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語学教育を蔑ろにした無法学部の共同幻想:〈公務員100人構想〉

2013-05-23 20:10:14 | カリキュラム改革

 


   本学公式サイトを御覧になった方はもうご存知かもしれない。法学部はその学部教育の目玉として、


以下のごとき「公務員100人構想」を謳い上げている:「本学は、警察官・消防官・自衛官部門で


常に県内上位にランキングされる内定者を出しています。さらに、毎年公務員100名の合格を


目指し、様々なプログラムを用意しています」。


 


 その意気やよし。だが現実はどうか?なるほど大学が提供する「様々なプログラム」として、


〈インターンシップ〉〈キャリアアドバイザー制度〉〈学生支援推進プログラム〉等が設けられてはいる。


これら「様々なプログラム」は、公務員を志望する者のみならず民間企業へ就職を考えている学生に


とって、キャリア養成のうえでなによりの手助けとなろう。また生涯学習センターにも、キャリア・


アップに向けて有用な講座が設置されてはいる。しかしながら、こうしたサービスは主として就職課や


アクティブセンターの主管であり、法学部が学生の就職を支援すべく独自に取り組んでいる


とは言えない


 


 もとより法学部の中には、法制研究室での指導を通じて、公務員試験に合格させるべく熱心に学生の


面倒をみているO講師なども存在する。ただ「毎年公務員100名の合格」とぶち上げるだけの体制を


学部として万全に整えているかというと、これは全くお寒い情況と言うほかない。


法学部の特設サイトには、「資格試験や就職試験のバックアップにも力を注いでいます」との文言も


見出されるが、実際は〈羊頭狗肉〉もイイトコロなのだ。


 


 法律・行政諸科目に関する議論は別稿に譲るとして、さしあたり〈英語〉を筆頭とする


外国語諸科目法学部いかに蔑(ないがし)ろにしているかについて簡便に記したい。


昨今の公務員採用試験において、専門科目は言うに及ばず、一般教養科目「文章理解」、


特に「英語」のスコアが重視されている事実は疑い得ない。


 


 人事院総裁のコミュニケによると、国家公務員総合職採用にあたって、2015年実施採用試験を


めどにTOEFLTOEIC等が導入される運びとなった。


「現行試験にある英文読解だけではオーラル・コミュニケーション(聴解・会話)能力


判定できない」、


TOEFLTOEIC等の英語能力テストで実践的な意思疎通能力を評価したい」、という。


 


では役所の仕事に英語は必要なのか。筆者の後輩である某省課長補佐(旧国I)に事情を聞いてみた。


「そりゃ出来ないと話になりません。いいんじゃないですか、TOEFLの成績を見るのは。


もうとっくの昔から、官庁訪問の際志望者にTOEFLTOEICのスコアを聞いてますよ、当然。


本省だけでなく外局でも、喋れなきゃ、ですからね。税関とか入管なら尚更です。


まあこれからは地方(公務員)でも英語でのコミュニケーション能力は求められてくるでしょう」。


 


 ほほう、もはや英語は必須なのか。なるほど国家公務員の採用試験科目を調べてみると、


総合職だけではない、一般職(旧国Ⅱ相当)の試験にもやはり英語がある。行政職「基礎能力試験」


(全40問必須解答)のうちで「英文」が5問、「専門試験」(16科目80問中、8科目40問を選択解答)の


うち「英語(基礎)」5問・「英語(一般)」5問となっている。


とすると英語を得意科目にすれば「基礎能力試験」に加え、「専門試験」中2科目10問、


つまり専門の4分の1を英語で賄え、合格率もアップする、ということか。


 


 英語が重視されるのは地方公務員試験においても同様である。都道府県や市町村により


形式に多少の違いこそあれ、教養試験「文章理解」に英語が必ず含まれている。筆者が在住する


某県の担当部署に問い合わせたところ、


「グローバルな人材選考の一助とするため、英語の出題比率は将来更に高まると予想される」、


とのことであった。特に地方上級試験は英語の配分が大きいらしい。公務員予備校の講師曰く、


英語出来るようにしておかないとダメ。なぜかって?英文を読むのに時間が


かかっていると、他の問題を解く時間がなくなっちゃうから」。


 


 CGU法学部生にも志望者が多い警察官はどうか。警視庁採用試験を例にとってみよう。


「教養試験」(五枝択一式50題:2時間)のうち「知識分野」の「一般科目」で、


やはり「英語」が課せられている。


 


特筆すべきは、筆記試験のほか「警察官の職務執行に有用な資格経歴等」を認定する制度が設け


られている点であろう。同制度により、「実用英語技能検定(英検):2級以上、:TOEIC 470点以上、


TOEFL〈iBT〉48点以上 〈PBT〉460点以上 〈CBT〉140点以上、国際連合公用語英語検定


(国連英検):C級以上」の資格は、「第1次試験の成績の一部」として加味される


英語能力を証する資格に加点するのは、千葉県警(英検2級以上 TOEIC 470点以上)も同様で


ある。なお警察官にとって、採用時ばかりでなく、将来の昇任に際しても語学(英語)試験が課される


ことは言うまでもない。また外国人の犯罪加害者・被害者処遇事例が激増している今日、


オーラル・コミュニケーション能力の涵養が喫緊の課題となっている、という。


 


 オーラル・コミュニケーション能力が重要であることは、企業にとってはもはや自明の理かも


しれない。財閥系商社に勤務する友人の話では、英語研修へ送り出す若手社員に


TOEICで概ね800点程度の成果を求めるらしい。かなり高いハードルだが、


「それくらい出来ないと海外勤務なんて無理将来の昇進も難しい」。


 


国際ビジネスコミュニケーション協会「企業における英語活用実態調査」(2011年)によると、


我が国の大学7割以上が「就職活動において英語が必要(…)社会で英語力が求められている


から」と考えており、「就職活動生にTOEICスコア600~700点を期待」している。


大学76.7%は「学生の英語コミュニケーション能力を現状よりも向上させたい 」と回答した。


企業側からは、「84.5%が英語を使用」、英語コミュニケーション能力の必要性については


7割が「3年前に比べ「高まった 」との回答を寄せている。


比例して、企業の「77.7%が採用時TOEICスコアを参考」にし、「1/4が新入社員の採用試験で


英語テストを実施」、また7割の企業が「配属・配転の参考」にしているという。


 


 これほど左様に、英語、なかんずくオーラル・コミュニケーション能力大事


なのである。我が中央学院大学法学部は、こうした社会の須要に応じる英語力を、果たして


学生諸君につけさせようと努力しているか?


 


否、逆に法学部にとっては、英語をはじめとする外国語は


〈なくもがな〉、とされてしまったのだ。


 


 昨今の趨勢を考慮するならば、英語を含む外国語の教育に一層傾注すべきであることは


間違いない。


しかしあろうことか法学部は、


偉大なる学部長たる大村芳昭・大先生のイニシアティヴの下で


カリキュラムを〈改悪〉し


主たるコースの外国語科目履修単位を半減させてしまった!


 


即ち、司法コース・行政コース・そしてスポーツなんたらコースは、


従来8単位(これとても十分とは言えないが)満たすべきとされていた外国語の所要単位を、


なんと4単位にしてしまったのである。いやしくも大学の看板を掲げる教育機関において、


たった4単位分しか語学を学ばせないとは何事か!


加えて現代社会と法コースも12単位から8単位へと〈軽量化〉を図っており、必修語学12単位を


課しているのは、ビジネスキャリアコースのみなのである。


 


 学部長たる大村芳昭・大先生は、教育についての所見を折々披露しておられる


(文書にしているものさえある)。それを要約すれば、


 


〈大学ではイタヅラに難しいコトを教えてはイケナイ〉


学生のレベルに合った程度でヨロシイ〉


 


というものだ。大先生の見るところ、CGUの学生には英語教育もムダであり分不相応なのか。


語学履修単位半減に関しては、カリキュラム〈改悪〉に携わった語学教すら


 


「学生さんの負担を軽減させる目的で…」


 


などとノタマっているらしいから、処方すべき薬が見当たらぬ。だが法学部の某教授曰く、


「CGUの学生は、まず一般教養で(公務員試験に)受からない、足切りされてしまう。


英語が出来ない所為だよ」。彼の言が正しいとすれば、


常に県内上位にランキングされる内定者を出して」いる、という法学部の謳い文句も


アヤシくなってこよう。


 


 近時、文部科学省を通じて新学習指導要領が策定された。新要領の特徴のひとつとして


〈言語力〉の重視が挙げられている。言語力育成協力者会議の定義では、〈言語力〉とは、


他者とコミュニケーションを行うために言語を運用するのに必要な能力」を指す。事実、


新要領の目玉とも言うべき高校「コミュニケーション英語Ⅰ」では事物の紹介や対話に、


また「コミュニケーション英語Ⅱ」では報告や討論に、時間が割かれ力点が置かれているのが分かる。


要するに英語教育においては、対話能力やディスカッション能力に示される


発信型オーラル・コミュニケーション能力を育成すること、これが焦眉の急なのだ。


 


 ところが大村芳昭・大先生は、この点を全く理解していない。過日、非常勤講師組合が


団体交渉において法学部長たる大先生に問い質した際にも


 


「コミュニケーションとは、ええ、〈読む・書く・聴く・話す〉の総合的な、


云々…」


 


と、通り一遍にノタマウばかりであった。彼にとっては公務員試験の実情も、就職試験の実態も、


文部科学省の方針も、国際化の趨勢も、別の世界でのハナシなのであろう。


 


  だがこれから社会に巣立ってゆく学生にとって、〈言語力〉、なかんずく


オーラル・コミュニケーション能力が、いかに不可欠なものであるか・・・


 


ああ、大村芳昭・大先生よ、法学部長ドノよ、


語学教育女の子のブロマイド写真ほど関心を惹かぬかもしれない。


だが大学人としての良心がヒトカケラでも残っているのなら、


 


今般のカリキュラム〈改悪〉即時撤回し、


しかるべき手続を無視して雇い止めを通告した英語担当外国人講師2名を呼び戻し


法学部生にオーラル・コミュニケーション能力向上の機会を与えよ


 


それでも「語学は不要」というなら、


もはや〈余剰人員〉化した英語専任教員に引導を渡したらいかが?


 


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