2006年度――「スポーツと法」コースを新設
法学部に「スポーツと法」コースが新設されたのは、2006年度である。
当初、このコースは、その名称にも表れているように、「スポーツ」と「法」との関連を追究するコースとして設置された。
そのため、「スポーツと法」コースは、法学部内のコースとしておとなしく振舞っていた。すなわち、卒業所要単位135のうち、A群から20単位、B群から16単位、合計、最低限36単位の法律科目を取得しなければ、卒業できなかった。
その他にも、専門科目群(C群、D群、F群、G群)からの取得単位数が決められており、法律学、政治学、法制史に関わる諸科目や、行政学、地方自治論、財政学、経済原論、模擬裁判演習等から20単位の取得が義務付けられていた。このうち、財政学と経済原論は法律・政治・行政関係科目とはいえない。
両者を合計すると56単位となる。財政学と経済原論で8単位を取得するとしても、最低48単位は、法律・政治・行政科目で履修・取得しなければならなかった。これは、卒業所要単位135単位の約3割5分にあたる。
一方、最大限取得可能なスポーツ関係科目の単位数は48であり、卒業所要単位数(135)に占める割合は約3割6分であった。
このように、法律・政治・行政関係科目で取得すべき単位数(48)が、最大限取得可能なスポーツ関係科目の単位数(48)と同じであり、単位数から見るならば、当初の「スポーツと法」コースは、「法とスポーツのあり方を検証する」という設立の趣旨にかろうじて引っかかっていた。
ただし、教育内容が、実際に「法とスポーツのあり方を検証する」ものになっていたかについては、別途検証が必要である。
2010年度――名称を「スポーツシステム」コースに変更
2010年度に、「スポーツと法」コースは、名称を「スポーツシステム」コースに変更したが、カリキュラムの内容に変更はなかった。
しかし、いまから思えば、これは2011年度の「改悪」の布石であった。
2011年度――「亜・法学部」化
2011年度には、大きなカリキュラム改革がなされた。法学部内の5コースに共通する改革は、卒業所要単位を135から127に減らしたことである。
「スポーツシステム」コースの重要なカリキュラム改革の内容は、以下のとおりである。
第一に、法律科目の必修単位を一気に20単位(5科目)に減らしたことである。
すなわち、これまでは、A群の20単位に加えて、B群の法律科目の中から、選択して16単位を履修・取得しなければならなかったが、この16単位を、「スポーツ健康科学論」(4単位)、「スポーツ学演習Ⅱ」(4単位)、「スポーツ学演習Ⅲ」(4単位)、「スポーツ学演習Ⅳ」(4単位)で取得することを可能にしたのである。
これによって、「スポーツシステム」コースでは、法律科目は一年次に、「法学」、「憲法Ⅰ(人権)」、「刑法総論」、「民法Ⅰ」の4科目16単位、二年次に「民法Ⅱ」の1科目4単位、すなわち合計20単位取得すれば、<法学士>という学位を取得することが可能になった。
第二に、法律・政治・行政・経済・商学・経営等のオカタイ社会科学系の科目の入った「社会科学系科目A」(新設)から履修・取得すべき単位が、0とされたことである。
これによって、「スポーツシステム」コースの学生は、卒業するのに必要な不足分の単位を、わざわざ社会科学系科目から取る必要はなくなり、教養系科目で取ればよくなった。
なお、最大限取得可能なスポーツ関係科目は、これまでと同じく48単位であり、変更はなかったが、卒業所要単位が135から127に減ったため、卒業所要単位に占めるその割合は、約3割8分に上がった。
要するに、2011年度のカリキュラム改革によって、法学部内に、「法」とはほとんど無縁のコースが出来上がったということである。我々が「亜・法学部」化と呼ぶ現象である。
2013年度――「無・法学部」化
そして、2013年度のカリキュラム改革である。
法律科目の必修単位数はさらに減らされ、わずか16単位(すなわち4科目)となった。
さらに、スポーツ科目として「キッズスポーツ論」「ライフスポーツ論」「トップスポーツ論」を新設したため、また「スポーツ健康科学概論」を必修科目に格上げしたため、スポーツ関係で取得可能な単位数は64単位になった。
こうして、卒業所要単位127に占める法律科目の必修単位の割合は、わずか1割3分となり、最大限取得可能なスポーツ関係科目の単位数が占めるその割合は、5割を超えることになった。
「スポーツシステム」コースは、もはや「法律学」とはまったく無縁のコースであり、「社会科学」ともまったく無縁のコースである。これを、「無・法学部化」と言わずして何というべきであろうか!?
このようなカリキュラム内容を持ったコースは、体育学部内のコースと見まごうばかりである。
「改革」に潜む意思
2006年度以降の『学生要覧』を比較しながらこのブログを書いていると、この変化――改悪――は、明確な意思、意図に基づいて行われているのでは、と思うようになった。
特に、2011年度のカリキュラム改革時には、他の4コースでも科目群の大きな再編が行われ、コース所属の専任教員は、討議、検討等に忙殺されていたことであろう。
それゆえ、まさか「スポーツシステム」コースで、このような「アホー学部」化が進行していたとは、気づきもしなかったことであろう。
これに味を占めた「スポーツシステム」コースの専任教員は、2013年度のカリキュラム改革では、他のコースの専任教員からクレームが出ないことをいいことに、わずか16単位の法律科目の履修で、<法学士>の学位を取得できるようにした。
これは、明らかに悪乗り、いや周到な計画に基づく行動である。
スポーツ教員の後押しで法学部長になった大村芳昭・大先生には、この異常さが理解できないらしい。いや、理解できても行動に移せないのであろう。団交の席で当組合がこの異常さを指摘しても、大村・大先生ほとんど沈黙を続けている。
(「スポーツシステム」コースが肥大化し、このコースの学生が増えれば増えるほど、大村・大先生の掲げる「公務員100人化構想」などというのは、絵に描いた餅になる。だか、この点は後に述べることにしよう。)
したがって、大村・大先生には何も期待できない。法学その他の社会科学を専門領域とする心ある専任教員が、正常な法学部に戻すことを期待するほかない。