」「日本語操作法」「キャリアデザイン」(各4単位)といった、

法律を全然知らなくても構わない科目ばかりだ。

 

のみならず、前記⑨【特筆大書】部分でも強調したごとく、

本来は演習科目の「スポーツ学演習II「スポーツ学演習III」「スポーツ学演習IV」も

卒業所要単位として換算されるから、それほど沢山の教養系科目を履修する必要はない。

 

「スポーツ学演習II」「スポーツ学演習III」また「スポーツ学演習IV」を履修してさえ

いれば、

教養系諸科目でまかなうべき科目数(単位数)のうちから、

これら3科目(12単位)分を差っ引ける

=教養系科目を履修する〈負担〉が、ヨリ少なくなる!

 

残るは「体育科目」5単位だが、これに関しては本コースの学生は問題なかろう。1年次から4年次まで

「スポーツ学実習I

「スポーツ学実習II

「スポーツ学実習III

「スポーツ学実習IV

「スポーツ学実習V

「スポーツ学実習VI

と網羅されている。各1単位のうち、5科目(5単位)履修すればよい。

 

【特筆大書】

因みに体育科目についても、必修単位として換算されるのは5単位までである。では必修化されて

いない「スポーツ学実習VI」を履修することはムダなのであろうか?

 

いやいやそんなことはない。ここでもスポーツの神のご加護が働く。

「スポーツ学実習VI」は、なるほど必修単位として充当できないが、

ヤッパリ卒業所要単位には含まれるのだ!

 

1単位だからと侮るなかれ。折角の深謀遠慮・ご好意を無にしてはならない。その1単位があるか

ないかで、スポーツ学生にとっては〈余計〉で〈負担〉でしかない法律系諸科目・教養系諸科目の

履修義務が減らせるかもしれないのだ。ゆめゆめ忘れることなかれ。

 

総括:

以上、〈スポーツシステムコース〉における科目履修モデルを概観してきた。結論として導かれるのは、

 

○ 本コースの学生は、

法律系諸科目に関しては、「憲法」・「民法I」・「刑法総論」「民法II」の4科目を

履修するだけで卒業できる

(まあ現法学部長ご自身、基本六法を全部挙げられず、シドロモドロになっていたことがあったが・・・)

これで〈法学部卒〉を僭称できるのである。

〈ア法学士〉・〈無法学部〉と言わずして、なんと言えば良いのか。

 

○ もちろん、他の法律系諸科目を選択する可能性こそ閉ざされてはいない。しかし、

 

「コース必修科目」をほぼ「スポーツ○○論」関係で40単位

「コース選択必修科目A」を「スポーツ○○論」関係で20単位

「演習科目」を「スポーツ学演習I」で2単位

 

でこなし、あとは

「教養系科目」で法律に無関係な科目を20単位

「学部共通必修科目」8単位

「外国語科目」4単位

おまけに

「体育科目」5単位

を選択すれば済むところ、

 

スポーツを選好する学生が、わざわざ法律系諸科目を履修するであろうか

 

○もう一度確認しよう。

法学部の卒業所要単位数はどのコースでも127単位である。

だが〈スポーツシステムコース〉という世界においては、

何事も〈スポーツ〉を軸として動くのである。従って、

 

127単位

-40単位:ほぼ「スポーツ○○論」(「コース必修科目」)

     (「憲法」「民法I」「刑法総論」「民法II」の4科目は

      我慢しろ。さすがにこれらの科目まで抜きにしては世間の目がウルサイ。)

-20単位:全て「スポーツ○○論」(「コース選択必修科目A」)

2単位:「スポーツ学演習I」(演習科目)

- 8単位:「日本語実践」「情報処理I」(学部共通必修科目)

- 4単位:「総合英語I」「総合英語II」等(外国語科目)

-20単位:「文学」「平和学」等(教養系科目)

5単位:「スポーツ学実習I」等の5科目(体育科目)

 

=28単位(上記以外の、社会科学系科目Aに区分されている

       科目群で満たすべき単位数)

 

実に卒業所要単位数127単位のうち、

51単位(40%以上)をスポーツ関係科目で、またこれを含め

83単位(70%弱)を非法律系科目で修得できるのである!

 

卒業するためには、残り28単位分のみ、

区分「社会科学系科目A」で埋めさえすれば良い。

この系列に属する科目には、1科目につき4単位が配されているから、

とどのつまりわずか7科目を履修するだけで卒業できる。

 

なお「社会科学系科目A」には、法律系諸科目だけでなく

「経済原論I」「経済原論II」「商学総論」「環境社会学」

「環境経済学」「会計学総論」「経営学総論」「国際経済論」

「貿易論」「簿記原理I」「社会政策」「金融論」「経営労務論」

「経済政策」「財政学」

などが指定されており、これらの非法律系諸科目を選択して

7科目(28単位)揃えても、卒業できる。

しかしまあ、これで法学部と言えるのか?

商学部のマチガイではないのか

 

○いや、まだまだ大事な点を看過しているぞ、

 〈スポーツシステムコース〉の学生諸君!

 君たちには更なる特典が与えられているのだ!

 

 先ほどは〈引き算〉で計算したから特典のありがたみが

 分かりにくかったかもしれぬ。逆に〈卒業まで必要な単位数〉という観点に絞って、

 〈足し算〉で捉え直してみよう。

 

127単位を修得しなければならないのはもちろんだ。しかし、

+40単位:ほぼ「スポーツ○○論」(「コース必修科目」)

       (「憲法」「民法I」「刑法総論」「民法II」の4科目は仕方ない、やはり我慢しろ。)

+20単位:全て「スポーツ○○論」(「コース選択必修科目A」)

2単位:「スポーツ学演習I」(演習科目)

+12単位:⑨で【特筆大書】した

       「スポーツ学演習II」「スポーツ学演習III「スポーツ学演習IV

       の3科目12単位

+ 8単位:「日本語実践」「情報処理I」(学部共通必修科目)

+ 4単位:「総合英語I」「総合英語II」等(外国語科目)

5単位:「スポーツ学実習I」等の5科目(体育科目)

1単位:「「スポーツ学実習VI」の1科目(体育科目)

 

で、総計なんと92単位も稼げるのである!

(「憲法」「民法I」「刑法総論」「民法II」の4科目16単位を除いても76単位だ)

既にこの時点で、法学部の卒業所要単位数の実に約60%が、マトモに法律学を勉強しなくても

得られるのだ

(スポーツ関係では最大64単位、すなわち卒業所要単位127の過半数を取得できるのである)!

 

あとは127単位を満たすべく、この92単位に加えて

35単位とればイイだけだ。座学はだいたい1科目4単位だから、

9科目履修すれば9×4単位=36単位で御の字だ!

 

しかもこれとても、小難しい法律系諸科目に煩わされる必要はない。

「社会科学系科目A」からではなく、法律をつゆ知らずとも構わぬ「教養系科目」設置科目から

9科目を選択すれば済む。

というのも、ゴテーネーニモ、社会科学系科目A」群から単位を取得することは義務付けられておらず、まったく履修しなくてもいいからである。

 

  そのため、「教養系科目」群から、例えば、「心理学」「歴史学(世界史)」「歴史学(日本史)」「文学」

「日本語操作法」「平和学」「地球・自然環境論」「外国文化研究」「キャリアデザイン」などを選択しよう。

これで9科目36単位になる。どの科目も高校で学んだ内容が予備知識として活用できるか、

もしくはナウい(死語)最先端のオシャレなガクモンばかり。やり易いであろう。

 

人間の存在や社会の事象に興味を抱く奇特な者ならば、「哲学」「倫理学」「経済学」「社会学」

「政治学」を選んでも良い。

理系アレルギーでないのなら、「数学」「地学」「自然科学概論」「物理学」「生物学」なんてのもある。

他にも、「判断推理」「言語学」「人文地理学」「文化人類学」

「自然地理学」等が用意されているから、選り取り見取りだ。

 

強調したいのはただ一点、

1年次配当分は「憲法」・「民法I」・「刑法総論」(3科目12単位)

2年次配当分は「民法II(1科目4単位)

の都合4科目ダケを履修しさえすれば、

法学部の学位記がもらえ、法学士サマになれてしまう、という事実である!

 

そうすると、卒業所要総単位に占める法律系諸科目の割合は

更に低く押さえられることになる。

卒業所要単位127単位のうち、わ・ず・か16単位

即ち、あろうことか〈法学部〉を冠した学部組織で、

 

卒業所要総単位に占めるマトモな法律系諸科目の単位数が

なんと13%にも満たない!

 

野球でも、一応ソコソコの打者として認められるのは、打率2割5分以上でしょう?

法学士ならぬ〈亜法学士〉なら、打率(=法学履修率)1割3分でも十分、なのか?

 

つまり純粋な法律科目を大学生活4年間(実際には1・2年次配当であるから

前半の2年間のみ)でたった4科目とるダケで、法学部が卒業できるのである!

 

4年間、ほとんどスポーツ・明けてもスポーツ・暮れてもスポーツ

おめざのスポーツ、腹ごなしにスポーツ、おやすみ前に快眠を誘うスポーツ

+ときどき日本語・コンピュータ、「教養系」(失笑)、そしてスズメの涙ほどの外国語

これで全部、である。

 

古今東西、こんな法学部が存在した/するであろうか?

ああ、しかし我孫子市久寺家には実在するのだ!

 

○最後に重ねて念を押しておく。

 

〈スポーツシステムコース〉の学生は、狡智を働かせれば

4年間の学生生活のうちで

1年次に「憲法」・「民法I」・「刑法総論」3科目(12単位)

2年次に「民法II」1科目(4単位)

計4科目(16単位)さえ修得すれば

あとの3・4年はほぼスポーツ三昧で暮らせるのである!

(1・2年次にしても法律系の講義はわずか4時限だけだ)。

 

 

 

心ある教職員・学生・OB・保護者の方々に注意を喚起したい。

このような体たらくで、果たして〈法学部〉と称してよいのか?

 

法律学に触れるのは4年間のうちで2年(それとてもたったの4時限)、

これでは大学法学部とは名ばかり、実質は4年制大学を騙(かた)った

〈スポーツ短大〉もしくは〈スポーツ専門学校〉

ではないか!

高い学費を払い、貴重な時間を費やして、これで報われるのか?

中央学院における法科の伝統を絶やしてよいのか?

 

〈学士力〉やら〈就業力〉は、本当に身に付くのか?

 

スポーツで活躍したいのなら、素直に他大学の体育学部へ進学することを薦めたい。

でなければ、法学部である以上は法学をみっちり学んで欲しい。心ある教職員はそう願っている。

中央学院・法学部スポーツシステムコースでは、〈虻蜂(あぶはち)取らず〉に終わること請け合いだ。

 

かかる憂慮すべき事態をもたらしたのは、偏(ひとえ)に現法学部長が主導したカリキュラム〈改悪〉

である。この〈改悪〉は法学を学ぶ動機づけを学生から奪い、また真摯な受験生をして中央学院大学をその志望校リストから外させてしまった。

 

今や求められるべきは、人心の一新とカリキュラム〈改悪〉による弊害の除去、即ち

 

法学部を骨抜きにし

実施に至った過程・手続にも瑕疵(かし)が認められる

現行カリキュラムの無条件撤廃

そしてとりあえず

旧カリキュラムの即時回復

 

にほかならない。


寸劇:女神たちのタコ部屋と遁走(とんそう):フィナーレ

2013-04-01 04:41:25 | カリキュラム改革

(承前)

マリアンヌ嬢:けどアタシらはまだマシな方だ。

このカフェ「EU法」の雇われマダムのコト、知ってる?

 

ゲルマニア嬢:エウロパさん?少しばかり耳にしたけど。

 

マリアンヌ嬢:オーナーのムッシュ・チューオーガクインにね、

牝牛(めうし)のごとくさぁ、さんざコキ使われた挙句…。

 

ゲルマニア嬢:…。

 

マリアンヌ嬢:カフェ「EU法」、完全廃業だって!別に店を持たしてくれるのでもなく、

       「ハイ、サヨウナラ」だって!さんざコキ使ってツメタイねぇ。

この稼業では知らない人はいないのに。

 

ゲルマニア嬢:なんでもひと悶着あったらしいとか。

 

マリアンヌ嬢:さすがにムッシュも、オノレの愚かさに気づかされたって。

だってマダムは怖いんだから。なんでも、のりこんでいったらしいよ。

 

ゲルマニア嬢:うかがってるわ。〈大先生〉は一転、カフェの存続を図ったけれど、

皆はシランプリ。

そうよね、自分で廃業の提案をしておいて、

それをまたひっくりかえすんだから、意味不明。

それにあのシドロモドロでしょう、何を言ってるのか…。

近頃流行りの高機能広汎性発達ナントヤラじゃないけど、

全く常人の理解を超えているわね。

 

マリアンヌ嬢:結局、うまくいかなかった。マダムはチョットばかしキツイけど、

店はかなり繁盛してる(注:「EU法」履修者多し)のに…。

それもこれも、ムッシュ・チューオーガクイン、アイツのせいだ!

 

ゲルマニア嬢:被雇用者の〈人権〉を蔑(ないがし)ろにしているわ。

 

マリアンヌ嬢:〈人権〉尊重、とくに〈男女平等〉をウリにしてるクセに、ねぇ。

ソトヅラばっかカッコつけてさ。

 

ゲルマニア嬢:こんな在り様では、職員の方々も、さぞご苦労が絶えないでしょうね。

 

マリアンヌ嬢:アタシ、もうホトホト愛想が尽きたぁ。ゲルちゃん、他にイイオトコ探そ。

 

ゲルマニア嬢:ええ、よくてよ、マリアンヌ。

       ここでは法の蘊奥(うんのう=極意)を伝授すること能(あた)わず、

       ですからね。

いっそ、その方が清々するわ。

 

マリアンヌ嬢:そーだそーだ!ムッシュ・チューオーガクインには、

       スポーツナントカ・ギャルがお似合いだぁ。

 

ゲルマニア嬢:学生さんたちにはお気の毒だけれど、いざさらば。

♪また逢うっ、日まで、逢えーる、とぉーきまでー♪

 

マリアンヌ嬢:ゲルちゃん、そのウタ、古いよぅ…。

 

ゲルマニア嬢:法であれ、歌であれ、継承され続けているものにこそ、価値があるのよ。

       ♪別れの、その訳は、はなーしぃーたぁくなーい♪

 

マリアンヌ嬢:法はともかく、イイ加減、新しいウタも覚えてね…。

 

 

かくて法の女神たちは去った。

代わって新たに主神チューオーガクイン〈大先生〉のゴ寵愛を得たのは、

ステンノー([キッズ・スポーツ論]),エウリュアレー([トップ・スポーツ論])

そしてメドゥーサ(「ライフ・スポーツ論」)の怪物三姉妹である。

彼女らの肉体は美しく、とても魅力的だ。

知を司る女神アテーナーの怒りに触れるまでは。

ああ、学の殿堂・中央学院大学法学部に幸あれかし!

 

<完>

 

知の女神アテーナーよ、はやくキテネ!

 


寸劇:女神たちのタコ部屋と遁走(とんそう):後編

2013-04-01 04:25:19 | カリキュラム改革

(承前) 

マリアンヌ嬢:アジア法の世話してる、腰の曲がった爺やが居るでしょ?

 

ゲルマニア嬢:ええ。

 

マリアンヌ嬢:あの爺や、

       ムッシュ・チューオーガクイン付きの使用人(注:専任教員)なの。

 

ゲルマニア嬢:存じ上げてますわ。

 

マリアンヌ嬢:爺やをアジア法のトコに差し回して、一軒家を管理させてる。

 

ゲルマニア嬢:そうらしいわね。

 

マリアンヌ嬢:ちなみにアタシん家・科目「フランス法」も、

       ムッシュ差し回しの太目のヒトが管理してる。

 

ゲルマニア嬢:わたしのおうち・科目「ドイツ法」は、任に適した方をおソトから呼んで

       (注:非常勤講師を指す)、お手入れさせています。

 

マリアンヌ嬢:へえ。

 

ゲルマニア嬢:お給金はもちろんチューオーガクイン〈大先生〉の払いになってますけど。

 

マリアンヌ嬢:ソコなんだな、モンダイのホンシツは。

       アジア法を捨てると爺やの仕事がなくなっちゃう

 

ゲルマニア嬢:はい。

 

マリアンヌ嬢:だから〈経費削減〉をおダイモクに掲げても、

       科目として「アジア法」を切れないの

       一軒家を構えさせ続けなきゃならないの。

 

ゲルマニア嬢:でも、それは理が通らないんじゃないかしら?

 

マリアンヌ嬢:情において忍びない、ってヤツ?ムリが通ればドーリが引っ込む、かな?

 

ゲルマニア嬢:とにかく理に適(かな)いません。

 

マリアンヌ嬢:家を新築するんじゃなし、

       管理人を学外から非常勤のバイトとして新たに雇うんでもないから、

       余計なオカネは一切かからない。現状維持ってワケ。

 

ゲルマニア嬢:本末転倒だわ。

 

マリアンヌ嬢:世の中、そんなモンよ。

 

ゲルマニア嬢:でもマリアンヌ、あなたのおうち・科目「フランス法」をお手入れしてる

       太目の方も、あちらの使用人(=専任)なんでしょう?

 

マリアンヌ嬢:そうよ。

 

ゲルマニア嬢:「フランス法」の科目を無くしたら、その方、お困りにならない?

 

マリアンヌ嬢:そのヒトは他にも「法学」だの「債権法」だのを管理させられてるから、

       やらなきゃなんないオシゴトは、イッパイあんの。

 

ゲルマニア嬢:どうもそのようね。

 

マリアンヌ嬢:なもんで、アタシん家・科目「フランス法」の面倒みなくてよくなるダケ。

 

ゲルマニア嬢:あら、いいわね。

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ付きのヒト(注:くどい様ですが専任教員です)だからさ、

負担するオシゴトの量が減るダケで、失業の心配は一切ナシ。

まったくオッケー。

 

ゲルマニア嬢:それはなにより。

 

マリアンヌ嬢:あ、代わりに新設される「情報と法」とやらに配転されるんだっけか?

 

ゲルマニア嬢:してみると、チューオーガクイン〈大先生〉付きの使用人でないのは、

わたしのおうち・科目「ドイツ法」のお手入れをしてくれている

ヒゲおじさんだけだわ。

 

マリアンヌ嬢:経費削減対象にはおあつらえ向き。

       外注の非常勤バイトなんかイッパツで切捨て御免さ

 

ゲルマニア嬢:え、どうしてよ?

 

マリアンヌ嬢:これまでは「ドイツ法」・「フランス法」として各々一家を構えていたぶん、

       管理人もベツベツに雇ってお手当てをあげなきゃ、だった。

 

ゲルマニア嬢:おっしゃる通りです。

 

マリアンヌ嬢:でもこれからはアタシらをヒトカラゲにして、

       タコ部屋「外国法(大陸法)」に押し込めるんだ。

       で、管理人はひとりで済むというアンバイ。

 

ゲルマニア嬢:ちょっと待って…。

 

マリアンヌ嬢:イマまでアタシん家・科目「フランス法」の面倒をみてたムッシュ付きの

       太目のヒト(注:しつこい様ですが専任教員です、念のため)に、

       改めてタコ部屋の管理を任せりゃイイってわけよ。

 

ゲルマニア嬢:それが、チューオーガクイン〈大先生〉の思し召しなの?

 

マリアンヌ嬢:ゲルちゃんさ、アンタのトコのヒゲおじさん、もう用済みだよ。

「大陸法」ってくくりも、案外それを見越してるのかも

 

ゲルマニア嬢:まあ非道(ひど)い!だいたい、「フランス法」を管理してきた方に

「ドイツ法」のお手入れが務まる、と本気でお思いになって?

 

マリアンヌ嬢:それについては「適当でいい」と言われたらしく、

当人も面食らってる様子だって、うわさが流れているわ。

 

ゲルマニア嬢:なんですって!!

 

マリアンヌ嬢:使用人の寄り合い「教育戦略委員会」で、そういう発言があったってさ。

 

ゲルマニア嬢:ウソでしょ?

 

マリアンヌ嬢:疑うんなら、その委員会とやらの議事録でも見せてもらえば?

 

ゲルマニア嬢:シャイセ(=クソッ。ドイツ語)!ああ、ごめんなさい。

でも許せない(憤怒)。

 

マリアンヌ嬢:アタシだってオカンムリさね。

 

ゲルマニア嬢:ドイツ法やフランス法の精髄を知りもしないくせに、身の程知らず!

 (つづく)トえ、イ学部なのに法律科目を削減しつつ止した)と聞いたわねぇ。」


寸劇:女神たちのタコ部屋と遁走(とんそう):中編

2013-04-01 04:23:27 | カリキュラム改革

(承前) 

ゲルマニア嬢:ほかの外国法科目はどうなるの? 

 

マリアンヌ嬢:外国法、ねぇ…。

 

ゲルマニア嬢:大学基準協会の審査を受けたあと、法学部は報告書をまとめてたけれど。

 

マリアンヌ嬢:あぁ、ネットでも公開してるアレね。

 

ゲルマニア嬢:あそこでは〈外国法の拡充〉が明確に謳われていたはずよ。

 

マリアンヌ嬢:バカだねぇ。所詮(しょせん)ヨソ様向けのお体裁(ていさい)、

額面通り受け取ってちゃダメだよ。

 

ゲルマニア嬢:まあ、をついたのね。

 

マリアンヌ嬢:外国法カンケイで残るのは、

       「外国法(英米法)」と「外国法(アジア法)」、

       それにさっき言ったようにアタシらが同居させられる、

       「外国法(大陸法)」

       都合この3つダケ

 

ゲルマニア嬢:曲がりなりにも法科の看板を掲げていて、

       あまりに少なすぎるんじゃありません?

 

マリアンヌ嬢:ったく、これで〈外国法の拡充〉とは聞いてアキれるわぁ。

 

ゲルマニア嬢:英米法が残るのは、もっともな気がします。

       ジョン・ブル卿とアンクル・サム氏、どちらも押しがきくから…。

           (注:ョン・ブルとは、擬人化した架空の人物で、英国人一般を指す。

            アンクル・サムとは、同じくアメリカ〈合衆国〉人一般を指す)。

       でもその、アジア法って何ですの?

 

 

マリアンヌ嬢:ああ、アジア法ねぇ(苦笑)。

 

ゲルマニア嬢:ヤーパンの法を学ぶ上で必要不可欠な外国法体系を分けるならば、むしろ

       「外国法(英米法)」「外国法(ドイツ法)」「外国法(フランス法)の

       3本立てでいくべきでしょうに!

 

マリアンヌ嬢:ゲルちゃんは事情をよく知らないから、そう思うのも仕方ないねぇ。

ムッシュとあのコ、アジア法は腐れ縁なのよ。

 

ゲルマニア嬢:差し支えなければ、どんな娘さんなの?法学の世界では聞きなれないわね。

 

マリアンヌ嬢:まぁ、アタシらみたいに一本スジが通ったコじゃあないわね。

       アタシたちフランス法やドイツ法には、アンタ風に言えば、

       固有の法典・歴史・思想・方法論があるけど、

       アジア法、あのコには、ない(キッパリ)。

 

ゲルマニア嬢:それなのに?

 

マリアンヌ嬢:中身がないぶん、あのコはイロイロ取り繕ってアピールしてるんだ。

 

ゲルマニア嬢:お化粧がお上手なの?

 

マリアンヌ嬢:中国・台湾・韓国、マレーやらシンガポール、フィリピンなんかの憲制で

       ゴテゴテ厚塗りしちゃって、ひとかどのオンナを気取ってるんだ(苦笑)。

       独り立ちもできないのにねぇ。

 

ゲルマニア嬢:(サエギル様に)お待ちになって!中台韓の法体系はヤーパンの法を

継受したもの、サカノボッテ突き詰めれば、我がドイツ法の影響下にあると

見るべきでしょう?

 

マリアンヌ嬢:アンタがそう言うんなら、そうなんでしょ。

 

ゲルマニア嬢:それに旧英米植民地諸国の法は、敢えて言うなら英米法のお仲間かしら?

 

マリアンヌ嬢:たぶん。

 

ゲルマニア嬢:マリアンヌ、あなたの領分であるフランス法なら、そう、ヴェトナムね。

       ヴェトナムって、おフランスの植民地だったのでしょう。

 

マリアンヌ嬢:まあね。

 

ゲルマニア嬢:ともかくアジア法さんは統一した法体系や思想をお持ち合わせでない様ね。

 

マリアンヌ嬢:ソリャソーヨ。まぁ一種のゴッタ煮ね。

 

ゲルマニア嬢:講義は成り立つのかしら?

 

マリアンヌ嬢:あのコはイマも独立した科目「アジア法」として、一家を構えてるよ。

 

ゲルマニア嬢:で、ちゃんとなさっているの?

 

マリアンヌ嬢:大学では前・後期合わせて30回講義があるけど、あのコのトコでは

       各国にだいたい3回分割り当ててお茶を濁してるってさ。

       実際、それでも時間を持て余してるカンジだけど。

 

ゲルマニア嬢:ならば「外国法(アジア法)」という科目名は、〈羊頭狗肉〉ではなくて?

 

マリアンヌ嬢:ぶっちゃけ、そうだね。

 

ゲルマニア嬢:そうした実情に眼をつむって、「外国法」の下に「英米法」や「大陸法」と、

       その「アジア法」を並置するのは、バランスがとれないし、

       平仄(ひょうそく)が合わないじゃありませんか!

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ・チューオーガクインは、法のナンタルカを知らない(笑)。

 

ゲルマニア嬢:笑い事でなくてよ。鼎(かなえ)の軽重が問われる、あるまじき所業だわ。

 

マリアンヌ嬢:それでいてムッシュは、ナントカの一つ覚えみたいに

       「アジアは大事だ!」っていうのよ。

 

ゲルマニア嬢:かつての大陸ローニンみたいね。

 

マリアンヌ嬢:イマならさしづめ、市民運動オバサンだね、ああした口ぶりで語るのは。

       ふだんはウンともスンとも言えずに黙りこくってるだけなのに、ねぇ。

 

ゲルマニア嬢:アジア法さんは、西アジアの〈イスラム法〉は扱わないの?

 

マリアンヌ嬢:そういや、むかし「イスラム法」ってコも居たねぇ。

 

ゲルマニア嬢:あらそうなの?チューオーガクイン〈大先生〉の守備範囲は広いのね。

 

マリアンヌ嬢:ムッシュは彼女にも、御同様に一軒家をあてがってたんだ。

けど、ここ暫くご無沙汰で(注:ずっと閉講扱い)、

今般とうとう引導を渡した(注:科目廃止決定)、と聞いたわ。

 

ゲルマニア嬢:多情なのか薄情なのか…。

 

マリアンヌ嬢:アンタが言ったように、節操がないんだ。トーゼン、知恵もないけど。

 

ゲルマニア嬢:彼はアジア法さんと今後もお付き合いするつもりなの?

 

マリアンヌ嬢:ムッシュは元来ケチなんだから、ホントならあのコともスッパリ縁切りゃ

       ヨカッタんだ。

 

ゲルマニア嬢:ふうん。

 

マリアンヌ嬢:近頃じゃ「スポーツなんたら」とかいう氏素性のアヤしいギャルたちにも

       オネツ上げて。

 

ゲルマニア嬢:なにそれ?

 

マリアンヌ嬢:3人も抱え込んじゃった挙句(あげく)、

       それぞれ一軒づつ家をこさえてやった、って。

(注:「キッズ・スポーツ論」「トップ・スポーツ論」「ライフ・スポーツ論」

 3科目の新規設置を指す)

       

ゲルマニア嬢:まあ、おさかんだこと。お体にさわらないのかしら。

それにしても、ずいぶん経済的に余裕があるのね。

 

マリアンヌ嬢:抱えるのには、金に糸目をつけないってコトね。

 

ゲルマニア嬢:〈大先生〉ご当人はナントカのひとつ覚えみたいに〈経費削減〉って

口を酸っぱくしてわめいてるのに、なんなの。

わたくし、訳が分かりませんわ。

 

マリアンヌ嬢:アジア法を切らずに残すのも、

       ゲルちゃんとアタシを「外国法(大陸法)」のタコ部屋に追いやって

       「ドイツ法」と「フランス法」を一緒クタにするのも、

       みんなタクラミがあるのよ。

 

ゲルマニア嬢:!?

(つづく)


寸劇:女神たちのタコ部屋と遁走(とんそう):前編

2013-04-01 03:36:17 | カリキュラム改革

 ドイツとフランスが統一?

「外国法(大陸法)」という不可解な科目設定の非合理性を衝く!

 

寸劇:女神たちのタコ部屋と遁走(とんそう)

 

はじめに(解説):

        2013年度より、これまで別個に開講されていた法学部専門科目

「ドイツ法」並びに「フランス法」を、

「外国法(大陸法)」

          として統合する新カリキュラムが施行される。

 

          ドイツ法は、日本の憲法・刑法に大きな影響を与えた。

          フランス法は、日本の民法に大きな影響を与えた。

 

 両法は、ローマ法に由来するものの、固有の歴史と法体系を有しており、

一つの講義に同居させるというのは、前代未聞の珍事である。

 

我が国の法学部において、かかる素っ頓狂な科目編成は他に例を見ない

 

 この所業は、「財政再建」の掛け声の下、現法学部長を旗頭とした法学部の素人集団、

(法律とは無縁の語学:5名、体育:2名、自然科学:1名、教職科目:2名)の大半と、

これに付和雷同する若手・中堅教員の大半によってなされたものである。

 

 法学部教授会の総数は27名程度であるが、まさに法律の何たるか、法教育の何たるかを

知らない者による暴挙としか言いようがない。

 

  なお責められるべきは、自らの経営・教育戦略の失敗を省みぬまま、

 

 「財政再建」のために「カリキュラム改革」を実施せよという珍妙な通達

 

           発した、理事会に陣取る

 

吉椎三(即ち吉野理事長・椎名学長・三友常務理事の御三家)であろう

 

 もとより見識ある法学部長であれば、こうした事理を弁(わきま)えない通達なぞ一蹴し、学の殿堂を擁護してしかるべきである。

 

 にもかかわらず現法学部長は、その使命を放棄し、かえって法学部の「・法学部」化

 

一層進めてしまった

 

 彼の罪業は、教育水準の低下それに伴う向学心に富む志望者の減少等、由々しき悪影響をもたらしかねない。

 

この意味で現法学部長たる〈大先生〉は、

大学崩壊を招く元凶であり、中央学院にとってまさに獅子身中の虫である。

 

 

登場する女神

ゲルマニア嬢:   女神。ドイツ法の化身。

マリアンヌ嬢:   女神。フランス法の化身。

 

言及される神および人物

チューオーガクイン:法の世界を総(す)べる主神?

俗世では「中央学院大学法学部」又は「同学部長」の形で顕現する。

斯界では〈大先生〉として振舞い、ウィキペデイア上で知らない者はいない。

両嬢のパトロンである。本編には登場せず、両嬢の語りを

通してその在り様が明らかにされる。 

 エウロパ     :ゼウスが略奪したテュロスの王女(ギリシャ神話)。

           英語表記では Europe〈ヨーロッパ〉。

           本編には登場せず。

           落ちぶれて、天界のカフェ「EU法」を切り盛りする

           年増(としま)の雇われマダムとなった。

 

〈ある昼下がり、天界のカフェ「EU法」にて〉

 

ゲルマニア嬢:どうもマリアンヌさん、ごきげんよう。

 

マリアンヌ嬢:あらゲルちゃん、しばらくぶりねぇ。すこぅし太った?

ラインのほとりでジャガイモばっかり食べてちゃダメよ。

 

ゲルマニア嬢:マリアンヌ、あなたのようにクロワッサンだけでは、ね。

 

マリアンヌ嬢:アタシのカラダにはこれがイチバン合ってんの。あと、セーヌの水もね。

 

ゲルマニア嬢:ところで最近お変わりなくて?

 

マリアンヌ嬢:オオアリのコンコンチキよ。

       アタシらのパトロン、ムッシュ・チューオーガクインのタクラミ、

       まだ聞いてない?

 

ゲルマニア嬢:ええと、なにかしら?

 

マリアンヌ嬢:ムッシュの〈法世界・再創造計画〉(注:法学部カリキュラム改悪)よ。

 

ゲルマニア嬢:詳しくはまだ何も…。

 

マリアンヌ嬢:彼、ゲルちゃんとアタシとにめいめい呉(く)れてた一軒家

(注:カリキュラム上で独立した科目としての位置づけ)、

イマになって取り上げるんだとさ。

 

ゲルマニア嬢:なんですって!?

 

マリアンヌ嬢:もう「外国法(大陸法)」ってフラット(=アパート)を借りて、

ソコにアタシらを同居させる腹づもりよ。

 

ゲルマニア嬢:わたしのおうち(注:独立科目「ドイツ法」)と、マリアンヌ、

あなたのおうち(注:同「フランス法」)は、一体どうなるの?

 

マリアンヌ嬢:イマんトコはソノママだけど、おっつけ解体(注:科目統廃合)される運び。

 

ゲルマニア嬢:無節操極まりない遣(や)り口ね(激怒)。でも、それ本当なの?

 

マリアンヌ嬢:そ、メンドーな段取りはもうみんな済ませて、早けりゃ3年後かな、解体。

 

ゲルマニア嬢:そもそも「大陸法」ってくくり方、いささか乱暴じゃありません?

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ自身、テキトーだから(笑)。

 

ゲルマニア嬢:ドイツ法とフランス法は、共にローマ法を継受しているけれど、

       各々固有の歴史を経て発展してきた法体系なのに…

       (悲憤慷慨:ひふんこうがい)。

 

マリアンヌ嬢:アタシら、性格も違うしタマにケンカするけど、

       お互いにイイトコとワルイトコ認め合ってて、

       なお「オノレの道をゆく」って間柄だもんね。

 

ゲルマニア嬢:ええ、まさしくその通りだわ。

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ・チュウオーガクインは、ソコんトコが分かってないんだ。

 

ゲルマニア嬢:あなたのフランス法、ことにナポレオン法典に見られる市民法精神は、

ボアソナード先生を通じてヤーパン(=日本)の法形成にも思想的な影響を

随分与えたのに…。

 

マリアンヌ嬢:そうねぇ(遠い眼)。

 

ゲルマニア嬢:わたしのドイツ法にしても、ヤーパンが憲法や刑法をこしらえた時分には

       色々と尽力したはずなのに…(サメザメ)。

 

マリアンヌ嬢:ゲルちゃん、泣くのはお止しよ。

       アイツにとっては外国法や基礎法なんて、ドーデモいいんだ。

 

ゲルマニア嬢:え?

 

マリアンヌ嬢:なにせ「比較法」や「法社会学」も廃止する、ってんだからさ。

 

ゲルマニア嬢:あんまりだわ。

 

マリアンヌ嬢:ムッシュ曰く、「この程度の大学には実定法だけで十分」なんだと。

       学生さんがカワイソウだねぇ。

       でもアイツ、エラぶってる割りに、基本六法に何法が含まれてるんだか、

       答えられない

       (注:コレ実話。憲法・民法・刑法しか挙げられず、商法・民訴・刑訴を

 知らなかった)。

(つづく)トえ、イ学部なのに法律科目を削減しつつ止した)と聞いたわねぇ。」


<狂言(1)>、ナニコレ珍カリキュラム

2013-03-18 14:45:13 | カリキュラム改革


     狂言 ナニコレ珍カリキュラム

登場人物
隠居(じつはアラブ・イスラム学者ラインハルト・ドーズィー*)
太郎冠者
次郎冠者




隠居  このあたり、我孫子の田舎に住む隠居者でございます。

     もともと外国に生れて、それなりに仕事もしてきた身なれど、縁あって数十年前、ニッポンはこの我孫子の地に居つき、老いの日々を送っております。今日は日和もよく、のんびり散歩でもいたそうと出てきた次第でございます。

     さて、おつきの太郎冠者、次郎冠者はどこにおるかの?…あれあれ、あんなところで二人、なにかを奪いあって騒いでおる。これこれ、太郎冠者、次郎冠者、なにを騒いでおる?

太郎  これはこれは、旦那さま、お出かけでござりますか?

次郎  これはこれは、旦那さま、お出かけでござりますか?

隠居  見ればわかろうというもの。今日は日和もよい、ひさしぶりに散歩でもいたそうと思うてな、これから日の暮れるまで歩いて参ろうというところじゃ。

     おまえたちも来なさい。だが、いったいなにを騒いでおったのじゃな?なにか、奪いあっておったようじゃが?

太郎  はあ、これでござります。

隠居  なんだな、…「法学部科目表」とな?はてさて、どこぞの大学のカリキュラム表か… 学生でも先生でもないおまえたちに、こんなもの、関わりもあるまいに。

次郎  ところがところが、これが大事なんでござります。

太郎  わたくしめにも。

隠居  はて。まさか、殊勝にも大学なんぞに通って勉強でもしようと思い立ったか?

太郎  まさかまさか、さような時間の無駄はいたしませぬ。

次郎  わたくしめも同様。太郎はともかく、もとより頭のよいわたくしめ、話のメリハリもつかぬ蟹の泡吹きみたいなおしゃべりで時間を潰す教授でいっぱいの場所で、1時間半もぶっとおしでお尻の痛くなるイスに座って日がな一日無駄に暮らすのなんぞ、まっぴら。

隠居  それはもっともながら、では、どうしてそんな表を奪いあうことになったのかの、とんとわからぬな。

太郎  それなんでござります。

     この表が、なんと、ふつうの大学の科目表とはまったく違う、頓狂な珍妙な代物でござりまして、世にいうトンデモもの、天上天下、めったに出会えないブットビ物件ということで、これはなんとしても、あのギネスブックに登録しよう、そうすればわたくしめ太郎の名前も永遠に記録されるものと、まあ、そんなふうに思いまして…

隠居  ほお、そうかの?なんぞ変わったところもないように見えるがの?

次郎  いやいや、旦那さま。よ~くご覧になれば、ほんとうに飛んでもない代物でございまして…

隠居  よ~く見ると飛んでもない…とな?だが、ずいぶん小さい字で書いてあるのお。飛んでもない代物かもしれぬが、この細かい字を読んでいかないとわからないのでは、難義じゃのう。

太郎  きっと大学もそれを承知の上なんでございますよ。小さい字なもんだから、人はあんまりちゃんと見ない。そこが狙い目なんでございますな、きっと。

隠居  ふむふむ。というと、なにか、あんまり注目されては困るようなことが書いてあるのかの?

太郎  そうも言えますな。なにせ、大学ですからな。

次郎  そうですとも。「だって、大学だもん」ですかな、相田みつを風にいえば。

隠居  とにかく、わたしはあんまり読んでみる気にもならんが、次郎、こんなものをどうして太郎と取りあっておったのかな?

    太郎は、ほれ、さっき言っておったが、ギネスブックに登録しようとやらで、…

次郎  そうなんでございます。太郎のやつめ、ギネスブックに持ちかけて、自分の名を歴史に刻もうと目論んでいるんでござります…

隠居  まあ、目論むというほどの大事でもあるまい。ちょっとしたお遊びの気持ちであろうが…

次郎  ところがでございます、わたくしめにもテレビ局に知り合いがおりましてな、『ナニコレ珍百景』という番組に関わっている者でございますが。

    まあ、酒なんぞいっしょに飲む時には、その者からいつもネタを求められておりまして、採用されたら幾らいくら出すぞ、どんどん持ってきてくれ、と言われておるんでございます。

    この科目表は建物でも風景でもないけれど、ナニコレ珍システムとかナニコレ珍カリキュラムとでもいったもので、こいつぁ報酬いただきだぁ、と思いまして… 明日にでも渡せば、ちょうど番組づくりの〆切に間にあう頃合いでございまして…

太郎  まったく、意地汚いやつなんでございます、次郎は。はした金のために、わたくしめがギネスブックに掛けあうのを待ってくれろとウルサイんでございますよ。とんでもない。

    ひろい世界にはどんどんトンデモ大学、トンデモシステム、トンデモカリキュラムが出現してきかねないんでございますから、こっちだって急いで登録しなきゃいけません。

次郎  なにをいうか、こんなヘンテコリンなカリキュラム、めったに出てくるもんじゃない、ギネスのほうは急ぐことはないから、まず、こちらによこせと言うに。

太郎  どうして、どうして、なるものか。ギネスが先だ。

次郎  つべこべ言わずに、ええい、渡せ、渡せ。

太郎  なるものか、なるものか。

隠居  ほ~らほら、待ちなさい。どちらも見苦しいぞ。

    だいたい、おまえたちが言うほど、本当に珍妙なものかどうか。ちょっと説明してみなさい。ただ、あんまり細かい話も困るな、散歩の時間がなくなるからな。

太郎  いやあ、珍妙、頓狂の山盛りみたいなカリキュラム表なんですがな、…そうですなあ、旦那さま、旦那さまご自身が外国のお方ですから、まあ、いちばん関わりがおありと思えるお話をいたしましょう。

    外国語のことでございます。

隠居  外国語のこととな?

次郎  そうだ、その話がよろしかろう。外国語、外国語。

隠居  で、外国語がどうだというのかな?

太郎  それでございます。ここのところをご覧になってくださいな。

隠居  んんん、細かい字だなあ。ちょっと読めぬ。どうもな、老眼でな。

太郎  では、かいつまんでお話いたしますが、まあ、こんなふうなのでございます。

    ここの法学部にはコースがいくつかあるんでございますが、いちばんスゴイところだと、なんと、4単位だけ外国語をとればいい、っていうんでございます。    

     4単位といいますと、授業ふたつでございます。一年生でひとつ、二年生でもうひとつ。これでOKってなわけでして。

隠居  ほおお。外国語の勉強というのも難儀なものではあるが、大学ではふつう、避けて通れぬ試練と決まっておるもの。

    ふたつの授業だけでOKとは、また、大きく出たのお。


次郎
  そうなんでございます。

    4単位でOKっていうのは、「司法」コース、「行政」コース、「スポーツシステム」コースなんでございます。

隠居  ふ~む。「司法」とか「行政」とかのコースに進もうという学生は、その、なんじゃろうな、やはり、「司法」とか「行政」に寄った方向の仕事をしたいと…思っているんじゃないのかの?

太郎  ま、実際にはどんな仕事に就くか、人生いろいろゆえ、わかりませぬが、それでも、「司法」や「行政」方面に進みたいからそういうコースを選択する、というのがふつうでしょうな。

隠居  それで、そういう方面には外国語の勉強経験は不要とな?

次郎  そんなはずはございません。どんな方面に行こうと、ひょんなところから外国語の必要が飛び出してくるご時世でございます。藪から棒ならぬ藪から語でございます。

隠居  ハッハッハ、ヘタな地口を言っておる。

    ところで、「スポーツシステム」コースとやらは、なんじゃな?

太郎  これがなんだか、一人前に独立したみごとな珍妙さでございまして、だいたい、「システム」なんていう言葉をぺラッと看板にのせる商法にロクなものはございませんが、これが、法学部にどうしてあるんだか、まったくもって珍妙度の高いギネスブックものじゃないですか、「法学部・スポーツシステムコース」ってんですからね。

    じゃあ、なにかい、「法学部・無国籍キッチンコース」とか、

    「法学部・ペットケアコース」とか、

    「法学部・リラクゼーションアロマコース」、

    「法学部・VIPスペシャルうっふ~んコース」なんてのもありかい、ってんだ。



隠居  ふ~む。お好み焼きが広島焼きになった以上の進化を遂げておるわけじゃな

    …ま、それでも、他のコースはもっと外国語をやらされるんじゃろう?

次郎  そうですな、まあ、かたちのうえでは。

     たとえば、「現代社会と法」コースは8単位、「ビジネスキャリア」コースは12単位を選択必修しなくちゃいけない、ってことで。

隠居  多いとはいえないが、それならば、まあまあではないか?

次郎  それがしかし、…違うんです。細工があるんです。

隠居  細工?

次郎  はい。英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語のうちから、いまお話した8単位とか12単位とか、さっきの4単位とかを選ぶわけですが、そのなかの総合英語ⅠとⅡの計4単位を取得しさえすれば、あとは、教養系科目の単位として他の外国語を取ってOKよ、というわけで。

隠居  総合英語ⅠとⅡに、学生たちはいやでも誘導されるわけじゃな。

次郎  そうでございます。

隠居  ま、英語の勉強だから、それはそれでもいいが。…しかし、総合英語の担当者たちと他の外国語の担当者たちのあいだには、最初から、科目存続の安定性のうえで格差が出るわけじゃな?

次郎  おっしゃるとおり。

太郎  それだけではないんでございます。資格英語Ⅰ・Ⅱ、および、ビジネス英語Ⅰ・Ⅱをセットで取得したら、その取得単位を教養系科目に振り替えてよいぞよ、ともあるんでございます。

隠居  ふ~む。セットでお得、という手法で、資格英語とビジネス英語の科目存続もあらかじめ安定させておこうと、な。

     こんなふうに誘導されれば、たいていの学生たちは総合英語Ⅰ・Ⅱを取って、それから資格英語とビジネス英語もそれぞれⅠとⅡをセットで取る、となって、他の外国語にはあまり学生が流れなくなるであろうのう。

     カリキュラムのこの部分を組んだのが英語教員だというのが、なんとも露骨に見えるようじゃな。

次郎  そうなんでございます。

     数年のうちに、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語の授業など、学生数が激減して消滅するのなぞ目に見えております。

     学生の向学心を疑うものではござらぬが、なにせ、単位のこととなると、どうしても学生は易きに流れますからな。

太郎  まあ、外国語科目と教養系科目の枠の取っぱらいを目指しているんでしょうかの。

     だんだんと枠を溶ろかして、全廃して、最後には外国語科目を教養系科目に統合し切る。

     そうすれば、勉強の面倒なわりに、取得できる単位数の少ない外国語科目を選ぶ学生はごくわずかか、完全消滅するでしょうから、外国語を学ばないでいい大学が自ずとできあがっていく、というあんばい。

隠居  なんだか、外国語のぜんぜんできない教員が、偶然と幸運とゴマスリと泣きつきとお友だち人事から、どうにかこうにか潜り込んだ巣穴(=大学)を、もっと自分たちに居心地のいい場所にするために、必死で外国語排除策を進めているようにも見えるが… 

次郎  そうでございますな。外国語アレルギーなんじゃないでしょうか?

太郎  外国語だけでなく、勉強アレルギーなんじゃないですかね? 

     少なくとも、論文アレルギーは蔓延しているようでございますからな、この大学。

     何も書かない。何も足さない。ちょっと前のサントリーの広告みたいですな。「何も引かない、何も足さない」って。


次郎  ははは、「引く」ことだけはやってるようだが。能力なんかは。

太郎  いや、「引かない」をやっているとも。もっと給料引いてやるべきなのに、ぜんぜん「引かない」。

次郎  なんだか、『葉隠』みたいな連中らしいものなあ。

    「武士道は死ぬことと見つけたり」ならぬ「教授道は学ばぬことと見つけたり」。

     あるいは「教授道は書かぬことと見つけたり」

隠居  う~む。なんだか裏寂しい知的風土ぞな。

     減らしたとはいえ、英語はとにかくやれ、という方針はいいとしても、大学のあいだにもうひとつやふたつぐらい、他の外国語の初歩に触れておかないと、薄ら寒い精神風土のニッポン人ができあがりそうだのう。

次郎  まったくそのとおりで。

     それが、旦那さま、このカリキュラム表の大学というのが、ほかならぬ我らが我孫子の、あの中央学院大学なんでございます。あそこの法学部の2013年からのカリキュラムなんでございますよ、これ。
隠居  どうりで、近頃、我孫子がうすら寒くなったと思っておった。

     放射能で以前より暖かくなったかと思ったが、どうしてどうして、放射能の内部被曝にも負けぬ寒さじゃわい。

     外国語というものは、さっきのシステムという言葉を使わしてもらえば、比較的完成された閉鎖系システムで、その基礎を学んでみるというのは、将来的に、他のいっそう複雑なシステム学習に益するシナプスの発達を促すに決まっているものなんじゃがな。

     そういう脳の成長の契機を減らしていく大学というのは、いったい、どういう見識を持っているのか、なんともアヤシイものじゃよ。

太郎  旦那さまは、むかしはずいぶん外国語がお出来になって、そのおかげで立派なお仕事をなされたとか?

隠居  こうやっておまえたちと話しておる日本語も、わたしには外国語じゃがな。

次郎  まことに恐れ入りまする。わたくしめなぞ、外国語はてんでダメなほうでして、…いっそ、中央学院の総合英語Ⅰ・Ⅱにもぐり込もうかと思うぐらいでございます。

太郎  おまえなんぞがもぐり込んだ日には、授業が邪魔されてしょうがないだろう。ABCだって知らないんだから…

次郎  いやなに、ほとんどの学生が受験などしないで入ってくるそうだから、英語の苦手なままの学生だって、なかにはいっぱいいるだろう。そこに紛れ込めば、わかるまいよ。

太郎  まあ、やってみるさ。社会人がもぐり込むのを許可してくれる授業もあるそうだから。

     …ところで、旦那さま、くわしくお聞きしたことはございませんでしたが、どんなことをむかしなさったんで?

隠居  なあに、ちょっとした偶像破壊をやらかした程度のこと…

次郎  と申しますと…

隠居  あれは、わたしがまだ29歳の頃のこと、1849年のことじゃったが、他のいくつもの外国語に加えて、得意ではあったものの、それでも苦労に苦労を重ねて学んだアラビア語で読みまくった史料を駆使して書いた論文を発表したんじゃが、あれがヨーロッパの知的風土を一挙に揺るがしたことがあったんじゃ。

太郎  どんなことをお書きになったんで?

隠居  エル・シドという有名なスペインの英雄がおるんじゃがな。

     コルネイユが『ル・シッド』という戯曲を書いたり、中世文学では『エル・シードの歌』というのもあるが、イスラム勢力と闘った勇士で、スペインをキリスト教国家として創り上げ、レコンキスタの前哨戦を飾ったというふうに祭り上げられている人物じゃ。

     スペイン国家の統合のシンボルで、国民的英雄となっておるんじゃが、ありゃあ、じつはインチキじゃな、とわたしは目星をつけ、そうして調べに調べて研究した結果、やっぱりインチキでした、と、そんな論文を書いたわけじゃ。

次郎  それは、なんというか、ヒンシュクものってやつですかな?

隠居  ヒンシュクを受けない研究など、ゴミと同じじゃ。

     まあ、エル・シドというのは、実在した傭兵隊長ロドリーゴ・ディアスを元にしている人物像だが、このロドリーゴが、調べてみたら、英雄とは程遠く、金に汚ない、日和見の、忠誠心も愛国心もない打算家だったのがハッキリとわかったのじゃ。

     しかも、カトリックというよりはムスリムというべき男なので、レコンキスタ以後のスペインの英雄に祭り上げるには、これほど不向きな男もいない。そういうことがよくわかった。

     まあ、スペイン人たちは怒った、怒った。

     弱冠29歳の、なにを隠そう、わたしはオランダ人じゃが、ひとりの生意気な外国人が、スペインの歴史上の伝説的な英雄、偉人をポキンと折っちまったんだから。

     わたしは天才だと持てはやされたものだったが、しかし、そんなことより、哀れだったのはスペインじゃったよ。弱冠29歳の青年学者に真っ向から打って出るだけの学者が、たったのひとりもあそこにはいなかった。

     わたしは古典期から現代までのアラビア語が出来たし、もちろん現代スペイン語も中世カスティーリャ語も出来、ラテン語もギリシャ語もペルシャ語も出来た。オランダ人として、それらを一から習得したわけじゃ。

     それを土台にして、どうもおかしいナと感じていたエル・シドの伝説の欺瞞性に、厖大な資料の調査と読解を通して挑んだわけじゃ。

     国民的英雄をこんなふうに素っ裸にされ、偶像破壊されても、当時のスペイン人たちには、わたしを凌駕するだけの外国語の使い手もいなかったし、外国語を駆使しつつ、伝承の欺瞞に迫れるような学者もいなかった。

     もちろん、中世期のアラビア語やカタルーニャ語の史料にじかに当たって、エル・シド伝説の擁護ができるような能力のある学者たちもいなかった。

     まだ若かったし、個人的な矜持(きょうじ=プライド)もずいぶんあったのは事実だが、あの時、わたしはつくづく思ったものじゃ。外国のこんな若造に反論もできないような学力や語学力の人間ばかりの国とは、なんと、侘しいことよ、と。こうなっては、国は終わりじゃな、と。

太郎  まったく、おおせのとおりでございますな。

次郎  しかし、かつてのそのスペインと同じことが、どうやらニッポンでは起こりそうな気配…

隠居  なあに。この国の知的好奇心の旺盛さは捨てたものではなかろう。

     要請もあるし、これからもどんどん知は隆盛していくじゃろうが、そんな未来に、この中央学院大学の卒業生も混じって生きていかねばならないのじゃから、他人事ながら、いかにも哀れに思えるのう。

太郎  肩身が狭いでしょうなあ、きっと。

     外国語ばかりか、あらゆるところに単位が取りやすい配慮がなされていて、その分、確実に未発達な頭脳を抱えて、知的に旺盛な他の大学の卒業生たちに混ざっていくことになりますからな。

     単位の上での楽勝大学は、人生上の未来で楽勝を保証してはくれないでしょうからなあ

     …そういえば、イスラム法の授業が廃止されたことはお聞き及びですかな?

隠居  なんとな!

太郎  まあ、長年、開講しない状態が続き、あって無きがごときイスラム法ではありましたが…

次郎  それだけではございません。

    外国の法についての2013年のカリキュラムいじりというのも、まあ、スゴイもんでございまして。

     もともと比較法、英米法、ドイツ法、フランス法、イスラム法、EU法、アジア法とあったものが、2013年からは、なんと、外国法(英米法)、外国法(アジア法)、外国法(大陸法)に統廃合されたんでございます。

太郎  EU法と比較法なんぞの廃止は、現代世界の動向に意固地に背を向けての、みごとなまでに思いきった措置ですな。

    学問的閉じこもりとでも言うんでしょうかな、こういうのは。

     こうした統廃合についてはひと悶着もふた悶着もあったんでございますが、なんせ、カリキュラムを作っているのがシロウト集団の委員会でして、それをクロウトのふりをしたシロウトまがいが、教授会でボーヨーと通しちまうものでございますから、たちが悪い。


    そんなヒトビトが指導部なんでございますよ、この大学は。

隠居  岸田秀という心理学者がむかし書いておったのを思い出すのう。

     「現代社会での最大の問題は、無能な上司を組織からいかに排除するかだ」と。

     ま、「無能」と言っているのは岸田秀なわけで、わたしは彼の言葉を思い出しただけなんじゃが。

     …うん、逆の意味の発言も思い出すのう。

     「幕僚にとって最大の喜びは、自分より優れた指揮官に仕えることである」。

     これはドイツ国防軍陸軍中将ハンス・シュパイデルの言葉じゃったが。

     …まあ、ともかくもじゃ、そういう珍妙なカリキュラム変更に批判は出なかったのかのう?

太郎  非常勤講師組合からは出たようですが… なにせ、非常勤講師というのは、今の日本の大学では…

隠居  メッテルニヒが言っておったのう、「オーストリアでは人間は男爵から始まる」と。

     「大学では、人間は専任講師から始まる」らしいからのう

太郎  恐ろしいことでございます。

     大学という場所は、隠微な人種差別が大手を振ってはびこっている場所でございますからな。

隠居  いやはや。「物を云ふことの甲斐なさに/わたくしは黙して立つばかり」。

     こんな感慨を抱かされるのう。これは宮沢賢治の詩『野の師父』にあるが。

次郎  どうやら、大学には、キング牧師がなおも必要でございますな。

    「I have a dream that one day,…」という、あれ。

太郎  あの人は、ほんと、いいことを言いましたな。

     「どんな場所にある不公正も、あらゆる場所の公正さへの脅威である

   Injustice anywhere is a threat to justice everywhere」とか、

     「問題になっていることに沈黙するようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める

  Our lives begin to end the day we decide to become silent about things that matter」とか。

隠居  そのとおりじゃ。

     しかし、非常勤講師組合はなかなか頑張っておるようだな。

     『エコノミスト』元編集長だったビル・エモットが、「本当のリベラリズムとは、権威を公然と疑う自由によってこそ人びとは幸せになりうる、という信念のことである」と言っておったが、この精神を貫徹しておる組合らしいな。

     彼らには、ロバート・ケネディの言葉も贈ってやりたいわい。

     「新しいアイディアや冒険に恐れおののき、人類共通の問題に無関心を装い、今日の生活に満足し切っている人間には未来などない」とな。

次郎  いやあ、威勢よくなってきましたなあ。

     ところで、旦那さま。いつも旦那さまとお呼びするばかりですが、お名前は、じつはなんとおっしゃるのですかな?

隠居  わたしか、わたしはラインハルト・ドーズィーという。1820年の生まれじゃ。

太郎  とおっしゃいますと、はて、現在は…193歳、ですか?

隠居  そうは見えんかな?

次郎  見えるもなにも、…ご高齢とは見えますものの、さすがにそれほどのお歳とは…

隠居  驚くにはあたらない。ここは『大鏡』の国。

     あの本では、190歳の大宅世継と180歳の夏山繁樹とが、藤原北家や道長を軸として宮廷の歴史を縷々と語るではないか。

太郎  ううむ。『大鏡』とは… 知らなんだ…

次郎  話にも聞いたことがござりませぬ。

隠居  これはこれは困ったことじゃ。

     どれ、中央学院大学には、外国人留学生用の「日本語科目及び日本事情に関する科目」とやらも準備されておるようじゃから、ひとつ、そこにもぐり込んで習ってきたらよかろう。どうじゃ?

太郎  いや、旦那さま、それが… 日本事情Ⅰ、Ⅱ、Ⅲは各授業、ひとつひとつで4単位も取れ、しかも「専門教育科目の教養系科目への単位の振り替えを認める」とあって、留学生がごっそり集結している場所。もぐり込めますことやら。

次郎  しかも、この大学の最近の留学生は日本語のわからない者が急増しておるそうでございまして、専門科目の講義をする教員たちも、なんだか言葉の通じぬ外国の広場で演説でもしているような気分だそうでございます。

隠居  やれやれ、次から次とわけのわからぬ問題の尽きぬ大学じゃわい。

     それなら、近頃、いちじるしく頑張っておる角川ソフィア文庫の「ビギナーズ・クラッシック日本の古典」のシリーズでも読んでおきなさい。なかなか勘どころを心得たいい作りをしておる。

太郎  でも、本を買って読むなんて、面倒でございますなあ。

次郎  インターネットのウィキペディアなんかでもようございますかの?

隠居  ああ、あれか。あれでもいいが、かえって難しく書かれておることもあるから、どうかのう。

     いろいろと、質や目論見の点でもまちまちなのが交ざっておるらしいしのう。

    法学部長の大村・大先生みたいに、自ら略伝やら業績やらを載せてプレゼンしてしまう輩もおるところだそうだし…

太郎  旦那さま、彼こそは、現代のエル・シドでございますかな?

隠居  いやいや、エル・シドほどの大物ではあるまい。

     打算、名誉欲、虚栄心… そんなものには長けておるようじゃがな。小粒のプチ・シドロモドロ、といったところじゃろうて

    なあに、必要とあれば、またわたしが虚偽の仮面を剥いでやろうというもの。

次郎  いやあ、旦那さま、うまいところへ話が落ち着きましたな。

隠居  うむ。それでは、我孫子散歩を続けるとしようかのう。


                終


*ラインハルト・ドーズィーは実在した人物。
Reinhart Pieter Anne Dozy (Leiden, Netherlands, 21 February 1820 – Alexandria, Egypt, 29 April May 1883) was a Dutch scholar of French (Huguenot) origin, who was born in Leiden. He was a scholar of Arabiclanguage, history and literature.
http://en.wikipedia.org/wiki/Reinhart_Dozy