外国人非常勤講師2名の雇い止め
2012年10月上旬、法学部長大村芳昭・大先生は、長年、法学部に勤務してきた外国人非常勤講師(英語)のAさんとBさんに、2013年3月31日をもって、雇い止め(=首切り)をすることを通告した。
理由として、2013年4月1日から実施されるカリキュラム改革が挙げられた。
当組合は、大村芳昭・大先生が外国人非常勤講師2名に雇い止めを通告したとの情報を得て――この情報は、2012年10月12日の団体交渉において、椎名学長が当組合に明らかにしたものである――、2012年11月27日の団体交渉において、この問題について問いただした。
すなわち、この雇い止めは、人事権を有する教授教授会(教授、准教授および専任講師によって構成される教授会とは異なり、教授のみによって構成される)の決定を経たものか、雇い止めをする非常勤講師の人選は正しく行われたものかをただしたのである。
だが、大村芳昭・大先生は、しどろもどろで、まったく回答しなかった。組合側は、手続きが間違っているので、翌日(11月28日)に予定されている教授教授会において、手続き違背を理由にいったん雇い止めを撤回することを、またこの外国人非常勤講師2人に「菓子折り」を持って行き、謝罪するよう要求した。しかし、彼はまったく反応しなかった。
当組合は、再び2013年3月6日の団体交渉において、この点を質問すると、大村芳昭・大先生は、2012年11月28日の「教授会」に、2013年度の担当教員と担当科目を記した一覧表を提出し、一括して承認を得た、と回答した。
当組合は、さらに2013年4月30日の団体交渉において、人事権を有するのは「教授教授会」であるので、外国人非常勤講師2名の雇い止めには、手続き違背の疑義があることを指摘した。
顧問弁護士の「パフォーマンス」
すると、「待ってました!」とばかりに、学校法人中央学院の顧問弁護士・柴谷某は、2012年11月28日の「教授教授会」に提出された資料――2013年度に担当を外れる講師名とその科目名を記したもの――をかざして、雇い止め手続きは「教授教授会」において正しく行われたと主張した。
組合側が、コピーしてよこせと主張すると、柴田某はこれを拒否し、裁判所での彼のお得意のパフォーマンスらしく、反対側に座っている組合員のところに(法廷では、相手側証人に対する反対尋問をするときのように)ズカズカと寄って来て、体をすりつけんばかりに立ち、資料の「現認」を迫った。
しかし、資料を差し出すその手は、わなわなと震えていた。そんなに興奮してどうする!
ここは、裁判所の法廷ではなく、団体交渉の場だ。はき違えるな。また、「現認」は、この問題のクライマックスのシーンでもないよ、弁護士さん!
まったく愚かとしかいいようがない。
なぜなら、弁護士でありながら、最高裁の雇い止め法理や労働契約法19条に思いを馳せることができないからである。毎月、高い顧問弁護士料をもらっている弁護士として、法人にアドバイスをするなら、事前に、単に形式的な手続きに瑕疵がないことを確かめるのではなく、最高裁の雇い止め法理、労働契約法19条に違反していないかを確かめておくべきだったからである。
ところが、なすべきことをせず、形式手続き上の瑕疵がないことだけを確かめて、有頂天になり、ここぞとばかりに「パフォーマンス」を行ったのであろうが、かえって、弁護士としての能力の欠如を露呈させてしまった。せっかくの「パフォーマンス」は、無様なものとなった。その後、彼の出番はまったくなく、沈黙していた。
2012年11月28日の「教授教授会」の承認を得る1ヶ月半以上も前に、2人の外国人非常勤講師に雇い止めを通告すること自体が、すでに手続き違背である。
最高裁の雇い止め法理
雇い止め法理とは、有期労働契約であっても、仕事の恒常性・臨時性、更新の回数、雇用期間、使用者の言動等を総合的に判断して、期限の定めのない労働契約と同視できる状態で存在しているため、雇用が続くという労働者の期待を保護すべきだと考えられる場合には、合理的な理由がない限り、雇い止めすることはできないという法ルールである。
中央学院大学の非常勤講師は、ほとんど、この法理の保護を受けることができる状態にある。
この法理は、最高裁の判決によって確定したものであり、昨年の「労働契約法」改正の際に、19条に盛り込まれ、この改正条項は2012年8月10日から施行されている。
「クライマックス」
さあ、ここからが「クライマックス」だ!
当組合は、この2013年4月30日の団体交渉において、以下の事実を挙げて、外国人非常勤講師2名の雇い止めは、回避すべきだったことを指摘した。
すなわち、2013年度の英語の専任教員の担当コマ数は、中畑繁8コマ、市川仁8コマ、柴田5コマである。
中央学院大学の専任教員の義務的担当コマ数は、5コマであり、それ以上を担当した場合は、給与・ボーナス・諸手当(総額1200~1300万円)の他に、「超過コマ手当」が別途支給されることになっている。
「超過コマ手当」は、1コマ当たり、月額1万円弱であるが、自分の職場に週3日来る際に、ついでにやる「アルバイト」としては、実に効率がよい。移動・往復のための時間が特に必要ではないからである。
中畑繁、市川仁の二人は、合わせて6コマを超過し、もちろん、「超過コマ手当」を得ている。
彼ら2人がしがみつく「学内アルバイト」のこの6コマを、いや4コマでもいい、これを2人の外国人非常勤講師に与えれば、雇い止めは簡単に回避できたはずだ。
中畑繁、市川仁のご両人よ、あんたがたは、実にあさましい。「学内アルバイト」代を稼ぐために、非常勤講師2人の首を切るとは、何たる所業ぞ!
専業非常勤講師の圧倒的多数は、アルバイト代を稼ぐために仕事をしているのではないぞ。家賃を払い、光熱費を払い、おまんまを食べるために仕事をしているのだ。子どもがいれば、教育費の捻出に始終、頭を痛め、そして、自分の老後のことは、あえて考えないようにしているのだぞ!
また、昨年まで雇用されていた英語担当の非常勤講師5人(外国人3人、日本人2人)のうち、なぜ、外国人2人を雇い止めにしたのか、人選にも大きな疑義が生じている。だが、この点は、後日とりあげることにする。
引き続き雇用されることになった日本人非常勤講師2人には、それぞれ3コマが、外国人非常勤講師1人には2コマが割り当てられた。しかし、ここでも、この3人にそれぞれ2コマずつ割り当てれば、2コマが余る。これを外国人非常勤講師1人に与えれば、1人の雇い止めを回避することができたはずである。
要するに大村芳昭・大先生は、語学部会(構成員4名。昨年度、英語担当の教授は中畑繁1名のみで、この中畑が事実上、決定権を握っている)から上がってきた外国人非常勤講師2名の雇い止め案に、何の疑問も感じることなく(いや、中畑や市川が8コマを担当するという表が、教授会等に提出されていたのだから、気づいていたに違いない)、「教授会」および「教授教授会」に提案し、了承を得たのである。
社会的役職からの放逐の必要性
大村芳昭・大先生は、中央学院大学の法学部で法学部長を務めるかたわら、現在、我孫子市の「男女共同参画審議会」の座長も務めており、男女平等社会の実現のために努力しているそうである。
過去には、千葉県の「男女共同参画計画策定作業部会」の委員、第二東京弁護士会の「司法におけるジェンダー問題諮問会議」の委員、内閣府の「家族とライフスタイルに関する研究会」の委員等も務めたことがあるそうである。(ウィキペディアにおける自作の宣伝を参照のこと)
その一方で、最高裁の雇い止め法理および労働契約法19条を無視し、外国人非常勤講師2名の雇い止め(=首切り)を、当組合の反対にもかかわらず強行した。(英語科目での雇い止めに際して、外国人のみが選択されていることを見れば、人種差別撤廃条約違反の疑義さえ出てくる)。
当組合は、外国人非常勤講師2名の雇い止め(=首切り)は回避すべきであり、やろうと思えば回避できたことを、上述のように具体的に指摘したが、大村芳昭・大先生からは、反省の言葉は一切聞かれなかった。いやはや、たいした御仁だ。
このような仮面をかぶった人間は、学界からも、社会的役職や公職からも、放逐する必要がある。